カテゴリー: ホラー

  • 「Minecraftのクローン」? いや、これは悪夢のシミュレーターだ――『Lucid Blocks』が描く、夢と虚無の境界線

    「Minecraftのクローン」? いや、これは悪夢のシミュレーターだ――『Lucid Blocks』が描く、夢と虚無の境界線

    「またMinecraftのパクリゲーか」。そう思った瞬間、筆者は間違っていた。

    2026年3月12日、MITの学生エリック・アルファロ(開発者名:Lucy B. Locks)がSteamにリリースした『Lucid Blocks』は、確かに見た目はボクセルベースのサンドボックスゲームだ。ブロックを積み、敵と戦い、資源を集める――表面的にはMinecraftの文法を踏襲している。

    しかし、プレイ開始から8分後、筆者は気づいた。これは「建設」のゲームではない。これは「彷徨う」ゲームなのだと。

    リリースからわずか2週間で2,000件以上のレビューを集め、94%という驚異的な高評価を獲得した本作は、しかし同時に「理不尽」「不親切」「意味不明」という批判の声も絶えない。万人受けするゲームではない。だが、このゲームが描く「夢のような、悪夢のような」世界には、一度足を踏み入れたら抜け出せない魔力がある。

    目覚めれば、そこは異世界。説明はない。

    『Lucid Blocks』は、チュートリアルを持たない。

    ゲームを起動すると、プレイヤーは突然、薄暗く奇妙な世界に放り出される。目の前には草原や廃墟、プラスチックのような質感の建造物が広がり、遠くには正体不明の生き物がうろついている。何をすればいいのか、どこへ行けばいいのか、自分は何者なのか――すべてが霧の中だ。

    現代のゲームの多くは、開始数分でプレイヤーに剣を持たせ、「あそこの魔王を倒しなさい」と指し示してくれる。しかし本作は違う。プレイヤーに与えられるのは、無限に広がる手続き生成のワールドと、「Apotheosis(アポセオシス)」と呼ばれる謎のクラフトシステムだけ。

    Apotheosisは、従来のレシピベースのクラフトとは一線を画す。プレイヤーは最大6個のアイテムを自由に組み合わせ、その「本質(essence)」に基づいた新しいアイテムを生成できる。レシピは存在しない。同じ素材でも組み合わせ方次第で結果が変わる。これは「推測エンジン」のようなシステムで、プレイヤーは試行錯誤を重ねながら、自分だけの発見を積み重ねていく。

    木の棒と石を組み合わせて斧を作る――そんな定型的な作業ではない。拾ったゴミのようなアイテムを適当に混ぜたら、突然グラップリングフックが出来上がった。蜂に関係するアイテムを集めてみたら、空を飛べるグライダーが完成した。この「何が生まれるかわからない」ワクワク感が、本作の核心だ。

    Minecraftの皮を被った「リミナル・ホラー」

    しかし、この世界はけっして優しくない。

    『Lucid Blocks』が”dreamcore”や”liminal space”と形容される理由は、その独特の不気味さにある。草原、廃墟、倉庫、海底――手続き生成される風景はどこか現実離れしており、まるで誰かの夢の残骸を歩いているような感覚に襲われる。

    そして、敵だ。

    ゲーム内に登場する敵は、従来のサンドボックスゲームのそれとは明らかに異質だ。マネキンのような人形(Manikin)ぬるぬると蠢くゲル状の塊(Squishy Gels)高次元存在を思わせる抽象的なクリーチャー、そして巨大なクモ――彼らはプレイヤーを追い詰め、容赦なく攻撃してくる。

    死んでもアイテムはロストしないが、スタート地点に戻される。ローグライク的な緊張感と、メトロイドヴァニア的な探索が入り混じり、プレイヤーは常に「次は何が待っているのか」という不安とワクワクを抱えながら進む。

    Gaming.netのレビュアーは、こう述べている。「最初の8分間、これはMinecraftへのラブレターだと思っていた。しかし気づいたとき、私はもう戻れない深淵に引き込まれていた」。

    誰もが同じ世界を見ているわけではない

    本作のもうひとつの魅力は、「Qualia(クオリア)」と呼ばれるパーソナル空間だ。

    プレイヤーは特定のアイテム(Rejuvenation Anchor)を使うことで、自分専用の建築空間を作ることができる。ここではプレイヤーは完全に自由に建築を楽しめる。そして、その作品をゲーム内の「Firmament(ファーマメント)」というコミュニティハブにアップロードすれば、他のプレイヤーと共有できる。

    つまり、『Lucid Blocks』はマルチプレイヤーゲームではないが、プレイヤー同士は間接的につながっている。他人の夢を覗き、自分の夢を見せる――そんなコミュニティが、既に活発に動いている。

    MIT学生が、ゴミから生み出した傑作

    開発者のエリック・アルファロは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生だ。本作は元々、ゲームエンジン「Godot」のテストプロジェクトとして始まった。スプライトの多くは、彼の家にあったゴミや100円ショップで買ったアイテムの写真から作られている。

    そんな即興的な出発点から生まれた本作は、リリースわずか2週間で推定42万ドル(約5,800万円)の売上を記録。Steam上で「圧倒的に好評」を獲得し、現在もアップデートが続けられている。アルファロは2026年夏に大型コンテンツアップデート(新バイオーム、新エンティティ、新ボス、新トライアル)を予定しているが、大学の授業が忙しいため、パッチのリリースには遅れが出る可能性があるとコメントしている。

    学生が片手間で作ったとは思えないクオリティと、細部まで作り込まれた世界観。これが、本作が世界中で支持される理由だ。

    このゲームは、あなたを選ぶ

    しかし、ここまで読んで「面白そう!」と思った人に、ひとつだけ警告しておきたい。

    このゲームは、万人向けではない。

    日本のレビューサイト「さるサルゲームぶろぐ」は、こう断言している。「『Lucid Blocks』は、万人に勧められる良作ではありません。むしろ、多くの人にとっては『10ドル払って苦痛を買う』ような体験になる可能性が高いでしょう」。

    低評価レビューの多くは、「ストーリーがない」「目的がわからない」「理不尽すぎる」といった不満を述べている。確かに、本作は親切ではない。プレイヤーに何も教えず、何も示さない。ただ、世界がそこにあるだけだ。

    だが、それこそが本作の本質でもある。

    「ゲームを攻略する」のではなく、「世界に浸る」。効率ではなく「過程」そのものを楽しむ。理解を拒む不条理な世界だからこそ、そこには「自分だけの発見」という至高の宝が眠っている。

    もしあなたが「意味のない放浪」に価値を感じ、理不尽な喪失さえも「夢の一部」として受け入れられる、一握りの選ばれし……高潔な審美眼の持ち主であるならば、これ以上の体験はない。

    不可解、不気味、でも忘れられない

    『Lucid Blocks』は、不可解だ。不気味だ。優しくない。でも、忘れられない。

    Minecraftのような安心感を求めている人には向かない。だが、夢のような、悪夢のような、どこか懐かしく、どこか恐ろしい世界を彷徨いたい人には、これ以上ない体験が待っている。

    筆者は今もこの世界を歩き続けている。何を見つけるかはわからない。でも、それでいい。

    この街は、あなたを見ている。


    基本情報

    開発: Eric Alfaro (Lucy B. Locks)

    販売: Eric Alfaro (Lucy B. Locks)

    リリース日: 2026年3月12日

    価格: 980円(税込)

    プラットフォーム: PC (Steam) / Windows 10以上

    プレイ人数: 1人(シングルプレイヤー)

    言語: 英語のみ

    ジャンル: サンドボックス、サバイバル、ホラー、探索、クラフト Steam評価: 圧倒的に好評(94% – 2,205件のレビュー)

    システム要件:

    • 最小: Windows 10 (64-bit)、Intel Core i3-8130U、8 GB RAM、Intel UHD Graphics 620(Vulkan必須)、1.1 GB ストレージ
    • 重要: Vulkanサポートが必須。Vulkan非対応システムではクラッシュや深刻なグラフィック不具合が発生します

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3495730/Lucid_Blocks/

  • 「打てば死ぬ」の絶望。タイピングが凶器に変わるメタホラー『Dyping Escape』

    「打てば死ぬ」の絶望。タイピングが凶器に変わるメタホラー『Dyping Escape』

    画面に現れた不気味な目玉に促されるまま「Please kill me(私を殺してください)」と打ち込んだ瞬間、ゲームオーバー。打った言葉が現実になる。この恐怖を、あなたは想像できるだろうか。

    無料ゲーム投稿サイト「unityroom」で50万回以上プレイされた『DYPING』が、大幅にパワーアップしてSteamに登場。開発元はHeaviside Creations、パブリッシャーはPLAYISMが担当してい

    る。2026年3月13日にリリースされたばかりのこの作品は、Steam評価92%(108件のレビュー中)という高評価を獲得している。

    「打てば現実になる」恐怖のタイピングシステム

    本作の核心は、プレイヤーが打ったテキストがそのままゲーム内の現実として襲いかかってくるという、極めてメタ的なホラーメカニクスにある。

    ゲームマスターを名乗る不気味な目玉の指示に従い、プレイヤーは画面に表示される文章をそのまま打ち込んでいく。最初は「言われた通りにキーを打てばいいですからね。頭を使う必要はまったくありません」という親切な(?)言葉に導かれ、単純なタイピング練習かと思いきや、やがて不穏な契約書への署名を強要される。

    そして恐怖の本番が始まる。「Please kill me」と打てば即死。「I offer you my left eye(私の左目を捧げます)」と打てば……何が起こるかは想像に難くない。打たなければ先に進めない。しかし打てば破滅が待っている。この理不尽な絶望こそが『Dyping Escape』の真骨頂だ。

    メタ的恐怖が第四の壁を破壊する

    本作が秀逸なのは、単なるテキストベースホラーに留まらず、プレイヤーのPC環境そのものをゲームの一部として取り込む点にある。

    ゲーム内では、あなたのPC環境から取得した情報が表示されることがある。システム時刻を変更しなければ進めない謎解き、PCのファイルシステムを操作させられる悪夢、そして自分のコンピュータが徐々に壊れていくかのような演出。ゲームと現実の境界が曖昧になり、「本当に自分のPCは大丈夫なのか?」という不安が頭をよぎる。

    このため、配信者向けには「ストリーマーモード」が用意されており、個人情報の表示を防ぐ配慮がなされている。逆に言えば、それほどまでにゲームは現実に介入してくるということだ。

    実際、Steamコミュニティでは「システム時刻変更後、ゲームを再起動しないと認識されない」といった技術的な壁に阻まれるプレイヤーも。ゲームは容赦なく、プレイヤーに「ゲームの外」での行動を要求する。BioShockの「Would you kindly?」を彷彿とさせる、指示に従う行為そのものへの問いかけがここにはある。

    猫との協力で脱出を目指せ

    絶望的な状況の中、唯一の希望となるのが、古代のゲームから目覚めた謎の猫だ。この猫はプレイヤーの味方となり、目玉の悪意に対抗する手段を教えてくれる。

    ゲームは全3章構成で、各章ごとに異なるエンディングが用意されている。プレイヤーの選択や行動次第でストーリーが分岐し、タイピングゲームのスコアシステムまで搭載。Sランクを目指すやり込み要素もある。

    さらに、ローグライク要素として「フラグメント」と呼ばれるカードシステムが存在する。これは文字や単語を改変できるアイテムで、目玉が課す理不尽な死を回避するための切り札となる。プレイごとに異なるフラグメントが手に入るため、毎回新しい戦略を考える楽しみがある。

    レトロなビジュアルと不穏なサウンド

    本作のビジュアルは手描きのピクセルアート。2Dのドット絵で描かれたキャラクターやUI要素は、一見するとカジュアルな印象を与えるが、その裏に潜む狂気が徐々に滲み出てくる。

    サイケデリックな色使いと不協和音が混ざり合ったBGMは、プレイヤーの精神を徐々に削っていく。ジャンプスケアや流血表現に頼らない、じわじわと迫りくる心理的恐怖が本作の持ち味だ。

    開発者Heaviside Creationsの情熱

    開発を手がけたHeaviside Creationsは、日本の個人開発者。前作『DYPING』がunityroomで大きな支持を集めたことを受け、PLAYISMとタッグを組んで本作を完成させた。

    無料版から有料版への進化は単なる拡張ではなく、ストーリーの大幅な追加、新メカニクスの実装、より深いホラー体験の構築という形で結実している。Indieゲームシーンにおけるメタフィクションホラーの新たな地平を切り開いた作品と言えるだろう。

    本作は「INDIE Live Expo 2025.4.13 Official Selection」や「BitSummit the 13th AWARD – Innovative Outlaw Award」のノミネート作品でもあり、業界内でも高い評価を受けている。

    まとめ:タイピングの先にある恐怖

    『Dyping Escape』は、タイピングという日常的な行為を恐怖の源泉に変えた野心作だ。ゲームと現実の境界を曖昧にし、プレイヤーの意思決定そのものを問いかけるメタホラー体験は、従来のホラーゲームとは一線を画している。

    日本語・英語・簡体字中国語に対応しているため、言語の壁も低い。ただし、ゲームの性質上、タイピングスキルがある程度必要となる点は留意してほしい。

    現在、発売記念セールとして10%オフの990円で購入可能(セール期間は3月28日まで)。通常価格1,100円という手頃な価格で、この濃密なホラー体験を味わえるのは大きな魅力だ。

    無料デモ版も配信されており、セーブデータは製品版に引き継ぎ可能。気になる方はまずデモ版から試してみることをオススメする。

    「打ちたくない言葉を打たされる恐怖」。それは、あなたがキーボードに触れるたびに蘇る悪夢となるだろう。


    基本情報

    開発: Heaviside Creations
    販売: PLAYISM
    リリース日: 2026年3月13日
    価格: 通常1,100円/ 発売記念セール990円(3月28日まで)
    プラットフォーム: PC(Windows)
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語、英語、簡体字中国語
    ジャンル: タイピングホラー、心理的ホラー、インタラクティブフィクション
    Steam評価: 非常に好評(92% – 108件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3406810/Dyping_Escape/
    Steam(デモ版): https://store.steampowered.com/app/4080380/Dyping_Escape_Demo/

    公式リンク

    公式サイト: https://playism.com/en/game/dyping-escape/
    X (Twitter): https://x.com/HeaviCre
    YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCno9JtoeBA2Lev5x8y34hIQ

  • ゾンビ黙示録で店番とか……マジ?『The Walking Trade』で見つけたサバイバル経営の新境地

    ゾンビ黙示録で店番とか……マジ?『The Walking Trade』で見つけたサバイバル経営の新境地

    このゲーム、ゾンビが跋扈(ばっこ)する世界で店を経営するというぶっ飛んだコンセプトなのだが、実際にプレイしてみるとこれが驚くほど面白い。店舗経営シミュレーションとサバイバルアクションを融合させた本作は、「売上を伸ばすか、生き延びるか」という究極の選択を迫ってくる。そしてその答えは……両方だ。

    昼は接客、夜は防衛——そして朝はバッテリー回収

    本作の舞台は、文明が崩壊した後の世界。人々はまだ生きている。そして驚くべきことに、彼らは依然として買い物をする。缶詰、バッテリー、武器、防具——生き残るために必要なものすべてが、あなたの店で取引される。

    ゲームは非常にシンプルなところから始まる。荒廃した店舗を掃除し、ゴミを片付け、棚を設置する。この作業が意外と満足感がある。何もない廃墟が、少しずつ機能する店へと変わっていく過程は、シミュレーションゲーム好きならたまらないだろう。

    だが、この平穏は長く続かない。

    客が来る。普通の客もいれば、武装した荒くれ者もいる。そして日が暮れると……ゾンビが襲ってくる。ここから本作の本領が発揮される。

    物理演算地獄とクラフト——そしてまた物理演算地獄

    『The Walking Trade』の最大の特徴であり、最大の悩みの種が「物理演算」だ。商品はすべて実体を持っており、棚に丁寧に並べても、客が少し触れただけで崩れ落ちる。10分かけて積み上げた弾薬の箱が、NPCの肩が当たっただけで爆発したように散乱する光景は、もはや日常だ。

    しかし、この物理演算があるからこそ、店作りには独特の達成感がある。商品を投げて陳列することもできるが、きれいに並べたいという欲求が湧いてくる。缶詰を一つひとつ積み上げ、完璧な陳列を作り上げたときの満足感は格別だ——それが客によって破壊されるまでは。

    クラフトシステムも非常に手作業重視。作業台に材料を持っていき、レシピを選び、完成品を取り出す。すべてが手動だ。効率は悪いが、この手間こそが本作の魅力でもある。武器を作り、棚を作り、バリケードを作る。すべてが自分の手で行われる感覚は、他の経営シミュレーションにはない没入感を生み出している。

    従業員マネジメント——彼らは時に役立ち、時に邪魔をする

    一人で店を回すのには限界がある。そこで登場するのが従業員システムだ。生存者を雇い、レジ係、清掃員、警備員などの役割を割り振る。星評価で能力が分かれており、優秀な人材を確保することが重要……なのだが、現実はそう甘くない。

    AIがかなり粗い。清掃員は死体を片付けるべきなのに、なぜか放置する。警備員は時折、味方を攻撃する。レジ係は客が並んでいても動かないことがある。ソロ開発者が懸命にパッチを出してはいるが、まだまだ改善の余地がある。

    それでも、うまく機能したときの達成感はすごい。従業員が整然とレジを回し、清掃員が店内をきれいに保ち、警備員がゾンビを撃退する——このサイクルが回り始めると、店は一気に拡大していく。

    「善良な商人」か「サイコパス略奪者」か——選択はあなた次第

    本作が他のシミュレーションと一線を画すのは、プレイヤーの選択に驚くほどの自由があることだ。

    正攻法で行くなら、適正価格で商品を売り、客を大切にし、評判を築く。評判が上がれば客足も増え、店は繁盛する。

    だが……別の道もある。

    ある客がAK-47を買った。バッテリーの束を支払い、満足そうに店を出ようとする。その背中にバールを振り下ろす。バッテリーを回収し、AK-47を拾い、また棚に戻す。完璧なビジネスモデルだ。

    もちろん、他の客に目撃されれば評判は地に落ちる。客足が途絶え、店は破綻する。しかし、目撃者がいなければ……?

    この倫理観のない自由さが、本作を単なる経営シミュレーションから「何でもありのサバイバルゲーム」へと昇華させている。善人を演じるもよし、サイコパスに徹するもよし。すべてはあなた次第だ。

    ソロ開発者の情熱が詰まった、バグと可能性のカオス

    『The Walking Trade』はMicrowave Gamesによるソロ開発作品だ。彼の前作『Against All Odds』は2Dアクションプラットフォーマーであり、本作とはまったく異なるジャンル。それでもこの挑戦的なプロジェクトに挑んだ彼の情熱は、ゲームのあちこちに感じられる。

    リリースから連日パッチがリリースされており、開発者の熱意は本物だ。Steam コミュニティでのフィードバックにも積極的に対応しており、バグ報告を次々と修正している。現在のバージョンは1.0.5で、安定性は着実に向上している。

    ただし、それでもバグは多い。物理演算の暴走、AIの迷走、予期せぬクラッシュ——こうした問題はまだ残っている。しかし、それを補って余りあるゲーム性がある。コア体験がしっかりしているからこそ、多少のバグは「ご愛嬌」で済ませられるのだ。

    低ポリ美学——廃墟と希望が混在する世界

    グラフィックスタイルは昨今のインディーゲームでよく見られる低ポリゴンスタイル。『SurrounDead』や『Rise of Gun』といった作品と同じ系統だが、本作はシェーディングとディテールでさらに洗練されている。

    キャラクターは継ぎはぎの服、擦り切れた防具、傷跡、タトゥーで個性が表現されており、ポストアポカリプスの世界観がよく伝わってくる。ゾンビのデザインも多彩で、ステージごとに異なる敵が登場する。

    照明効果も秀逸だ。昼間の明るい店内と、夜のフラッシュライトに照らされる闇——このコントラストが、緊張感と安堵感を巧みに演出している。

    Steamレビュー80%——賛否両論だが、確実に刺さる人には刺さる

    Steam評価は「非常に好評」で、456件のレビュー中80%が肯定的だ。多くのプレイヤーが「バグは多いが、コンセプトが素晴らしい」と評価している。

    肯定的なレビューでは、「店舗経営とサバイバルの融合が最高」「物理演算が面白い」「倫理観のない自由さがたまらない」といった声が目立つ。一方、否定的なレビューでは「AIが酷い」「物理演算がストレス」「バグが多すぎる」といった指摘がある。

    つまり、本作は「バグとカオスを楽しめる人向け」のゲームだ。完璧に磨き上げられた体験を求める人には向かないが、荒削りながらも独創的なゲームを求める人には最高の選択肢となる。

    PlayWay S.A.パブリッシング——シミュレーションゲームの名門

    本作のパブリッシャーはPlayWay S.A.。ポーランドを拠点とする同社は、シミュレーションゲームに特化したパブリッシャーとして知られており、数多くの「○○シミュレーター」シリーズを世に送り出してきた。

    PlayWayのゲームは、ニッチなテーマを深掘りし、マニアックなシミュレーション体験を提供することで定評がある。『The Walking Trade』もその系譜に連なる作品であり、「ゾンビ黙示録×店舗経営」という一見無茶なコンセプトを、しっかりとしたゲームに仕上げている。

    基本情報

    開発: Microwave Games
    販売: PlayWay S.A.
    リリース日: 2026年3月5日
    価格: 1,200円(発売記念10%オフで1,080円、3月20日まで)
    プラットフォーム: PC(Windows)
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語対応(インターフェース、字幕)
    ジャンル: 店舗経営シミュレーション、サバイバル、アクション
    Steam評価: 非常に好評 (80% – 456件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3398110/The_Walking_Trade/

  • 極北のコンビニで夜勤バイト。昼は接客、夜は……怪物?『HELLMART』で7日間のサバイバルが始まる

    極北のコンビニで夜勤バイト。昼は接客、夜は……怪物?『HELLMART』で7日間のサバイバルが始まる

    「ただのコンビニバイトだろ?」……と舐めていたら……

    Steamのストアページで『HELLMART』を初めて見たとき、正直「またスーパーマーケット系シミュレーターか」と思った。ここ数年、レジ打ちや品出しをするだけのゲームが乱立していたからだ。

    しかし、この『HELLMART』は違った。24時間営業のコンビニで働く夜勤バイトという設定、極北の地という舞台、そして何より──「夜になると、奇妙な客が来る」という一文。これは、ただの経営シミュレーションではない。

    開発は、GAZE IN GAMESというスタジオ。創業者のOleg Gazeが率いる新進気鋭のチームで、本作が実質的なデビュー作となる。2026年1月28日に正式リリースされ、Steam評価は767件のレビューで75%が好評という「やや好評」の評価を獲得している。

    ジャンルとしては「ホラーシミュレーション」。昼間は普通のコンビニバイト、夜は超常的な脅威に立ち向かうサバイバルホラーという二面性が特徴だ。価格は1,700円で、デモ版も無料配信されている。

    昼は接客業、夜はサバイバル──二つの顔を持つゲームループ

    『HELLMART』のゲームプレイは、明確に「昼」と「夜」に分かれている。

    昼間のシフト:ひたすら接客とレジ打ち

    昼間の仕事は至ってシンプル。来店する客に商品を販売し、売上目標を達成する。レジ打ち、商品の補充、店内清掃、そして客への丁寧な対応──これらすべてが評価対象となる。

    ここで重要なのが、「客に失礼な態度を取らない」というルール。どんなに忙しくても、どんなに変な客が来ても、昼間は笑顔で接客しなければならない。実はこれ、夜のサバイバルにも直結する重要な要素なのだ。

    売上目標を達成できなければ、店のアップグレードに必要な資金が得られない。逆に、しっかりと売上を立てれば、夜間の防衛に必要な設備を購入できる。この「稼ぎ」と「生存」のバランスが、本作の戦略性を生み出している。

    夜間のシフト:監視カメラと発電機が命綱

    日が沈むと、店の様相は一変する。

    まず、夕方の時間帯に準備作業が必要だ。発電機の燃料チェック、ドアへのバリケード設置、防犯カメラの動作確認、そして防衛用アイテムの購入。これらを怠ると、確実に夜を乗り切れない。

    夜間、最も重要なのは「誰を店内に入れるか」の判断だ。深夜に来店する客の中には、人間に擬態した「何か」が紛れ込んでいる。見た目は普通の客だが、よく観察すると微妙に動きがおかしかったり、不自然な笑顔を浮かべていたりする。

    この判断を誤ると──つまり、怪物を店内に入れてしまうと──命の危険に晒される。逆に、普通の客を締め出してしまうと、その客の運命は……まあ、想像に難くない。

    プレイヤーの選択が客の生死を左右する。このモラル的ジレンマが、『HELLMART』のホラー要素をさらに深めている。

    隠れたシステムが生み出す緊張感──「見えないプレッシャー」の正体

    『HELLMART』の恐怖は、ジャンプスケアだけではない。むしろ、ゲームが明示しない「隠れたシステム」こそが、プレイヤーを真綿で首を絞めるように追い詰めていく。

    コミュニティの検証によれば、本作には少なくとも3つの隠しパラメータが存在する。

    1. 時間プレッシャー
    営業時間を延長すればするほど、異常現象の発生頻度が上がる。売上を伸ばしたい気持ちと、早く店を閉めたい恐怖のせめぎ合いだ。

    2. ノイズレベル
    商品を落としたり、慌てて動き回ったりすると、「何か」を引き寄せてしまう。静かに、慎重に行動することが生存率を上げる。

    3. ストレスメーター
    タスクを放置したり、ミスを重ねたりすると、主人公の反応速度が鈍くなる。画面には表示されないが、確実にプレイヤーを不利にしていく。

    これらのシステムは、ゲーム内で一切説明されない。プレイヤーは試行錯誤を繰り返す中で、「なぜか今日は敵が多い」「なぜか反応が遅れる」と感じ、自然とゲームのルールを学んでいく。

    この「暗黙のルール」こそが、『HELLMART』独特の緊張感を生み出している。

    3つのエンディング──あなたの選択が結末を決める

    『HELLMART』は7日間のキャンペーンモードで構成されており、プレイヤーの行動によって3つ(一部情報では4つ)の異なるエンディングが用意されている。

    • グッドエンディング:客を守り抜き、すべてのルールを遵守した場合
    • バッドエンディング:自己保身に走り、客を見捨てた場合
    • シークレット/トゥルーエンディング:特定の条件を満たした場合(詳細は伏せる)

    重要なのは、「どのエンディングが正解」ということではない。『HELLMART』は、プレイヤーに道徳的な選択を迫る。生き延びるために客を見捨てるのか、それとも人間性を守り抜くのか。

    この選択の重みが、単なるホラーゲームを超えた体験を生み出している。

    賛否両論の評価──「期待と現実のギャップ」が生んだ批判

    Steam評価75%という数字は、決して低くはない。しかし、「圧倒的に好評」とも言い難い微妙なラインだ。

    主な批判点は以下の3つ。

    1. グラフィックのダウングレード
    トレイラーで見せた美しいライティングや商品の質感が、製品版では劣化していると指摘する声が多い。特にロシア語圏のレビューで顕著だ。

    2. 夜間パートが短すぎる
    昼間の単調な作業に対して、夜の恐怖体験が物足りないという声。期待していたホラー要素が薄いと感じるプレイヤーも。

    3. 反復作業の多さ
    7日間同じことを繰り返すだけで、新しい展開が少ない。リプレイ性を謳っているが、実際には変化に乏しいという批判。

    一方で、擁護する声も少なくない。「この価格でこのクオリティなら十分」「雰囲気だけで元が取れる」「続編やアップデートに期待」といった肯定的な意見も目立つ。

    似て非なるゲーム──『僕、アルバイトォォ!!』との比較

    コンビニを舞台にしたゲームとして、『僕、アルバイトォォ!!』との比較は避けられない。

    『僕、アルバイトォォ!!』は、迷惑客をバールで殴り飛ばすコメディアクション。ネットミームを多用し、笑いを重視した作品だ。価格も700円と非常に安い。

    対して『HELLMART』は、真面目にホラー体験を追求している。笑いではなく、恐怖と緊張感。そして、プレイヤーの選択に意味を持たせている。

    どちらが優れているかではなく、どちらを求めているかだ。気軽に笑いたいなら『僕、アルバイトォォ!!』、じっくりと恐怖に浸りたいなら『HELLMART』。同じコンビニでも、まったく異なる体験が待っている。

    Silent Hillとスーパーマーケットシミュレーターの融合

    海外メディアGameSpewは、『HELLMART』を「Silent Hillとスーパーマーケットシミュレーターの融合」と評した。的確な表現だと思う。

    『Silent Hill』シリーズが持つ、日常に潜む狂気。普通の街が、普通のコンビニが、夜になると別の顔を見せる。その恐怖は、派手なモンスターではなく、「いつもと何かが違う」という微細な違和感から生まれる。

    『HELLMART』も同じアプローチを取っている。昼間の平凡な接客業が、夜には生死を賭けたサバイバルに変わる。この落差こそが、本作最大の魅力だ。

    GameSpewのレビュアーは、デモ版をプレイした後、「着替えを持ってくるべきだった」とコメントしている。それほどまでに、本作の恐怖は予想外だったのだろう。

    極北の孤独──ロケーションが生み出す絶望感

    『HELLMART』の舞台は、極北の地にある24時間営業のコンビニ。周囲は雪と森に囲まれ、最も近い街まで何キロも離れている。

    この「孤立」こそが、ゲームの恐怖を増幅させている。助けは来ない。逃げる場所もない。ただひたすら、7日間を生き延びるしかない。

    実際、ゲーム内では「なぜこの仕事を選んだのか」という主人公の動機が語られる。都会の喧騒から逃れたい。人と関わりたくない。簡単に稼げると思った──そんな理由で極北へ来たのだ。

    しかし、現実は甘くなかった。人里離れた場所だからこそ、「人間以外のもの」が跋扈する。皮肉にも、人を避けた結果、もっと恐ろしいものと向き合うことになったのだ。

    デモ版で試せる「最初の3日間」

    製品版の購入を迷っているなら、まずデモ版をプレイすることを強く推奨する。

    デモ版では、最初の3日間(3シフト)を無料で体験できる。昼間の接客業務から、夜間のホラー要素まで、ゲームの核心部分はすべて含まれている。

    デモ版のSteam評価は712件で87%が好評──製品版よりも高い評価だ。これは、デモの範囲内では非常に完成度が高いことを示している。逆に言えば、製品版の低評価は「デモ以降の展開が期待外れ」という声が多いのだろう。

    デモ版をプレイして、この雰囲気が気に入ったなら購入する。それで十分だと思う。

    日本語完全対応──ローカライズの質も高い

    『HELLMART』は、インターフェース、音声、字幕すべてが日本語対応している。しかも、ローカライズの質が非常に高い。

    ホラーゲームにおいて、言語の壁は致命的だ。微妙なニュアンスや、不気味な台詞の意味が理解できなければ、恐怖は半減する。

    その点、『HELLMART』の日本語訳は秀逸だ。客の不自然な会話、主人公の内面描写、ゲーム内の指示──すべてが自然な日本語で表現されている。

    対応言語は全15言語。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語など、主要言語はすべて網羅している。グローバル市場を意識した、本格的なインディータイトルだ。

    アップデートと今後の展開

    GAZE IN GAMESは、発売後も継続的にアップデートを行っている。コミュニティの声に耳を傾け、バランス調整やバグ修正を実施している姿勢は評価できる。

    公式Discordサーバーも活発で、開発者が直接プレイヤーと交流している。これは、インディースタジオならではの強みだ。

    今後のアップデートで期待されるのは、以下の要素だ。

    • 夜間パートのボリューム追加
    • 新しいエンディングルート
    • グラフィックの改善
    • 新しい敵タイプの追加
    • ニューゲームプラス要素

    特に、「ニューゲームプラス」の実装を望む声は多い。7日間クリア後、より高難度でやり込める要素があれば、リプレイ性は格段に向上するだろう。

    結論──「未完成の傑作」か「期待外れの凡作」か

    『HELLMART』は、賛否が真っ二つに分かれるゲームだ。

    雰囲気、設定、コンセプト──これらは間違いなく一級品。極北のコンビニという舞台設定、昼夜で変わるゲーム性、選択による分岐エンディング。すべてが魅力的だ。

    しかし、ボリューム不足、反復作業の多さ、グラフィックの劣化──これらの欠点も無視できない。「もっとコンテンツがあれば」「もっと夜が怖ければ」という声は、正当な批判だと思う。

    筆者の結論は、こうだ。

    「この価格で、このコンセプトを体験できるなら、買って損はない」

    確かに、100時間遊べるゲームではない。しかし、『HELLMART』にしか味わえない体験がある。極北のコンビニで、7日間を生き延びるという緊張感。客を救うか、見捨てるかという選択。そして、夜の静寂に潜む恐怖。

    これらは、他のゲームでは決して味わえない。

    もしあなたが、「雰囲気重視のホラーゲーム」が好きなら、『HELLMART』は試す価値がある。完璧ではないが、唯一無二の体験が待っている。

    まずはデモ版から。そして、極北の夜を生き延びてほしい。


    基本情報

    タイトル: HELLMART
    開発: GAZE IN GAMES
    パブリッシャー: GAZE IN GAMES
    リリース日: 2026年1月28日
    プラットフォーム: PC (Steam)
    価格: 1,700円
    日本語対応: あり(インターフェース/音声/字幕すべて対応)
    プレイ人数: 1人
    ジャンル: ホラー、シミュレーション、アドベンチャー、サバイバルホラー
    Steam評価: やや好評 (75% / 767件のレビュー)
    プレイ時間: 3-5時間(1周)

    購入リンク

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  • 放置ゲームなのに心臓がバクバク!?『Horripilant』で味わう狂気のダンジョン潜行

    放置ゲームなのに心臓がバクバク!?『Horripilant』で味わう狂気のダンジョン潜行

    「放置ゲームって、のんびり遊べるやつでしょ?」

     PC(Steam)向けゲーム『Horripilant』は、確かに放置ゲームだ。クリッカーであり、オートバトラーであり、リソース管理ゲームでもある。しかし、このゲームは「のんびり」とは程遠い。むしろ、プレイ中ずっと胃がキリキリするような、不穏で禍々しい雰囲気に包まれ続けるのだ。

     開発はカナダ・モントリオールのAlexandre Declos氏率いるPas Game Studio、パブリッシングはBlack Lantern Collective。2026年2月20日の配信開始から、Steamでは同時接続プレイヤー数4,219人のピークを記録し、ユーザーレビューは425件中91%が好評という「非常に好評」ステータスを獲得している。

     一体、この不気味な放置ゲームの何がプレイヤーを惹きつけるのか。筆者も実際にプレイして、その魅力と狂気を体験してきた。

    ドット絵が生み出す、名状しがたい恐怖

     ゲームを起動すると、まず目に飛び込んでくるのが独特のビジュアルスタイルだ。『Horripilant』のグラフィックは、ディザリングと呼ばれる手法で描かれた粗いドット絵。これが、レトロなコンピューターを思わせる不気味な雰囲気を醸し出している。

     プレイヤーは記憶を失った老騎士となって、忘れ去られたダンジョンの最深部で目を覚ます。腐敗の臭いが立ち込める暗闇。壁がプレイヤーの名前をささやく。そこにあるのは、一本の奇妙な木の芽だけだ。

     「叩け」と、声が命じる。

     筆者が最も感銘を受けたのは、このゲームの「見せ方」の巧みさだ。静止画のドット絵でありながら、各エリアに登場するクリーチャーたちは異様な存在感を放つ。壁の穴に潜む不気味な笑顔の存在、蠢く触手、歪んだ人型の何か。それぞれが一度見たら忘れられないデザインで、プレイヤーの脳裏に焼き付く。

     サウンドデザインも秀逸だ。ひび割れた合成音声、金属的な音、遠くから聞こえる呻き声。これらが相まって、B級ホラー映画的な、しかし確実に背筋が凍るような体験を生み出している。

    クリックこそがすべて! 資源管理の中毒性

     『Horripilant』のコアループは、極めてシンプルだ。木、石、鉄の3つの資源を集め、それを使って装備を強化し、ダンジョンに潜る。これを繰り返すだけ。

     しかし、この「繰り返すだけ」が、恐ろしいほど中毒性が高い。

     資源収集は最初、手動クリックで行う。木の芽をクリックすれば木材が、岩をクリックすれば石が手に入る。だが、ここで重要なのが「キラキラ」の存在だ。資源ノードに時折現れるキラキラをクリックすると、なんと通常の500倍の資源が手に入る。この瞬間の快感が、筆者の指を止めさせなかった。

     もちろん、ずっとクリックし続けるわけにはいかない。そこで登場するのが「ヘルパー」システムだ。お金を払ってヘルパーを雇えば、自動で資源を生成してくれる。ただし、ここに落とし穴がある。ストレージ容量を上げないと、すぐに資源が上限に達して生成がストップしてしまうのだ。

     筆者も最初のプレイで、この罠にハマった。「オフラインでも進むんでしょ?」と思って一晩放置したら、朝起きたときには数分で上限に達していて、ほとんど進んでいなかった。クリック値、ヘルパー、ストレージ、素材レベル。この4つをバランスよく上げていくことが、効率的な成長の鍵となる。

    オートバトルなのに、目が離せない戦闘システム

     資源を集めて装備を整えたら、いよいよダンジョン探索だ。戦闘はオートバトラー形式で、プレイヤーキャラクターと敵が自動的に攻撃し合う。装備している剣、兜、胸当て、レギンス、ブーツが、ダメージと耐久力を決定する。

     だが、完全放置というわけではない。戦闘中、敵に「ウィークポイント」が出現することがある。これをクリックすると追加攻撃が発動し、大ダメージを与えられる。さらに、敵の体力バーの下にある白いゲージにも注目が必要だ。これが満タンになると敵が攻撃してくるため、タイミングを見計らってウィークポイントを狙う必要がある。

     フロアのボスを倒すと、「ブーン」と呼ばれる一時的なステータスブーストを選択できる。攻撃力アップ、体力増加、クリティカル率上昇など、さまざまなブーンが用意されており、どれを選ぶかで戦略が変わる。ただし、ブーンは現在のランにのみ有効で、リバース(後述)すると消えてしまう点に注意だ。

     また、「ファミリア」と呼ばれる仲間クリーチャーを戦闘に連れて行くこともできる。ファミリアがいると、受けるダメージが自分とファミリアに均等に分散されるため、実質的に耐久力が2倍になる。筆者も、強敵との戦いではファミリアが生命線となった。

    リバースこそが真髄! ヘマライトで永続強化

     『Horripilant』で最も重要なシステムが、「リバース(転生)」だ。

     プレイを進めていくと、必ずどこかで壁にぶつかる。敵が強すぎて、いくら装備を整えても勝てなくなる瞬間が来る。そのとき、リバースの出番だ。

     リバースを実行すると、現在のランの進行状況はリセットされる。装備も、ブーンも、すべて失う。だが、代わりに「ヘマライト」と呼ばれる特殊な通貨を獲得できる。このヘマライトを使って「リバースツリー」のアップグレードを解放することで、次回以降のランが劇的に楽になるのだ。

     ダメージアップ、体力増加、資源生成量アップなど、ヘマライトで得られる永続強化は多岐にわたる。筆者も最初は「せっかく進んだのにリセット?」と躊躇したが、一度リバースを経験すると、その効果に驚愕した。それまで苦戦していた敵が、嘘のようにサクサク倒せるようになったのだ。

     では、いつリバースすべきか。答えは「効率が落ちたとき」だ。1フロアクリアにかかる時間が明らかに長くなり、敵の体力の伸びが自分のダメージ上昇を上回ったと感じたら、それがリバースのタイミング。粘っても得られるヘマライトは増えないため、さっさとリバースして次のランに挑んだほうが効率的なのだ。

    謎解きとストーリー。語られぬ物語の断片

     『Horripilant』には、明確なストーリーラインは存在しない。しかし、ダンジョンの各所に点在する謎めいた存在や、断片的なテキストから、何かしらの物語が見え隠れする。

     壁の穴に潜む不気味な存在に、なぜかカラスの嘴を渡すとリバースができるようになる。モールス信号で書かれたメモを解読すると、ランプの使い道が分かる。天使の像には、特定のアイテムを捧げる必要がある。

     これらの謎解き要素は、ゲーム進行に必須ではないものの、好奇心をくすぐる絶妙な塩梅で配置されている。筆者も、「この紫色の部屋は何だ?」「7つの光を全部点けると何が起こる?」と、次第にゲームの謎に取り憑かれていった。

     Discordコミュニティでは、プレイヤーたちが謎解きのヒントを共有し合っている。開発者のDeclos氏も積極的にコミュニティと交流しており、アップデートで新たな音声効果や調整が加えられている。この「まだ見ぬ何かがある」という感覚が、プレイヤーを飽きさせない要因の一つだろう。

    オートクリッカー禁止令!? 開発者の遊び心

     放置ゲームといえば、オートクリッカーを使いたくなるのが人情だ。しかし、『Horripilant』には面白い仕掛けがある。オートクリッカーを使うと、ジャンプスケアが発動するのだ。

     海外フォーラムで、あるプレイヤーが「デモ版で雰囲気が気に入って、いつものようにオートクリッカーを起動したら、突然のジャンプスケアで心臓が止まりかけた」と報告している。開発者のDeclos氏はこれに対し、にっこりと返信するのみ。

     この遊び心満載の仕掛けも、『Horripilant』の魅力の一つだ。プレイヤーを驚かせ、笑わせ、そして恐怖させる。すべてが計算されたデザインなのだ。

    1000フロア、そしてその先へ

     『Horripilant』のダンジョンは1000フロア以上続く。筆者も現時点で25フロアまで到達したが、まだまだ先は長い。敵の種類は16種類と決して多くないが、フロアが進むにつれて、敵の配色や挙動が変化し、新たな脅威となって立ちはだかる。

     Steam実績は57個用意されており、やり込み要素も充実している。「一度も攻撃を外さずにボスを倒す」「特定のアイテムを集める」など、チャレンジングな実績が多数存在する。

     また、サポーターパック(別売)を購入すると、ディザリングシェーダーをオフにして、本来の高解像度グラフィックを楽しめる機能や、カスタムポートレート機能が解放される。自分だけの騎士で、ダンジョンに挑めるのだ。

    結論:放置ゲームの皮を被った、中毒性MAXのホラー体験

     『Horripilant』は、放置ゲームとしても、クリッカーとしても、ホラーゲームとしても一級品だ。

     シンプルなゲームループながら、資源管理の戦略性、リバースシステムの爽快感、そして何より、この独特の不穏な雰囲気が、プレイヤーを虜にする。筆者も気が付けば5時間以上プレイしており、「もう一回だけリバースしよう」「次のフロアまで進もう」と、辞め時が分からなくなっていた。

     唯一の欠点は、進行速度の遅さだ。特に序盤は1フロアクリアに数分かかることもあり、「もっとサクサク進みたい」と感じる瞬間もあった。また、敵の種類が16種類と少なめで、長時間プレイすると飽きを感じる可能性もある。

     しかし、それを補って余りあるのが、このゲームの独特な魅力だ。ポッドキャストを聞きながら、音楽を流しながら、あるいはSteam Deckで寝転びながら。『Horripilant』は、どんなプレイスタイルにも対応する懐の深さを持っている。

     定価920円(現在10%オフで828円)という価格も魅力的だ。この価格で、何十時間も遊べる中毒性の高いゲーム体験が手に入る。

     「放置ゲームって、のんびり遊べるやつでしょ?」と思っているあなた。『Horripilant』は、その常識を覆すだろう。禍々しいダンジョンで、あなたも狂気の放置体験を味わってみてはいかがだろうか。


    基本情報

    ゲーム名: Horripilant
    開発: Alexandre Declos, Pas Game Studio
    パブリッシャー: Black Lantern Collective
    プラットフォーム: PC (Steam)
    発売日: 2026年2月20日
    価格: 920円(10%オフで828円、3月7日まで)
    日本語対応: あり
    プレイ時間: 10時間以上(1000フロア到達まで)
    難易度: 中程度
    Steam評価: 非常に好評(425件中91%が好評)


    購入リンク

    Steam:
    https://store.steampowered.com/app/3525970/Horripilant/

    サポーターパック(DLC):
    https://store.steampowered.com/app/4326710/Horripilant__Supporter_Pack/


    公式リンク

    公式サイト(itch.io):
    https://pasgame.itch.io/horripilant

    開発者Twitter/X:
    https://x.com/PasGameStudio

  • 人喰いエレベーターに乗って地下へ。最大6人協力プレイの協力型ホラー『人喰ノ檻 ーKLETKA』正式リリース

    人喰いエレベーターに乗って地下へ。最大6人協力プレイの協力型ホラー『人喰ノ檻 ーKLETKA』正式リリース

    Steam で漁っていたら、なんとも不思議なタイトルに出会った。『人喰ノ檻 – KLETKA』。人喰い……エレベーター? その組み合わせだけで十分に好奇心をそそられる。Callback と ln404 が手掛けた本作は、最大6人で協力してギガストラクチャーと呼ばれる巨大建造物を探索する、一風変わった協力型ホラーゲームだ。

    2024年12月13日に早期アクセスが開始され、2026年2月19日に正式版がリリースされた本作は、Steam で「非常に好評」(91%)という高評価を獲得している。ホラーゲームといえば一人でプレイするイメージが強いが、本作は仲間と協力しながら進める点が最大の特徴だ。ただし、その仲間が「良き友」になるか「良き燃料」になるかは……プレイヤー次第である。

    生きたエレベーターに餌を与え続けろ

    プレイヤーは犯罪者として KLETKAに送られ、「ギガストラクチャー」と呼ばれる無限に拡張を続ける建造物の深層へ降りていく刑罰を受ける。移動手段は生きたエレベーター「クレトカ」だけ。このエレベーターは常に空腹で、燃料だろうが肉だろうが、ましてやモンスターだろうが何でも食べる雑食性。

    クレトカに餌を与え続けなければ、今度はプレイヤー自身が食べられてしまう。各フロアを探索して燃料や素材を集め、エレベーターを満たしながら下へ下へと進んでいく。フロアは危険なトラップや異常な通路で構成されており、一歩間違えればそのフロアが最後になる可能性もある緊張感が常につきまとう。

    さらに恐ろしいのが「サモスボル」と呼ばれる謎の異常現象。サイレンが鳴り響いたら、すべてを捨ててエレベーターに駆け込むしかない。この現象から生き延びた者はこれまで一人もおらず、唯一の避難場所が皮肉にも人喰いエレベーターというのが本作の皮肉な設定だ。

    協力と裏切りが隣り合わせ

    本作は最大6人までの協力プレイに対応している。仲間と役割を分担し、資源を集め、互いに支え合いながら進むのが基本戦略だ。しかし、極限状態では仲間同士が「燃料」になる可能性もあるという、緊張感あふれる設計が特徴的。

    ソロプレイも可能だが、難易度はかなり高め。仲間がいれば、トラップの解除、モンスターとの戦闘、資源の収集などを分担できるため、生存率が格段に上がる。ただし、信頼できる仲間と組むか、それとも裏切りのリスクを抱えながら進むかは、プレイヤーの判断に委ねられる。

    公式サイトには「君たちが支え合えば、良き友となるが… 仲間は良い燃料にもなる」という不穏なフレーズが記されており、協力と裏切りが常に隣り合わせであることを示唆している。

    レトロなビジュアルが恐怖を演出

    本作の大きな特徴の一つが、PlayStation 1 を思わせるレトロなドット絵グラフィックスだ。粗いピクセルアートと不気味なサウンドデザインが相まって、独特の雰囲気を醸し出している。

    開発者の Callback と ln404 は、ポストソビエトの廃墟的な世界観を表現するために、あえて低解像度のビジュアルを採用。暗い通路、錆びついた機械、不気味な影が動くフロアなど、レトロなグラフィックスだからこそ生まれる恐怖感が味わえる。

    また、音楽もこだわりのポイント。トレーラーではレイブのような激しい音楽が流れる一方、探索中は Minecraft のようなアンビエント系の BGM が流れ、プレイヤーを不安にさせる。カセットテープを集めることで、様々な音楽を楽しめるコレクション要素も用意されている。

    早期アクセスから好評を獲得

    2024年12月13日に早期アクセスが開始されて以来、本作は継続的にアップデートを重ねてきた。正式版リリースに向けて、新バイオーム「Prison Sector(監獄セクター)」の追加、クイックプレイ機能の改善、ボイスチャット対応、ワードローブ機能、新アチーブメント、新スキンなど、多数のコンテンツが追加されている。

    現在、Steam ユーザーレビューでは約4,500件中91%が好評という「非常に好評」ステータスを獲得。『Lethal Company』に似た感触であるとして定評を得ており、特に人喰いエレベーターを含むコンセプトや世界観が持ち味となっている。

    また、本作はクロスプラットフォームプレイにも対応。Steam、Epic Games Store、Xbox、PlayStation 4/5 間でフレンドと一緒にプレイできる(Nintendo Switch 版は後日配信予定)。PC とコンソール間でプレイする場合は「crossplay-stable」ブランチに切り替える必要があるが、Steam と EGS 間では制限なくプレイ可能だ。

    独自の世界観とゲームプレイ

    本作が他の協力型ホラーと一線を画すのは、そのユニークな設定にある。単なるモンスターからの逃走ではなく、「生きたエレベーター」という存在が常にプレイヤーと共にあり、脅威でもあり保護者でもあるという二面性を持つ。

    ギガストラクチャーは無限に拡張を続ける建造物という設定も興味深い。プレイヤーが降りれば降りるほど、新たな謎と危険が待ち受けている。一体、この建造物の最深部には何があるのか。そして、なぜ生きたエレベーターが必要だったのか。ストーリーを進めることで、徐々に明かされていく世界観も魅力の一つだ。

    『人喰ノ檻 – KLETKA』は、協力型ホラーゲームに新たな風を吹き込む作品として注目に値する。レトロなビジュアル、独特の世界観、そして協力と裏切りが交錯するゲームプレイ。フレンドと一緒にスリリングな体験を求めるなら、ぜひチェックしてほしい一作だ。

    基本情報

    タイトル: 人喰ノ檻 – KLETKA
    開発元: Callback, ln404
    パブリッシャー: Callback, ln404
    早期アクセス開始日: 2024年12月13日
    正式リリース日: 2026年2月19日
    対応プラットフォーム: PC (Steam / Epic Games Store), PS5, PS4, Xbox Series X|S, Xbox One, Nintendo Switch(後日配信)
    価格: Steam 版 1,200円(税込)
    日本語対応: あり
    プレイ人数: 1〜6人(協力プレイ対応)

    購入リンク:

  • 「猫を育てて戦う」なんて発想、誰が思いつくんだ?『Mewgenics』14年の開発期間を経てついにリリース

    「猫を育てて戦う」なんて発想、誰が思いつくんだ?『Mewgenics』14年の開発期間を経てついにリリース

    正直に告白しよう。最初にMewgenicsのトレイラーを見た時、筆者は困惑していた。画面にはキモ可愛い猫たちがうろうろしており、なぜか戦闘をしている。「なにこれ?」というのが第一印象だった。

    しかし、実際にプレイしてみると、その印象は180度変わってしまった。これは単なる「猫ゲー」ではない。Edmund McMillenとTyler Glaielが14年の歳月をかけて作り上げた、とんでもないシステムの化け物だったのだ。

    まさかの遺伝システム!猫の血統管理がこんなに奥深いなんて

    Mewgenicsの核となるのは、猫の「繁殖システム」だ。プレイヤーは自宅で猫を飼い、繁殖させて、より強力な戦士猫を生み出していく。まるでポケモンの育成とXCOMの戦術が融合したような、前代未聞のゲーム体験がここにある。

    各猫は独自の能力と特性を持っており、繁殖を通じてそれらが子孫に受け継がれていく。筆者が特に驚いたのは、遺伝システムの複雑さだ。単純に「強い猫同士を掛け合わせれば最強の子猫が生まれる」というわけではない。時には予想外の突然変異が起こり、全く新しい能力を持つ猫が誕生することもある。

    実際に80時間以上プレイした今でも、新たな組み合わせを発見する度にワクワクしてしまう。これこそが『The Binding of Isaac』を手がけたEdmund McMillenらしい、無限の可能性を秘めたデザインなのだろう。

    戦術こそがすべて!ターン制バトルの奥深さに震える

    繁殖で生み出した猫たちは、4匹のチームを組んでダンジョンに挑戦していく。戦闘はグリッド形式のターン制で、各猫にはファイター、メイジ、クレリック、タンクなど14以上のクラスが用意されている。

    驚くべきは、各クラスが75の固有アビリティを持っているということだ。つまり、ゲーム全体で1000以上のアビリティが存在する計算になる。これに900種類以上のアイテムが加わることで、まさに無限とも言える戦術の可能性が広がっている。

    戦闘で負けても、猫は死亡するわけではない。代わりに負傷し、続けて戦わせれば最終的に死んでしまう。この絶妙なバランスが、プレイヤーに常に重要な選択を迫ってくる。強力な猫を危険な任務に送り込むべきか、それとも安全な場所で血統を守るべきか——。

    こんなボリューム、狂気の沙汰だ!200時間超えの大冒険

    開発者のEdmund McMillenは公式に「平均的なプレイヤーがゲームをクリアするのに200時間以上、100%達成には500時間以上かかる」と発言している。実際、筆者も100時間プレイしているが、まだ全体の30%程度しか見えていない気がする。

    ゲームには281の実績が用意されており、隠し要素や秘密のコンテンツも膨大に存在する。開発者のTyler Glaielは「プレイヤーが発見に数か月、数年かかるような小さな要素がたくさんある」と語っている。まさに掘れば掘るほど新しい発見があるゲームなのだ。

    賛否両論のユーモアセンス——愛せるかどうかが運命の分かれ道

    Edmund McMillenお馴染みの、下品で悪趣味なユーモアは健在だ。猫の排泄物を利用したアビリティや、露骨な性的描写を含むシーンなど、人によっては不快に感じる要素も多数含まれている。

    実際、Steam上のレビューでも「ゲームシステムは素晴らしいが、ユーモアセンスが受け入れられない」という意見が散見される。特に、NPCキャラクターたちの政治的なジョークや時事ネタは、人によっては「時代遅れ」「不適切」と感じられるかもしれない。

    しかし、この悪趣味さこそがMcMillen作品の魅力でもある。『The Binding of Isaac』で培われた独特の世界観を愛しているファンにとって、Mewgenicsは期待を裏切らない仕上がりになっている。

    基本情報

    開発者: Edmund McMillen, Tyler Glaiel
    パブリッシャー: Edmund McMillen, Tyler Glaiel
    プラットフォーム: PC (Steam)
    リリース日: 2026年2月10日
    価格: 3,400円(発売記念10%割引あり)
    プレイ時間: 200時間超(メインキャンペーン)
    難易度: 高
    日本語対応: あり

    Steam評価: 非常に好評(93%の高評価、8,553件のレビュー)

    購入リンク

    公式リンク

  • 薄暗いキャビンで運命のダイスを振れ!『Pirate’s Gambit』は恐怖とスリルが絶妙にブレンドされたローグライク・ダイスビルダー

    薄暗いキャビンで運命のダイスを振れ!『Pirate’s Gambit』は恐怖とスリルが絶妙にブレンドされたローグライク・ダイスビルダー

    ダイスの目が運命を左右する。そんなスリルを味わえる新作インディーゲームが登場した。2026年2月5日にSteamでリリースされた『Pirate’s Gambit』は、デッキ構築とヨット・ダイス・メカニクスを融合させた、これまでにないローグライク体験を提供してくれる作品だ。

    最初に本作をプレイしたとき、「また海賊ゲームか」と思っていた私の考えは、薄暗いキャビンでダイスを振った瞬間に一変した。これは単なる海賊アドベンチャーゲームではない。運命そのものとの駆け引きを楽しむ、独創的な恐怖体験なのだ。

    ダイスに支配されるのか、それともダイスを支配するのか

    本作の魅力は、なんといってもダイスとカードが織りなす絶妙なシナジーシステムにある。プレイヤーはキャプテン・キッドが残した不気味な賭けに足を踏み入れ、薄暗いキャビンでダイスを振りながらデッキを構築していく。

    ダイスの出目によってカードの効果が決まり、カードによってダイスの価値が変化する——この相互作用が生み出すコンボの可能性は無限大だ。Balatroのようなシナジーの快感と、『Inscryption』を彷彿とさせる不気味な雰囲気が見事に融合している。

    実際にプレイしてみると、「このダイスの目なら、あのカードと組み合わせて…」という思考が止まらなくなる。運任せかと思いきや、実は戦略性が非常に高い。ダイスという不確定要素を計算に入れながら最適解を探る過程は、まさに知的パズルそのものだった。

    「バラトロ以来の中毒性」Steam高評価の理由

    Steam上で94%の「非常に好評」を獲得している理由が、プレイして数時間で理解できた。ユーザーレビューでは「バラトロの代替として完璧」「目が疲れにくく、雰囲気が最高」「常に『もう一回だけ』と思わせる中毒性」といった声が多数寄せられている。

    特に印象的だったのは、マップ移動が独自のリソース管理パズルになっている点だ。ランダムに進むか、限られたツールを消費して確実なルートを選ぶか——この選択が戦略の幅を大きく広げている。

    プレイヤーの一人は「コンパスとニルヴァナカードのコンボで無双していたのに、ラスボスの呪いで戦略が破綻した時は本当に悔しかった」とコメント。このような予想外の展開が、プレイヤーを夢中にさせる要因の一つなのだろう。

    計算されたバランスと継続的なアップデート

    開発チームの丁寧な調整も本作の魅力だ。バージョン1.0.2では、深淵の契約カードの効果強化やリフォージカードのコイン獲得量増加など、プレイヤーフィードバックに基づいた改良が施されている。

    モーフダイスやカオスダイスの効果表示改善、カードスロット上限時の自動シュレッダー出現など、細かな配慮も光る。「公正な海風を」という開発チームからのメッセージからは、長期的なサポートへの意気込みが感じられた。

    難易度については「イージーすぎず、ハードすぎず」という絶妙なバランス。最初は戸惑うものの、システムを理解すれば着実に進歩を実感できる設計だ。実際、3桁の時間をプレイすることになりそうな予感がしている。

    ダークで不気味な海洋冒険

    ビジュアル面では、海賊テーマのメニュー、スタイリッシュなオープニングシーケンス、陰鬱な雰囲気が完璧にマッチしている。灼熱の火山から凍てつく荒野まで、多彩な環境を航海しながら、船に隠された長年の秘密を徐々に明かしていく展開は圧巻だ。

    チャレンジモード、実績システム、中断可能なセーブ機能など、現代的なローグライクに求められる要素もしっかりと搭載。プレイヤーが最後のイベント地点から再開できる親切設計は、忙しい現代人にも優しい。

    「果たして自分がダイスをコントロールしているのか、それともダイスのゲームの単なる駒なのか?」——本作が投げかけるこの問いは、プレイし続けるほどに深みを増していく。

    まとめ:2026年の隠れた傑作

    『Pirate’s Gambit』は、ダイスビルダーというニッチなジャンルに新たな可能性をもたらした作品だ。『Slay the Spire』や『Inscryption』といった名作の影響を受けながらも、独自のアイデンティティを確立している。

    現在Steamで15%オフの1,020円で販売中。2026年初頭の隠れた傑作として、強く推奨したい一作だ。


    基本情報

    • 開発者: Domestic Black Cat
    • パブリッシャー: Studio Amateur
    • プラットフォーム: PC (Windows/Mac)
    • リリース日: 2026年2月5日
    • 価格: 1,200円(現在15%オフで1,020円)
    • 日本語対応: あり
    • プレイ時間: 1プレイ約1-2時間
    • 難易度: 中程度(学習曲線あり)

    購入リンク

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  • 銛一本で挑む霧の海!Chilla’s Artが送る新境地のサバイバル漁ゲー『UMIGARI』が予想以上にクセになる

    銛一本で挑む霧の海!Chilla’s Artが送る新境地のサバイバル漁ゲー『UMIGARI』が予想以上にクセになる

    正直言って、最初に『UMIGARI』のデモを起動したとき「これ、本当にChilla’s Artのゲームか?」と疑った。日本のホラーゲーム界で独特な地位を築いている同デベロッパーの新作は、なんと銛で魚を狩る一人称視点の漁ゲーム。しかも公式サイトでは「ホラー要素は非常に軽い」と明言されている。

    ところが実際にプレイしてみると、これが想像以上に奥深いサバイバル体験で、気付けば霧の海の向こうに潜む「何か」を求めて夢中で銛を振るっていた。

    最初は普通の漁だった……はずなのに

    ゲームの舞台は、霧に包まれた日本近海。プレイヤーは小さな漁船に乗り込み、銛を使って魚を捕獲していく。基本的な流れは実にシンプル。魚を捕る→港で売る→燃料と装備を補給する→より深い海域へ向かう。この繰り返しだ。

    操作も直感的で、マウスで照準を合わせ、タイミングよく銛を投げるだけ。最初のうちは普通のサバやアジが釣れて「なるほど、リアル志向の漁ゲーかな」と思っていた。

    ところが、燃料をアップグレードして少し沖に出てみると……事態は一変する。見たこともない巨大な魚影が現れたかと思えば、明らかに現実離れした姿の海洋生物が泳いでいる。そして何より、霧の向こうから聞こえてくる不可解な音。

    「あ、やっぱりChilla’s Artだった」

    銛の精度こそがすべて!

    『UMIGARI』の最大の魅力は、銛による狩猟システムの絶妙なゲームバランスにある。単純に見えて実は奥が深い。

    魚には種類ごとに異なる行動パターンがあり、動きを読んで先回りして銛を投げる必要がある。小さな魚は素早く逃げ回り、大型の魚は重厚な動きで威圧してくる。特に深海に生息する異形の生物たちは、時として反撃してくることもあり、船体へのダメージも考慮しなければならない。

    銛自体にも種類があり、射程や威力、リロード時間などが異なる。序盤の短い銛では届かない深度の魚も、アップグレードを重ねることで狙えるようになる。この成長要素が実によく練られており、「もう少し長い銛があれば……」「燃料をもっと積めれば……」と常に次の目標が見えている状態を作り出している。

    霧の向こうに潜む謎だけど怖くはない

    Chilla’s Artファンなら気になるのが、果たしてどの程度ホラー要素があるのかという点だろう。結論から言えば、確かに「非常に軽い」レベルのホラーだった。

    とはいえ、同スタジオらしい不気味な演出は健在。霧に包まれた海域で聞こえてくる謎の音響、時折姿を現す巨大な影、そして魚商人の妙に人懐っこい笑顔……。直接的な恐怖はないものの、「何か変だな」という違和感は常についてまわる。

    特に印象的だったのが、深海探索中に遭遇した巨大なクラーケンのような生物。攻撃してくるわけではないのだが、その存在感だけで背筋がゾクッとした。こういった「説明されない存在」の描写は、さすがChilla’s Artといったところ。

    2~4時間でちょうどいいボリューム感

    プレイ時間は公式発表通り2~4時間程度。この手のサバイバルゲームにしては短めだが、濃密な体験が詰まっており、飽きる前にエンディングを迎えられる絶妙な長さだと感じた。

    むしろ長すぎると、同じことの繰り返し感が出てしまいそうなので、この判断は正解だろう。週末の空いた時間でサクッと完走できるのも嬉しいポイントだ。

    ただし、やりこみ要素として全種類の魚を捕獲するコンプリート要素もあるため、人によってはもっと長時間楽しめるはず。筆者も記事執筆時点でまだ見たことのない魚影をいくつか確認しており、再プレイ欲をそそられている。

    基本情報

    ゲーム名: UMIGARI | ウミガリ
    開発・販売: Chilla’s Art
    配信日: 2026年2月5日
    価格: 1,500円(通常価格)※2026年2月19日まで現在20%オフセールで1,200円
    プラットフォーム: PC(Steam)
    日本語: 完全対応(音声・字幕)
    プレイ時間: 2~4時間
    ジャンル: 一人称視点アクション・サバイバル・探索

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  • 声で魔法を唱える?『YAPYAP』が協力型ホラーに革命を起こした理由

    声で魔法を唱える?『YAPYAP』が協力型ホラーに革命を起こした理由

    「ブリンク!ブリンク!ブリンク!」叫び続けた夜

    最初に『YAPYAP』をプレイした夜、私は友人たちと一緒にモニターの前で絶叫していた。「ブリンク!ブリンク!ブリンク!」と必死に叫びながら、巨大な椅子のモンスターから逃げ回っていた。声がかすれるほど叫んだ。隣の部屋から「うるさい」と怒られた。でも、それでも叫び続けた。なぜなら、このゲームでは声が武器だからだ。

    Steam上で「非常に好評」を獲得し、リリース後わずか数時間で約10,000人の同時接続を記録した『YAPYAP』。Lethal Companyの系譜を継ぐ「フレンドスロップ」ホラーの新星として注目を集めているこのゲームは、従来の協力型ホラーとは一線を画す革新的なシステムを持っている。それが「音声認識による呪文詠唱」だ。

    ボタンを押すのではなく、実際に声を出して魔法を発動する。この一点だけで、『YAPYAP』は他のどんな協力型ホラーゲームとも違う体験を提供してくれる。

    魔導師の手下になって、ライバルの塔を荒らしまくれ!

    『YAPYAP』のコンセプトはシンプルかつ痛快だ。プレイヤーは月のような顔をした大魔導師に召喚された手下となり、最大5人の仲間とともにライバル魔導師の塔に侵入する。目的はただ一つ──徹底的に破壊工作を行うこと。

    ピアノを壊せ。トイレを詰まらせろ。カーペットを汚せ。相手の魔導師の一日を台無しにするため、あらゆる迷惑行為を行ってポイントを稼ぐ。これが「破壊目標(Vandalism Target)」と呼ばれる本作の核心的なゲームプレイだ。

    通常の協力型ホラーゲームでは、プレイヤーは怯えながらアイテムを集め、モンスターから逃げ回る被害者の立場だ。しかし『YAPYAP』では、あなた自身が問題を起こす側になる。この視点の転換が、ゲームに独特の爽快感と混沌をもたらしている。

    塔の中には高価な家具、美しい調度品、手入れされた植物などが配置されており、それらを魔法で破壊することでポイントを獲得できる。制限時間内に目標ポイントに到達すれば、その日のノルマ(Quota)達成となる。達成すればゴールドを獲得し、次のクオータに進むことができる。失敗すれば……まあ、魔導師に怒られるだけだ。また挑戦すればいい。

    「ブリンク」「プッシュ」「フィッシファイ」──声で唱える多彩な魔法

    本作最大の特徴が、音声認識による呪文詠唱システムだ。マイクに向かって呪文を唱えることで、実際に魔法が発動する。しかも発音が重要なため、どんなに緊迫した状況でも正確に発音しなければならない。

    最初に手に入るのは「Wind Wand(風の杖)」。これは基本的な攻撃魔法で、「Push(プッシュ)」と唱えれば風で物を押し、「Pull(プル)」と唱えれば引き寄せることができる。シンプルだが、物を壊すには十分な威力を持っている。

    しかし、本作の真価はショップで購入できる上位の杖にある。

    Fire Wand(炎の杖):「Fire(ファイア)」と唱えると火球を発射し、高いダメージを与える。DPS特化型の攻撃魔法で、モンスター相手にも有効だ。

    Grotesque Wand(グロテスクな杖):最もユニークな杖の一つ。「Sneeze(スニーズ)」と唱えるとくしゃみ攻撃を繰り出し、「Fishify(フィッシファイ)」と唱えると敵を魚に変えることができる。そう、魚だ。巨大なモンスターがピチピチと跳ねる魚になる光景は、一度見たら忘れられない。

    Teleportation & Movement Spells:「Blink(ブリンク)」でテレポート、「Float(フロート)」で浮遊、「Levitate(レビテート)」で物体を浮かせることができる。これらの移動魔法は、塔の複雑な構造を攻略する上で必須となる。

    Utility Spells:「Clone(クローン)」で分身を作り、「Disguise(ディスガイズ)」で変装し、「Confuse(コンフューズ)」で敵を混乱させる。戦略的に使えば、モンスターを欺いて安全に破壊工作を進められる。

    音声認識の精度は驚くほど高い。英語だけでなく、日本語を含む多言語に対応しており、中国語(北京語)にも対応している。ただし、発音が曖昧だったり、周囲の雑音が多いと誤認識される場合がある。実際、カジュアルな会話中に偶然「ブリンク」に似た言葉を発してしまい、友人を崖から突き落としてしまったこともあった。

    また、パズル要素にも音声認識が組み込まれている。ある部屋では、巨大な円盤状のパズルがあり、ボールを中心に導く必要がある。このパズルは「OOOOOO」と高い声を出せば左に回転し、「EEEEEE」と低い声を出せば右に回転する。チーム全員で叫びながらパズルを解く体験は、笑いと緊張が入り混じった奇妙な楽しさがある。

    ジェスターとアーマーチェア──塔を守る恐怖のモンスターたち

    破壊工作を邪魔するのが、塔に配置された魔法生物とモンスターたちだ。彼らはプレイヤーを発見すると追跡し、捕まれば即死またはノックダウンされる。

    Jester(ジェスター):最も恐れられているモンスターの一つ。ピエロのような姿をしており、プレイヤーを発見すると猛烈な速度で追いかけてくる。一度ロックオンされると逃げるのは極めて困難で、壁を貫通して攻撃してくることもある。杖のクールダウン中に遭遇すると、ほぼ確実に死が待っている。

    Armchair(アーマーチェア):歩く椅子のモンスター。見た目はコミカルだが、攻撃力は馬鹿にできない。近づいてきたら即座に「ブリンク」でテレポートするか、「プッシュ」で押し返すのが定石だ。

    その他の魔法生物:塔には他にも様々な魔法生物が徘徊している。それぞれが異なる行動パターンを持ち、対処法を学ぶ必要がある。

    AIの挙動は一貫性がなく、時には「脳死状態」のように動かず、時には「特殊部隊並み」の精度でプレイヤーを追跡する。この不安定さが、本作のホラー要素をさらに増幅させている。予測不可能な敵は、予測可能な敵よりも遥かに恐ろしい。

    ソロプレイは地獄、マルチプレイは天国

    『YAPYAP』を語る上で避けて通れないのが、マルチプレイの重要性だ。はっきり言おう──このゲームをソロでプレイするのは地獄だ。

    経済バランスはチームプレイを前提に設計されており、ソロでは稼げるゴールドが少なく、強力な杖を購入するまでに膨大な時間がかかる。モンスターも複数人で注意を分散させることを前提にデザインされており、一人では対処しきれない。そして何より、ソロプレイでは本作最大の魅力である「混沌とした楽しさ」が失われてしまう。

    一方、3〜6人でプレイすると、『YAPYAP』は本領を発揮する。チームメイトが「ブリンク!ブリンク!」と叫びながらジェスターから逃げ回る姿を見たり、誰かが「フィッシファイ」でモンスターを魚に変えて全員が爆笑したり、パズルを解くために全員で奇声を上げたり──これらの体験は、マルチプレイでしか味わえない。

    ただし、リリース時点ではパブリックマッチメイキングが実装されていない。つまり、ランダムプレイヤーとのマッチングはできず、基本的にフレンドとプレイする必要がある。開発チームはフレンドリスト機能やプライベート/パブリック/フレンドオンリーのロビー設定を追加したと発表しているが、完全なパブリックマッチメイキングはまだ実装されていない。

    友人がいない場合は、Discordコミュニティに参加してプレイヤーを探すのが最善の選択肢だ。

    PS1風グラフィックと技術的な課題

    ビジュアル面では、『YAPYAP』は「呪われたPS1」美学を採用している。重いピクセルフィルター、低ポリゴンモデル、粗いテクスチャが組み合わさり、独特の不気味な雰囲気を醸し出している。このレトロなグラフィックスタイルは、現代のホラーゲームにはない独特の恐怖感を生み出している。

    しかし、技術的な面では課題も多い。

    バグの多さ:床をすり抜けて落下する、杖が虚空に消える、クラッシュでセーブデータが消えるなど、数多くのバグが報告されている。私自身、良い進行状況を記録していたセッション中にクラッシュし、すべてを失った経験が3回ある。

    パフォーマンス問題:低スペックPCでの最適化が不十分で、フレームレートが10〜15fpsまで低下することがある。グラフィック設定のオプションが限られており、特に解像度設定がパフォーマンスに大きく影響するにも関わらず、調整の幅が狭い。

    ネットワークの不安定さ:協力プレイ中に、一部のプレイヤーが他のプレイヤーの画面では浮遊して動かないように見えるデシンク問題が発生する。再接続で解決できる場合もあるが、頻繁に発生するため煩わしい。

    音声認識の誤動作:バックグラウンドノイズや訛りがある場合、音声認識の精度が低下する。また、偶発的な友好的火力(味方への誤射)も頻発する。

    開発チームはアクティブにパッチをリリースしており、コミュニティのフィードバックに積極的に対応している。リリース後数日で複数のパッチがリリースされ、マップからプレイヤーがスタックした際にテレポートできる機能や、中国語音声認識の改善などが実装された。

    経済バランスと「金持ちはより金持ちに」問題

    『YAPYAP』の経済システムには、重大な欠陥がある。それが「富の格差」問題だ。

    ゴールドは共有制だが、稼ぎにくい。3回のランを重ねてようやくFire Wandを購入できる程度のゴールドが貯まるが、バグやワンショットメカニックで死亡すると装備をすべて失う。そして、それを取り戻すためにまた1時間かかる。

    Wind Wand(基本装備)はQuota 2以降ではほぼ無力になるが、他の杖を購入する余裕がない。これにより「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏に」というループが発生する。一度悪いランが続くと、夜全体が台無しになる。

    この経済バランスは、ゲームの最大の欠点の一つだ。装備を失うこと自体はジャンルの定石だが、その喪失が「プレイヤーの時間を尊重していない」と感じられる点が問題だ。

    それでも『YAPYAP』は特別だ

    技術的な問題、経済バランスの不備、ソロプレイの厳しさ──これらすべての欠点を認めた上で、それでも『YAPYAP』は特別なゲームだ。

    このゲームが生み出す「自然発生的なコメディ」は、AAA級のスタジオが何億円かけても再現できない。友人が「ブリンク!」と叫びながらモンスターから逃げ回る姿、誰かが偶然にも味方を魚に変えてしまった瞬間の爆笑、パズルを解くために全員で奇声を上げる光景──これらは台本では書けない、プレイヤー同士の相互作用から生まれる純粋な楽しさだ。

    サンドイッチ一個分の価格(通常1,200円、セール中960円)で、友人たちと何時間も笑い転げる体験を提供してくれる。それだけで十分な価値がある。

    多くの低評価レビューが「アップデートがあれば評価を変えたい」と締めくくっているのは、このゲームの潜在能力を誰もが信じているからだ。開発チームのMaison Bapは、前作『BAPBAP』でも同様に82%の好評価を獲得しており、コミュニティへの対応力には定評がある。

    欠陥だらけの杖であっても、放たれる閃光は本物の魔法だった。

    基本情報

    ゲーム名:YAPYAP
    開発元:Maison Bap
    パブリッシャー:Maison Bap
    対応プラットフォーム:PC(Steam)
    リリース日:2026年2月3日
    価格:¥1,200(リリース記念セール:¥960 / 2月18日まで)
    プレイ人数:1〜6人(協力プレイ)
    対応言語:日本語、英語、中国語(簡体字・繁体字)、フランス語、スペイン語ほか
    Steam評価:非常に好評(82% / 1,020件以上のレビュー)

    システム要件

    • 最低:Core i5 6600、GeForce GTX 970相当以上
    • 推奨:より高性能なCPU/GPU(最適化が不十分なため)

    ジャンル:協力型ホラー、マルチプレイヤー、音声認識アクション、ダンジョンクローラー
    プレイ時間:1セッション30分〜1時間程度
    難易度:中〜高(チームプレイ前提、AIの不安定さ)

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