
本作はポール・バーホーベン監督の傑作SF映画『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)の世界観を完璧に再現しつつ、映画の持つ風刺性をゲームという形式で新たな次元へと昇華させた傑作レトロFPSなのだ。
開発はブーマーシューター(90年代風FPS)『Warhammer 40,000: Boltgun』で高い評価を得たイギリスのAuroch Digital。パブリッシャーはDotemuとGame Source Entertainmentが担当している。
「連邦公認プロパガンダゲーム」という狂気の設定
本作の最大の特徴は、ゲーム自体が作品世界内に存在する「連邦政府公認のリクルートツール」として設定されている点だ。オープニングでは、映画でおなじみのジョニー・リコ将軍(俳優キャスパー・ヴァン・ディーンが本人役で出演!)が「このゲームはFedDev(連邦開発局)が制作した訓練シミュレーターだ」と語りかけてくる。

つまりプレイヤーは「『スターシップ・トゥルーパーズ』の世界で暮らす子供が、軍隊入隊を促すためのゲームをプレイしている」という入れ子構造の中に放り込まれるわけだ。この設定がどれほど皮肉に満ちているか、映画を知る人なら理解できるだろう。
バーホーベン監督の原作映画は、表面的には「虫を倒す痛快アクション」を装いつつ、その実態はファシズムと軍国主義を徹底的に風刺したブラックコメディだった。本作も同じ構造を持ち、プレイすればするほど「これ、本当に子供に遊ばせていいの?」という不穏な空気が漂ってくる。実に見事だ。
レトロなのに現代的。絶妙なバランスのゲームデザイン
ゲームジャンルとしては、90年代後半のFPSを彷彿とさせる「ブーマーシューター」スタイル。ドット絵風の粗いテクスチャ、2Dスプライトで描かれる味方兵士、ヘルスパックでの回復、そしてリロードの概念がない強力な火器の数々。『DOOM』や『QUAKE』の時代を知る人間には懐かしく、若い世代には新鮮に映るだろう。

ただし本作は単なる懐古主義ではない。マップデザインは現代的なオープンエンド構造で、広大なフィールドに散らばった複数の目標を好きな順番で攻略できる自由度がある。これは『Warhammer 40,000: Boltgun』で培われたノウハウが活きている部分だ。
戦闘システムも秀逸で、通常の銃撃戦に加えて軌道爆撃や核兵器の要請が可能。画面を埋め尽くすバグの大群に対して、容赦なく大量破壊兵器をぶち込む快感は格別だ。「過剰すぎる武力行使? いいや、これは必要な措置だ!」という連邦のロジックを体現したかのようなゲームプレイである。
主人公は新キャラクター、しかしストーリーは映画の正統続編
プレイヤーが操作するのは、機動歩兵のサマンサ・”サミー”・ディーツ少佐(演:シャーロッタ・モーリン)。彼女の戦歴を追体験する形で、全8つのミッションが展開される。

ストーリーは映画『スターシップ・トゥルーパーズ』の後日談として構成されており、クレンダス星での大敗北から復讐の物語へと続いていく。各ミッション間にはFMV(実写映像)のカットシーンが挿入され、サミーの表情や語り口から血に飢えた新兵が、戦場で心に深い傷を負っていく過程が描かれる。
このFMVパートの演出が素晴らしい。映画でおなじみのプロパガンダ映像風の演出で、連邦の「輝かしい勝利」を謳い上げるのだが、サミー本人の表情は明らかに疲弊しきっている。「本当はこんなに簡単じゃなかったんだろうな」と観客(プレイヤー)が察してしまう作りになっているのだ。
「バグになって戦う」モードは賛否両論
本作にはキャンペーンとは別に、アラクニド(バグ)側を操作して人類を殺戮するモードが存在する。これは『エイリアンVSプレデター』シリーズを思わせる試みだが、正直なところ評価は分かれている。
海外レビューサイトThe JimQuisitionは「バグ側のゲームプレイが未完成に感じられる」と指摘しており、筆者も同意見だ。本来ならワーカー、ホッパー、タンカーといったおなじみのバグたちを操作したかったのだが、実際に用意されているのは「アサシン・バグ」という映画には登場しない独自種のみ。

操作感も微妙で、機動歩兵側のプレイに比べると明らかに練り込みが甘い。レビュアーたちが「エビみたいなダンゴムシ」と酷評するのも無理はない。このモードに関しては、今後のアップデートでの改善を期待したいところだ。
開発スタジオAuroch Digitalの底力
本作を手掛けたAuroch Digitalは、イギリス・ブリストルに拠点を置く約100名規模の開発スタジオ。2010年設立で、元々はボードゲームのデジタル化や戦略ゲームを得意としていたが、2021年にSumo Groupに買収された後、『Warhammer 40,000: Boltgun』で大きな成功を収めた。

同スタジオの強みは「レトロスタイルの外見と現代的なゲームデザインの融合」にある。単なる懐古主義ではなく、古き良き時代のゲーム体験を現代の文脈で再構築する手腕は見事だ。
さらに興味深いのは、Auroch Digitalが「リモートワーク中心のスタジオ」として運営されている点。イギリス全土から才能を集め、多様性を重視した採用方針を掲げている。この柔軟な体制が、短期間で質の高いタイトルを連続リリースする原動力になっているのだろう。
Steam評価94%「Very Positive」の理由

2026年3月16日にリリースされた本作は、Steam上で811件のレビュー中94%が好評という驚異的な数字を記録している(記事執筆時点)。Metacriticでも各プラットフォームで70点台後半から80点という高評価だ。
海外メディアの評価を見ると、以下のような点が絶賛されている:
CGMagazineは9/10点をつけ、「短いが忘れられない体験。ユーモアがレトロシューターの限界を超えている」と評価。Way Too Many Gamesも9/10点で「長年プレイした中で最も称賛に値するライセンスゲーム」と絶賛している。
一方で批判的な意見も存在する。The Sixth Axisは「プレゼンテーションは素晴らしいが、バグモードの出来が悪く、『Boltgun』と比べてビジュアルが一段劣る」と指摘。筆者も確かにグラフィック面では前作に及ばないと感じた部分はあるが、それを補って余りあるストーリーテリングと風刺性の高さが本作にはある。
プレイ時間は短め、だが濃密な体験
キャンペーンのボリュームは8ミッション、プレイ時間にして6~10時間程度とやや短め。しかし各ミッションには隠し要素や複数のエンディングが用意されており、やり込み要素も存在する。
「もっと長く遊びたい」という声も理解できるが、逆に言えば余分な水増しが一切ない、研ぎ澄まされた体験とも言える。昨今のオープンワールドゲームに見られるような「やることリストの消化作業」とは対極にある、古き良きゲーム体験だ。
日本語対応は?
本作は日本語テキストに対応している。ただし音声は英語のみで、字幕での対応となる。映画『スターシップ・トゥルーパーズ』の日本語吹替版に慣れ親しんだ人には少し残念かもしれないが、原作映画のキャスパー・ヴァン・ディーンが本人役で出演している以上、英語音声で楽しむのが正しい姿だろう。

テキスト翻訳の質も悪くなく、ストーリーを追うのに支障はない。ただし一部の軍事用語や皮肉めいた表現は、英語で楽しんだ方がニュアンスが伝わるかもしれない。
『Helldivers 2』との比較は避けられないが…
本作を語る上で避けて通れないのが、2024年に大ヒットしたCo-opシューター『Helldivers 2』の存在だ。同作も『スターシップ・トゥルーパーズ』から強い影響を受けており、「バグを倒す協力シューター」という点では完全に被っている。

しかし両者は明確に異なるゲーム体験を提供している。『Helldivers 2』がマルチプレイ前提のライブサービス型ゲームなのに対し、本作はシングルプレイに特化した一本道のストーリー体験だ。どちらが優れているという話ではなく、単純に目指している方向性が違う。
COGconnected誌が「『Helldivers 2』キラーではないが、十分に差別化されている」と評したのは的を射ている。レトロFPSの枠組みで風刺を描くという試みは、本作独自のものだ。
欠点もある。でも、それでも遊ぶ価値がある
正直に言えば、本作には改善の余地がある部分も多い。前述のバグモードの未完成感に加え、マルチプレイが存在しないのも残念だ。『スターシップ・トゥルーパーズ』の世界観なら、分隊制のCo-opモードがあれば完璧だっただろう。
また、AI味方兵士が驚くほど無能で、プレイヤーの射線に平気で飛び込んでくる。これは意図的な演出(「無能な兵士が大量に死ぬ」という原作再現)の可能性もあるが、フレンドリーファイアでチームキルしまくる状況はやや興ざめだ。

それでも、である。これほど原作への愛と理解に満ちたライセンスゲームは滅多にない。映画公開から約30年を経て、ようやく「真の『スターシップ・トゥルーパーズ』ゲーム」が登場したと言っても過言ではない。
90年代FPSの手触り、B級SF映画のチープな魅力、そして現代社会への鋭い風刺。これらすべてが絶妙なバランスで配合された本作は、「ゲームでしか表現できない風刺」の一つの到達点だと筆者は考えている。
基本情報
開発: Auroch Digital
販売: Dotemu / Game Source Entertainment
リリース日: 2026年3月16日
価格: 2,800円(Steam)
プラットフォーム: PC(Steam, GOG.com)
プレイ人数: 1人
言語: 日本語テキスト対応(音声は英語のみ)
ジャンル: アクション, FPS, レトロシューター, ブーマーシューター
Steam評価: Very Positive(811件中94%が好評) <image>
購入リンク
Steam: https://store.steampowered.com/app/2321780/Starship_Troopers_Ultimate_Bug_War/
GOG.com: https://www.gog.com/en/game/starship_troopers_ultimate_bug_war
公式リンク
公式サイト: https://www.dotemu.com/games/starship-troopers-ultimate-bug-war/
X (Twitter): https://x.com/UltimateBugWar
YouTube: https://www.youtube.com/@Dotemuofficial/featured






















































































