カテゴリー: Lucid Blocks

  • 「Minecraftのクローン」? いや、これは悪夢のシミュレーターだ――『Lucid Blocks』が描く、夢と虚無の境界線

    「Minecraftのクローン」? いや、これは悪夢のシミュレーターだ――『Lucid Blocks』が描く、夢と虚無の境界線

    「またMinecraftのパクリゲーか」。そう思った瞬間、筆者は間違っていた。

    2026年3月12日、MITの学生エリック・アルファロ(開発者名:Lucy B. Locks)がSteamにリリースした『Lucid Blocks』は、確かに見た目はボクセルベースのサンドボックスゲームだ。ブロックを積み、敵と戦い、資源を集める――表面的にはMinecraftの文法を踏襲している。

    しかし、プレイ開始から8分後、筆者は気づいた。これは「建設」のゲームではない。これは「彷徨う」ゲームなのだと。

    リリースからわずか2週間で2,000件以上のレビューを集め、94%という驚異的な高評価を獲得した本作は、しかし同時に「理不尽」「不親切」「意味不明」という批判の声も絶えない。万人受けするゲームではない。だが、このゲームが描く「夢のような、悪夢のような」世界には、一度足を踏み入れたら抜け出せない魔力がある。

    目覚めれば、そこは異世界。説明はない。

    『Lucid Blocks』は、チュートリアルを持たない。

    ゲームを起動すると、プレイヤーは突然、薄暗く奇妙な世界に放り出される。目の前には草原や廃墟、プラスチックのような質感の建造物が広がり、遠くには正体不明の生き物がうろついている。何をすればいいのか、どこへ行けばいいのか、自分は何者なのか――すべてが霧の中だ。

    現代のゲームの多くは、開始数分でプレイヤーに剣を持たせ、「あそこの魔王を倒しなさい」と指し示してくれる。しかし本作は違う。プレイヤーに与えられるのは、無限に広がる手続き生成のワールドと、「Apotheosis(アポセオシス)」と呼ばれる謎のクラフトシステムだけ。

    Apotheosisは、従来のレシピベースのクラフトとは一線を画す。プレイヤーは最大6個のアイテムを自由に組み合わせ、その「本質(essence)」に基づいた新しいアイテムを生成できる。レシピは存在しない。同じ素材でも組み合わせ方次第で結果が変わる。これは「推測エンジン」のようなシステムで、プレイヤーは試行錯誤を重ねながら、自分だけの発見を積み重ねていく。

    木の棒と石を組み合わせて斧を作る――そんな定型的な作業ではない。拾ったゴミのようなアイテムを適当に混ぜたら、突然グラップリングフックが出来上がった。蜂に関係するアイテムを集めてみたら、空を飛べるグライダーが完成した。この「何が生まれるかわからない」ワクワク感が、本作の核心だ。

    Minecraftの皮を被った「リミナル・ホラー」

    しかし、この世界はけっして優しくない。

    『Lucid Blocks』が”dreamcore”や”liminal space”と形容される理由は、その独特の不気味さにある。草原、廃墟、倉庫、海底――手続き生成される風景はどこか現実離れしており、まるで誰かの夢の残骸を歩いているような感覚に襲われる。

    そして、敵だ。

    ゲーム内に登場する敵は、従来のサンドボックスゲームのそれとは明らかに異質だ。マネキンのような人形(Manikin)ぬるぬると蠢くゲル状の塊(Squishy Gels)高次元存在を思わせる抽象的なクリーチャー、そして巨大なクモ――彼らはプレイヤーを追い詰め、容赦なく攻撃してくる。

    死んでもアイテムはロストしないが、スタート地点に戻される。ローグライク的な緊張感と、メトロイドヴァニア的な探索が入り混じり、プレイヤーは常に「次は何が待っているのか」という不安とワクワクを抱えながら進む。

    Gaming.netのレビュアーは、こう述べている。「最初の8分間、これはMinecraftへのラブレターだと思っていた。しかし気づいたとき、私はもう戻れない深淵に引き込まれていた」。

    誰もが同じ世界を見ているわけではない

    本作のもうひとつの魅力は、「Qualia(クオリア)」と呼ばれるパーソナル空間だ。

    プレイヤーは特定のアイテム(Rejuvenation Anchor)を使うことで、自分専用の建築空間を作ることができる。ここではプレイヤーは完全に自由に建築を楽しめる。そして、その作品をゲーム内の「Firmament(ファーマメント)」というコミュニティハブにアップロードすれば、他のプレイヤーと共有できる。

    つまり、『Lucid Blocks』はマルチプレイヤーゲームではないが、プレイヤー同士は間接的につながっている。他人の夢を覗き、自分の夢を見せる――そんなコミュニティが、既に活発に動いている。

    MIT学生が、ゴミから生み出した傑作

    開発者のエリック・アルファロは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生だ。本作は元々、ゲームエンジン「Godot」のテストプロジェクトとして始まった。スプライトの多くは、彼の家にあったゴミや100円ショップで買ったアイテムの写真から作られている。

    そんな即興的な出発点から生まれた本作は、リリースわずか2週間で推定42万ドル(約5,800万円)の売上を記録。Steam上で「圧倒的に好評」を獲得し、現在もアップデートが続けられている。アルファロは2026年夏に大型コンテンツアップデート(新バイオーム、新エンティティ、新ボス、新トライアル)を予定しているが、大学の授業が忙しいため、パッチのリリースには遅れが出る可能性があるとコメントしている。

    学生が片手間で作ったとは思えないクオリティと、細部まで作り込まれた世界観。これが、本作が世界中で支持される理由だ。

    このゲームは、あなたを選ぶ

    しかし、ここまで読んで「面白そう!」と思った人に、ひとつだけ警告しておきたい。

    このゲームは、万人向けではない。

    日本のレビューサイト「さるサルゲームぶろぐ」は、こう断言している。「『Lucid Blocks』は、万人に勧められる良作ではありません。むしろ、多くの人にとっては『10ドル払って苦痛を買う』ような体験になる可能性が高いでしょう」。

    低評価レビューの多くは、「ストーリーがない」「目的がわからない」「理不尽すぎる」といった不満を述べている。確かに、本作は親切ではない。プレイヤーに何も教えず、何も示さない。ただ、世界がそこにあるだけだ。

    だが、それこそが本作の本質でもある。

    「ゲームを攻略する」のではなく、「世界に浸る」。効率ではなく「過程」そのものを楽しむ。理解を拒む不条理な世界だからこそ、そこには「自分だけの発見」という至高の宝が眠っている。

    もしあなたが「意味のない放浪」に価値を感じ、理不尽な喪失さえも「夢の一部」として受け入れられる、一握りの選ばれし……高潔な審美眼の持ち主であるならば、これ以上の体験はない。

    不可解、不気味、でも忘れられない

    『Lucid Blocks』は、不可解だ。不気味だ。優しくない。でも、忘れられない。

    Minecraftのような安心感を求めている人には向かない。だが、夢のような、悪夢のような、どこか懐かしく、どこか恐ろしい世界を彷徨いたい人には、これ以上ない体験が待っている。

    筆者は今もこの世界を歩き続けている。何を見つけるかはわからない。でも、それでいい。

    この街は、あなたを見ている。


    基本情報

    開発: Eric Alfaro (Lucy B. Locks)

    販売: Eric Alfaro (Lucy B. Locks)

    リリース日: 2026年3月12日

    価格: 980円(税込)

    プラットフォーム: PC (Steam) / Windows 10以上

    プレイ人数: 1人(シングルプレイヤー)

    言語: 英語のみ

    ジャンル: サンドボックス、サバイバル、ホラー、探索、クラフト Steam評価: 圧倒的に好評(94% – 2,205件のレビュー)

    システム要件:

    • 最小: Windows 10 (64-bit)、Intel Core i3-8130U、8 GB RAM、Intel UHD Graphics 620(Vulkan必須)、1.1 GB ストレージ
    • 重要: Vulkanサポートが必須。Vulkan非対応システムではクラッシュや深刻なグラフィック不具合が発生します

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3495730/Lucid_Blocks/