投稿者: みんなのインディー編集部

  • 汚れを落とすだけなのに、なぜこんなに夢中になるのか?『PowerWash Simulator 2』が癒しの中毒性を極めた理由

    汚れを落とすだけなのに、なぜこんなに夢中になるのか?『PowerWash Simulator 2』が癒しの中毒性を極めた理由

    「掃除ゲーム」って…面白いのか!?

    「高圧洗浄機で汚れを落とすだけのゲーム」と聞いて、筆者は最初「それ、面白いのか…!?」と思っていた。前作『PowerWash Simulator』が世界中で大ヒットしていることは知っていたし、YouTubeで見かける「汚れたカーペットを洗う動画」が妙に見入ってしまうのも理解できる。でも、それをゲームとしてわざわざプレイする意味があるのか?

    そんな疑問を抱えながら、2025年10月23日にリリースされた『PowerWash Simulator 2』をプレイし始めた。最初のステージは自分の仕事用バンの清掃。「まぁ、チュートリアルだし軽く終わらせるか」と思っていたのだが……。

    気が付けば2時間が経過していた。

    「ピンッ!」という音が脳に響く

    本作の魅力を一言で表すなら、それは「満足感の積み重ね」だ。高圧洗浄機のノズルから水が噴き出し、真っ黒な汚れが少しずつ剥がれ落ちていく。そして画面の端に表示された汚れ除去率が1%、2%と上がっていき、一つのパーツを完全に綺麗にすると「ピンッ!」という心地よい効果音が鳴る。

    この「ピンッ!」が、本当にクセになる。

    前作から引き継がれたこの音は、まさにドーパミンを直接脳に注入するかのような威力がある。バンのボンネットを洗い終えて「ピンッ!」、タイヤのホイールを磨いて「ピンッ!」、細かい隙間の汚れまで落として「ピンッ!ピンッ!ピンッ!」。連続で鳴るときの快感といったら、もはや説明不要だろう。

    前作から大きく進化した「石鹸システム」

    『PowerWash Simulator 2』最大の改善点は、石鹸の扱いだ。前作では石鹸は有料消耗品で、汚れの種類ごとに専用の石鹸を購入する必要があった。しかし本作では石鹸が完全無料になり、しかも効果が大幅に強化されている。

    頑固な汚れに石鹸を吹きかけると、泡がブクブクと表面に付着する。そしてその状態で水をかければ、これまで時間のかかった汚れも一瞬で綺麗に。前作でストレスだった「99%から100%への道のり」が劇的に改善されているのだ。

    新しいノズルも追加された。床用の円形クリーナーは広範囲を一気に掃除でき、これまで腰を痛めそうな広大な駐車場の清掃も快適になった。高所作業用のリフトや懸垂下降装置も登場し、届かなかった場所へのアクセスが格段に楽になっている。

    拠点とネコ、そして……地味に重要な「共有進行度」

    本作では新たに「ホームベース」が追加された。仕事を終えて帰宅すると、3匹のネコたち(ユリシーズ、バブルス、スクイーク)が出迎えてくれる。このネコたちを撫でられるのだが……正直に言うと、これは完全に好みが分かれる要素だと思う。

    筆者はネコ派なので嬉しかったが、「洗浄作業の合間にネコと戯れたいか?」と聞かれると、必須要素とは言い難い。ただ、ホームベースで過去にクリアしたステージのトロフィーを眺めたり、自分の部屋をカスタマイズしたりするのは、意外と愛着が湧く。

    そして、マルチプレイヤーの改善が素晴らしい。前作では協力プレイで進めたステージが、自分のキャリアモードには反映されないという問題があった。しかし本作では完全に共有進行度が実装されている。友人と一緒にプレイしたステージは、自分のキャリアでもクリア済みとしてカウントされるのだ。これにより、同じステージを何度も繰り返す必要がなくなり、協力プレイの価値が大きく向上した。

    ローカル2人での画面分割プレイにも対応しているため、家族と一緒にソファでまったり洗浄作業を楽しむこともできる。

    38ステージの多様性と、時に襲ってくる「倦怠感」

    キャリアモードには38のステージが用意されており、スクーター、トイレ、遊び場、ガソリンスタンド、豪邸、飛行船など、洗浄対象は実に多彩だ。中には複数のパートに分かれた大型ステージもあり、プレイ時間は軽く20時間を超える。

    ただし、ここで正直に言っておきたい。長時間プレイすると、さすがに飽きる

    特に大型ステージは1つクリアするのに1時間半以上かかることもあり、単調な作業の繰り返しに疲れを感じる瞬間がある。筆者も途中で「もうこのカーニバルの射的場、いつまで洗えばいいんだ……」と思ったことが何度もあった。

    しかし、それでも辞められない。なぜなら音楽やポッドキャストを聴きながらプレイできるからだ。本作は基本的にBGMがなく、耳に入るのは水の音と「ピンッ!」という効果音だけ。そのため、Spotifyで音楽をかけたり、YouTubeでゲーム実況を流したりしながら遊ぶのに最適なのだ。

    つまり『PowerWash Simulator 2』は、マルチタスクの最高のお供として機能する。作業ゲーとしてのポジションを完璧に理解しているのだ。

    Steam Deckで遊ぶ癒しの時間

    本作はSteam Deckとの相性も抜群だ。筆者はソファに寝転がりながら、あるいはベッドでリラックスしながら、延々と洗浄作業に没頭していた。

    Steam Deckでのパフォーマンスは安定しており、設定を調整すれば60FPSでプレイ可能。大型ステージではやや負荷がかかる場面もあるが、プレイに支障が出るレベルではない。むしろ、携帯ゲーム機で「ちょっとだけプレイしよう」と思って起動し、気づいたら1時間経っているという中毒性こそが本作の真骨頂だ。

    なぜ「掃除」がこんなにも満足感を与えるのか?

    プレイを続けていて気づいたのは、本作が「達成感の可視化」を完璧に設計しているという点だ。

    汚れ除去率のパーセンテージ表示、細かく分割された清掃エリア、完了時の効果音……全てが「自分が確実に進んでいる」という感覚を与えてくれる。これは現実の掃除では得られにくい体験だ。実際の掃除は終わりが見えにくく、成果も曖昧。しかし本作では、全てが数値で示され、100%に到達すれば必ず「終わり」が来る。

    そして、その「終わり」の後に広がる、真っ白に輝く綺麗な景色。ビフォーアフターの差が視覚的に明確だからこそ、満足感は倍増する。

    惜しい点:キーバインド変更不可とマルチプレイの不具合

    ただし、本作にも欠点はある。2025年という時代にもかかわらず、キーバインドの変更ができないのだ。これは多くのプレイヤーから指摘されており、アップデートでの対応が望まれる。

    また、協力プレイ時に接続が不安定になることがあり、特にオンラインマルチプレイではラグや切断が報告されている。ローカル協力は比較的安定しているが、この点も今後の改善に期待したい。

    前作ファンも、初めての人も楽しめる「洗浄の魔法」

    『PowerWash Simulator 2』は、前作の良さをそのままに、不満点を丁寧に改善した続編だ。石鹸システムの改良、新しいツールの追加、共有進行度の実装など、プレイヤーの声をしっかり反映している。

    価格も前作と同じ2,970円(Steam)と据え置きで、このボリュームでこの価格は驚異的だ。物価高の時代にあえて値上げせず、多くの人に「癒し」を届けようとする開発チームの姿勢には好感が持てる。

    「掃除ゲームなんて面白いの?」と疑っていた筆者が、今では毎晩のようにSteam Deckを起動し、「あと1ステージだけ……」と呟いている。この中毒性こそが、本作の真髄なのだ。

    日々のストレスから解放され、無心になって何かに没頭したい。そんなあなたに、『PowerWash Simulator 2』は最高の「現実逃避」を提供してくれるだろう。


    基本情報

    PowerWash Simulator 2

    開発: FuturLab
    パブリッシャー: FuturLab(旧Square Enix)
    プラットフォーム: Steam, PlayStation 5, Xbox Series X|S, Nintendo Switch 2
    プレイ時間: 20時間以上(キャリアモード38ステージ)
    難易度: 初心者向け(操作は簡単、極めるのは難しい)
    Steam評価: 非常に好評(81%)
    リリース日: 2025年10月23日
    カテゴリ: レビュー
    ゲームジャンル: シミュレーション
    価格: 2,970円(Steam)
    日本語対応: 完全対応

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  • たった3×3マスで世界が変わる。シンプルなのに奥深すぎる王国建設ローグライク『9 Kings』が止まらない

    たった3×3マスで世界が変わる。シンプルなのに奥深すぎる王国建設ローグライク『9 Kings』が止まらない

    見た目で判断してごめんなさい……

    正直に告白しよう。Steamストアで『9 Kings』を初めて見たとき、筆者の第一印象は「……ドット絵? 3×3のマス? なんか地味じゃね?」だった。

    2025年5月にリリースされた本作は、Sad Socketが開発し、『Manor Lords』でお馴染みのHooded Horseがパブリッシングを担当する王国建設ローグライク。カードを引いて3×3のマスに配置し、押し寄せる敵軍と戦う……というシンプル極まりないゲーム性だ。

    しかし、Steam評価は92%という驚異的な「非常に好評」。発売初週で25万本を売り上げ、同時接続プレイヤー数は1万3000人を突破。デモ版の段階から海外インフルエンサーの間で話題沸騰し、正式リリース後も勢いが止まらない。

    「……そんなに面白いの?」

    半信半疑でプレイボタンを押した筆者は、気づけば6時間ぶっ通しでプレイしていた。そして今こうして記事を書いている最中も、「もう1ゲームだけ……」という悪魔の囁きが聞こえてくる。

    これは、ヤバいゲームだ。

    カードを置くだけなのに、なぜこんなに面白いのか

    ゲームのルールは驚くほどシンプルだ。プレイヤーは9人の王の中から1人を選び、その王固有の9枚のカードデッキを使って王国を発展させる。

    毎ターン手札からカードを1枚選び、3×3のマス目に配置する。カードには「ユニット」「建物」「エンチャント(バフ効果)」の3種類があり、配置したカードは即座に効果を発揮する。

    ターンが終わると、敵の王が軍勢を率いて攻めてくる。ここからはオートバトル。プレイヤーは特殊技を発動するタイミングを選ぶ以外、ただ見守るしかない。自分が築いた王国が敵を蹂躙するか、それとも蹂躙されるか──その結果はすべて、これまでの選択の積み重ねで決まる。

    勝利すれば、倒した敵の王のデッキから1枚カードを獲得できる。負ければ、最初からやり直しだ。

    たったこれだけ。でも、この「たったこれだけ」が恐ろしいほど中毒性が高い。

    「無の王」から始まる、破滅への序章

    最初にプレイできるのは「無の王(King of Nothing)」だけだ。騎士、弓兵、防衛塔といったオーソドックスな中世ヨーロッパ風のユニットで構成された、まさに”普通”の王。

    「なんだ、普通じゃん」と思ってプレイを始めた筆者は、1回目のプレイであっさり全滅した。

    理由は簡単。「どこに何を置けばいいのか分からない」からだ。

    3×3という限られたスペースに、前衛、後衛、支援施設をどう配置するか。バフ効果を持つ建物はどのユニットの隣に置くべきか。城(本拠地)をどこに配置すれば守りやすいか──考えることは山ほどある。

    そして2回目。今度は慎重に配置を考え、なんとか5年目まで生き延びた。だが、強力な敵に押し切られて敗北。

    3回目。配置の基本が分かってきた。騎士を前列に、弓兵を後列に、城は一番後ろ。バフ効果を持つ建物は主力ユニットの隣に置く。この基本を守るだけで、10年目まで到達できた。

    そして4回目。ついに初クリアを達成した瞬間、筆者は気づいた。

    「あ、これ……止まらないやつだ」

    9人の王、9通りの狂気

    クリアするごとに新しい王が解放されていく。そして、それぞれの王はまったく別のゲームを遊んでいるかのように個性的だ。

    血の王(King of Blood)」は自軍のユニットを犠牲にすることで、悪魔や吸血鬼を強化する。序盤は弱いが、雪だるま式に強くなっていくビルドの快感がヤバい。

    強欲の王(King of Greed)」は金で傭兵を雇いまくる資本主義の権化。ガトリング塔で敵を薙ぎ払う爽快感は筆舌に尽くしがたい。

    進歩の王(King of Progress)」に至っては、もはやファンタジーを捨てている。機関銃、ガトリング塔、火炎放射器──中世ファンタジーの王国に突如現れる近代兵器の暴力に、敵も味方も困惑するしかない。

    筆者が最もハマったのは「自然の王(King of Nature)」だ。キノコ、樹木、毒といった自然の力を操り、じわじわと敵を弱らせていく戦い方が実に戦略的で面白い。

    そして何より、敵を倒すたびに相手のカードを1枚奪えるシステムが天才的だ。

    自然の王でプレイ中、強欲の王からガトリング塔を奪った瞬間、筆者の王国は「森と機械銃が共存する狂った王国」へと変貌した。この予測不能な展開こそが、『9 Kings』の最大の魅力だ。

    シンプルなのに、絶妙に難しい

    本作の難易度は絶妙だ。

    基本ルールは誰でも理解できるほどシンプル。だが、勝つためには配置の最適化、カードシナジーの理解、敵の特性把握が不可欠となる。

    特に難易度「King」以上になると、運任せでは絶対に勝てない。毎ターンの選択が勝敗を分ける、まさにチェスのような戦略性が求められる。

    だが、何度負けても「もう1回だけ……」と思わせる中毒性がある。それは、敗因が明確だからだ。

    「あそこで城を後ろに置いておけば……」 「バフ建物をもっと早く建てるべきだった……」 「あのカードを選ばなければ……」

    反省点が明確だから、次のプレイでは改善できる。そして改善すれば、確実に強くなる。この成長の実感が、プレイヤーを離さない。

    止まらない。本当に止まらない

    『9 Kings』の1プレイは約30分。だが、その30分が無限に続く

    「今回はいい感じだ。クリアできそう」 →クリア →「次は別の王を試してみるか」 →「あ、この組み合わせ強い!」 →「もう1回だけ……」

    気づけば朝。これが『9 Kings』の恐ろしさだ。

    ピクセルアートは確かにシンプルだ。3×3のマス目も、一見地味に見える。だが、そのシンプルさが完璧に計算されている

    複雑なグラフィックや派手な演出は不要。プレイヤーが集中すべきは、選択と戦略だけ。そして、その選択が生み出す無限の組み合わせこそが、本作の真髄だ。

    筆者は今、プレイ時間が60時間を超えた。それでもまだ、「試していないビルド」「挑戦していない難易度」が山ほどある。

    発売から数ヶ月経った今も、開発チームは定期的にアップデートを実施している。新しい王、新しいカード、新しいモード──まだまだ進化し続けるこのゲームは、本当に終わりが見えない

    もし、あなたが「ちょっとした暇つぶし」を探しているなら、このゲームには手を出すな。

    これは暇つぶしではなく、時間泥棒だ。

    だが、もしあなたが「シンプルなルールで奥深い戦略を楽しみたい」「何度でもリプレイしたくなる中毒性を求めている」なら──

    迷わずプレイボタンを押してほしい。

    そして筆者と同じ、抜け出せない沼へようこそ。


    基本情報

    タイトル: 9 Kings(9 キングス)
    開発: Sad Socket
    パブリッシャー: Hooded Horse, INSTINCT3
    プラットフォーム: Steam (PC), Mac
    リリース日: 2025年5月23日(早期アクセス)
    価格: 1,980円(通常価格)
    プレイ時間: 1プレイ約30分、エンドレスモードあり
    日本語対応: あり(30言語対応)
    Steam評価: 非常に好評(92%、14,000件以上のレビュー)

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  • スロット×ファンタジーRPGの魔改造!『スロット&ダガー』で運と戦略の狭間に立つ緊張感がクセになる

    スロット×ファンタジーRPGの魔改造!『スロット&ダガー』で運と戦略の狭間に立つ緊張感がクセになる

    スロットマシンでモンスターと戦う…ふむふむ…

    Steamのストアページで『スロット&ダガー | Slots & Daggers』を初めて見たとき、筆者の頭には「面白そう!」よりも「スロットマシン? ファンタジーRPG? なぜこの組み合わせ?」という困惑の方が強かった。

    パッと見た感じはレトロな雰囲気のスロットマシンと、その画面に映し出されるゴブリンや悪魔といったモンスターたち。「スロットを回して敵を倒す」という説明を読んでも、正直ピンとこない。確かに『Balatro』や『CloverPit』といったスロット系ローグライクは最近人気だが、これらとはまた違う独自の魅力があるという。

    そんなストアページの謎を解明すべく、筆者は『スロット&ダガー』の世界へと足を踏み入れることにした。

    シンプルだけど奥が深い…これぞスロットの魔改造

    ゲーム性は一見シンプル。スロットマシンを回し、出た目に応じて攻撃・防御・魔法といったアクションを実行。敵の体力を削り切れば勝利、こちらの体力がゼロになれば敗北。ターン制バトルの基本を忠実に守りながら、スロットという運要素を組み込んだシステムだ。

    最初は剣、盾、コインの3つのシンボルから選択してスロットマシンを構築。剣は攻撃、盾は防御、コインはお金を稼ぐといった具合に、各シンボルには明確な役割がある。

    「なんだ簡単じゃん。スロット回して剣が出れば攻撃、盾が出れば防御。要するに運ゲーでしょ」と思い、最初のステージに挑んでみると……

    即死した。

    敵が強いのか、こちらが弱いのかはわからないが、とにかくあっという間に体力がゼロになる。最初のハンマーゴブリンでさえ、油断すれば2、3ターンで倒されてしまう。「え、これ本当に序盤?」と戸惑いながら再挑戦するも、結果は同じ。攻撃が足りず、防御も足りず、気づけば体力ゲージは真っ赤だ。

    ここで「あれ? これ運だけじゃ勝てなくね?」と完全に意識が切り替わった。

    運だけじゃない…目押しと戦略が勝利のカギ

    (自称)ローグライク好きな筆者がこんなに苦戦するとは。この絶妙な難易度を生み出しているのは、実は「目押し」システムだ。

    スロットのリールは自動では止まらない。プレイヤーが手動で1つずつ止める必要があり、タイミング次第で狙ったシンボルを引き寄せることができる。完全なランダムではなく、プレイヤーのスキルが介入できる余地が残されているのだ。

    さらに、同じシンボルが3つ揃うとクリティカルヒットが発動。攻撃力が3倍になったり、特殊効果が追加されたりと、戦況を一気に逆転させるチャンスが生まれる。この「狙える運ゲー」という絶妙なバランスが、本作の最大の魅力だ。

    が、目押しだけでは勝てない。重要なのはスロットマシンのカスタマイズだ。

    各バトルの合間には商人が登場し、ここで新しいシンボルを購入したり、既存のシンボルを強化したりできる。毒ダメージを与えるダガー、回復効果のあるポーション、魔法ダメージを与えるスペルブック……選択肢は多岐にわたる。

    しかし、ここで注意が必要なのは、シンボルを増やしすぎると狙ったシンボルが出にくくなるということ。攻撃シンボルばかり詰め込めば火力は上がるが、防御が疎かになり一撃で倒されてしまう。逆に防御シンボルを多く入れれば生存率は上がるが、敵を倒すのに時間がかかり、結局ジリ貧になる。

    この「どのシンボルを入れるか、どのシンボルを削るか」という選択が、デッキ構築型ローグライクのような戦略性を生み出している。筆者は試行錯誤の末、毒ダメージを与える小剣と、ライフスティール効果のある魔法を軸にしたビルドを構築。これが意外にハマり、じわじわと敵の体力を削りながら自分は回復するという、かなりえげつない戦法で勝利を重ねることができた。

    スキルチェックというミニゲーム要素も熱い

    さらに本作には「スキルチェック」というミニゲーム要素がある。特定のシンボル(大剣やメイスなど)が出ると、画面にメーターが表示され、プレイヤーはタイミングよくボタンを押してメーターを止める必要がある。成功すれば高ダメージ、失敗すればダメージが減少するという、アクション要素だ。

    このスキルチェックが意外と難しい。メーターの速度はランダムで、速いときは本当に一瞬で通過してしまう。「今だ!」と思ってボタンを押しても、微妙にズレて失敗することも多い。しかし、この緊張感がたまらない。スロットという運要素に、さらにプレイヤースキルを上乗せすることで、単なる運ゲーではない深みが生まれている。

    死んでも諦めない…永続強化で少しずつ強くなる快感

    そして本作はローグライクなので、当然ながら死ぬと最初からやり直しとなる。カスタマイズしたスロットマシンも、購入したシンボルも、すべてリセット。

    が、ここで重要なのが「チップ」という永続通貨だ。強敵を倒すとチップが手に入り、これを使って基礎能力を強化できる。体力の最大値を増やしたり、魔法ダメージをブーストしたり、コインのドロップ率を上げたり……地道だが確実に強くなっていく。

    最初は「こんなの無理ゲーじゃん!」と思っていた敵も、チップで強化を重ねるうちに「あれ、意外と楽に倒せるようになったな」と実感できる。この「少しずつ強くなる」という感覚が、ローグライク好きにはたまらない。

    トライ&エラーを繰り返していくと、「このビルドなら行けるかも」という手応えがつかめてくる。毒と回復の組み合わせ、大剣とスキルチェックに特化したビルド、防御を固めて長期戦に持ち込む戦法……プレイヤーごとに独自の戦略が生まれるのだ。

    そうなればもうこっちのもの。スロットを回すたびに「次は何が出るか」というドキドキ感と、「このビルドなら勝てる」という確信が混ざり合い、気づけば「もう一回だけ…」と何時間もプレイしてしまっていた。

    レトロなビジュアルと心地よいサウンドが最高

    本作の魅力は、ゲームプレイだけではない。レトロなピクセルアート調のビジュアルと、ヒップホップ調のドラムマシンサウンドが、独特の雰囲気を醸し出している。

    スロットマシンの画面に映し出されるモンスターたちは、どこかコミカルでありながらも不気味。ハンマーゴブリン、ガンスリンガー、巨大な蛾のモスガル……それぞれが個性的なデザインで、レトロながらも印象に残る。

    そして何より、スロットを回したときの「ジャラジャラ」という音、コインが落ちる「チャリン」という音、クリティカルヒットが決まったときの「ドーン!」という効果音。これらすべてが、プレイヤーの脳内に快感をもたらす。まさに「アーケードゲームの中毒性」を体現しているかのようだ。

    開発者のFriedemannは、前作『SUMMERHOUSE』で癒し系サンドボックスゲームを作った人物。その彼が今回は真逆のアプローチで、スロットマシンという中毒性の高いシステムを使ってゲームを作り上げたというのだから、その振り幅に驚かされる。

    唯一の欠点は…もっと遊びたくなること

    ただし、本作には1つだけ欠点がある。それは、ボリュームがやや少ないということだ。

    メインキャンペーンのプレイ時間は4〜8時間程度。ローグライクとしては決して短くはないが、一度クリアしてしまうと「もっと遊びたい!」という気持ちが強くなる。幸いにも「エッグアリーナ」という無限モードが用意されており、ここでハイスコアを競うことができるが、それでもまだ「新しいエリアや新しいボスが欲しい」という欲求は消えない。

    また、一部のシンボルや強化が強すぎて、特定のビルドに偏りがちという意見も見られる。リスピン(スロットを回し直す)系のシンボルを集めると、ほぼ負けることがないという状況になってしまうため、開発者も最近のアップデートでバランス調整を行っている。

    それでも、この価格(920円、現在は30%オフで644円)でこれだけの中毒性と戦略性を味わえるのであれば、文句のつけようがない。むしろ「こんなに楽しいゲームがこんなに安いのか!」と驚くレベルだ。

    運と戦略の狭間で揺れる、新感覚ローグライク

    『スロット&ダガー』は、スロットマシンという運要素と、デッキ構築という戦略要素を見事に融合させた、新感覚のローグライクだ。

    目押しによるプレイヤースキルの介入、スキルチェックによるアクション要素、永続強化による成長実感……すべてが絶妙なバランスで組み合わさり、「もう一回だけ」という中毒性を生み出している。

    ローグライク好きはもちろん、『Balatro』や『CloverPit』にハマった人、手軽に遊べる戦略ゲームを探している人には、ぜひともプレイしてほしい。

    スロットを回すたびに心臓が高鳴る。この感覚、クセになる。


    基本情報

    タイトル: スロット&ダガー | Slots & Daggers
    開発: Friedemann
    パブリッシャー: Future Friends Games
    配信日: 2025年10月24日
    定価: 920円(Steam)※現在30%オフで644円(11月8日まで)
    日本語: ○
    プレイ時間: 4〜8時間(メインキャンペーン)
    難易度: 中級者向け
    Steam評価: 非常に好評(94%)
    販売本数: 10万本突破(2025年11月時点)

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  • 宇宙で鳥たちと工場を作る癒し体験『Star Birds』。パイプを繋いで最適化を目指す中毒性がヤバい

    宇宙で鳥たちと工場を作る癒し体験『Star Birds』。パイプを繋いで最適化を目指す中毒性がヤバい

    小惑星に工場を建てるって、こんなに楽しいのか……

    Steamストアで『Star Birds』のページを開いたとき、最初に目に飛び込んできたのはカラフルな鳥たちと、小惑星を覆う無数のパイプだった。「なんだこれ、めちゃくちゃ可愛いじゃん」と思いつつも、「でも工場自動化ゲームって難しそう……」という不安もあった。

    しかし、そんな心配は杞憂に終わった。2025年9月10日に早期アクセス版がリリースされた本作は、わずか5日で Steam評価「圧倒的に好評」(95%) を獲得。『Dorfromantik』を手掛けたToukana Interactiveと、教育系YouTubeチャンネル「kurzgesagt – in a nutshell」のコラボ作品として、すでに大きな話題を呼んでいる。

    実際にプレイしてみると……気づけば3時間が経過していた。「あと1ステージだけ」「もうちょっと配置を最適化したい」と思っているうちに、時間があっという間に溶けていく。この中毒性、かなりヤバい。

    360度建築の発想がすごい

    本作の最大の特徴は、球体の小惑星上に基地を建設するという独特のシステムだ。通常の工場ゲームのような平面ではなく、ぐるりと360度回転する小惑星に施設を配置していく。

    最初は「球体に建物を置くって難しそう」と思ったが、これが意外とすんなり。マウスでクルクル回転させながら、採掘施設やパイプを配置していく感覚は、まるでミニチュアの惑星を手のひらで転がしているような楽しさがある。

    そして重要なのがパイプは交差できないというルール。これが絶妙なパズル要素を生み出している。鉄を精錬したい、でもパイプが他の資源ラインと干渉してしまう……そんなとき、小惑星の裏側をぐるっと回して配置する発想が生まれる。

    この360度という制約が、単なる工場ゲームを立体パズルに変えている。平面では不可能だった配置が、球体だからこそ実現できる。最初は戸惑うかもしれないが、慣れてくるとこの立体的な思考が病みつきになってくる。

    「失敗しても大丈夫」な優しさが心地いい

    工場自動化ゲームといえば『Factorio』や『Satisfactory』のような、高度な知識と計画性が求められる作品を思い浮かべる人も多いだろう。しかし『Star Birds』は、そういったハードコアな作品とは一線を画している。

    まず、時間制限が一切ない。ステージごとにクエストが用意されているが、のんびり自分のペースで進められる。資源が足りなくなっても詰むことはなく、配置をやり直すのも自由。ミスしても何のペナルティもない。

    これが本当にありがたい。失敗を恐れず、「あ、この配置ダメだな」と思ったら即座に作り直せる。試行錯誤が楽しめるゲームデザインになっている。

    さらに、チュートリアルが非常に丁寧。新しい施設や資源が登場するたびに、しっかり説明してくれる。「自動化ゲームは初めて」という人でも、安心して遊べる作りだ。

    実際、Steam レビューでも「ジャンル初心者に最適」「癒されながら工場を作れる」といったコメントが多数見られる。ハードコアゲーマーには物足りないかもしれないが、逆にこの優しさこそが本作の魅力なのだ。

    パイプのスパゲティ化が楽しすぎる問題

    工場自動化ゲーム経験者なら「スパゲティ配線」という言葉を聞いたことがあるはず。計画性なく配管を引いた結果、複雑に絡み合ったパイプが麺のように見える状態のことだ。

    『Star Birds』では、このスパゲティ化がむしろ楽しい

    最初はシンプルに「鉄を採掘→溶鉱炉→ロケット発射台」という流れを作るだけ。しかし進行するにつれて、複数の資源を組み合わせた複雑な生産チェーンが求められるようになる。

    例えば、プラスチックを作るには原油とメタンが必要で、それぞれ別の小惑星から輸送しなければならない。さらに電力供給のためのソーラーパネルも配置して……気づけば小惑星がカラフルなパイプで覆われている。

    でも、これが美しい。kurzgesagtらしいポップなカラーリングと相まって、複雑な配管すらも「アート作品」のように見えてくる。完成した小惑星基地をぐるぐる回転させて眺めるだけでも満足感がある。

    そして一度スパゲティ化した配置を、より効率的に整理し直す作業もまた楽しい。「このパイプはこっちを通せばもっと短縮できる」「ハブを使えば分岐がスッキリするな」と試行錯誤する時間が、最高に心地いい。

    ストーリーも意外としっかりしている

    『Star Birds』には、ちゃんとストーリーキャンペーンが用意されている。宇宙を旅する鳥たちが、謎のアーティファクトを追いかけながら新しい星系を探索していく……という内容だ。

    kurzgesagtの映像スタイルそのままのカットシーンが挿入され、鳥たちの軽妙な会話が物語を彩る。シリアスになりすぎず、かといって薄っぺらくもない、絶妙なバランス。

    「工場ゲームにストーリーなんて必要ないでしょ」と思うかもしれないが、意外と没入感が増す。次のステージに進むモチベーションにもなるし、何より鳥たちのキャラクターが愛おしくなってくる。

    特に印象的なのが、各ステージで提示されるクエスト。単に「○○を生産せよ」ではなく、「鳥たちがサングラスを欲しがっている」「核融合炉の研究をしたい」といった具体的な要求が出される。

    これがゲームプレイに意味を持たせている。ただの数字を達成するのではなく、「鳥たちのために頑張ろう」という気持ちにさせてくれる。

    早期アクセスでもこの完成度は異常

    現在の『Star Birds』は早期アクセス版だが、その完成度はかなり高い。Steam レビューでも「バグがほとんどない」「UIが洗練されている」「パフォーマンスも良好」といった評価が目立つ。

    実際、筆者のプレイ中にクラッシュやバグは一度も発生しなかった。操作性も直感的で、マウスだけで全ての操作が完結する。Steam Deckでも快適に動作するという報告も多数見られる。

    早期アクセス版の内容は、2つの星系と多数のステージ、さらにプロシージャル生成される「ボーナスセクター」が含まれている。メインキャンペーンだけでも20時間以上は遊べるボリュームだ。

    そして開発ロードマップも公開されており、今後さらに新しい建物、小惑星タイプ、星系、ストーリーコンテンツが追加される予定。製品版リリースは2026年を予定しているが、現時点でも十分に遊び応えがある。

    逆に言えば、今から始めれば成長を見守れる楽しみもある。コミュニティも活発で、Discordでは開発者と直接フィードバックのやり取りができる。早期アクセスならではの「一緒にゲームを作っていく」体験も味わえるのだ。

    『Dorfromantik』好きなら絶対ハマる

    本作を開発したToukana Interactiveは、あの癒し系パズル『Dorfromantik』の制作チームだ。『Dorfromantik』を遊んだ人なら、『Star Birds』の「のんびりだけど奥深い」というゲームデザインの共通点に気づくはず。

    どちらも「失敗がない」「自分のペースで遊べる」「最適化の楽しさ」という要素を大切にしている。ただし『Dorfromantik』がタイル配置パズルなのに対し、『Star Birds』は工場自動化という違いがある。

    もしあなたが『Dorfromantik』で癒されつつも「もうちょっと複雑なことがしたい」と感じていたなら、『Star Birds』は完璧な次のステップになるだろう。

    逆に『Factorio』や『Satisfactory』で燃え尽きた人が、「もっと気楽に工場を作りたい」と思ったときにも最適だ。本作は両者の中間地点にある、絶妙なバランスの作品なのだ。

    宇宙で、鳥たちと、工場を作ろう

    『Star Birds』は、工場自動化ゲームの「考える楽しさ」と、カジュアルゲームの「気楽さ」を見事に融合させた作品だ。360度建築という独自のシステム、優しいゲームデザイン、美しいビジュアル、そして中毒性の高いゲームループ。

    「工場ゲームは難しそう」と敬遠していた人にこそ、ぜひ遊んでほしい。本作なら、きっとこのジャンルの魅力に気づけるはずだ。

    そして既に工場ゲームが好きな人も、この「癒しの工場作り」に新鮮さを感じるだろう。パイプのスパゲティ化を楽しみ、小惑星を回転させながら眺める時間は、他のどのゲームでも味わえない体験だ。

    現在Steam では10%オフの2,070円で販売中。デモ版も公開されているので、気になる人はまず試してみるといい。

    気づけば何時間も経っている。そんな魔法のような体験が、『Star Birds』にはある。


    基本情報

    Star Birds

    • 開発: Toukana Interactive
    • パブリッシャー: Toukana Interactive, kurzgesagt – in a nutshell
    • プラットフォーム: Steam (PC)
    • リリース日: 2025年9月10日 (早期アクセス)
    • 価格: 2,300円 (現在10%オフで2,070円)
    • プレイ時間: 20時間以上 (早期アクセス版)
    • 難易度: 初心者向け~中級者向け
    • Steam評価: 圧倒的に好評 (93%, 1,500件以上のレビュー)
    • 日本語対応: ○
    • Steam Deck: 対応

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  • 恐怖の館になって訪問者を恐怖のどん底へ。デッキ構築ローグライク『Deck of Haunts』で味わう、加害者側のホラー体験

    恐怖の館になって訪問者を恐怖のどん底へ。デッキ構築ローグライク『Deck of Haunts』で味わう、加害者側のホラー体験

    ホラーゲームなのに……加害者側!?

    ホラーゲームといえば、プレイヤーは逃げる側、怯える側が定番だ。幽霊や怪物から必死に逃げ、隠れ、生き延びる……そんなドキドキハラハラの体験こそがホラーゲームの醍醐味だと思っていた。

    ところが、PC(Steam)向けゲーム『Deck of Haunts』は、その常識を真っ向から覆してくる。本作でプレイヤーが操るのは、なんと恐怖の館そのもの。侵入してくる人間たちを恐怖に陥れ、精神を追い詰め、魂のエキスを搾り取る……。完全に加害者側なのだ。

    最初にストアページを見たとき、「館になるってどういうこと?」「デッキ構築と館の建築が合体?」と、正直かなり困惑した。が、プレイしてみると、この発想の転換がとんでもなく面白い。被害者になって怯えるのではなく、加害者として恐怖を演出する――この逆転の構図が、『Deck of Haunts』を唯一無二のホラー体験へと昇華させているのだ。

    昼は建築、夜は恐怖――二段構えのゲームシステム

    ゲームの基本的な流れは非常にシンプル。昼間に館の間取りを設計し、夜になると侵入者が現れるので、カードを駆使して恐怖を与えていく。この昼夜のサイクルを28日間繰り返し、館の核となる「ハートルーム」を守り抜けばクリアだ。

    昼間のフェーズでは、タイル状のグリッドに部屋を配置して館を建築していく。ゲストルーム、リビング、キッチンといった基本的な部屋から、フォビアルーム(恐怖の部屋)、メカニカルルーム(機械仕掛けの部屋)、サクリファイスルーム(生贄の部屋)など、特殊な効果を持つ部屋まで用意されている。

    部屋の配置は自由度が高く、迷路のような複雑な構造を作り上げることも可能だ。ハートルームを守るため、侵入者を効率的に迷わせ、消耗させるレイアウトを考えるのが、このゲームの戦略の要となる。

    夜間のフェーズになると、館に人間たちが侵入してくる。彼らはそれぞれ体力と正気度のパラメータを持っており、プレイヤーはカードを使ってこれらを削っていく。悲鳴を上げさせる、床をきしませる、幽霊を召喚する、壁を動かす……手札のカードを駆使して、訪問者を精神的に追い詰めていくのだ。

    カードにはダメージカード、正気度を削るドレインカード、緊張感を高めるテンションカードなどがあり、それぞれ使用条件が設定されている。たとえば「部屋に一人きりの状態でないと使えない」といった制限があるため、単純にカードを出せばいいわけではない。部屋の配置と訪問者の動きを読み、タイミングを見計らってカードをプレイする――このパズル的な戦略性が、じわじわと病みつきになってくるのだ。

    死んでも学べるローグライクの妙味

    ゲームオーバーになっても、集めたカードや解放した部屋は次のランに引き継がれる。つまり、死ぬたびに戦略の選択肢が広がっていく、典型的なローグライクのメタプログレッションだ。

    最初のランでは、基本的なカードと部屋しか使えず、侵入者に圧倒されてあっさりハートルームを破壊されてしまうことも多い。が、ランを重ねるごとに強力なカードが手に入り、特殊な部屋も使えるようになっていくと、徐々に館の恐怖支配が板についてくる。

    特に面白いのが、侵入者の種類が増えていくことだ。最初は一般市民だけだが、悪名が高まると警察官、神父、そして謎の組織「ストーン・メイソン」まで現れる。彼らはそれぞれ特殊能力を持っており、たとえば「Pathfinder」というトレイトを持つ敵は、入口ではなくランダムな部屋からスタートする。

    これがまたやっかいで、下手をするとハートルームのすぐ隣に出現することもある。そんなときは「え、初手でこれ!?」と絶望するが、そういう理不尽さも含めてローグライクの魅力だ。対処できるカードがなければ潔く諦め、次のランで対策を練る――このトライ&エラーの繰り返しが、プレイヤーを成長させてくれる。

    Steam評価84%の高評価、だが課題も

    Steam上での評価は「非常に好評」で、708件のレビューのうち84%が好意的だ。特に「デッキ構築とタワーディフェンスの融合が斬新」「館の建築が楽しい」といった声が多く、独特なゲームデザインが高く評価されている。

    ただし、いくつかの課題も指摘されている。最も多いのが「反復性が高い」という点だ。28日間のランは毎回同じスタートカードと館レイアウトから始まるため、15日目あたりから既視感が強くなってくる。また、正気度を削る戦略よりも直接ダメージを与える方が効率的なため、戦略の幅が狭まりがちだという意見もある。

    加えて、部屋配置の自由度は高いものの、最初のグリッドが小さく、ハートルームの位置が固定されているため、創造性に限界があるとも言われている。とはいえ、開発元のMantis Gamesは継続的にアップデートを行っており、シナリオビルダー機能も実装予定とのことだ。Steam Workshopとの連携も計画されているため、コミュニティによる拡張に期待が高まる。

    1970年代アメリカのゴシックな雰囲気

    本作の舞台は1970年代のアメリカ。アールデコ調の不気味な館と、ゴシックホラーの美学が見事に融合した世界観が、プレイヤーを引き込む。

    グラフィックはアイソメトリック視点の2.5Dで、ドット絵ではないがスタイライズされた表現が特徴的だ。暗い色調とシネマティックな演出が、古典的なホラー映画を彷彿とさせる。

    BGMも秀逸で、不協和音を効かせた不穏な旋律が、館の邪悪さを際立たせている。侵入者が発狂するときの演出も凝っており、ホラーゲームとしての没入感は十分だ。

    プレイ時間は20~100時間以上! リプレイ性の高さ

    一度のランは28日間で、クリアまでの所要時間は約2~3時間程度。だが、複数のエンディングが用意されており、選択肢によって結末が変化するため、リプレイ性は高い。

    さらに、カードや部屋の組み合わせによって全く異なる戦略が取れるため、「今度は正気度特化で攻めてみるか」「特殊部屋を駆使した迷宮を作ろう」といった試行錯誤が楽しめる。筆者は現在30時間ほどプレイしているが、まだ全カードを解放しきれていない。100時間以上遊べるコンテンツ量があると言っても過言ではないだろう。

    難易度は初心者向け~上級者向けの3段階

    本作には3段階の難易度設定があり、初心者でも安心して楽しめる。イージーモードでは侵入者の体力が低く、ハートルームへのダメージも少ないため、じっくりとゲームシステムを学べる。

    逆にハードモードでは、初日から強力な敵が押し寄せ、一瞬の判断ミスが命取りとなる。ローグライク上級者やデッキ構築ゲームのベテランなら、ハードモードでの完全クリアを目指してほしい。

    基本情報

    タイトル: Deck of Haunts
    開発: Mantis Games
    パブリッシャー: DANGEN Entertainment, Game Source Entertainment
    プラットフォーム: PC(Steam)※コンソール版は2025年後半予定
    リリース日: 2025年5月7日
    価格: 2,300円(税込)
    プレイ時間: 20~100時間以上
    難易度: 初心者向け~上級者向け(3段階設定)
    Steam評価: 非常に好評(84%)
    日本語対応: あり

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  • 元Telltaleの本気が炸裂!選択が本当に意味を持つスーパーヒーロー職場コメディ『Dispatch』、豪華声優陣とアニメ級の映像美で2025年のGOTY候補に名乗りを上げる

    元Telltaleの本気が炸裂!選択が本当に意味を持つスーパーヒーロー職場コメディ『Dispatch』、豪華声優陣とアニメ級の映像美で2025年のGOTY候補に名乗りを上げる

    クオリティ、高すぎるぞ…?

    「選択が重要」と謳うゲームは世の中にあふれている。しかし、実際にプレイしてみると「結局同じ展開に収束するんじゃん」とガッカリした経験は誰にでもあるはずだ。『The Walking Dead』や『The Wolf Among Us』といったTelltale Gamesの黄金期を知るゲーマーなら、なおさらその幻滅は大きかったに違いない。

    そんな失われた黄金時代を取り戻すべく、元Telltale開発陣が立ち上げたAdHoc Studioが放つ最新作──それが『Dispatch』だ。2025年10月22日にPC(Steam)とPS5で第1・2エピソードが配信開始されると、Steamでは90%という驚異的な高評価を叩き出し、デモ版に至っては98%の圧倒的好評を獲得。ピーク時の同時接続プレイヤー数は1万2000人を突破し、各メディアから「今年のGOTY候補」との呼び声も高い。

    筆者も発売日からプレイしているが……正直、期待値を大幅に超えてきた。これは単なる「Telltale風ゲーム」ではない。Telltaleの遺伝子を受け継ぎながら、それを超えた新世代の物語体験がここにある。

    スーパーヒーロー×職場ドラマという絶妙な化学反応

    『Dispatch』の舞台は、スーパーヒーローが実在する現代ロサンゼルス。主人公のロバート・ロバートソン(通称メカマン)は、かつては高性能メカスーツで活躍していた三代目スーパーヒーローだ。しかし宿敵シュラウドとの戦いでスーツが大破し、修理費用に全財産を注ぎ込んだ末に破産。ヒーロー活動から引退を余儀なくされる。

    そんな彼に舞い込んだのが、スーパーヒーロー派遣会社「SDN(Superhero Dispatch Network)」でのディスパッチャー(派遣担当者)という仕事だ。しかも担当するのは、元ヴィラン(悪役)たちで構成された更生プログラム「フェニックス・プログラム」のZチーム。彼らを街中の緊急事態に派遣し、ヒーローとして社会復帰させるのがロバートのミッションとなる。

    この設定が絶妙なのは、ヒーローの「裏方」に焦点を当てている点だ。派手な戦闘シーンや世界を救う壮大な物語ではなく、オフィスの人間関係、予算の都合、元ヴィランたちの抱える過去や葛藤といった、極めて人間臭いドラマが展開される。

    『The Boys』のようなシニカルなヒーロー観と、『Life is Strange』のような選択重視のゲームプレイ、そして『The Office』のような職場コメディの要素が見事に融合しているのだ。公式も「職場コメディ」と銘打っているが、実際プレイすると休憩室での何気ない会話から重要な決断まで、すべてがシームレスに物語を動かしていく。

    「選択が重要」を本気で実現した物語設計

    『Dispatch』最大の特徴は、選択が本当に意味を持つという点だ。かつてTelltaleゲームスでお馴染みだった「○○は覚えているだろう」というメッセージは今作にも健在だが、その重みがまるで違う。

    たとえば第2エピソードでは、Zチームから1人をクビにしなければならない決断を迫られる。プレイヤーは限られた時間内に各メンバーを緊急事態に派遣し、その成績をもとに判断を下す。しかしメンバーたちは互いに足を引っ張り合い、ポイントを稼ごうと必死だ。そんな中、能力は低いが必死に努力するInvisigal(元Invisibitch)をどう扱うか──この選択ひとつで、その後の展開が大きく変わる。

    開発陣は「プレイヤーが何気なく発した一言でさえ、物語に影響を与える」と語っているが、これは誇張ではない。実際、友人とプレイ後に話してみると、同じエピソードでも全く異なる展開を経験していることに驚いた。あるシーンで登場したキャラクターが、別のプレイヤーの物語には一切出てこない。ある選択肢を選ぶと、まるごとイベントが変わる。

    この分岐の多様さは、全8エピソードで膨大なリプレイ性を生み出している。筆者はすでに第1・2エピソードを3周プレイしたが、毎回新しい発見があり、「あのとき別の選択をしていたら……」という後悔と好奇心が尽きない。

    Telltaleを超えた、アニメ級の映像クオリティ

    もうひとつ、『Dispatch』を語る上で外せないのが圧倒的な映像美だ。Telltaleゲームスの作品は素晴らしいストーリーテリングで知られていたが、正直アニメーションは「まあまあ」というレベルだった。しかし『Dispatch』は違う。

    キャラクターの表情、仕草、カメラワーク、すべてが劇場アニメ級のクオリティで描かれている。Invisigalが自信なさげに視線を逸らす瞬間、Blonde Blazerが意味深な笑みを浮かべる表情、ロバートが過去を思い出して一瞬だけ目を伏せる演出──細部まで作り込まれた映像が、物語への没入感を極限まで高めている。

    実際、プレイしているというより「インタラクティブなアニメシリーズを観ている」感覚に近い。各エピソードは約50分で構成されており、まさにTVアニメの1話分。毎週火曜日に新エピソードが2話ずつ配信されるという形式も、この「アニメ体験」を強化している。

    開発チームは「プレイできるTV番組を作りたかった」と語っているが、まさにその理想を実現している。しかもただ「観る」だけでなく、自分の選択で物語が変わるのだから、従来のアニメでは味わえない特別な体験が得られるのだ。

    声優陣の豪華さが半端ない

    『Dispatch』のもうひとつの魅力が、圧倒的な豪華声優陣だ。主人公ロバート役には『ブレイキング・バッド』のアーロン・ポール、Blonde Blazer役にはエリン・イヴェット、Invisigal役には『The Last of Us Part II』のローラ・ベイリー、そして敵役Shroud役には『THE BATMAN』のジェフリー・ライトと、そうそうたる面々が名を連ねる。

    さらにはMatthew Mercer、Travis Willingham、jacksepticeye、MoistCr1TiKaL、Alanah Pearce、Joel Haverといった、ゲーム業界やストリーマー界隈で知られる人物も多数参加しており、ファンにはたまらないキャスティングとなっている。

    そしてこの声優陣の演技が、本当に素晴らしい。アーロン・ポールが演じるロバートは、落ちぶれた元ヒーローの疲弊感と、それでも諦めきれない情熱が滲み出ている。ローラ・ベイリーのInvisigalは皮肉屋だが脆さも感じさせ、エリン・イヴェットのBlonde Blazerは自信に満ちた外見の裏に隠された不安が垣間見える。

    こうした繊細な演技が、既述の映像クオリティと相まって、キャラクターたちが本当に生きているかのような錯覚を覚えさせる。声だけで感情が伝わってくる──それほどまでに、声優陣の仕事は見事だ。

    派遣マネジメントが意外と奥深い

    『Dispatch』のゲームプレイは大きく2つに分かれる。ひとつは会話シーンでの選択肢、そしてもうひとつがスーパーヒーローの派遣マネジメントだ。

    ゲーム中、ロサンゼルスの街を見下ろすマップ画面に切り替わり、街中で発生する緊急事態に対してZチームのメンバーを派遣する。各メンバーには力、敏捷性、知性、カリスマといったステータスがあり、事件の内容に応じて適切なメンバーを選ぶ必要がある。

    たとえば「木に登って動けなくなった猫を救出」なら敏捷性の高いメンバー、「暴れている酔っぱらいを説得」ならカリスマの高いメンバーが適任だ。しかしメンバーにはクールダウンタイムがあり、連続で派遣することはできない。さらに複数の事件が同時多発することもあり、どのメンバーをどの事件に割り当てるかという戦略的な判断が求められる。

    正直、最初は「これって単なるミニゲームでしょ?」と思っていた。しかし実際にプレイすると、この派遣マネジメントが物語と密接に結びついていることに気づく。失敗した任務はキャラクターとの関係に影響し、適切な派遣を続けることで信頼を得られる。誰をどの任務に送るか──その選択ひとつで、物語の展開が変わるのだ。

    また、任務中には通信を通じてリアルタイムでアドバイスを送る場面もあり、ここでも選択肢が登場する。「冷静に対処しろ」と伝えるか、「思い切って攻めろ」と背中を押すか──こうした些細な判断の積み重ねが、キャラクターとの絆を深めていく。

    加えて、ハッキングミニゲームも登場する。3D迷路を時間制限内に進みながら、同時に無線で流れる緊急事態の報告を聞くというマルチタスク的な緊張感があり、これがゲームにアクセントを加えている。

    エピソード配信形式の功罪

    『Dispatch』は全8エピソードで構成されており、第1・2エピソードが10月22日に配信された後、毎週火曜日に2エピソードずつ追加され、11月12日に完結する予定だ。

    このエピソード配信形式には賛否両論ある。かつてTelltaleゲームスもこの形式を採用していたが、エピソード間の待機時間が長すぎて熱が冷めてしまう問題があった。しかし『Dispatch』は週次配信という短いスパンを採用しており、しかも1回に2エピソードずつリリースされるため、熱を保ったまま物語を追える。

    実際、筆者も火曜日が待ち遠しくて仕方ない。「次はどうなるんだろう」「あの選択の結果はどう影響するのか」──こうしたワクワク感は、完全版を一気にプレイするのとは異なる特別な体験だ。まるで毎週放送されるTVシリーズを追いかけている感覚で、友人やコミュニティと「今週のエピソードどうだった?」と語り合う楽しみもある。

    ただし、短いスパンでの配信ゆえに、1エピソードあたりのプレイ時間は40〜50分程度。ボリュームを求めるプレイヤーには物足りなく感じるかもしれない。しかし全8エピソードで計6〜7時間のプレイ時間となり、しかもリプレイ性が非常に高いことを考えれば、十分なコンテンツ量と言えるだろう。

    Steam Deckでも快適にプレイ可能

    『Dispatch』はSteam Deck Verifiedに認定されており、携帯モードでも快適にプレイできる。実際、筆者もSteam Deckで何度かプレイしたが、60fpsで安定動作し、インターフェースも小さな画面に最適化されている。

    テキストサイズの調整、色覚サポート、QTE(クイックタイムイベント)の難易度設定など、アクセシビリティ機能も充実しており、幅広いプレイヤーに対応している。QTEが苦手なら完全にオフにすることも可能だ(ただし、筆者は緊張感が増すのでオンのままプレイすることをおすすめする)。

    ちなみに本作は16:10の解像度には対応していないため、Steam Deckでは若干の黒帯が表示されるが、プレイに支障はない。むしろ、寝転がりながらこの傑作を楽しめるというのは、非常にありがたい。

    完璧ではない──いくつかの粗も

    絶賛ばかりしてきたが、『Dispatch』にも改善の余地はある。まず、PC版では画面のティアリング(画面がずれて表示される現象)や、音声の同期ズレが発生することがある。V-Syncをオンにしても完全には解消されないため、今後のパッチでの改善を期待したい。

    また、派遣マネジメントのパートは楽しいものの、コントローラー操作が若干もっさりしている。マウス&キーボードでのプレイが推奨されるが、Steam Deckでプレイする際にはやや操作しづらさを感じる場面があった。

    さらに、第1・2エピソードの時点では、一部のキャラクターがあまり掘り下げられていない。Zチームには魅力的なメンバーが揃っているが、各エピソードが50分程度と短いため、全員にスポットライトが当たるわけではない。今後のエピソードでより深く描かれることを期待したい。

    とはいえ、これらは本作の魅力を損なうほどの欠点ではない。むしろ、エピソード配信が進むにつれて改善される可能性も高い。実際、第3・4エピソードではさらに物語が深まり、派遣マネジメントの重要性も増しているとのレビューもあり、今後の展開に期待が高まる。

    2025年のGOTY候補、いや確定レベルの傑作

    『Dispatch』は、元Telltaleゲームス開発陣が「選択が本当に意味を持つゲーム」を作り上げた、まさにTelltale黄金期の真の後継者だ。圧倒的な映像美、豪華声優陣の演技、奥深い派遣マネジメント、そして何よりプレイヤーの選択によって大きく変わる物語──これらすべてが高いレベルで融合している。

    Steamでの高評価、各メディアからの絶賛、そしてコミュニティでの盛り上がりを見る限り、本作は間違いなく2025年のGOTY候補に名を連ねるだろう。いや、このクオリティが最後まで維持されるなら、GOTY確定と言っても過言ではない。

    もしあなたが『The Walking Dead』や『The Wolf Among Us』の黄金期を懐かしんでいるなら、あるいは『Life is Strange』のような選択重視のゲームが好きなら、『Dispatch』は絶対にプレイすべき作品だ。週次配信という形式のおかげで、今から始めても十分にコミュニティと一緒に物語を追える

    火曜日が待ち遠しくなる──そんなゲーム体験を、ぜひあなたも味わってほしい。


    基本情報

    タイトル: Dispatch
    開発元: AdHoc Studio
    パブリッシャー: AdHoc Studio
    プラットフォーム: PC (Steam), PlayStation 5
    プレイ人数: 1人
    リリース日: 2025年10月22日(エピソード1・2)、11月12日完結予定
    ジャンル: アドベンチャー、選択型物語、ストラテジー、コメディ
    プレイ時間: 各エピソード40〜50分、全8エピソードで約6〜7時間
    価格: 3,400円(Steam)
    言語: 日本語対応
    Steam評価: 非常に好評(90%、11,000件以上)
    Steam Deck: 対応(Verified)
    難易度: 選択型のため、難易度設定なし(QTE難易度は調整可能)

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  • 歩く灯台が主人公!? Double Fineが贈る最も奇妙で美しいゲーム『Keeper』は、油絵のような世界で心を揺さぶられる唯一無二の体験だった

    歩く灯台が主人公!? Double Fineが贈る最も奇妙で美しいゲーム『Keeper』は、油絵のような世界で心を揺さぶられる唯一無二の体験だった

    Steamのストアページで初めて『Keeper』を見たときは、その奇妙なビジュアルに驚いた。なんだこの細い脚でヨロヨロ歩いている灯台は……? そして舞台はポストアポカリプス? 海鳥が相棒? 

    「……とりあえず、遊んでみるか!」

    そう思ってプレイを始めたのだが、これがもう、想像をはるかに超えた体験だったのだ。

    2025年10月17日にDouble Fine ProductionsからXbox Game Pass/Steam向けにリリースされた『Keeper』は、歩く灯台を操作して荒廃した世界を旅する、アートゲームとパズルアドベンチャーの融合作品だ。ひと言で言うなら……**「動く油絵の中に迷い込んだような、3時間の夢のような体験」**である。

    本作を手がけたのは『Psychonauts』シリーズや『Brütal Legend』で知られるDouble Fine Productions。クリエイティブディレクターは、同スタジオで20年以上アートディレクターとして活躍してきたLee Petty氏だ。彼の手による本作は、まさにDouble Fineの「奇妙だけど温かい」というDNAを受け継ぎながら、まったく新しい領域に踏み込んだ作品となっている。

    ぐらぐら歩く灯台、その操作感がクセになる!

    プレイヤーが操作するのは、細い脚で歩く灯台。最初は「赤ちゃんキリン」のようなぎこちない動きで、正直操作に戸惑った。左スティックで移動、Aボタンでダッシュ……と操作自体はシンプルなのだが、このぐらぐらした感覚が独特なのだ。

    「うわっ、転びそう!」

    なんて思いながらプレイしていたが、不思議なことに慣れてくると、この灯台の動きに愛着が湧いてくる。プレイヤーたちからは**「Lampy(ランピー)」**という愛称で呼ばれているらしく、確かにこの子(?)には不思議な魅力がある。 <image>

    そして本作の核となるのが光のビームシステムだ。右スティックで灯台の光線方向を制御し、RTボタンで「Focus Light(フォーカスライト)」を発動。集中させた光は、枯れた植物を成長させたり、古代のメカニズムを起動させたり、隠された秘密を明らかにしたりする。

    さらに相棒の海鳥 Twig(トゥイグ)もいい仕事をしてくれる。Xボタンで青く輝く場所にTwigを飛ばせば、レバーを引いたり、クランクを回したり、灯台が到達できない場所のパズルを解決してくれるのだ。

    この光とTwigを駆使したパズルは決して難しくはないが、環境と相互作用しながら世界が変化していく様子を見ているだけで、なんとも心地よい達成感を味わえる。

    油絵のような世界が動き出す──視覚体験がヤバい

    正直に言おう。『Keeper』の最大の魅力は、その圧倒的なビジュアルだ

    本作はSalvador Dali(サルバドール・ダリ)やMax Ernst(マックス・エルンスト)といったシュールレアリストの絵画にインスパイアされており、まさに**「動く油絵」**という表現がぴったりくる。草原、砂漠の町、生物発光の洞窟、菌類の森、機械都市……各ステージはどれも独特の雰囲気を持ち、移動するたびに新しい景色が広がる。

    そしてこの世界には、流木の嘴を持つ鳥や金属の殻を持つカニなど、ハイブリッド生物が生息している。どこか哀愁を感じさせる彼らの姿は、ポストアポカリプスの世界観を静かに物語っている。

    Unreal Engine 5のNaniteとLumenを使った本作のグラフィックスは、「すべての瞬間が壁に飾れる絵のよう」とまで評されている。実際、プレイ中に何度もスクリーンショットを撮りたくなる美しさだ。

    ただし……ここで注意点がある。この美麗なグラフィックスのせいで、推奨スペックがRTX 4080/Radeon RX 7900 XTという、かなり高めの設定になっているのだ。実際、Steam Deckでは快適に動作しないという報告もある。美しさには代償があるということか……。

    言葉を使わずに語る──感情を揺さぶる物語

    本作には対話もテキストもない。すべてが環境ストーリーテリングによって語られる。それでも──いや、だからこそ──プレイヤーは灯台とTwigの関係性に、深く感情移入してしまうのだ。

    毒に汚染された世界で、忘れられた灯台が目覚める。遠くに見える山頂を目指し、荒廃した大地を照らしながら進む。その過程で出会う生物たち、古代の遺跡、そして徐々に明らかになる世界の真実……。

    特に印象的なのが、時間操作のパズルだ。ある場面では、Twigが卵や骨格形態に変化する。この演出が、過去と未来、生と死、そして再生というテーマを静かに、しかし力強く訴えかけてくる。

    プレイヤーからは「灯台に恋をした」「最後のシーンで泣いた」という声も多く、筆者も……正直、エンディングでちょっとウルっときた。言葉がないからこそ、プレイヤー自身がこの旅に意味を見出し、自分だけの物語を紡ぐことができるのだ。

    日本のプレイヤーからは「照らすこと自体が哲学的テーマ」「言葉を使わずに語る深遠さ」「余韻が静かに心に残る」といった評価が寄せられている。確かに、本作は「Journey(風ノ旅ビト)」に最も近い体験と言えるかもしれない。

    簡単だけど……それでいい

    ここまで絶賛してきたが、正直に言えば本作には批判点もある。

    まずパズルが非常に簡単だ。「探索すればほぼ解決できる」レベルで、歯ごたえを求めるプレイヤーには物足りないかもしれない。また、固定カメラアングルのせいで、光線とカメラの両方を操作しなければならない場面ではやや操作が煩わしい。

    そして最大の批判点はプレイ時間の短さだ。本作は3~8時間でクリアできてしまう。価格が 4,180円なので、「短すぎる」「高い」という声も少なくない。

    でも……筆者はこう思う。

    「これでいいんだよ!」

    本作は「挑戦」や「やり込み」を目的としたゲームではない。芸術作品としての体験を提供するゲームなのだ。美術館に行って絵画を鑑賞するように、『Keeper』は短時間で完結する濃密な体験を届けてくれる。

    実際、プレイヤーからは「一気にプレイした」「手を止められなかった」という声が多数寄せられている。筆者も休日の午後、コーヒーを淹れて一気にプレイしたが、まるで素晴らしい映画を観終えたような満足感があった。

    『Keeper』は、こんな人にオススメ!

    というわけで、『Keeper』はこんな人にぜひオススメしたい:

    「Journey(風ノ旅ビト)」が好きな人 – 言葉なしの感情的ストーリーテリングが好きなら絶対にハマる

    アートゲーム愛好家 – Double Fineの奇妙で温かい世界観が存分に味わえる

    雰囲気重視のプレイヤー – 美しいビジュアルと静謐な音楽に浸りたい人に最適

    Game Pass加入者 – 発売日からGame Passで遊べるので、加入者なら迷わずプレイしよう!

    奇妙だけど、心に残る──それが『Keeper』

    最後に、本作を一言で表すなら……「奇妙だけど、落ち着く」という開発者自身の言葉がすべてを物語っている。

    歩く灯台という前例のない主人公、油絵のような美しい世界、言葉を使わない感動的な物語──すべてが独特で、すべてが心に残る。そして何より、「照らす」ことで世界を変えていくという行為そのものに、深い意味を感じさせてくれる。

    筆者は『Keeper』をプレイして、ゲームが「芸術」になり得る瞬間を目撃した気がした。

    もしあなたが「ちょっと変わったゲーム体験」を求めているなら、ぜひこの奇妙な灯台の旅に出てみてほしい。きっと、あなただけの特別な思い出になるはずだから。


    基本情報

    タイトル: Keeper
    開発元: Double Fine Productions
    パブリッシャー: Xbox Game Studios
    クリエイティブディレクター: Lee Petty
    リリース日: 2025年10月17日
    プラットフォーム: PC (Steam/Microsoft Store)、Xbox Series X|S、Xbox Cloud Gaming
    プレイ時間: 3~8時間
    難易度: 初心者向け(死なない、失敗なし)
    Steam評価: 非常に好評(90-91%)
    Metacritic: 78-82点
    価格: 4,180円
    日本語対応: ○(25言語対応)
    Game Pass: 発売日から利用可能

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  • 父から継いだ造船所で闇に立ち向かえ!『Sunken Engine』は船舶修理×ラヴクラフトホラーの異色作

    父から継いだ造船所で闇に立ち向かえ!『Sunken Engine』は船舶修理×ラヴクラフトホラーの異色作

    船の修理シミュレーション。それだけ聞けば、のどかで落ち着いたゲーム体験を想像するだろう。しかし本作、『Sunken Engine』は、そんな予想を良い意味で完全に裏切ってくれる作品だ。

    PC(Steam)向けに2025年10月16日から早期アクセスが開始された本作は、父親から継いだ造船所で船舶修理業を営みながら、ラヴクラフト作品のような不気味で超自然的な現象に立ち向かうという、一風変わったホラーシミュレーションゲームだ。

    ストアページを初めて見たとき、筆者の頭には「船の修理? ホラー? どういうこと?」という困惑があった。だが、実際にプレイしてみると、その独特な世界観と緊張感あふれるゲームプレイに完全に引き込まれてしまった。

    本作のSteam評価は87%という高評価(早期アクセス開始時)。プレイヤーレビューでは「クリエイティブで記憶に残るラヴクラフト体験」「進行の流れが素晴らしく、常に次の船を修理したくなる」といった声が寄せられている。

    日常業務に潜む闇

    ゲームの舞台は、父親の突然の死によってあなたが継いだ小さな造船所。訪れる船を修理して代金を受け取り、ビジネスを続けていく……というのが表向きの目的だ。

    しかし、この造船所がある島には何かがおかしい。修理を依頼してくる船には、単なる物理的な損傷だけでなく、暗い物語や不吉な秘密が隠されている。そして業務中、超自然的な現象に遭遇すると、プレイヤーの「正気度」が削られていくのだ。

    正気度システムこそが本作最大の特徴。精神状態が不安定になると、作業効率が落ちるだけでなく、闇の存在の注意を引いてしまう。船を修理しながら正気を保つ方法を見つけなければ、この島の真実にたどり着くことはできないだろう。

    最初は「船を修理するだけでしょ?」と高を括っていた。が、プレイしてみると、この造船所での生活は想像以上に緊張感に満ちていた。

    修理は一筋縄ではいかない

    本作の船舶修理は、ポイント・アンド・クリック形式を基本としたツールベースのインタラクションシステム。損傷した部分を見つけ、適切な工具を使って修理していく。

    一見シンプルに思えるが、各修理作業には独自のリズムがあり、慣れるまでは手間取ることも多い。さらに、修理中に奇妙な音が聞こえたり、視界の端に何かが見えたりと、常に不穏な雰囲気が漂っている。

    特に夜間になると、島の雰囲気は一変する。昼間は静かだった造船所も、夜になると得体の知れない存在が徘徊し始める。そんな中でも修理作業は続けなければならないのだ。

    収益源は修理だけじゃない

    造船所の経営が苦しくなったら、海から引き上げた貴重品を造船所裏の露店で販売することもできる。沈没船から回収した品々には、時に高値で売れるアイテムも含まれている。

    ただし、引き上げるものの中には、触れてはいけないものも混じっているかもしれない。何を売り、何を手元に置いておくべきか。その判断も、このゲームの重要な要素だ。

    修理代金と販売収益を使って、作業場の設備をアップグレードしたり、正気度を回復するためのアイテムを購入したりできる。リソース管理も本作の醍醐味の一つだ。

    早期アクセスの現状と今後の展開

    現在、本作は早期アクセス段階にあり、開発チームは頻繁にアップデートを実施している。プレイヤーからのフィードバックを基に、コントローラー対応の改善や、バグ修正、ゲームバランスの調整が継続的に行われている。

    早期アクセス期間は約6ヶ月を予定しているが、プレイヤーフィードバック次第で変動する可能性があるとのこと。

    じわじわと迫る恐怖を体験せよ

    『Sunken Engine』は、日常的な作業の中に恐怖を織り込んだ、独特なホラー体験を提供してくれる。派手なジャンプスケアではなく、じわじわと迫る不穏な雰囲気が本作の持ち味だ。

    筆者は最初、「船の修理なんて地味そう……」と思っていた。だが実際にプレイしてみると、次の船が来るのが待ち遠しくなり、そしてその船が持ち込む新たな謎に引き込まれていく。この中毒性こそが、本作最大の魅力だろう。

    ラヴクラフト作品のファンはもちろん、日常に潜む恐怖を描いた作品が好きな方、あるいは変わったシミュレーションゲームを探している方にぜひおすすめしたい。

    10月31日まで15%オフの1,020円でプレイできるこの機会に、不気味な島の造船所で父の遺産と向き合ってみてはいかがだろうか。


    基本情報

    開発: Two Nomads Studio
    パブリッシャー: PlayWay S.A.
    プラットフォーム: PC (Steam)
    早期アクセス開始日: 2025年10月16日
    プレイ時間: 現段階で5-10時間程度(完成版ではさらに拡張予定)
    難易度: 中程度(正気度管理とリソース管理が鍵)
    Steam評価: 非常に好評 (87%)
    価格: 1,200円(10月31日まで15%オフで1,020円)
    日本語対応: あり
    対応言語: 24言語対応

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  • アヒル版タルコフが世界を席巻!『エスケープ フロム ダッコフ』1週間で100万本突破の快進撃

    アヒル版タルコフが世界を席巻!『エスケープ フロム ダッコフ』1週間で100万本突破の快進撃

    可愛いアヒルで死ぬほど緊張する……なぜ?

    Steamのストアページで『エスケープ フロム ダッコフ』を初めて見たとき、筆者の頭には「なんだこれ?」という困惑と「絶対面白いやつだ!」という確信が同時に駆け巡った。

    可愛らしいアヒルたちが銃を構え、ヘルメットと防弾ベストに身を包んで戦場を駆ける……そのビジュアルだけでも十分インパクトがあるのだが、なにせタイトルが『Escape from Tarkov』(タルコフ)のパロディだ。あの緊張感MAXの脱出系シューターを、まさかアヒルでやるとは。

    2025年10月16日にリリースされた本作は、発売からわずか1週間で100万本を売り上げ、Steam同時接続数は25万人超を記録。Steamレビューは96%が好評という「圧倒的に好評」評価を獲得している。

    もはや「パロディゲーム」という枠を完全に超えた、2025年を代表するインディーゲームの誕生である。

    見た目は可愛いが、中身は本格派

    Team Sodaが開発し、Bilibili Gameがパブリッシングする『エスケープ フロム ダッコフ』は、見下ろし型視点のPvE脱出シューターだ。プレイヤーは何も持たない状態から始まり、危険に満ちた「ダッコフ市」を探索して物資を集め、拠点である地下シェルターに戻ってくることを繰り返す。

    そう、タルコフライクな「全ロスト」システムがここにもある。死亡すると、その時点で所持していたアイテムや装備はすべて失われる。このシビアさが、可愛らしいアヒルのビジュアルとのギャップを生み出し、独特の緊張感を演出しているのだ。

    筆者が最初にプレイしたとき、油断して敵アヒルの大群に囲まれて即死した。「可愛いから楽勝だろう」と完全に舐めていた。が、2回目も3回目も容赦なくやられ続け、「あれ? これ本格的なゲームでは?」と気づいた瞬間、本作への見方が180度変わった。

    絶妙な難易度調整が生む”ちょうどいい緊張感”

    本作が多くのプレイヤーを惹きつける理由の一つが、難易度を自由に変更できる点だ。タルコフのような極限の緊張感を求めるハードコアプレイヤーから、「雰囲気だけ味わいたい」というカジュアル層まで、誰もが楽しめるように設計されている。

    拠点では3段階の難易度設定がいつでも変更可能で、イージーモードなら敵の攻撃力が下がり、初心者でも安心してプレイできる。逆にハードモードでは容赦ない死が待っている。この柔軟性こそが、本作が幅広い層から支持される秘訣だ。

    実際、筆者もイージーで慣れてから徐々に難易度を上げていったのだが、このプロセスが実に楽しい。最初は「生き延びるだけで精一杯」だったのが、装備が整い、立ち回りを覚えていくと「もっと欲張れるかも?」という欲が出てくる。そして欲張りすぎて全ロストする……というのが、脱出系シューターの醍醐味だ。

    ファーミングの楽しさが止まらない

    本作の中毒性を支えているのが、充実したファーミング(育成)要素だ。ダッコフ市で集めた物資を売却してお金を稼ぎ、そのお金で拠点を拡張したり、新しい装備を購入したりする。この「少しずつ強くなっていく」感覚がたまらない。

    拠点には武器屋、防具屋、トレーニングジムなどが次々と建設され、NPCとの会話から新たなクエストも発生する。50種類以上の武器、カスタマイズ可能な銃器、スキルツリーによるキャラクター成長……RPG要素も非常に充実している。

    特に印象的だったのが、ある日レジェンダリー級の防具を拾ったこと。それまで苦戦していたエリアがサクサク進めるようになり、「装備の力ってスゴイ……!」と実感した。この「強くなった」という達成感が、また次の探索へのモチベーションになる。

    5つのマップと50時間超のコンテンツ量

    本作には5つの大型マップが用意されており、それぞれがランダム要素に富んでいる。アイテムの配置、敵の出現場所、天候、昼夜サイクルなど、毎回異なる体験ができるよう設計されている。

    クエストは膨大で、NPCとの会話から手がかりを集めてダッコフ世界の真相に迫っていく。公式によると1周で50時間以上のプレイ時間が見込まれており、やり込み要素も十分だ。

    筆者は現在20時間ほどプレイしているが、まだ3つ目のマップの途中。しかもあるレビューによると「3つ目のマップは前の2つと比べて桁違いに広くて密度が高い」とのことで、まだまだ遊び尽くせていない実感がある。

    Steam Workshopで無限の可能性

    本作はSteam Workshopに対応しており、コミュニティが作成したMODを導入できる。新しい武器、カスタムマップ、追加クエストなど、公式コンテンツだけでなくユーザー生成コンテンツでも楽しめる点が素晴らしい。

    リリースから1週間でMODも続々と登場しており、今後さらに多様な遊び方が生まれていくだろう。コミュニティの盛り上がりも本作の魅力の一つだ。

    なぜここまで爆発的にヒットしたのか?

    『エスケープ フロム ダッコフ』が驚異的な成功を収めた理由は、いくつか挙げられる。

    まず、手頃な価格設定。定価1,800円(リリース記念12%オフで1,584円)という価格は、気軽に試せる範囲だ。本家タルコフが高額であることを考えると、この価格は大きな魅力となっている。

    次に、シングルプレイ特化という点。タルコフのようなPvP要素がなく、自分のペースで遊べる。「反射神経に自信がない」「対人戦は苦手」というプレイヤーでも安心して楽しめる設計が、幅広い層から支持された理由だろう。

    そして何より、4人チームの情熱だ。Team Sodaはわずか4人の開発チームでありながら、ここまで磨き上げられた完成度の高いゲームを作り上げた。早期アクセスではなく完成品としてリリースされた点も、多くのプレイヤーから評価されている。

    加えて、中国市場での圧倒的な支持も見逃せない。Steamレビューの約3分の2が中国語ユーザーからのもので、グローバル展開に成功した好例と言えるだろう。

    タルコフを遊んだことがなくても大丈夫

    筆者自身、実は『Escape from Tarkov』を本格的にプレイしたことがなかった。それでも本作は存分に楽しめている。なぜなら、本作は「タルコフのパロディ」でありながら、独自の魅力を持った完成されたゲームだからだ。

    クエストの指示は明確でわかりやすく、マップも見やすい。タルコフで迷子になって途方に暮れるような心配はない。難易度調整の自由度も高く、初心者に優しい設計になっている。

    それでいて、脱出系シューターの緊張感、ルートの楽しさ、育成のやりがいといったコアな魅力はしっかり再現されている。まさに「良いとこ取り」の傑作だ。

    唯一の不満点:コントローラー非対応

    本作の数少ない不満点として、現時点ではコントローラーに公式対応していないことが挙げられる。Steam Deckでのプレイも可能だが、操作性に難があるとのレビューも見られる。

    ただし、Steamレビューには「コントローラー対応を切望する」声が多数寄せられており、開発チームも認識しているはずだ。今後のアップデートに期待したい。

    2025年を代表するインディーゲーム

    『エスケープ フロム ダッコフ』は、パロディという枠を超えて、一つのジャンルを確立した作品だ。可愛らしいビジュアルと本格的なゲームプレイ、シビアさとカジュアルさの絶妙なバランス、そして圧倒的なコンテンツ量。

    「アヒル版タルコフ」という一見ふざけたコンセプトが、ここまで真剣に作り込まれた結果、世界中のプレイヤーを虜にした。これこそがインディーゲームの持つ可能性であり、大手スタジオにはない自由な発想の力だろう。

    筆者はまだ半分も遊び尽くしていないが、すでに「今年のベストインディーゲーム候補」として確信している。脱出系シューターに興味がある人はもちろん、「なんか面白そう」と感じた人は、ぜひ一度プレイしてみてほしい。

    可愛いアヒルたちが、あなたを地獄のような緊張感あふれる冒険へと誘うだろう。


    基本情報

    タイトル: エスケープ フロム ダッコフ(Escape From Duckov)
    開発: Team Soda
    販売: Bilibili Game
    配信日: 2025年10月16日
    対応プラットフォーム: Steam, Epic Games Store, Mac OS Store
    言語: 日本語対応
    定価: 1,800円(税込)※現在12%オフで1,584円
    ジャンル: PvE脱出シューター、アクション、サバイバル、基地建設
    プレイ時間: 50時間以上(1周クリア目安)

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  • 異次元を彷徨うディーゼルパンクな暗殺者『Mohrta』。DOOMエンジンが生み出した奇妙で美しい悪夢のような世界

    異次元を彷徨うディーゼルパンクな暗殺者『Mohrta』。DOOMエンジンが生み出した奇妙で美しい悪夢のような世界

    最初に見た瞬間、完全に困惑した

    Steam のストアページで『Mohrta』を初めて見たとき、筆者の頭は混乱でいっぱいだった。ノンリニア FPS アドベンチャー、5つの異次元、ソウルライク……そして驚くべきことに、これら全てが初代『DOOM』のエンジン「GZDoom」で作られているという。

    「レトロなエンジンでそんなことできるの?」という素朴な疑問とともに、Steam評価 89% という驚異的な数字に背中を押されてプレイボタンを押した筆者。しかしその後待っていたのは、想像をはるかに超える奇妙で美しい体験だった。

    まるで悪夢の中を歩いているような感覚

    『Mohrta』をプレイしていると、夢の中を歩いているような不思議な感覚に襲われる。それも、ちょっと悪夢じみた奇妙な夢だ。

    プレイヤーが操作するのは、どこかディーゼルパンクな雰囲気を漂わせるサイボーグのような暗殺者。金属マスクに身を包んだその姿は、映画『マッドゴッド』の登場人物と『人狼 JIN-ROH』の装甲兵を足して2で割ったような、独特の重厚感がある。彼(彼女?)は同じ戦士カーストの裏切り者を始末するため、形而上学的な次元の最果てに送り込まれたのだ。

    しかし、この設定だけ聞くとありがちなSFアクションに思えるかもしれない。実際にプレイしてみると、そんな先入観は開始5分で粉々に砕かれる。

    肩に止まるハゲタカと踊る人形

    本作で最初に筆者を驚かせたのは、懐中電灯の代わりに肩の上に止まっているハゲタカのコンパニオンだった。暗闇でライトボタンを押すと、ハゲタカが不機嫌そうに鳴きながら羽をばたつかせ、なぜか生物発光で周囲を照らしてくれる。

    回復アイテムも一般的なポーションではない。代わりに、手のひらサイズの愛らしい生きた人形の友達がいる。体力が減った時にこの人形をぎゅっと握ると、彼女が小さなダンスを踊って体力を回復してくれるのだ。武器のアップグレードには、世界に散らばっている他の人形たちのボタンの目玉を集める必要がある。

    「なんだこれは……」と思わず呟いてしまったが、この奇妙さこそが『Mohrta』の魅力なのだ。

    『デモンズソウル』のハブエリアを彷彿とさせる拠点

    本作の真の魅力が開花するのは、メインハブエリアに到着してからだ。ここは時空を超えた大都市の一角にある、バザールと地下鉄駅を合体させたような空間で、『スター・ウォーズ』のモス・アイズリー酒場を『モロウィンド』のヴィヴェクやアルド=ルーンのような屋内都市区域で再現したような雰囲気がある。

    ローブを着た異形のエイリアンたちが群衆として行き交い、はるかに大きな世界があることを感じさせてくれる。そしてここで出会うショップの店主たちが、また絶妙なキャラクター性を発揮している。

    マナの強化を担当するのは、フェズ帽をかぶって水パイプを吸っている高慢ちきな青緑色のライオン。武器のアップグレードは、実は小さないたずら好きな小鬼が操縦している巨大な蒸気ゴーレムの鍛冶屋が担当する。どちらも少ない台詞ながら、強烈な印象を残してくれる。

    5つの次元、それぞれが異なる挑戦

    『Mohrta』の最大の特徴は、5つの巨大な次元を好きな順番で攻略できることだ。各次元はテーマが大きく異なり、砂漠の峡谷村から始まって、毒々しい沼地、機械仕掛けの要塞、氷に覆われた廃墟など、まったく違う雰囲気の世界が待っている。

    特筆すべきは、各次元のボスたちが単純な悪役ではないことだ。彼らはみな悲劇的な背景を持つキャラクターであり、主人公と同じ戦士カーストに所属していた者たちでもある。戦闘前の演出や戦闘中の台詞から、彼らの動機や悲しみが伝わってくるため、倒すときには少し複雑な気持ちになってしまう。

    DOOMエンジンの可能性を押し広げる技術力

    『Mohrta』を語る上で外せないのが、その圧倒的な技術力だ。1993年のDOOMエンジンをベースにした「GZDoom」で、よくここまでの表現ができるものだと感嘆せざるを得ない。

    レベルデザインは精巧で、2.5Dとは思えないほど立体的な空間構成を実現している。ローポリゴンながらも非常にスタイリッシュなアートスタイルで、PS1時代のゲームを現代の技術で蘇らせたような独特の魅力がある。

    敵キャラクターも50種類以上と豊富で、それぞれが独特の動きとビジュアルを持っている。20体を超えるボスたちも、どれも印象的なデザインと攻撃パターンを持っており、記憶に残る戦いを繰り広げてくれる。

    武器カスタマイズの深さに唸る

    本作のもう一つの魅力が、武器システムの奥深さだ。各武器には複数の機能が備わっており、アップグレードによってさらに能力を拡張できる。プレイスタイルに合わせたカスタムロードアウトを組むことで、まったく異なる戦闘体験が楽しめる。

    筆者は最初、近接武器中心で進めていたが、途中で拾った強力な遠距離武器に切り替えてプレイスタイルを大幅に変更した。武器の付け替えはいつでも可能なので、状況や気分に応じて戦術を変えられるのが嬉しい。

    ノンリニア進行が生み出す自由度

    『Mohrta』では、チュートリアル的な最初のエリアを除けば、どの順番で次元を攻略するかは完全に自由だ。この自由度が、プレイヤーごとに異なる体験を生み出している。

    筆者は比較的易しいと思われる沼地エリアから始めたが、友人は最も困難とされる機械要塞に最初に挑戦したという。どちらのアプローチも正解で、それぞれが自分だけの『Mohrta』体験を作り上げることができる。

    また、一度クリアした後も、異なる順番で攻略することで新しい発見があるため、リプレイ性も非常に高い。

    ただし、言語の壁は要注意

    一点だけ注意が必要なのは、本作が日本語に対応していないことだ。ストーリーやキャラクターの台詞、アイテムの説明などはすべて英語となっている。

    幸い、ゲームプレイ自体は直感的で、英語が得意でなくても基本的な進行には支障がない。しかし、豊かな世界観やキャラクターの背景を完全に理解するには、ある程度の英語力が必要になる。

    それでも、視覚的なインパクトとゲームプレイの面白さは言語の壁を越えて伝わってくる。英語に不安がある方も、辞書を片手にゆっくりとプレイしてみる価値は十分にある。

    2,300円という価格設定も魅力的

    2025年10月14日にリリースされたばかりの『Mohrta』は、現在Steam で2,300円で購入できる。この価格帯で、これほどまでに作り込まれた世界観と、30時間は楽しめるボリュームを提供してくれるのは、非常にコストパフォーマンスが高い。

    開発は『Vomitoreum』で知られるScumheadとアーティストのOsiolが担当。彼らの独特のアートスタイルが、本作の奇妙で美しい世界観を支えている。

    まとめ:異次元体験へのパスポート

    『Mohrta』は、間違いなく2025年のインディーゲーム界における隠れた傑作の一つだ。ノンリニアFPS、ソウルライク、異世界探索といった要素を独特のセンスで融合させ、他では味わえない体験を提供してくれる。

    言語の壁や独特すぎる世界観で敬遠される可能性もあるが、それを乗り越える価値は十分にある。レトロなゲームエンジンで現代的な表現に挑戦した技術力、想像力豊かなアートワーク、そして自由度の高いゲームプレイ。これら全てが組み合わさって、忘れられない体験を作り上げている。

    奇妙で美しい悪夢のような世界を彷徨いたい方、ユニークなゲーム体験を求める方には、心からお勧めしたい一作だ。

    基本情報

    タイトル: Mohrta
    開発者: Scumhead, Osiol
    パブリッシャー: Scumhead
    リリース日: 2025年10月14日
    プラットフォーム: PC (Steam)
    価格: 2,300円
    言語: 英語のみ
    ジャンル: FPS, アドベンチャー, インディー
    プレイ時間: 約20-40時間
    Steam評価: 非常に好評 (89%)

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