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80億人の世界人口を0まで削減することを目指すディストピア・インクリメンタルゲーム。2000年代フラッシュゲームの危険な魅力を現代技術で再現した問題作。

  • 8億の人口を0にするディストピア・クリッカー『Execute』。2000年代フラッシュゲームの悪夢が現代によみがえる

    8億の人口を0にするディストピア・クリッカー『Execute』。2000年代フラッシュゲームの悪夢が現代によみがえる

    なぜ……なぜこんなゲームを作ったんだ…??

    Steamで気になるゲームを物色していると、時々とんでもないタイトルに出くわすことがある。今回紹介する『Execute』もそんなゲームの一つだ。「世界人口を80億人から0人まで減らす」という設定を見た時、筆者は思わずストアページを二度見してしまった。

    ギロチンのアイコンと「Execute(処刑)」という直球すぎるタイトル。まるで2000年代初頭のNewgroundsやStickpageで見つけていたような、危険で不謹慎なフラッシュゲームが現代によみがえったかのような印象だ。

    しかも、これがインクリメンタル(数値成長)ゲームだというから二度びっくり。平和的な数値成長ゲームに慣れた身としては、「人口削減がテーマのクリッカーゲーム」という組み合わせの破壊力に完全にやられてしまった。

    古いコンピューターが告げる恐ろしい「提案」

    ゲームを開始すると、まず古めかしいコンピューターの画面が表示される。Windows 95を思い起こさせるようなレトロなUIで、どこか懐かしささえ覚えてしまう。

    そして画面上のプログラムが告げる内容がこれだ。「世界人口をコントロールすることができます。目標は一つ——80億人の人口を処刑によって0にすることです……これは現実じゃありませんよね?」

    最後の「現実じゃありませんよね?」という問いかけが妙にリアルで、プレイヤーに一抹の不安を与える。確かにこれは現実ではない。ただのゲーム。そう自分に言い聞かせながら、恐る恐るプレイを開始した。

    シンプルなのに妙に中毒性があるゲームプレイ

    ゲームの基本システムは極めてシンプル。最初はギロチンから始まり、クリックするたびに人々を「処刑」していく。処刑した人数に応じて資金が得られ、その資金でより効率的な「処刑装置」や自動化システムを購入していく。

    何とも言えない暗いユーモアがあるのは、処刑の進行に合わせて「鉱山に送る!」といった新しいオプションが解放されることだ。単純な処刑から産業化された「人口削減システム」へと発展していく様子は、まさにディストピア小説の世界そのもの。

    時間が経つと核兵器まで登場し、「核サプライチェーンの最適化」なんていう恐ろしい要素まで実装されている。プレイしているうちに、自分がとんでもないことをシミュレートしているという事実を忘れてしまいそうになる。

    2000年代フラッシュゲームの「あの感覚」が完璧に再現されている

    本作の最大の魅力は、なんといっても2000年代初頭のフラッシュゲーム特有の「危険な魅力」を現代技術で完璧に再現していることだ。当時、学校のコンピューター室でこっそり遊んでいたような、背徳感あふれるゲーム体験がそのまま蘇る。

    ドット絵で描かれたシンプルなグラフィック、効率化を求めずにはいられないゲームデザイン、そして何より「こんなゲーム作っちゃダメでしょ」という危険な魅力——これらすべてが絶妙なバランスで成り立っている。

    実際にプレイしていると、その中毒性の高さに驚かされる。「あと少しで次の装置がアンロックされる」「もう少し効率を上げたい」という思考に支配され、気がつけば1時間以上プレイし続けていた。数値が大きくなっていく快感は、テーマがテーマなだけに複雑な気持ちになるが……。

    現代のインクリメンタルゲームとしてもよくできている

    不謹慎なテーマに目を奪われがちだが、インクリメンタルゲームとしての完成度も高い。プレステージ(リセットして永続アップグレードを得る)システムや、段階的にアンロックされる新要素など、ジャンルの定石をしっかりと抑えている。

    特に「坑道」システムは面白く、処刑した人々を鉱山で働かせて資源を採掘し、それを使ってより大規模な「処刑インフラ」を構築していく。ゲーム内経済が複雑に絡み合い、プレイヤーは効率化の沼にどんどんハマっていく構造になっている。

    また、自動化システムも充実しており、最終的にはほとんど放置でも人口削減が進んでいく。この「放置要素」があることで、罪悪感を感じながらも続けてしまう絶妙な心理状態を作り出している。

    倫理的な問題はあるが、だからこそ印象に残る

    正直に言って、本作をプレイすることに倫理的な問題を感じる人は多いだろう。世界人口の削減をテーマにしたゲームなど、普通に考えればとんでもない代物だ。

    しかし、だからこそこのゲームは印象に残る。2000年代のインターネット文化を知る人なら、当時の「危険で自由だったネット空間」への郷愁を感じずにはいられないはずだ。現在では到底許されないようなコンテンツが、当たり前のように存在していた時代があったのだ。

    制作者のPeebly氏も、明らかに確信犯的にこのテーマを選んでいる。Steam版の価格は1,000円以下に設定されており、「気軽に悪いことをする」体験を提供することを意図しているのは明らかだ。

    まとめ:危険だからこそ体験する価値がある

    『Execute』は間違いなく問題作だ。万人にオススメできるゲームではないし、プレイする際は十分な覚悟が必要である。

    しかし、2000年代フラッシュゲーム文化への完璧なオマージュとして、そして現代のインクリメンタルゲームとしても、本作は非常に興味深い作品に仕上がっている。禁断の果実を味わいたい好事家なら、一度は体験してみる価値があるだろう。

    ただし、プレイ後は必ず現実世界に戻ってくることをお忘れなく。これはあくまでゲームの世界の話なのだから。

    基本情報

    Execute

    • 開発・販売: Peebly
    • リリース日: 2025年12月16日
    • プラットフォーム: Steam
    • 価格: 700円(40%オフセール時420円)
    • ジャンル: インクリメンタル・クリッカー
    • 言語: 日本語
    • プレイ時間: 5-10時間程度
    • 対象年齢: 成人向け推奨

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