カテゴリー: アクション

  • 「映画の宣伝ゲーム」が本気すぎて笑えない。『Starship Troopers: Ultimate Bug War!』は風刺とB級愛に満ちたレトロFPSだ

    「映画の宣伝ゲーム」が本気すぎて笑えない。『Starship Troopers: Ultimate Bug War!』は風刺とB級愛に満ちたレトロFPSだ

    本作はポール・バーホーベン監督の傑作SF映画『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)の世界観を完璧に再現しつつ、映画の持つ風刺性をゲームという形式で新たな次元へと昇華させた傑作レトロFPSなのだ。

    開発はブーマーシューター(90年代風FPS)『Warhammer 40,000: Boltgun』で高い評価を得たイギリスのAuroch Digital。パブリッシャーはDotemuとGame Source Entertainmentが担当している。

    「連邦公認プロパガンダゲーム」という狂気の設定

    本作の最大の特徴は、ゲーム自体が作品世界内に存在する「連邦政府公認のリクルートツール」として設定されている点だ。オープニングでは、映画でおなじみのジョニー・リコ将軍(俳優キャスパー・ヴァン・ディーンが本人役で出演!)が「このゲームはFedDev(連邦開発局)が制作した訓練シミュレーターだ」と語りかけてくる。

    つまりプレイヤーは「『スターシップ・トゥルーパーズ』の世界で暮らす子供が、軍隊入隊を促すためのゲームをプレイしている」という入れ子構造の中に放り込まれるわけだ。この設定がどれほど皮肉に満ちているか、映画を知る人なら理解できるだろう。

    バーホーベン監督の原作映画は、表面的には「虫を倒す痛快アクション」を装いつつ、その実態はファシズムと軍国主義を徹底的に風刺したブラックコメディだった。本作も同じ構造を持ち、プレイすればするほど「これ、本当に子供に遊ばせていいの?」という不穏な空気が漂ってくる。実に見事だ。

    レトロなのに現代的。絶妙なバランスのゲームデザイン

    ゲームジャンルとしては、90年代後半のFPSを彷彿とさせる「ブーマーシューター」スタイル。ドット絵風の粗いテクスチャ、2Dスプライトで描かれる味方兵士、ヘルスパックでの回復、そしてリロードの概念がない強力な火器の数々。『DOOM』や『QUAKE』の時代を知る人間には懐かしく、若い世代には新鮮に映るだろう。

    ただし本作は単なる懐古主義ではない。マップデザインは現代的なオープンエンド構造で、広大なフィールドに散らばった複数の目標を好きな順番で攻略できる自由度がある。これは『Warhammer 40,000: Boltgun』で培われたノウハウが活きている部分だ。

    戦闘システムも秀逸で、通常の銃撃戦に加えて軌道爆撃や核兵器の要請が可能。画面を埋め尽くすバグの大群に対して、容赦なく大量破壊兵器をぶち込む快感は格別だ。「過剰すぎる武力行使? いいや、これは必要な措置だ!」という連邦のロジックを体現したかのようなゲームプレイである。

    主人公は新キャラクター、しかしストーリーは映画の正統続編

    プレイヤーが操作するのは、機動歩兵のサマンサ・”サミー”・ディーツ少佐(演:シャーロッタ・モーリン)。彼女の戦歴を追体験する形で、全8つのミッションが展開される。

    ストーリーは映画『スターシップ・トゥルーパーズ』の後日談として構成されており、クレンダス星での大敗北から復讐の物語へと続いていく。各ミッション間にはFMV(実写映像)のカットシーンが挿入され、サミーの表情や語り口から血に飢えた新兵が、戦場で心に深い傷を負っていく過程が描かれる。

    このFMVパートの演出が素晴らしい。映画でおなじみのプロパガンダ映像風の演出で、連邦の「輝かしい勝利」を謳い上げるのだが、サミー本人の表情は明らかに疲弊しきっている。「本当はこんなに簡単じゃなかったんだろうな」と観客(プレイヤー)が察してしまう作りになっているのだ。

    「バグになって戦う」モードは賛否両論

    本作にはキャンペーンとは別に、アラクニド(バグ)側を操作して人類を殺戮するモードが存在する。これは『エイリアンVSプレデター』シリーズを思わせる試みだが、正直なところ評価は分かれている。

    海外レビューサイトThe JimQuisitionは「バグ側のゲームプレイが未完成に感じられる」と指摘しており、筆者も同意見だ。本来ならワーカー、ホッパー、タンカーといったおなじみのバグたちを操作したかったのだが、実際に用意されているのは「アサシン・バグ」という映画には登場しない独自種のみ。

    操作感も微妙で、機動歩兵側のプレイに比べると明らかに練り込みが甘い。レビュアーたちが「エビみたいなダンゴムシ」と酷評するのも無理はない。このモードに関しては、今後のアップデートでの改善を期待したいところだ。

    開発スタジオAuroch Digitalの底力

    本作を手掛けたAuroch Digitalは、イギリス・ブリストルに拠点を置く約100名規模の開発スタジオ。2010年設立で、元々はボードゲームのデジタル化や戦略ゲームを得意としていたが、2021年にSumo Groupに買収された後、『Warhammer 40,000: Boltgun』で大きな成功を収めた。

    同スタジオの強みは「レトロスタイルの外見と現代的なゲームデザインの融合」にある。単なる懐古主義ではなく、古き良き時代のゲーム体験を現代の文脈で再構築する手腕は見事だ。

    さらに興味深いのは、Auroch Digitalが「リモートワーク中心のスタジオ」として運営されている点。イギリス全土から才能を集め、多様性を重視した採用方針を掲げている。この柔軟な体制が、短期間で質の高いタイトルを連続リリースする原動力になっているのだろう。

    Steam評価94%「Very Positive」の理由

    2026年3月16日にリリースされた本作は、Steam上で811件のレビュー中94%が好評という驚異的な数字を記録している(記事執筆時点)。Metacriticでも各プラットフォームで70点台後半から80点という高評価だ。

    海外メディアの評価を見ると、以下のような点が絶賛されている:

    CGMagazineは9/10点をつけ、「短いが忘れられない体験。ユーモアがレトロシューターの限界を超えている」と評価。Way Too Many Gamesも9/10点で「長年プレイした中で最も称賛に値するライセンスゲーム」と絶賛している。

    一方で批判的な意見も存在する。The Sixth Axisは「プレゼンテーションは素晴らしいが、バグモードの出来が悪く、『Boltgun』と比べてビジュアルが一段劣る」と指摘。筆者も確かにグラフィック面では前作に及ばないと感じた部分はあるが、それを補って余りあるストーリーテリングと風刺性の高さが本作にはある。

    プレイ時間は短め、だが濃密な体験

    キャンペーンのボリュームは8ミッション、プレイ時間にして6~10時間程度とやや短め。しかし各ミッションには隠し要素や複数のエンディングが用意されており、やり込み要素も存在する。

    「もっと長く遊びたい」という声も理解できるが、逆に言えば余分な水増しが一切ない、研ぎ澄まされた体験とも言える。昨今のオープンワールドゲームに見られるような「やることリストの消化作業」とは対極にある、古き良きゲーム体験だ。

    日本語対応は?

    本作は日本語テキストに対応している。ただし音声は英語のみで、字幕での対応となる。映画『スターシップ・トゥルーパーズ』の日本語吹替版に慣れ親しんだ人には少し残念かもしれないが、原作映画のキャスパー・ヴァン・ディーンが本人役で出演している以上、英語音声で楽しむのが正しい姿だろう。

    テキスト翻訳の質も悪くなく、ストーリーを追うのに支障はない。ただし一部の軍事用語や皮肉めいた表現は、英語で楽しんだ方がニュアンスが伝わるかもしれない。

    『Helldivers 2』との比較は避けられないが…

    本作を語る上で避けて通れないのが、2024年に大ヒットしたCo-opシューター『Helldivers 2』の存在だ。同作も『スターシップ・トゥルーパーズ』から強い影響を受けており、「バグを倒す協力シューター」という点では完全に被っている。

    しかし両者は明確に異なるゲーム体験を提供している。『Helldivers 2』がマルチプレイ前提のライブサービス型ゲームなのに対し、本作はシングルプレイに特化した一本道のストーリー体験だ。どちらが優れているという話ではなく、単純に目指している方向性が違う。

    COGconnected誌が「『Helldivers 2』キラーではないが、十分に差別化されている」と評したのは的を射ている。レトロFPSの枠組みで風刺を描くという試みは、本作独自のものだ。

    欠点もある。でも、それでも遊ぶ価値がある

    正直に言えば、本作には改善の余地がある部分も多い。前述のバグモードの未完成感に加え、マルチプレイが存在しないのも残念だ。『スターシップ・トゥルーパーズ』の世界観なら、分隊制のCo-opモードがあれば完璧だっただろう。

    また、AI味方兵士が驚くほど無能で、プレイヤーの射線に平気で飛び込んでくる。これは意図的な演出(「無能な兵士が大量に死ぬ」という原作再現)の可能性もあるが、フレンドリーファイアでチームキルしまくる状況はやや興ざめだ。

    それでも、である。これほど原作への愛と理解に満ちたライセンスゲームは滅多にない。映画公開から約30年を経て、ようやく「真の『スターシップ・トゥルーパーズ』ゲーム」が登場したと言っても過言ではない。

    90年代FPSの手触り、B級SF映画のチープな魅力、そして現代社会への鋭い風刺。これらすべてが絶妙なバランスで配合された本作は、「ゲームでしか表現できない風刺」の一つの到達点だと筆者は考えている。

    基本情報

    開発: Auroch Digital
    販売: Dotemu / Game Source Entertainment
    リリース日: 2026年3月16日
    価格: 2,800円(Steam)
    プラットフォーム: PC(Steam, GOG.com)
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語テキスト対応(音声は英語のみ)
    ジャンル: アクション, FPS, レトロシューター, ブーマーシューター
    Steam評価: Very Positive(811件中94%が好評) <image>

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/2321780/Starship_Troopers_Ultimate_Bug_War/
    GOG.com: https://www.gog.com/en/game/starship_troopers_ultimate_bug_war

    公式リンク

    公式サイト: https://www.dotemu.com/games/starship-troopers-ultimate-bug-war/
    X (Twitter): https://x.com/UltimateBugWar
    YouTube: https://www.youtube.com/@Dotemuofficial/featured

  • 武器クラフトこそがすべて! ウクライナ発の本格派バレットヘル『Grind Survivors』

    武器クラフトこそがすべて! ウクライナ発の本格派バレットヘル『Grind Survivors』

    2026年3月16日にリリースされたこの作品は、ウクライナのPushka Studiosが開発した、本気の「グラインド」を求めるプレイヤーのためのバレットヘル・ローグライトだ。タイトルに偽りなし。このゲームは文字通り、武器をひたすら「研ぎ澄ます」ことに特化している。

    地獄の鍛冶場「The Forge」が生み出す無限の可能性

    本作の最大の特徴は「The Forge(鍛冶場)」と呼ばれる武器クラフトシステムだ。これが、同ジャンルの他のゲームと一線を画す要素となっている。

    『Vampire Survivors』系のゲームでは、ラン中に拾ったアップグレードでビルドが完成する。しかし『Grind Survivors』では、ランの外で武器そのものを作り込むことができる。リボルバー、ショットガン、デュアルSMG、レールガン、そしてテスラガンなど8種類の武器タイプがあり、それぞれにコモンからレジェンダリーまでの5段階のレアリティが存在する。

    The Forgeでは以下の4つのシステムが使える:

    Infuse(融合): 同じタイプの武器5つを組み合わせて、より高いレアリティの武器を生成。5つの武器すべてのステータスとアフィックス(特殊効果)を引き継ぐため、運と戦略次第でとんでもない性能の武器が生まれる。

    Improve(強化): Ash(灰)を消費して武器のダメージとクリティカルダメージを強化。ただし、強化レベルが上がるごとに失敗率も上昇し、失敗すると今までの強化がすべて水の泡に。このギャンブル要素が、プレイヤーの心臓をバクバクさせる。

    Reforge(再鍛造): 武器のステータスを再ロール。理想のビルドを目指すなら避けては通れない道だが、これもまたギャンブル。何度もリロールしていると、気づけばAshが底をつく。

    Recycle(リサイクル): いらない武器をAshに変換。序盤は全然足りないので、レア度の低い武器はガンガンリサイクルすることになる。

    筆者がプレイして最も興奮したのは、Improveシステムだ。+14まで強化した愛用のリボルバーを+15にしようとボタンに手をかけたとき、失敗率75%の文字が目に入った。「やめておくべきか……?」と一瞬迷ったが、結局ポチッと。

    成功。

    その瞬間の快感は、まさにギャンブルで勝ったときのそれ。このスリルがたまらない。

    コミックブック調のビジュアルと完璧な最適化

    ビジュアル面でも『Grind Survivors』は一級品だ。コミックブック調のアートスタイルは、ゴア表現(血しぶきや悪魔の四肢切断)がありながらもカートゥーンライクで、不快感を与えない絶妙なバランスになっている。

    開発元のPushka Studiosはこれまでポーティング(移植)作業を中心に手掛けてきたスタジオで、『Spider Heck』や『Phantom Abyss』などの移植実績がある。その技術力は本作にも如実に表れており、最適化が驚くほど完璧だ。

    レビューを見ても「フレームドロップがまったくない」「何百体の敵に囲まれてもスムーズ」との声が多数。筆者も実際にプレイして、画面が敵の群れで埋め尽くされる状況でも一度もカクつきを感じなかった。Steam Deckでもプレイ可能だが、高難易度になると負荷が高くなるとの報告もある。

    グラインド、グラインド、そしてグラインド

    しかし、本作は決して万人向けではない。タイトルが『Grind Survivors』である以上、グラインドは避けられない。

    本作には3つのバイオーム(焦土と化した都市、燃える森、腐敗した荒野)があり、それぞれに5段階の難易度が設定されている。つまり、同じマップを何度も何度もプレイして、徐々に難易度を上げていく構造だ。

    「同じマップ? 飽きるでしょ」と思うかもしれない。その通り、実際に飽きる。レビューでも「3つのバイオームは単なる色違い」「敵のバリエーションが少ない」という指摘が多い。

    だが、それでもプレイし続けてしまうのは、The Forgeの魔力だ。「次のランでレジェンダリーが手に入るかもしれない」「この武器を+15まで強化できたら最強になれる」——そんな期待が、プレイヤーを画面に釘付けにする。

    筆者も「あと1ラン」「あと1ラン」と繰り返しているうちに、気づけば5時間が経過していた。これぞまさにハクスラの本質。

    バランス問題と今後のアップデート

    現時点での最大の問題は、武器バランスだ。特にテスラガン(電撃銃)が強すぎて、他の武器の存在意義が問われるレベル。レビューでも「テスラガンがほぼ必須」との声が多数上がっている。

    また、スキルツリーが「地味すぎる」との批判もある。単なる数値上昇がメインで、ゲームプレイを大きく変えるような派手なスキルがない。これは確かに物足りなさを感じる部分だ。

    ただし、開発元のPushka Studiosはコミュニティの声に耳を傾けており、今後のアップデートでバランス調整が期待できる。ウクライナという厳しい環境下で開発を続けているチームだけに、応援したくなるのも事実だ。

    34種類のルーンと4人のキャラクター

    メタプログレッション(永続的な強化要素)も充実している。

    Hell Dust(地獄の塵)を使ってスキルツリーを強化し、Ashで武器をアップグレード。さらに、34種類のルーン(装備可能なパッシブバフ)をアンロックすることで、ビルドの幅が大きく広がる。

    キャラクターは4人いて、それぞれ異なるパッシブとアクティブ能力を持つ:

    • Cascade: リコシェット(跳弾)特化
    • Solara: アビリティクールダウンDPS特化
    • Orfeo: Ash獲得サポート
    • Vex: 冷気による群衆コントロール

    特にOrfeoはAsh稼ぎに最適で、武器クラフトを加速させたい人にオススメだ。

    ウクライナの情熱が生んだインディーゲーム

    Pushka Studiosは、ウクライナのドニプロを拠点とする小規模なスタジオだ。『Grind Survivors』は彼らにとって初のオリジナルタイトルであり、これまでの移植作業で培った技術力をすべて注ぎ込んだ渾身の一作となっている。

    本作には「Ukraine Supporter Pack」というDLCも用意されており、売上の一部がウクライナ支援財団に寄付される仕組みになっている。ゲームを楽しみながら支援もできる——これ以上に素晴らしいことがあるだろうか。

    Steamでの評価はMostly Positive(72%)。675件のレビューのうち、賛否が分かれているのは事実だが、「ハマる人はとことんハマる」タイプのゲームだと言える。実際、筆者もその一人だ。

    基本情報

    開発: Pushka Studios
    販売: Assemble Entertainment
    リリース日: 2026年3月16日
    価格: 1,500円
    プラットフォーム: PC (Steam / GOG / Epic Games Store)、PlayStation 5、Xbox Series X/S
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語対応(12言語対応)
    ジャンル: アクション・ローグライク・バレットヘル・ルータシューター
    Steam評価: Mostly Positive(72% – 675件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3816930/Grind_Survivors/
    GOG: https://www.gog.com/en/game/grind_survivors

    公式リンク

    公式サイト: https://www.grindsurvivors.com/
    X (Twitter): https://x.com/PushkaStudios
    パブリッシャー: https://www.assemble-entertainment.com/

  • 利用規約に同意……させてくれ!100種類の理不尽な同意画面を突破せよ『利用規約に同意したい』

    利用規約に同意……させてくれ!100種類の理不尽な同意画面を突破せよ『利用規約に同意したい』

    「利用規約に同意する」——誰もが何度も経験してきた、あの退屈な儀式。

    スクロールして、チェックボックスにチェックを入れて、「同意する」ボタンを押すだけ。そう、たったそれだけのはずだった。

    しかし『利用規約に同意したい』は、この当たり前の行為を前代未聞の苦行に変えてしまった。開発者・べすとまん氏が放つこの問題作は、Steam上で2025年12月5日にリリースされ、わずか数日で”やや好評”(総合レビュー710件)という評価を獲得。その奇抜なコンセプトと理不尽極まりないゲームデザインが、多くのプレイヤーを笑わせ、そして苦しめている。

    同意するだけなのに、なぜこんなに難しい!?

    本作の目的は極めてシンプル。横スクロールアクションゲーム「ドキドキアクションゲーム」をプレイするために、全12項目の利用規約に同意する——ただそれだけだ。

    しかし、この「同意」への道のりが想像を絶する。

    開発者の説明によれば、利用規約の同意画面は「コンピューターによる自動操作を防ぐため、さまざまな趣向を凝らした仕様」になっているとのこと。つまり、BOT対策という名目で、プレイヤーに理不尽な試練が課されるのだ。

    実際にプレイしてみると、その「趣向」の幅広さに驚かされる。「同意する」ボタンが逃げ回る、複数のウィンドウが次々と開いて邪魔をする、突然ブロック崩しが始まる、クレーンゲームで「同意」ボタンを掴まなければならない——100種類を超える多彩な利用規約画面が用意されており、その全てがプレイヤーの同意を阻もうとしてくる。

    反射神経が試されるもの、パズル的思考が必要なもの、アクションセンスが問われるもの、どこかで見たことのある広告ゲーム風のもの……バリエーションは本当に豊かで、次にどんな画面が出てくるのか予測がつかない。そして最大の鬼畜仕様は、途中で「同意しない」を押したり、タイムアウトしたりすると最初からやり直しという点だ。

    ふんだんに盛り込まれたネットミーム文化

    ゲーム内にはネットミーム要素が散りばめられており、プレイヤーはあちこちでクスリと笑わされる仕掛けに遭遇する。

    開発者・べすとまん氏は、9歳の頃からゲームを作り続けているという筋金入りのゲームクリエイター。現在はゲーム会社でプランナー、エフェクトデザイナー、アニメーターなどを担当しつつ、趣味で個人開発も行っている。過去には『箱庭パズル』や『時をかけるギャル』といった作品もリリースしており、本作はその最新作だ。

    本当に実装された「ドキドキアクションゲーム」

    さて、散々苦労して12項目すべてに同意できたプレイヤーを待っているのは、本来の目的だった「ドキドキアクションゲーム」だ。

    これは走って跳んでゴールを目指すシンプルな横スクロールアクション。しかし、ここにも開発者の遊び心が光る。なんと本作には、利用規約への同意開始からゲームクリアまでのタイムを競うランキング機能が搭載されているのだ。

    実はこれ、単なる仕様ではなく、れっきとした「不具合の放置」だという。公式の説明によれば、「タイトル画面から利用規約の確認ポップアップを開いた際、利用規約に同意する前にタイマーが開始してしまう不具合が発生しております。本不具合については修正するのがめんどくさいので、そのまま放置する方針となります」とのこと。

    この開き直りっぷりが実に潔い。バグすらも仕様として取り込んでしまう柔軟さは、インディーゲームならではの魅力だろう。

    配信者キラーとしての才能

    『利用規約に同意したい』は、まさに配信者向けゲームとしての素質を持っている。

    理不尽なギミックに翻弄されるプレイヤーの反応、予測不可能な同意画面の連続、そして何度も最初からやり直しになる絶望感——これらすべてが、視聴者にとって最高のエンターテインメントになる。

    実際、多くの配信者がこのゲームに挑戦し、視聴者と一緒に笑い、苦しんでいる様子がXやYouTubeで確認できる。特に、忍耐力を試されるゲーム性は、配信のネタとして非常に優秀だ。

    ただし、プレイヤーによっては反射神経を一発勝負で試される画面がキツいという声もある。とはいえ、本作にはカジュアルモードも搭載されているため、アクションが苦手な人でも気軽に楽しめるよう配慮されている。

    Steam評価と価格設定

    本稿執筆時点で、本作のSteam評価はやや好評(約74%の好評価)。710件のレビューが投稿されており、短期間でこれだけの反響があるのは印象的だ。

    価格は通常580円(税込)と非常にリーズナブル。ワンコインで100種類以上のミニゲームと横スクロールアクションが楽しめると考えれば、コストパフォーマンスは抜群と言える。

    ちなみに、本作にはユニークな注意書きがある。「このゲーム内の利用規約は演出目的のフィクションです。実際の法律上の効力は一切ありません。」——当たり前といえば当たり前だが、こういった細かい配慮も好感が持てる。

    誰もが体験した「あの面倒」をゲームに

    私たちは日常生活で何度も利用規約に同意してきた。アプリをインストールするとき、サービスに登録するとき、ソフトウェアをアップデートするとき——その度に、長々とした文章をろくに読まずにスクロールし、「同意する」ボタンを押してきた。

    『利用規約に同意したい』は、そんな退屈で形式的な行為を痛快なエンターテインメントに変えた。同意することがこんなにも困難で、こんなにも笑えて、こんなにも理不尽だとは——誰が想像しただろう。

    もしあなたが、ちょっと変わったゲームを探しているなら、ネットミーム文化が好きなら、あるいは配信ネタを探している配信者なら、本作は間違いなくオススメだ。

    ただし、覚悟しておいてほしい。あなたは何度も最初からやり直すことになるだろう。そして何度も、心の底から叫ぶことになるだろう。

    「頼むから……同意させてくれ!!!」


    基本情報

    開発: べすとまん
    販売: べすとまん
    リリース日: 2025年12月5日
    価格: 580円(税込)
    プラットフォーム: PC(Steam)
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語、英語
    ジャンル: アクション、カジュアル、パズル、コメディ
    Steam評価: やや好評(74% – 710件のレビュー)


    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3757210/_/?queue=1


    公式リンク

    公式サイト: https://sites.google.com/view/vestman-lab/home/Agreeee
    X (Twitter): @vestman_creator
    配信ガイドライン: 公式サイトに記載

  • 「Minecraftのクローン」? いや、これは悪夢のシミュレーターだ――『Lucid Blocks』が描く、夢と虚無の境界線

    「Minecraftのクローン」? いや、これは悪夢のシミュレーターだ――『Lucid Blocks』が描く、夢と虚無の境界線

    「またMinecraftのパクリゲーか」。そう思った瞬間、筆者は間違っていた。

    2026年3月12日、MITの学生エリック・アルファロ(開発者名:Lucy B. Locks)がSteamにリリースした『Lucid Blocks』は、確かに見た目はボクセルベースのサンドボックスゲームだ。ブロックを積み、敵と戦い、資源を集める――表面的にはMinecraftの文法を踏襲している。

    しかし、プレイ開始から8分後、筆者は気づいた。これは「建設」のゲームではない。これは「彷徨う」ゲームなのだと。

    リリースからわずか2週間で2,000件以上のレビューを集め、94%という驚異的な高評価を獲得した本作は、しかし同時に「理不尽」「不親切」「意味不明」という批判の声も絶えない。万人受けするゲームではない。だが、このゲームが描く「夢のような、悪夢のような」世界には、一度足を踏み入れたら抜け出せない魔力がある。

    目覚めれば、そこは異世界。説明はない。

    『Lucid Blocks』は、チュートリアルを持たない。

    ゲームを起動すると、プレイヤーは突然、薄暗く奇妙な世界に放り出される。目の前には草原や廃墟、プラスチックのような質感の建造物が広がり、遠くには正体不明の生き物がうろついている。何をすればいいのか、どこへ行けばいいのか、自分は何者なのか――すべてが霧の中だ。

    現代のゲームの多くは、開始数分でプレイヤーに剣を持たせ、「あそこの魔王を倒しなさい」と指し示してくれる。しかし本作は違う。プレイヤーに与えられるのは、無限に広がる手続き生成のワールドと、「Apotheosis(アポセオシス)」と呼ばれる謎のクラフトシステムだけ。

    Apotheosisは、従来のレシピベースのクラフトとは一線を画す。プレイヤーは最大6個のアイテムを自由に組み合わせ、その「本質(essence)」に基づいた新しいアイテムを生成できる。レシピは存在しない。同じ素材でも組み合わせ方次第で結果が変わる。これは「推測エンジン」のようなシステムで、プレイヤーは試行錯誤を重ねながら、自分だけの発見を積み重ねていく。

    木の棒と石を組み合わせて斧を作る――そんな定型的な作業ではない。拾ったゴミのようなアイテムを適当に混ぜたら、突然グラップリングフックが出来上がった。蜂に関係するアイテムを集めてみたら、空を飛べるグライダーが完成した。この「何が生まれるかわからない」ワクワク感が、本作の核心だ。

    Minecraftの皮を被った「リミナル・ホラー」

    しかし、この世界はけっして優しくない。

    『Lucid Blocks』が”dreamcore”や”liminal space”と形容される理由は、その独特の不気味さにある。草原、廃墟、倉庫、海底――手続き生成される風景はどこか現実離れしており、まるで誰かの夢の残骸を歩いているような感覚に襲われる。

    そして、敵だ。

    ゲーム内に登場する敵は、従来のサンドボックスゲームのそれとは明らかに異質だ。マネキンのような人形(Manikin)ぬるぬると蠢くゲル状の塊(Squishy Gels)高次元存在を思わせる抽象的なクリーチャー、そして巨大なクモ――彼らはプレイヤーを追い詰め、容赦なく攻撃してくる。

    死んでもアイテムはロストしないが、スタート地点に戻される。ローグライク的な緊張感と、メトロイドヴァニア的な探索が入り混じり、プレイヤーは常に「次は何が待っているのか」という不安とワクワクを抱えながら進む。

    Gaming.netのレビュアーは、こう述べている。「最初の8分間、これはMinecraftへのラブレターだと思っていた。しかし気づいたとき、私はもう戻れない深淵に引き込まれていた」。

    誰もが同じ世界を見ているわけではない

    本作のもうひとつの魅力は、「Qualia(クオリア)」と呼ばれるパーソナル空間だ。

    プレイヤーは特定のアイテム(Rejuvenation Anchor)を使うことで、自分専用の建築空間を作ることができる。ここではプレイヤーは完全に自由に建築を楽しめる。そして、その作品をゲーム内の「Firmament(ファーマメント)」というコミュニティハブにアップロードすれば、他のプレイヤーと共有できる。

    つまり、『Lucid Blocks』はマルチプレイヤーゲームではないが、プレイヤー同士は間接的につながっている。他人の夢を覗き、自分の夢を見せる――そんなコミュニティが、既に活発に動いている。

    MIT学生が、ゴミから生み出した傑作

    開発者のエリック・アルファロは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生だ。本作は元々、ゲームエンジン「Godot」のテストプロジェクトとして始まった。スプライトの多くは、彼の家にあったゴミや100円ショップで買ったアイテムの写真から作られている。

    そんな即興的な出発点から生まれた本作は、リリースわずか2週間で推定42万ドル(約5,800万円)の売上を記録。Steam上で「圧倒的に好評」を獲得し、現在もアップデートが続けられている。アルファロは2026年夏に大型コンテンツアップデート(新バイオーム、新エンティティ、新ボス、新トライアル)を予定しているが、大学の授業が忙しいため、パッチのリリースには遅れが出る可能性があるとコメントしている。

    学生が片手間で作ったとは思えないクオリティと、細部まで作り込まれた世界観。これが、本作が世界中で支持される理由だ。

    このゲームは、あなたを選ぶ

    しかし、ここまで読んで「面白そう!」と思った人に、ひとつだけ警告しておきたい。

    このゲームは、万人向けではない。

    日本のレビューサイト「さるサルゲームぶろぐ」は、こう断言している。「『Lucid Blocks』は、万人に勧められる良作ではありません。むしろ、多くの人にとっては『10ドル払って苦痛を買う』ような体験になる可能性が高いでしょう」。

    低評価レビューの多くは、「ストーリーがない」「目的がわからない」「理不尽すぎる」といった不満を述べている。確かに、本作は親切ではない。プレイヤーに何も教えず、何も示さない。ただ、世界がそこにあるだけだ。

    だが、それこそが本作の本質でもある。

    「ゲームを攻略する」のではなく、「世界に浸る」。効率ではなく「過程」そのものを楽しむ。理解を拒む不条理な世界だからこそ、そこには「自分だけの発見」という至高の宝が眠っている。

    もしあなたが「意味のない放浪」に価値を感じ、理不尽な喪失さえも「夢の一部」として受け入れられる、一握りの選ばれし……高潔な審美眼の持ち主であるならば、これ以上の体験はない。

    不可解、不気味、でも忘れられない

    『Lucid Blocks』は、不可解だ。不気味だ。優しくない。でも、忘れられない。

    Minecraftのような安心感を求めている人には向かない。だが、夢のような、悪夢のような、どこか懐かしく、どこか恐ろしい世界を彷徨いたい人には、これ以上ない体験が待っている。

    筆者は今もこの世界を歩き続けている。何を見つけるかはわからない。でも、それでいい。

    この街は、あなたを見ている。


    基本情報

    開発: Eric Alfaro (Lucy B. Locks)

    販売: Eric Alfaro (Lucy B. Locks)

    リリース日: 2026年3月12日

    価格: 980円(税込)

    プラットフォーム: PC (Steam) / Windows 10以上

    プレイ人数: 1人(シングルプレイヤー)

    言語: 英語のみ

    ジャンル: サンドボックス、サバイバル、ホラー、探索、クラフト Steam評価: 圧倒的に好評(94% – 2,205件のレビュー)

    システム要件:

    • 最小: Windows 10 (64-bit)、Intel Core i3-8130U、8 GB RAM、Intel UHD Graphics 620(Vulkan必須)、1.1 GB ストレージ
    • 重要: Vulkanサポートが必須。Vulkan非対応システムではクラッシュや深刻なグラフィック不具合が発生します

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3495730/Lucid_Blocks/

  • 美しくも過酷な宇宙の方舟で、小さなロボットが紡ぐ壮大な物語─『MIO: Memories in Orbit』

    美しくも過酷な宇宙の方舟で、小さなロボットが紡ぐ壮大な物語─『MIO: Memories in Orbit』

    「また、よくあるHollow Knightのフォロワーか」 正直に白状しよう。フランスのDouze Dixièmesが放った本作のトレイラーを見たとき、僕はそう思って斜に構えていた。だが、朽ちゆく宇宙船「Vessel」に足を踏み入れて数時間、僕は自分の浅はかさを呪うことになった。

    2026年1月20日にリリースされ、またたく間にSteamで85%の高評価を叩き出した『MIO』。これは単なる模倣作ではない。圧倒的な「テクノ・マジック」のアートスタイルと、プレイヤーの甘えを一切許さない骨太な設計が融合した、新たな時代の傑作だった。

    崩壊寸前の宇宙船「Vessel」という舞台

    物語の舞台は「Vessel(ヴェッセル)」と呼ばれる巨大な宇宙船。かつては何千もの生命を運ぶ方舟として機能していたこの船は、今や制御不能の植物と暴走した機械に覆われた廃墟と化している。

    プレイヤーが操作するのは、MIOという名の小さなアンドロイド。記憶を失った彼女が目覚めたとき、Vesselは完全なシャットダウンまで残りわずかという状態だった。船を管理していた5つのAI「Pearl(パール)」──The Eye、The Spine、The Blood、The Hand、The Breath──は機能を停止し、船の住人たちは絶望に沈んでいる。

    MIOの使命は明確だ。5つのPearlを再起動させ、Vesselに何が起きたのかを解明し、船と残された住人たちを救うこと。だが、その道のりは想像を絶するほど過酷なものとなる。

    「テクノ・マジック」が生み出す圧倒的な世界観

    本作を語る上で避けて通れないのが、その圧倒的なビジュアルだ。開発チームは自らのアートスタイルを「テクノ・マジック」と呼んでいる。SF的な宇宙船という設定でありながら、そこには魔法のような幻想性が息づいている。

    氷に閉ざされた都市エリア、紫色の植物が生い茂るジャングル、アズールブルーに輝く機械の庭園──各エリアは水彩画のような柔らかなタッチで描かれており、まるで絵本の中を冒険しているかのような感覚を覚える。コミック、絵画、そして日本のアニメーション(特に宮崎駿作品)からインスピレーションを受けたというビジュアルは、フレーム単位で美しく、スクリーンショットを撮る手が止まらなくなるほどだ。

    開発チームの共同創設者であるSarah Hourcade氏は、「最初はSFの世界を作りたかったのですが、制約から解放されるうちに、こうした形になりました」と語っている。手描きのような温かみと、機械的な冷たさが共存するこのアートスタイルこそが、『MIO』最大の武器のひとつだろう。

    サウンドトラックが紡ぐ孤独と希望

    ビジュアルと並んで特筆すべきなのが、独創的なサウンドトラックだ。Lo-fiビート、アンビエント、そして聖歌隊のコーラスが絶妙にブレンドされた楽曲は、Vesselという朽ちゆく世界の孤独感と、それでもなお灯り続ける希望の光を見事に表現している。

    静かなエリアでは心を落ち着かせるような優しいメロディが流れ、ボス戦では緊張感を煽る重厚な音楽へと切り替わる。特に印象的なのは、コーラスパートだ。人の声が持つ感情の豊かさが、ロボットたちの世界に人間味を与えている。

    音楽を手がけたチームは、「船に残された記憶と感情を音で表現したかった」と述べており、その意図は見事に実現されている。プレイ中、筆者は何度もその場に立ち止まり、ただ音楽に耳を傾けた。

    移動と探索の喜びを追求したゲームデザイン

    『MIO』の開発チームが最初に決めたのは、「高速フックショットで画面を一瞬で横切る」という移動システムだった。実際、このゲームの移動システムは極めて気持ちいい。

    MIOは最初からダブルジャンプが使える。これは多くのメトロイドヴァニアでは終盤に解放される能力だが、本作では序盤から与えられる。さらにゲームを進めると、壁登り、グライディング、フックショット、そしてスパイダーのような壁張り付きなど、多彩な移動手段を獲得していく。

    これらの能力を組み合わせることで、Vesselの複雑に入り組んだ構造を縦横無尽に駆け巡ることができる。空中でのダッシュ、壁を蹴ってのジャンプ、フックショットでの急加速──一度慣れると、まるでパルクールのように優雅に移動できるようになる。

    探索においても、本作は独自の哲学を持っている。ゲーム序盤、プレイヤーはマップを持たない。特定のNPCに会うことで初めてマップ機能が解放されるのだが、それまでは自分の記憶と環境認識だけを頼りに進まなければならない。

    開発チームのOscar Blumberg氏は「プレイヤーに探索し、テストし、迷いながらも道を見つけてほしかった」と語る。実際、筆者は最初の数時間、何度も同じ場所をぐるぐる回った。だが、それが苦痛ではなかったのは、環境デザインが非常に優れていたからだ。

    各エリアには明確な視覚的特徴があり、ランドマークとなる建造物や独特の色彩によって、自然と頭の中に地図が形成されていく。そして、マップを手に入れた瞬間の「ああ、ここはこう繋がっていたのか!」という発見の喜びは格別だった。

    プレイヤーを試す、妥協なき難易度設計

    『MIO: Memories in Orbit』は、はっきり言って難しい。Game Informerのレビュアーは「母親の前では言えないような言葉で表現される難易度」と評したほどだ。

    本作の難易度を特徴づけるのは、以下の要素だ:

    長いリスポーン距離:セーブポイント(Overseer)は少なく、死ぬと遠くから再スタートとなる。序盤は特にセーブポイントが1つしかないため、ボスに辿り着くまでの道のりを何度も繰り返すことになる。

    体力の段階的減少:最も物議を醸しているのがこのシステムだ。ストーリーの進行に伴い、「Heart’s Tremor(心臓の震え)」というイベントが発生し、MIOの最大HPが永久に1つ減少する。苦労して手に入れた体力アップグレードが、物語の都合で奪われるのだ。

    厳しい通貨システム:敵を倒すと「Nacre(真珠層)」という通貨を得られるが、死ぬとすべて失う。他のゲームのように死亡地点で回収できるわけではなく、完全に消失する。ただし、マップ上の特定の機械で「結晶化」することで保護できる。

    こうした要素は、確かに人を選ぶ。実際、Steamのレビューでは「QoL(Quality of Life)アップデートが必要」という声も見られる。

    しかし、筆者はこの難易度設計に意図を感じた。本作は「パワーファンタジー」ではない。MIOは最後まで小さく、脆く、か弱いままだ。プレイヤーは強くなるのではなく、上手くなる。それこそが本作の目指したものなのだろう。

    Steamの高評価レビューでは、「この難易度に文句を言う人は期待値を間違えている。これは万人向けのゲームではない。開発者のビジョンを信じてほしい」という意見も多く見られた。

    実際、本作にはアクセシビリティオプションも用意されている。「Eroded Bosses(侵食されたボス)」を有効にすると、死ぬたびにボスのHPが少しずつ減少する。「Pacifist(平和主義者)」モードでは、プレイヤーが攻撃するまで敵が襲ってこない。「Ground Healing(地面治癒)」では、5秒間地面に触れ続けると少しずつ回復する。

    これらのオプションを使うことに恥じる必要はない。筆者も最終ボスで「Eroded Bosses」のお世話になった。大事なのは、自分が楽しめる形でゲームをプレイすることだ。

    コンバットは簡潔、だがボス戦は熱い

    戦闘システムは比較的シンプルだ。MIOは3連続攻撃のコンボ、ダッシュ攻撃、そして回避を持っている。これにフックショットを組み合わせることで、空中を飛び回りながら敵を攻撃する立体的な戦闘が展開される。

    正直なところ、雑魚敵との戦闘は単調になりがちだ。攻撃パターンが少なく、繰り返しプレイすると作業感が出てくる。だが、ボス戦は別格だ。

    各ボスは独自の攻撃パターンと戦闘エリアを持ち、MIOの移動能力をフル活用することが求められる。ドリルで地面を掘り進む巨大モグラ、レーザーガンを振り回す機械人形、空中を飛び回る巨大な蝿──どのボスも視覚的に印象的で、倒したときの達成感は格別だ。

    筆者が特に感銘を受けたのは、ボスの攻撃が「覚えゲー」として成立している点だ。何度も挑戦することで攻撃パターンを学び、回避のタイミングを体で覚え、ついに倒したときの爽快感。これこそが『Dark Souls』系譜のゲームが提供する喜びであり、本作はそれをメトロイドヴァニアの文脈で見事に再現している。

    アップグレードシステム「Modifier」の奥深さ

    本作のキャラクタービルドは「Modifier(モディファイア)」と呼ばれるシステムで管理される。これは一種のパッシブスキルで、装備することでMIOの性能を変化させる。

    例えば:

    • 「Hand’s Greed(手の貪欲)」:すべてのダメージがクリティカルになるが、クリティカル威力が60%減少
    • 「Flowing Striders(流れる歩行者)」:追加の体力を得る代わりに、コンボ攻撃力が低下
    • その他、ドロップ率上昇、スタミナ回復速度向上など多数

    Modifierは敵からのドロップや、Vesselの各所に隠されたコアを集めることで入手できる。装備スロットには限りがあるため、どのModifierを選ぶかがプレイスタイルを大きく左右する。

    しかし一部のレビューでは、「実験する余地が少なく、早い段階で最適解を見つけてしまう」という指摘もある。確かに、Modifierの種類はもう少し多くてもよかったかもしれない。それでも、自分だけのビルドを考える楽しみは確かに存在する。

    隠された秘密とトゥルーエンディング

    『MIO』は一周12〜14時間でクリアできる──と開発チームは述べていた。だが、それは最初のエンディングまでの話だ。

    本作には複数のエンディングがあり、「トゥルーエンディング」に到達するには、Vesselの隅々まで探索し、隠された秘密エリアを見つけ出す必要がある。

    Game Fileのレビュアーは、「12〜14時間でクリアできると聞いて笑った。なぜなら自分は既に15〜20時間プレイしていたし、まだ終わりが見えなかったからだ。結局、最初のエンディングまで30時間、トゥルーエンディングまで44時間かかった」と語っている。

    彼のテキストには、本作の探索の魅力が凝縮されている:

    「困難なプラットフォームエリアを抜けると、精巧な秘密エリアを見つけた。そのエリアはさらに別のクールなエリアにつながっていて、そのエリアはまた別の興味深い場所に続いていた。まるでポケットから次々と20ドル札が出てくるような感覚だ」

    本作のマップの約35%は完全にオプショナルだという。ストーリーのクリアには不要だが、そこには追加のロア(世界観設定)、強力なアイテム、そして印象的なボス戦が待っている。

    筆者はまだトゥルーエンディングには到達していないが、探索の手を止めるつもりはない。次の部屋の向こうに何があるのか──その好奇心が、プレイを続ける原動力になっている。

    フランスのインディーシーンから生まれた傑作

    Douze Dixièmesは、パリ郊外に拠点を置く小さなインディースタジオだ。彼らの前作『Shady Part of Me』は、光と影をテーマにしたパズルゲームとして批評家から高評価を受けたが、商業的には大きな成功とは言えなかった。

    「同じパズルゲームを4年間作り続けるのは疲れる」とSarah Hourcade氏は語る。チームは新しい挑戦を求め、メトロイドヴァニアというジャンルに挑戦することを決めた。

    しかし、彼らは既存のゲームエンジンを使うのではなく、独自のゲームエンジンを一から構築するという大胆な選択をした。『Shady Part of Me』で使用したエンジンのコードの80%以上を破棄し、『MIO』のために最適化された新しいエンジンを作り上げたのだ。

    「チームに2人、ゲームエンジンを作りたい開発者がいたので、作りました」とHourcade氏は軽く言うが、その裏には膨大な労力があったはずだ。

    開発において最も困難だったのは戦闘システムだったという。「プレイヤーに感じてほしい感覚にフィットするシステムとデザインを見つけるのに、非常に苦労しました」とチームは振り返る。

    だが、その努力は報われた。リリース直後から高評価を獲得し、Polygonは「メトロイドヴァニアの技術を完璧に習得している」、GAMINGbibleは「2026年最初の大型作品かもしれない」、Destructoidは「絶対的な驚異」と10点満点中9点を付けた。

    フランスのインディーゲームシーンは近年、『Prince of Persia: The Lost Crown』、『Clair Obscur: Expedition 33』など、国際的に高い評価を受ける作品を次々と生み出している。『MIO: Memories in Orbit』も、その系譜に連なる傑作と言えるだろう。

    誰に勧めるべきか?

    正直に言おう。『MIO: Memories in Orbit』は万人向けのゲームではない。

    高難易度を求めるプレイヤー、探索に何十時間も費やすことを厭わない人、美しいビジュアルとアートに価値を見出す人──そういったプレイヤーには心からオススメできる。

    一方で、気軽に遊べるメトロイドヴァニアを求めている人、難易度の高いゲームが苦手な人、長いリスポーン距離にストレスを感じる人には、正直なところ勧めにくい。

    Game Informerのレビュアーは、「多くの素晴らしいゲームでは、私は屋上から叫んでできるだけ多くの人にプレイしてほしいと思う。『MIO』も心から楽しんだが、経験豊富なプレイヤー以外には推奨を躊躇する」と述べている。

    だが同時に、「もしそういうものが心をときめかせるなら、『MIO』は絶対にプレイすべきリストの上位に来るべきだ」とも語っている。

    筆者も同感だ。このゲームは挑戦的で、時に不公平にすら感じられるかもしれない。だが、その先にある達成感、発見の喜び、そして美しい物語は、努力に見合う価値がある。

    2026年、インディーゲームシーンは幕開けから熱い。そして『MIO: Memories in Orbit』は、間違いなくその筆頭に立つ作品のひとつだ。

    もしあなたが、小さなロボットとともに朽ちゆく宇宙船の謎を解き明かす覚悟があるなら──Vesselは、あなたを待っている。


    基本情報

    開発: Douze Dixièmes
    販売: Focus Entertainment
    リリース日: 2026年1月20日
    価格2,300円(通常価格)※セール時は20%オフで1,840円
    プラットフォーム: PC (Steam)、PlayStation 5、Xbox Series X/S、Nintendo Switch、Nintendo Switch 2
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語、英語、フランス語、その他14言語に対応
    ジャンル: メトロイドヴァニア、アクションアドベンチャー、プラットフォーマー
    Steam評価: 非常に好評(85% – 1,093件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/1672810/MIO_Memories_in_Orbit/

    公式リンク

    公式サイト: https://community.focus-entmt.com/focus-entertainment/mio-memories-in-orbit?utm_source=Steam&amp;utm_medium=StorePage_MIO&amp;utm_campaign=Organic
    X (Twitter): https://x.com/Focus_Entmt
    Discord: https://discord.gg/focusentmt

  • パリングこそが生命線! 手描きの幻想世界で魅せる、緊張と爽快が同居する『ソラテリア』

    パリングこそが生命線! 手描きの幻想世界で魅せる、緊張と爽快が同居する『ソラテリア』

    「パリング特化のメトロイドヴァニアって、正直しんどくない?」 白状すると、遊ぶ前の自分はそう思ってた。『Hollow Knight』のボス戦で指がつるほど死にまくった記憶がフラッシュバックして、「またあのヒリヒリする修行が始まるのか……」と、ちょっと腰が引けた。

    でも、韓国の精鋭スタジオStudio Doodalが放った『ソラテリア』は、僕のそんな偏見を鮮やかに弾き返してくれた。0.15秒の火花に命を懸ける、ひりつくような緊張感と、ため息が出るほど美しい手描きアート。2026年のインディーゲーム界に現れた、最高に尖った新星を語らせてほしい。

    パリングか死か――0.15秒の決断

    本作の戦闘は徹底的にパリングに特化している。敵の攻撃をジャストタイミングで弾き返す瞬間、画面が青く爆発し、スローモーションが発動。その一瞬で繰り出されるカウンター攻撃が、敵のHPを大きく削り取る。この爽快感は、まさに『Sekiro: Shadows Die Twice』の狼が降臨したかのような感覚だ。

    しかし、本作のパリング判定は極めてシビア。約0.12〜0.15秒という瞬き以下の時間枠で成功させなければならない。Steam レビューでも「パリングウィンドウが狭すぎる」という声が散見されるが、これこそが本作の核心だ。敵の攻撃モーションは99%が予備動作で、実際の攻撃は一瞬。つまり、反射神経ではなくパターン記憶が求められる。

    さらに厄介なのが、主人公トットがパリングできるのは一方向のみという制約。多くのボスは体当たりや突進で主人公をすり抜け、背後から攻撃を仕掛けてくる。「今パリングしたのに!」と叫びたくなる瞬間が何度も訪れるが、これも計算されたゲームデザインだ。位置取り、タイミング、敵の行動パターン――すべてを読み切って初めて、真のパリング戦士となれる。

    4段階の難易度設定が救世主

    幸いなことに、本作には4段階の難易度が用意されている。最も簡単な難易度では、通常のガード(パリング失敗)でもある程度のダメージ軽減が可能になり、ストーリーを追いたいプレイヤーにも門戸が開かれている。

    実際、海外レビュアーの中には「通常難易度でボス戦がきつくなり、最終的にはイージーモードに切り替えた」と告白する者もいた。恥じることではない。本作の真髄はストーリーと探索にもあるのだから。

    逆に、難易度最高設定では文字通りの死にゲーと化す。Steam実績統計によれば、本作を100%クリアしたプレイヤーはわずか0.1%。「Five Warriors(五戦士)」ボス戦で難易度を下げざるを得なかったという証言も複数見られる。

    40通りのパーツで紡ぐ、自分だけの戦士

    本作の戦闘カスタマイズは驚くほど奥深い。コアストーンをインフレア(本作のスキルポイント)で強化し、40種類以上のパーツを組み合わせることで、プレイスタイルを自在に変化させられる。

    パーツはHollow Knightの「チャーム」に相当するシステムで、特定の組み合わせで強力なシナジーを生み出す。近接特化、遠距離攻撃重視、回復特化、クリティカルビルドなど、可能性は無限大だ。

    さらに、料理、精製、クラフトといった複数の強化システムも存在。敵が落とすOHN(ゲーム内通貨)は潤沢で、グラインドの必要性はほぼゼロ。セーブポイント(祭壇)でいつでもスキルポイントの再配分が可能なため、ボス戦ごとにビルドを変更する戦略的なプレイも楽しめる。

    手描きの世界が語る、崩壊と希望の物語

    かつて太陽の祝福を受けて繁栄した「ソラテリア」の地。しかし影の疫病が世界を蝕み、守護者である原初の炎(王)さえも姿を消した。記憶を失った小さな炎の戦士・トットとして目覚めたプレイヤーは、消えた王を見つけ、世界を救う旅に出る。

    本作の手描きアートは圧巻だ。Studio Doodalの前作『LAPIN』で93%の高評価を獲得したアートチームが、さらに技術を研ぎ澄ませた。Unity URPとポストプロセッシングを駆使し、各バイオームに独自の質感と雰囲気を与えている。背景の汚れや陰影を個別アセット化し、再構成することで、手描き特有の密度を保ちつつパフォーマンスを最適化したという。

    探索すればするほど、NPCとの会話や記憶の断片から世界の真実が明らかになっていく。サイドクエストをこなすことで、感染したボスたちの悲しい背景や、リットたち(本作の住人種族)の隠された物語に触れられる。儚げで可愛らしいキャラクターデザインと、陰鬱な世界観のコントラストが、プレイヤーの心に深く刻まれる。

    批判も正直に――改善の余地はある

    本作は決して完璧ではない。Steam レビューには以下のような批判も寄せられている:

    • パリング方向が一方向のみで、敵の位置取りによっては理不尽な被弾が発生
    • バリア持ち敵の仕様が未調整で、チャージアタックのメカニクスが破綻している
    • プラットフォーミングの難易度がボス戦より高いという声も
    • ごく稀に、ワールドに落下してリスタートを強いられるバグが報告されている

    しかし、開発チームは非常に誠実だ。Steam コミュニティハブでは、プレイヤーからのフィードバックに丁寧に応答し、パッチv1.0.22では複数のバグ修正と調整が行われた。今後のアップデートで、さらなるブラッシュアップが期待できる。

    Studio Doodalという希望

    開発元のStudio Doodalは、韓国の6人の大学生が2019年に『LAPIN』の開発を目標に集まったことから始まった。2023年に法人化し、前作『LAPIN』でSteam評価94%「非常に好評」、Unity Korea Award グラフィック賞、GIGDC大賞を受賞。わずか数年で、世界に通用するインディースタジオへと成長した。

    共同CEOのMinjeong KimとGyuwon Leeは語る。「大学時代に結成したチームで、『LAPIN』開発中に『自分たちのチームが最も得意とするアート』は何かを考え抜いた。当時、アートチームの独自の手描きイラストスタイルが、自然とゲームの特徴になっていった」

    その美学を『ソラテリア』でさらに進化させ、より美しく多様な世界を描き出した。技術面でも妥協せず、手描きアートの質感とゲームパフォーマンスの両立に成功した彼らの姿勢には、深い敬意を覚える。

    パリングの向こう側へ

    『ソラテリア』は、パリングというたった一つのメカニクスを極限まで突き詰めた作品だ。その選択は賛否を呼ぶだろう。しかし、その先にあるのは、他では味わえない緊張感と達成感、そして美しい手描きの世界に没入する至福の時間だ。

    『Hollow Knight』のファンなら、懐かしさと新鮮さを同時に感じるはず。『Sekiro』でパリングの快楽に目覚めた者なら、新たな挑戦の場がここにある。そして『Nine Sols』や『MIO: Memories In Orbit』で物足りなさを感じたプレイヤーにも、本作は新たな選択肢となるだろう。

    Steam評価73%「やや好評」という数字は、本作の尖った性質を物語っている。万人受けはしないかもしれない。しかし、その尖った部分こそが、『ソラテリア』を唯一無二の体験にしているのだ。

    パリングの瞬間、世界が止まる。青い光が爆ぜる。カウンターが炸裂する。

    その一瞬に、すべてがある。


    基本情報

    開発: Studio Doodal
    販売: SHINSEGAE INFORMATION and COMMUNICATION Inc.
    リリース日: 2026年3月12日
    価格: 2,300円(通常価格)/ 2,070円(10%オフ・期間限定)
    プラットフォーム: PC(Steam)、Nintendo Switch(近日発売予定)
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語、英語、韓国語、中国語(簡体字・繁体字)、ドイツ語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語の9言語対応
    ジャンル: アクション、メトロイドヴァニア、ソウルライク、2Dプラットフォーマー
    Steam評価: やや好評(73% – 114件のレビュー)※2026年3月16日時点

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/2947280/_/

    公式リンク

    X (Twitter): https://x.com/SolateriaGame
    Discord: https://discord.gg/xkWM3mDPdQ
    開発元公式サイト: http://studiodoodal.com/

  • ゾンビ黙示録で店番とか……マジ?『The Walking Trade』で見つけたサバイバル経営の新境地

    ゾンビ黙示録で店番とか……マジ?『The Walking Trade』で見つけたサバイバル経営の新境地

    このゲーム、ゾンビが跋扈(ばっこ)する世界で店を経営するというぶっ飛んだコンセプトなのだが、実際にプレイしてみるとこれが驚くほど面白い。店舗経営シミュレーションとサバイバルアクションを融合させた本作は、「売上を伸ばすか、生き延びるか」という究極の選択を迫ってくる。そしてその答えは……両方だ。

    昼は接客、夜は防衛——そして朝はバッテリー回収

    本作の舞台は、文明が崩壊した後の世界。人々はまだ生きている。そして驚くべきことに、彼らは依然として買い物をする。缶詰、バッテリー、武器、防具——生き残るために必要なものすべてが、あなたの店で取引される。

    ゲームは非常にシンプルなところから始まる。荒廃した店舗を掃除し、ゴミを片付け、棚を設置する。この作業が意外と満足感がある。何もない廃墟が、少しずつ機能する店へと変わっていく過程は、シミュレーションゲーム好きならたまらないだろう。

    だが、この平穏は長く続かない。

    客が来る。普通の客もいれば、武装した荒くれ者もいる。そして日が暮れると……ゾンビが襲ってくる。ここから本作の本領が発揮される。

    物理演算地獄とクラフト——そしてまた物理演算地獄

    『The Walking Trade』の最大の特徴であり、最大の悩みの種が「物理演算」だ。商品はすべて実体を持っており、棚に丁寧に並べても、客が少し触れただけで崩れ落ちる。10分かけて積み上げた弾薬の箱が、NPCの肩が当たっただけで爆発したように散乱する光景は、もはや日常だ。

    しかし、この物理演算があるからこそ、店作りには独特の達成感がある。商品を投げて陳列することもできるが、きれいに並べたいという欲求が湧いてくる。缶詰を一つひとつ積み上げ、完璧な陳列を作り上げたときの満足感は格別だ——それが客によって破壊されるまでは。

    クラフトシステムも非常に手作業重視。作業台に材料を持っていき、レシピを選び、完成品を取り出す。すべてが手動だ。効率は悪いが、この手間こそが本作の魅力でもある。武器を作り、棚を作り、バリケードを作る。すべてが自分の手で行われる感覚は、他の経営シミュレーションにはない没入感を生み出している。

    従業員マネジメント——彼らは時に役立ち、時に邪魔をする

    一人で店を回すのには限界がある。そこで登場するのが従業員システムだ。生存者を雇い、レジ係、清掃員、警備員などの役割を割り振る。星評価で能力が分かれており、優秀な人材を確保することが重要……なのだが、現実はそう甘くない。

    AIがかなり粗い。清掃員は死体を片付けるべきなのに、なぜか放置する。警備員は時折、味方を攻撃する。レジ係は客が並んでいても動かないことがある。ソロ開発者が懸命にパッチを出してはいるが、まだまだ改善の余地がある。

    それでも、うまく機能したときの達成感はすごい。従業員が整然とレジを回し、清掃員が店内をきれいに保ち、警備員がゾンビを撃退する——このサイクルが回り始めると、店は一気に拡大していく。

    「善良な商人」か「サイコパス略奪者」か——選択はあなた次第

    本作が他のシミュレーションと一線を画すのは、プレイヤーの選択に驚くほどの自由があることだ。

    正攻法で行くなら、適正価格で商品を売り、客を大切にし、評判を築く。評判が上がれば客足も増え、店は繁盛する。

    だが……別の道もある。

    ある客がAK-47を買った。バッテリーの束を支払い、満足そうに店を出ようとする。その背中にバールを振り下ろす。バッテリーを回収し、AK-47を拾い、また棚に戻す。完璧なビジネスモデルだ。

    もちろん、他の客に目撃されれば評判は地に落ちる。客足が途絶え、店は破綻する。しかし、目撃者がいなければ……?

    この倫理観のない自由さが、本作を単なる経営シミュレーションから「何でもありのサバイバルゲーム」へと昇華させている。善人を演じるもよし、サイコパスに徹するもよし。すべてはあなた次第だ。

    ソロ開発者の情熱が詰まった、バグと可能性のカオス

    『The Walking Trade』はMicrowave Gamesによるソロ開発作品だ。彼の前作『Against All Odds』は2Dアクションプラットフォーマーであり、本作とはまったく異なるジャンル。それでもこの挑戦的なプロジェクトに挑んだ彼の情熱は、ゲームのあちこちに感じられる。

    リリースから連日パッチがリリースされており、開発者の熱意は本物だ。Steam コミュニティでのフィードバックにも積極的に対応しており、バグ報告を次々と修正している。現在のバージョンは1.0.5で、安定性は着実に向上している。

    ただし、それでもバグは多い。物理演算の暴走、AIの迷走、予期せぬクラッシュ——こうした問題はまだ残っている。しかし、それを補って余りあるゲーム性がある。コア体験がしっかりしているからこそ、多少のバグは「ご愛嬌」で済ませられるのだ。

    低ポリ美学——廃墟と希望が混在する世界

    グラフィックスタイルは昨今のインディーゲームでよく見られる低ポリゴンスタイル。『SurrounDead』や『Rise of Gun』といった作品と同じ系統だが、本作はシェーディングとディテールでさらに洗練されている。

    キャラクターは継ぎはぎの服、擦り切れた防具、傷跡、タトゥーで個性が表現されており、ポストアポカリプスの世界観がよく伝わってくる。ゾンビのデザインも多彩で、ステージごとに異なる敵が登場する。

    照明効果も秀逸だ。昼間の明るい店内と、夜のフラッシュライトに照らされる闇——このコントラストが、緊張感と安堵感を巧みに演出している。

    Steamレビュー80%——賛否両論だが、確実に刺さる人には刺さる

    Steam評価は「非常に好評」で、456件のレビュー中80%が肯定的だ。多くのプレイヤーが「バグは多いが、コンセプトが素晴らしい」と評価している。

    肯定的なレビューでは、「店舗経営とサバイバルの融合が最高」「物理演算が面白い」「倫理観のない自由さがたまらない」といった声が目立つ。一方、否定的なレビューでは「AIが酷い」「物理演算がストレス」「バグが多すぎる」といった指摘がある。

    つまり、本作は「バグとカオスを楽しめる人向け」のゲームだ。完璧に磨き上げられた体験を求める人には向かないが、荒削りながらも独創的なゲームを求める人には最高の選択肢となる。

    PlayWay S.A.パブリッシング——シミュレーションゲームの名門

    本作のパブリッシャーはPlayWay S.A.。ポーランドを拠点とする同社は、シミュレーションゲームに特化したパブリッシャーとして知られており、数多くの「○○シミュレーター」シリーズを世に送り出してきた。

    PlayWayのゲームは、ニッチなテーマを深掘りし、マニアックなシミュレーション体験を提供することで定評がある。『The Walking Trade』もその系譜に連なる作品であり、「ゾンビ黙示録×店舗経営」という一見無茶なコンセプトを、しっかりとしたゲームに仕上げている。

    基本情報

    開発: Microwave Games
    販売: PlayWay S.A.
    リリース日: 2026年3月5日
    価格: 1,200円(発売記念10%オフで1,080円、3月20日まで)
    プラットフォーム: PC(Windows)
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語対応(インターフェース、字幕)
    ジャンル: 店舗経営シミュレーション、サバイバル、アクション
    Steam評価: 非常に好評 (80% – 456件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3398110/The_Walking_Trade/

  • アニメと弾幕が融合したら、こんなに気持ちいいとは!台湾発の超本格3Dアクション『炎姫』

    アニメと弾幕が融合したら、こんなに気持ちいいとは!台湾発の超本格3Dアクション『炎姫』

    「インディーゲームの3Dアクションって、モーションが微妙だったりするんでしょ?」しかし、台湾のCrimson Duskが送り出した『炎姫』は違った。このゲーム、学生の個人制作から始まったプロジェクトだというのに、大手パブリッシャーのタイトルに引けを取らない完成度なのだ。

    2026年3月4日にSteam版がリリースされ、早くもインディーアクションファンの間で話題沸騰中の本作。アニメ表現を追求した美麗なグラフィックと、ハックアンドスラッシュに3D弾幕を融合させた独自のゲームシステムが最大の特徴だ。

    「妖魔を祓う」という和風ファンタジー設定に、楠木ともりさん(炎姫役)、石見舞菜香さん(安役)ら豪華声優陣のボイスが華を添える。体験版をプレイした海外メディアからは「Metal Gear Rising: Revengeanceとアニメガールと弾幕メカニクスの融合」という評価も飛び出すほど、ジャンルの垣根を超えた魅力を持っている。

    パリィこそがすべて!気持ちよすぎる戦闘システム

    本作の最大の魅力は、なんといってもパリィシステムだ。敵の攻撃が赤く光る瞬間にボタンを押すことで、あらゆる攻撃を完璧に弾き返せる。巨大な骸骨の一撃も、妖魔が放つ光線も、すべてパリィで無効化できるのだ。

    最初は「普通のアクションゲームでしょ?」と軽い気持ちでプレイし始めた筆者だったが、パリィの気持ちよさに気付いた瞬間、完全に虜になった。敵の攻撃をギリギリで弾き、そのまま軽攻撃と重攻撃を織り交ぜたコンボを叩き込む。空中に打ち上げて追撃し、最後は地面に叩きつける——このリズムが実に爽快なのだ。

    ただし、パリィに頼りすぎると危険な場面もある。複数の敵に囲まれた状況や、ボス戦の弾幕フェーズでは回避ダッシュとの使い分けが必須。スタミナの管理も重要で、攻撃にも回避にも消費するため、連打しすぎると動けなくなってしまう。この「攻めと守りのバランス」が絶妙な緊張感を生み出している。

    海外レビューサイトのNoobFeedは「攻撃的で、正確で、柔軟なプレイヤーに報酬を与えるゲーム」と評価。またGameScoutのレビューでは「Sekiroにインスパイアされたパリィシステムで、ほぼすべての攻撃を弾き返せる」と指摘されており、死にゲーファンにも響く手応えが用意されている。

    3D弾幕×ハックアンドスラッシュという異色の融合

    もう一つの特徴が、ボス戦で本格化する3D弾幕要素だ。各ステージの最後には、強い感情を抱いたまま妖魔化した「妖魔少女」たちが待ち構えている。彼女たちは美麗で個性的なデザインながら、戦闘では容赦ない弾幕攻撃を繰り出してくる。

    弾幕シューティングのように画面を埋め尽くす光弾の隙間を縫って接近し、近接コンボを叩き込む。遠距離では安の力を使った「加護射撃」で応戦しつつ、妖魔がまとう瘴気を祓う——この近接と遠距離のシームレスな切り替えが、本作独自の戦闘スタイルを確立している。

    UK Anime Networkのレビュアーは「私の大好きな2つのアーケードジャンル(ハックアンドスラッシュと弾幕シューティング)を融合させており、キャラクターデザインも素晴らしく、プレイ感が美しい。これはゲーム・オブ・ザ・イヤー候補になりうる」と絶賛。また、Game8の英語版レビューでは「ハイブリッドゲームとして、両方のマインドセットで同時に考えることを自然に強制される」と評され、ジャンルの垣根を超えた体験が高く評価されている。

    台湾の学生プロジェクトが世界へ

    開発を手掛けたCrimson Duskは、台湾・台中市に拠点を置く小規模インディースタジオだ。代表のSam氏が個人で開発していた『炎姫』が台湾で大きな注目を集めたことをきっかけに、本格的な開発のためにスタジオを設立。本作が同スタジオのデビュー作となる。

    もともとは学生プロジェクトだったという本作だが、2022年の正式発表以降、日本のアニメ表現へのこだわりと完成度の高さで徐々に話題を集めていった。2025年10月にはSteam Next Festで体験版が公開され、非常に高い評価を獲得。その勢いのまま、2026年3月4日の正式リリースを迎えた。

    現在Steamでの評価は上々で、「想像以上に面白い」「パリィが気持ちいい」「ボス戦のデザインが秀逸」といったレビューが並ぶ。価格は2,480円(リリース後2週間は10%割引)と、この内容でこの価格は正直破格だ。

    妖魔たちの物語に引き込まれる

    本作のストーリーは、人間と妖が共存する世界が舞台。死の間際に強い感情や未練を残した霊魂は妖魔へと変化し、周囲を汚染してしまう。大神官から派遣された最高の妖祓い・炎姫と、補佐官の安は、5人の強大な妖魔少女たちを祓う任務に挑む。

    ファミ通のプレビュー記事では「敵対する妖魔は個性的でかわいいのがズルい。探索中に発見できる資料や会話からバックストーリーが読み取れるので、祓いたくなくなってしまう」と評されている。クールな炎姫と天真爛漫な安のコンビネーションも魅力的で、フィールド探索中の掛け合いが物語に彩りを添える。

    Noisy Pixelのレビューでは「妖魔たちは登場時間は短いが、彼女たちの歴史、目的、後悔について多くのことが読み取れる」と指摘。ストーリーは複雑ではないものの、限られた要素で魅力的な物語を紡いでいるという評価だ。

    プレイスタイルを広げる成長システム

    戦闘の楽しさを支えるのが、充実した成長要素だ。ステージ内の探索で「生命の結晶」「加護の結晶」を集めれば、最大HPと加護射撃の容量が増加。敵を倒して得た通貨で、櫛名田の店から新しいスキルやコンボ、装備「お守り」を購入できる。

    お守りはパッシブ効果を持つ装備で、攻撃力上昇や防御力強化など、さまざまな能力を付与してくれる。スキルツリーでは、強力な一撃を放つ技から範囲攻撃、空中コンボまで、多彩な選択肢が用意されている。自分好みの戦闘スタイルを構築できる自由度の高さが、リプレイ性を高めている。

    ステージデザインも秀逸だ。基本的には一本道の構成だが、隠された宝箱や収集要素、ミニゲームなどが随所に配置されており、探索のモチベーションを保ってくれる。ファミ通のレビューでは「ギミックを使って先に進んだり、バトルと探索のタイミングが両方あり、緩急がついているのもうれしい」と評価されている。

    唯一の弱点は「繰り返し」?

    ただし、本作にも弱点はある。GameScoutのレビューが指摘するように、5つ目のステージをクリアした後は、既存エリアの再訪とボスの再戦が続く構成になっている。新鮮味は薄れるものの、成長したキャラクターでボスを圧倒する爽快感は格別だ。

    また、プラットフォーム要素は戦闘ほど洗練されていない。ジャンプの硬さや、ダブルジャンプがない点など、改善の余地はある。とはいえ、これらは本作の魅力を大きく損なうものではなく、戦闘の気持ちよさが圧倒的にカバーしている。

    Try Hard Guidesのレビューでは「初回プレイなら一気にクリアできる短さ」と指摘されているが、同時に「レベルは何度も遊ぶように設計されており、新しいアビリティ、ステータス、レイアウトやボスパターンの知識を持って挑める」とも評価。短いながらも濃密な体験が詰まっている。

    アニメ表現へのこだわりが光る

    本作のビジュアルは、日本のアニメーションを徹底的に研究して作られている。キャラクターの動き、エフェクトの演出、カメラワークに至るまで、アニメ的な「決め」が随所に散りばめられており、プレイしていて「これ、アニメで見たい!」と思わせる瞬間が何度もある。

    声優陣も豪華だ。炎姫役の楠木ともりさん、安役の石見舞菜香さんに加え、櫛名田役に水野朔さん、小梅役に桜咲千依さんなど、実力派が集結。サウンドトラックも全82曲が収録されており、本編とセットのバンドル版も用意されている。

    ファミ通のプレビュー記事では「アニメらしい迫力が表現されているので、見ても楽しい一本」と評され、UK Anime Networkでは「キャラクターデザインと表現が一流」と絶賛されている。

    Switch 2版も2026年内に発売予定

    本作はSteam版に続き、2026年内にNintendo Switch 2版もリリース予定だ。2026年3月3日の「Indie World 2026.3.3」で正式発表され、モバイル機でもこの本格アクションが楽しめるようになる。

    アクションゲーム好き、弾幕シューティング好き、アニメ好き——どれか一つでも当てはまるなら、本作は間違いなく「買い」だ。2,480円という価格で、10時間以上の濃密な戦闘体験とリプレイ性が得られる。台湾の小さなスタジオが生み出した、大きな衝撃を体験してほしい。

    基本情報

    開発: Crimson Dusk
    販売: PLAYISM(Active Gaming Media Inc.)
    リリース日: 2026年3月4日(Steam)/ 2026年予定(Nintendo Switch 2)
    価格: 2,480円(Steam・リリース後2週間は10%割引)
    プラットフォーム: PC(Steam)、Nintendo Switch 2
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語、英語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)
    ジャンル: 3Dアクション
    Steam評価: 非常に好評(発売直後のため評価件数は少ないが、体験版は高評価)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/1820000/_/

    公式リンク

    公式サイト: https://playism.com/game/homura-hime/
    X (Twitter): https://x.com/CD_HomuraHime
    YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCeC3zOK9Kkm9csHz8wFSOQw

  • 『Don’t Starve』のKleiが仕掛ける新境地! 『Rotwood』はローグライトとベルトスクロールが見事に融合したハクスラアクションだ

    『Don’t Starve』のKleiが仕掛ける新境地! 『Rotwood』はローグライトとベルトスクロールが見事に融合したハクスラアクションだ

    「Kleiの新作って、いつもジャンルがバラバラじゃない?」サバイバルホラーの『Don’t Starve』、ステルスアクションの『Mark of the Ninja』、そしてカードRPGの『Griftlands』……確かに統一感はないけど、そのどれもがインディーズゲーム界に強烈な爪痕を残してきた名作ばかり。そんなKlei Entertainmentが満を持して送り出したのが、2026年3月3日に正式リリースされた『Rotwood』だ。

    Castle Crashersの正統進化系!? だけど、それ以上のものがある

    本作を初めて見たとき、多くの人が「あれ? Castle Crashersっぽくない?」と思ったはず。実際、筆者もそう感じた。横スクロールのベルトアクション、最大4人協力プレイ、カラフルなビジュアル……確かに表面的には似ている。でも、プレイしてみると驚くほど違う。

    『Rotwood』が他のベルトスクロールアクションと一線を画しているのは、ローグライトとハック&スラッシュの要素を完璧に融合させている点だ。Castle Crashersでは各キャラクターの技がほぼ同じで、長時間プレイするとどうしてもマンネリ化してしまった。しかし『Rotwood』は違う。ハンマー、スピア、キャノン、ボールという4種類の武器はそれぞれまったく異なる戦闘スタイルを提供し、さらにスキルやパワーアップの組み合わせで、毎回新鮮な体験が味わえる。

    特に注目すべきはキャノンだ。通常の回避ボタンがリロードに置き換わり、強攻撃で後方に吹っ飛びながら敵を攻撃する。つまり、移動手段そのものが戦闘アクションになっているのだ。弾数管理、ポジショニング、タイミング……この武器ひとつで、ゲーム全体の戦い方が劇的に変わる。こんな大胆な武器設計、なかなかお目にかかれない。

    スキルこそがすべて! 運より実力が勝敗を分ける設計

    ローグライト系のゲームでよくある不満が「運ゲーすぎる」という点だ。たまたま強力なアイテムを引けたから勝てた、逆に引けなかったから負けた……そんな展開にウンザリした経験がある人も多いだろう。

    しかし『Rotwood』は違う。公式が明言している通り、「真の達成感はスキル、適応力、正確な実行から生まれる」という哲学が貫かれている。確かにパワーアップはランダムで出現するが、それはあくまでスパイスに過ぎない。各武器の攻撃パターンを習得し、敵の行動を理解し、回避のタイミングを完璧に掴む……そうしたプレイヤー自身の成長こそが、攻略の鍵なのだ。

    実際、ハンマーを使えば特定の攻撃中にジャンプしてダメージを回避できるし、スピアは多段ヒットで手数勝負が可能。ボールは投げて跳ね返ってきたところを再度打ち返す、まるでテニスのような戦い方ができる。こうした武器ごとの個性を理解し、使いこなせるようになった瞬間、本作の本当の面白さが開花する。

    ボス戦の緊張感が尋常じゃない

    各エリアの最後には強力なボスが待ち構えている。こいつらがまた、手強い。攻撃パターンが複雑で、弱点を見極めて武器を使い分けないと突破できない。しかも、リスポーンは拠点に戻されるだけで、装備やスキルはそのまま持ち越せるとはいえ、一度死ぬと再びボスまで辿り着くのが面倒だ。

    でも、だからこそ勝てたときの達成感が凄まじい。ボスを倒すと、次のエリアに進むために必要なユニークな素材が手に入る。この「倒さなければ先に進めない」という明確なゴール設定が、緊張感とモチベーションを高めてくれる。

    そして何より、協力プレイでのボス戦がめちゃくちゃ楽しい。4人で役割分担しながら、「お前は遠距離で削ってくれ! 俺が前衛でヘイトを稼ぐ!」なんてやり取りをしながら巨大なボスに立ち向かう興奮は、ソロでは絶対に味わえない。

    拠点建設で冒険を支える温かみ

    戦闘だけでなく、拠点建設要素も本作の大きな魅力だ。ダンジョンで集めた素材を使って、果樹園や農場、工房を建設し、仲間を雇って拡張していく。これが単なるおまけではなく、しっかりとゲームプレイに組み込まれている。

    拠点で作った装備やアイテムは次の冒険に持っていけるし、素材を効率よく集めるために何度も同じダンジョンに潜る……というメタプログレッションのサイクルが心地よい。戦闘で疲れたら拠点に戻って建設を楽しみ、またダンジョンへ……この緩急のバランスが絶妙だ。

    Klei特有のアートスタイルが光る

    Kleiといえば、独特のコミック調アートスタイルだ。『Rotwood』でもその伝統はしっかり受け継がれており、ケモノキャラクターたちが暴れまわる様子は見ているだけで楽しい。

    特に敵デザインが秀逸で、堕落したRotと呼ばれるクリーチャーたちは、可愛さと不気味さが同居している。一見ポップなのに、どこか邪悪な雰囲気が漂う……この絶妙なバランスがKleiらしい。

    早期アクセスから2年、ついに完成した傑作

    本作は2024年4月にSteam早期アクセスとして登場し、約2年の開発期間を経て2026年3月3日に正式リリースされた。その間、Kleiは丁寧にアップデートを重ね、プレイヤーのフィードバックを反映してきた。

    正式リリース版では、新たなエンディング、最終ボス、そして「Super Frenzy」と呼ばれるエンドゲームコンテンツが追加されている。つまり、クリア後もやり込める要素がたっぷり用意されているのだ。

    Steamでの評価は?

    現在のSteam評価は全体で91%が好評(2,069件のレビュー)、直近30日では63%(57件)とやや下がっているが、これは正式リリース直後の混乱期によくある現象だろう。長期的にはポジティブな評価が安定すると予想される。

    ソロでも楽しい、でも協力プレイが真骨頂

    『Rotwood』はソロでも十分楽しめるが、やはり最大4人協力プレイこそが真骨頂だ。ローカル協力プレイとオンライン協力プレイの両方に対応しており、友達と一緒にワイワイ遊ぶも良し、野良マッチで見知らぬプレイヤーと共闘するも良し。

    特に、難易度が4段階用意されており、上位難易度では協力が必須になってくる。「簡単すぎてつまらない」なんてことはまず起きないので安心してほしい。

    結論:ハクスラ×ベルトスクロール好きなら絶対買い

    『Rotwood』は、ベルトスクロールアクションの爽快感、ハック&スラッシュの中毒性、ローグライトのリプレイ性、そして拠点建設の温かみを見事に融合させた傑作だ。

    Klei Entertainmentというブランドに恥じない、圧倒的なクオリティと独自性。『Don’t Starve』や『Mark of the Ninja』が好きだった人はもちろん、『Castle Crashers』や『Hades』のようなゲームを楽しんだ人にも全力でオススメしたい。

    唯一の欠点は……中毒性が高すぎて時間が溶けることくらいだろうか。筆者も「あと1回だけ……」が何度「あと10回」になったか分からない。


    基本情報

    開発: Klei Entertainment
    販売: Klei Entertainment
    リリース日: 2026年3月3日(正式版)
    価格: ¥3,400(税込)
    プラットフォーム: PC (Steam), Nintendo Switch 2
    プレイ人数: 1-4人(ローカル協力 / オンライン協力)
    言語: 日本語対応(フルローカライズ)
    ジャンル: ハック&スラッシュ、ローグライト、ベルトスクロールアクション、ダンジョンクローラー
    Steam評価: 非常に好評(91% – 2,069件のレビュー)


    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/2015270/Rotwood/


    公式リンク

    公式サイト: https://www.klei.com/games/rotwood
    X (Twitter): https://x.com/klei
    Discord: https://discord.gg/klei
    YouTube:https://www.youtube.com/kleient
    Twitch: https://www.twitch.tv/kleientertainment

  • 手動リロード、手動歩行、手動まばたき。『They Killed Your Cat』が問いかける「FPSの原点」とは何か

    手動リロード、手動歩行、手動まばたき。『They Killed Your Cat』が問いかける「FPSの原点」とは何か

    「猫を殺されたという理由で、無抵抗な敵を撃ち続けるゲーム」——そう聞いて、あなたはどんな印象を持つだろうか。筆者も最初は困惑した。しかし実際にプレイしてみると、本作が単なるバイオレンスシューターではなく、FPS操作の「当たり前」を根底から見つめ直す実験的な作品だと気づかされた。

    2026年2月24日、インディーデベロッパーVekariaによってSteamでリリースされた『They Killed Your Cat』は、短くも容赦ない復讐劇を描くFPSだ。タイトル通り、主人公は愛する猫を殺された男。彼が向かうのは、白く無機質なオフィス空間。そこで待ち受けるのは武器を持たず、手を挙げて投降するような仕草を見せる敵たち——だが、容赦はない。

    すべてを「手動」にしたらFPSはどうなる?

    本作の最大の特徴は、通常のFPSでは自動化されている動作のほぼすべてを「手動操作」に置き換えたことだ。リロードはボタン一つで完結しない。マガジンを抜き、新しいマガジンを挿入し、スライドを引く——それぞれが個別のキー操作として要求される。各武器ごとにリロード手順が異なり、ジャミング(弾詰まり)が発生すれば、それもまた手動で解除しなければならない。

    さらに驚くべきは「歩行」の概念だ。通常のゲームではWASDキーで自由に移動できるが、本作では左足と右足を個別に制御する必要がある。つまり、キーを交互に押しながら前進するのだ。慣れないうちはぎこちなく、まるで赤ん坊が歩行を学ぶような感覚になる。

    極めつけは「まばたき」だ。一定時間まばたきをしないと視界がぼやけ始め、最終的には目を閉じざるを得なくなる。その間は完全に無防備だ。現実世界では誰もが無意識に行っている動作を、ゲーム内で意識的に管理しなければならないというシュールさ——これが、本作独特の緊張感を生み出している。

    設定でこれらの手動操作を無効化することもできるが、あえてすべてを手動にする「マニュアルモード」でクリアすると専用の実績が解除される。筆者も挑戦してみたが、リロード中に敵に囲まれ、歩行がおぼつかなくなり、まばたきのタイミングを見失う——その地獄のような体験こそが、本作の真骨頂だと感じた。

    白い廊下、無抵抗な敵、そしてプレイヤーの違和感

    本作の舞台は、ほぼ全編が白く清潔感のあるオフィスビル風の空間だ。蛍光灯が照らす廊下、並ぶデスク、トイレや給湯室——日常的な空間が、復讐劇の舞台となる。敵となるのは、武装していないスーツ姿の人物たちだ。彼らは手を挙げて降伏の意思を示すこともあるが、近づけば襲いかかってくる。

    この設定は賛否を呼んでおり、Steamのレビューでも「不快」「倫理的に問題がある」といった指摘が見られる。実際、筆者も最初のプレイでは違和感を覚えた。しかし、何度かプレイするうちに、この「不快さ」こそが開発者の意図なのではないかと思うようになった。

    本作は、FPSというジャンルが持つ暴力性を、あえて生々しい形で提示する。武装した兵士やゾンビではなく、オフィスにいる「普通の人々」を撃つという行為は、プレイヤーに「自分は今、何をしているのか」という問いを突きつける。それは不快かもしれないが、だからこそ記憶に残る体験となる。

    開発者Vekariaとシンプルな哲学

    本作を手がけたVekariaは、これまでほとんど実績のない新興デベロッパーだ。公式の情報は限られているが、X(旧Twitter)のアカウント@KilledYourCatでは、開発中のスクリーンショットや動画が公開されていた。

    興味深いのは、Vekariaが本作で「シンプルさ」を追求している点だ。グラフィックはローポリゴンで、UIは最小限。ストーリーも最低限しか語られない。だが、その引き算の美学が、逆に操作の複雑さや緊張感を際立たせている。

    本作は1.61GBという軽量なファイルサイズで、最低要件もIntel Core i5、4GB RAM、NVIDIA 970相当と控えめだ。誰でも気軽にプレイできる一方で、その内容は決して「カジュアル」ではない。この対比もまた、本作の魅力の一つだろう。

    プレイヤーの反応:賛否両論の中で見えるもの

    Steamでの評価は「やや好評」で、355件のレビュー中72%が肯定的だ。肯定的なレビューでは「独特の操作が新鮮」「短いが濃密な体験」「手動操作が思ったより楽しい」といった声が目立つ。

    一方、否定的なレビューでは「内容が薄い」「同じ廊下の繰り返しで飽きる」「倫理的に不快」「これは『Trepang 2』や『I Am Your Beast』の劣化版だ」といった意見が見られる。特に比較されがちなのが、同じく復讐をテーマにしたFPS『Trepang 2』だが、本作はそれとは異なるアプローチを取っている。

    開発者はコミュニティからのフィードバックを積極的に受け入れており、リリース直後から複数回のアップデートを実施している。ハンマーなどの近接武器の追加、新たなギミック、UIの改善など、着実に進化を続けている点は評価したい。

    実績システムとリプレイ性

    本作には15の実績が用意されており、いずれもゲームのメカニクスに関連したものだ。「火災報知器を作動させる」「立ち式デスクを操作する」「トイレを流す」といった環境インタラクションから、「目を閉じたまま敵を倒す」「1000歩を踏む」「完全手動モードでクリアする」といった高難度のものまで幅広い。

    特に「FLUSH MASTER」(すべてのトイレを流す)は、マップ探索を促す実績として機能している。本作は一本道のように見えて、実はいくつかのルートやサイドルームが存在する。これらを見逃すと実績を取り逃がすことになるため、2周目以降のモチベーションにもなっている。

    また、「MANUAL AVENGER」(完全手動モードでクリア)は真のチャレンジだ。筆者も挑戦したが、リロードと歩行を同時に管理しながら敵の波をかわすのは、想像以上に困難だった。だが、達成したときの達成感はひとしおだ。

    短いが密度の濃い体験——プレイ時間と価格のバランス

    本作のプレイ時間は、通常モードで30分から1時間程度。手動モードでも2時間あればクリアできるだろう。これを「短すぎる」と見るか、「密度が濃い」と見るかは、プレイヤー次第だ。

    定価800円で購入できる。この価格帯であれば、実験的な作品としては妥当だと筆者は感じた。2時間のプレイ時間で得られる体験の濃さを考えれば、決して高くはない。

    ただし、長時間遊べるゲームを求めている人には向かない。本作はあくまで「短編映画」のような立ち位置だ。一度のプレイで強烈な印象を残し、プレイヤーの記憶に刻まれる——そういうタイプのゲームである。

    FPSの「当たり前」を疑う勇気

    『They Killed Your Cat』は、決して万人向けのゲームではない。暴力的な設定、不快感を伴うテーマ、実験的な操作——これらはすべて、プレイヤーを選ぶ要素だ。

    だが、だからこそ価値がある。本作は、FPSというジャンルが長年積み重ねてきた「快適さ」や「自動化」を一度解体し、「もし全てが手動だったら?」という問いを投げかける。その答えは不便で、不快で、時に滑稽だが、同時に新鮮で、緊張感があり、記憶に残る。

    Steamのレビューで「これはゲームなのか、それともアートプロジェクトなのか」と問う声があったが、筆者はその両方だと思う。ゲームとしての面白さと、メッセージ性を持つアート作品としての側面——その両立こそが、本作の最大の魅力だ。

    もしあなたが、いつものFPSに飽きているなら、あるいは「ゲームとは何か」を考えるきっかけが欲しいなら、『They Killed Your Cat』は試してみる価値がある。猫を殺された男の復讐劇は、きっとあなたの記憶に刻まれるはずだ。


    基本情報

    開発: Vekaria
    販売: Vekaria
    リリース日: 2026年2月24日
    価格: 800円
    プラットフォーム: Steam
    プレイ人数: 1人(シングルプレイヤー)
    言語: 英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポーランド語、ポルトガル語(ブラジル)、中国語(簡体字・繁体字)、日本語、韓国語、ロシア語
    ジャンル: FPS、アクション、シミュレーション、カジュアル、インディー
    Steam評価: やや好評(72% – 355件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3489420/They_Killed_Your_Cat/