カテゴリー: メトロイドヴァニア

  • 美しくも過酷な宇宙の方舟で、小さなロボットが紡ぐ壮大な物語─『MIO: Memories in Orbit』

    美しくも過酷な宇宙の方舟で、小さなロボットが紡ぐ壮大な物語─『MIO: Memories in Orbit』

    「また、よくあるHollow Knightのフォロワーか」 正直に白状しよう。フランスのDouze Dixièmesが放った本作のトレイラーを見たとき、僕はそう思って斜に構えていた。だが、朽ちゆく宇宙船「Vessel」に足を踏み入れて数時間、僕は自分の浅はかさを呪うことになった。

    2026年1月20日にリリースされ、またたく間にSteamで85%の高評価を叩き出した『MIO』。これは単なる模倣作ではない。圧倒的な「テクノ・マジック」のアートスタイルと、プレイヤーの甘えを一切許さない骨太な設計が融合した、新たな時代の傑作だった。

    崩壊寸前の宇宙船「Vessel」という舞台

    物語の舞台は「Vessel(ヴェッセル)」と呼ばれる巨大な宇宙船。かつては何千もの生命を運ぶ方舟として機能していたこの船は、今や制御不能の植物と暴走した機械に覆われた廃墟と化している。

    プレイヤーが操作するのは、MIOという名の小さなアンドロイド。記憶を失った彼女が目覚めたとき、Vesselは完全なシャットダウンまで残りわずかという状態だった。船を管理していた5つのAI「Pearl(パール)」──The Eye、The Spine、The Blood、The Hand、The Breath──は機能を停止し、船の住人たちは絶望に沈んでいる。

    MIOの使命は明確だ。5つのPearlを再起動させ、Vesselに何が起きたのかを解明し、船と残された住人たちを救うこと。だが、その道のりは想像を絶するほど過酷なものとなる。

    「テクノ・マジック」が生み出す圧倒的な世界観

    本作を語る上で避けて通れないのが、その圧倒的なビジュアルだ。開発チームは自らのアートスタイルを「テクノ・マジック」と呼んでいる。SF的な宇宙船という設定でありながら、そこには魔法のような幻想性が息づいている。

    氷に閉ざされた都市エリア、紫色の植物が生い茂るジャングル、アズールブルーに輝く機械の庭園──各エリアは水彩画のような柔らかなタッチで描かれており、まるで絵本の中を冒険しているかのような感覚を覚える。コミック、絵画、そして日本のアニメーション(特に宮崎駿作品)からインスピレーションを受けたというビジュアルは、フレーム単位で美しく、スクリーンショットを撮る手が止まらなくなるほどだ。

    開発チームの共同創設者であるSarah Hourcade氏は、「最初はSFの世界を作りたかったのですが、制約から解放されるうちに、こうした形になりました」と語っている。手描きのような温かみと、機械的な冷たさが共存するこのアートスタイルこそが、『MIO』最大の武器のひとつだろう。

    サウンドトラックが紡ぐ孤独と希望

    ビジュアルと並んで特筆すべきなのが、独創的なサウンドトラックだ。Lo-fiビート、アンビエント、そして聖歌隊のコーラスが絶妙にブレンドされた楽曲は、Vesselという朽ちゆく世界の孤独感と、それでもなお灯り続ける希望の光を見事に表現している。

    静かなエリアでは心を落ち着かせるような優しいメロディが流れ、ボス戦では緊張感を煽る重厚な音楽へと切り替わる。特に印象的なのは、コーラスパートだ。人の声が持つ感情の豊かさが、ロボットたちの世界に人間味を与えている。

    音楽を手がけたチームは、「船に残された記憶と感情を音で表現したかった」と述べており、その意図は見事に実現されている。プレイ中、筆者は何度もその場に立ち止まり、ただ音楽に耳を傾けた。

    移動と探索の喜びを追求したゲームデザイン

    『MIO』の開発チームが最初に決めたのは、「高速フックショットで画面を一瞬で横切る」という移動システムだった。実際、このゲームの移動システムは極めて気持ちいい。

    MIOは最初からダブルジャンプが使える。これは多くのメトロイドヴァニアでは終盤に解放される能力だが、本作では序盤から与えられる。さらにゲームを進めると、壁登り、グライディング、フックショット、そしてスパイダーのような壁張り付きなど、多彩な移動手段を獲得していく。

    これらの能力を組み合わせることで、Vesselの複雑に入り組んだ構造を縦横無尽に駆け巡ることができる。空中でのダッシュ、壁を蹴ってのジャンプ、フックショットでの急加速──一度慣れると、まるでパルクールのように優雅に移動できるようになる。

    探索においても、本作は独自の哲学を持っている。ゲーム序盤、プレイヤーはマップを持たない。特定のNPCに会うことで初めてマップ機能が解放されるのだが、それまでは自分の記憶と環境認識だけを頼りに進まなければならない。

    開発チームのOscar Blumberg氏は「プレイヤーに探索し、テストし、迷いながらも道を見つけてほしかった」と語る。実際、筆者は最初の数時間、何度も同じ場所をぐるぐる回った。だが、それが苦痛ではなかったのは、環境デザインが非常に優れていたからだ。

    各エリアには明確な視覚的特徴があり、ランドマークとなる建造物や独特の色彩によって、自然と頭の中に地図が形成されていく。そして、マップを手に入れた瞬間の「ああ、ここはこう繋がっていたのか!」という発見の喜びは格別だった。

    プレイヤーを試す、妥協なき難易度設計

    『MIO: Memories in Orbit』は、はっきり言って難しい。Game Informerのレビュアーは「母親の前では言えないような言葉で表現される難易度」と評したほどだ。

    本作の難易度を特徴づけるのは、以下の要素だ:

    長いリスポーン距離:セーブポイント(Overseer)は少なく、死ぬと遠くから再スタートとなる。序盤は特にセーブポイントが1つしかないため、ボスに辿り着くまでの道のりを何度も繰り返すことになる。

    体力の段階的減少:最も物議を醸しているのがこのシステムだ。ストーリーの進行に伴い、「Heart’s Tremor(心臓の震え)」というイベントが発生し、MIOの最大HPが永久に1つ減少する。苦労して手に入れた体力アップグレードが、物語の都合で奪われるのだ。

    厳しい通貨システム:敵を倒すと「Nacre(真珠層)」という通貨を得られるが、死ぬとすべて失う。他のゲームのように死亡地点で回収できるわけではなく、完全に消失する。ただし、マップ上の特定の機械で「結晶化」することで保護できる。

    こうした要素は、確かに人を選ぶ。実際、Steamのレビューでは「QoL(Quality of Life)アップデートが必要」という声も見られる。

    しかし、筆者はこの難易度設計に意図を感じた。本作は「パワーファンタジー」ではない。MIOは最後まで小さく、脆く、か弱いままだ。プレイヤーは強くなるのではなく、上手くなる。それこそが本作の目指したものなのだろう。

    Steamの高評価レビューでは、「この難易度に文句を言う人は期待値を間違えている。これは万人向けのゲームではない。開発者のビジョンを信じてほしい」という意見も多く見られた。

    実際、本作にはアクセシビリティオプションも用意されている。「Eroded Bosses(侵食されたボス)」を有効にすると、死ぬたびにボスのHPが少しずつ減少する。「Pacifist(平和主義者)」モードでは、プレイヤーが攻撃するまで敵が襲ってこない。「Ground Healing(地面治癒)」では、5秒間地面に触れ続けると少しずつ回復する。

    これらのオプションを使うことに恥じる必要はない。筆者も最終ボスで「Eroded Bosses」のお世話になった。大事なのは、自分が楽しめる形でゲームをプレイすることだ。

    コンバットは簡潔、だがボス戦は熱い

    戦闘システムは比較的シンプルだ。MIOは3連続攻撃のコンボ、ダッシュ攻撃、そして回避を持っている。これにフックショットを組み合わせることで、空中を飛び回りながら敵を攻撃する立体的な戦闘が展開される。

    正直なところ、雑魚敵との戦闘は単調になりがちだ。攻撃パターンが少なく、繰り返しプレイすると作業感が出てくる。だが、ボス戦は別格だ。

    各ボスは独自の攻撃パターンと戦闘エリアを持ち、MIOの移動能力をフル活用することが求められる。ドリルで地面を掘り進む巨大モグラ、レーザーガンを振り回す機械人形、空中を飛び回る巨大な蝿──どのボスも視覚的に印象的で、倒したときの達成感は格別だ。

    筆者が特に感銘を受けたのは、ボスの攻撃が「覚えゲー」として成立している点だ。何度も挑戦することで攻撃パターンを学び、回避のタイミングを体で覚え、ついに倒したときの爽快感。これこそが『Dark Souls』系譜のゲームが提供する喜びであり、本作はそれをメトロイドヴァニアの文脈で見事に再現している。

    アップグレードシステム「Modifier」の奥深さ

    本作のキャラクタービルドは「Modifier(モディファイア)」と呼ばれるシステムで管理される。これは一種のパッシブスキルで、装備することでMIOの性能を変化させる。

    例えば:

    • 「Hand’s Greed(手の貪欲)」:すべてのダメージがクリティカルになるが、クリティカル威力が60%減少
    • 「Flowing Striders(流れる歩行者)」:追加の体力を得る代わりに、コンボ攻撃力が低下
    • その他、ドロップ率上昇、スタミナ回復速度向上など多数

    Modifierは敵からのドロップや、Vesselの各所に隠されたコアを集めることで入手できる。装備スロットには限りがあるため、どのModifierを選ぶかがプレイスタイルを大きく左右する。

    しかし一部のレビューでは、「実験する余地が少なく、早い段階で最適解を見つけてしまう」という指摘もある。確かに、Modifierの種類はもう少し多くてもよかったかもしれない。それでも、自分だけのビルドを考える楽しみは確かに存在する。

    隠された秘密とトゥルーエンディング

    『MIO』は一周12〜14時間でクリアできる──と開発チームは述べていた。だが、それは最初のエンディングまでの話だ。

    本作には複数のエンディングがあり、「トゥルーエンディング」に到達するには、Vesselの隅々まで探索し、隠された秘密エリアを見つけ出す必要がある。

    Game Fileのレビュアーは、「12〜14時間でクリアできると聞いて笑った。なぜなら自分は既に15〜20時間プレイしていたし、まだ終わりが見えなかったからだ。結局、最初のエンディングまで30時間、トゥルーエンディングまで44時間かかった」と語っている。

    彼のテキストには、本作の探索の魅力が凝縮されている:

    「困難なプラットフォームエリアを抜けると、精巧な秘密エリアを見つけた。そのエリアはさらに別のクールなエリアにつながっていて、そのエリアはまた別の興味深い場所に続いていた。まるでポケットから次々と20ドル札が出てくるような感覚だ」

    本作のマップの約35%は完全にオプショナルだという。ストーリーのクリアには不要だが、そこには追加のロア(世界観設定)、強力なアイテム、そして印象的なボス戦が待っている。

    筆者はまだトゥルーエンディングには到達していないが、探索の手を止めるつもりはない。次の部屋の向こうに何があるのか──その好奇心が、プレイを続ける原動力になっている。

    フランスのインディーシーンから生まれた傑作

    Douze Dixièmesは、パリ郊外に拠点を置く小さなインディースタジオだ。彼らの前作『Shady Part of Me』は、光と影をテーマにしたパズルゲームとして批評家から高評価を受けたが、商業的には大きな成功とは言えなかった。

    「同じパズルゲームを4年間作り続けるのは疲れる」とSarah Hourcade氏は語る。チームは新しい挑戦を求め、メトロイドヴァニアというジャンルに挑戦することを決めた。

    しかし、彼らは既存のゲームエンジンを使うのではなく、独自のゲームエンジンを一から構築するという大胆な選択をした。『Shady Part of Me』で使用したエンジンのコードの80%以上を破棄し、『MIO』のために最適化された新しいエンジンを作り上げたのだ。

    「チームに2人、ゲームエンジンを作りたい開発者がいたので、作りました」とHourcade氏は軽く言うが、その裏には膨大な労力があったはずだ。

    開発において最も困難だったのは戦闘システムだったという。「プレイヤーに感じてほしい感覚にフィットするシステムとデザインを見つけるのに、非常に苦労しました」とチームは振り返る。

    だが、その努力は報われた。リリース直後から高評価を獲得し、Polygonは「メトロイドヴァニアの技術を完璧に習得している」、GAMINGbibleは「2026年最初の大型作品かもしれない」、Destructoidは「絶対的な驚異」と10点満点中9点を付けた。

    フランスのインディーゲームシーンは近年、『Prince of Persia: The Lost Crown』、『Clair Obscur: Expedition 33』など、国際的に高い評価を受ける作品を次々と生み出している。『MIO: Memories in Orbit』も、その系譜に連なる傑作と言えるだろう。

    誰に勧めるべきか?

    正直に言おう。『MIO: Memories in Orbit』は万人向けのゲームではない。

    高難易度を求めるプレイヤー、探索に何十時間も費やすことを厭わない人、美しいビジュアルとアートに価値を見出す人──そういったプレイヤーには心からオススメできる。

    一方で、気軽に遊べるメトロイドヴァニアを求めている人、難易度の高いゲームが苦手な人、長いリスポーン距離にストレスを感じる人には、正直なところ勧めにくい。

    Game Informerのレビュアーは、「多くの素晴らしいゲームでは、私は屋上から叫んでできるだけ多くの人にプレイしてほしいと思う。『MIO』も心から楽しんだが、経験豊富なプレイヤー以外には推奨を躊躇する」と述べている。

    だが同時に、「もしそういうものが心をときめかせるなら、『MIO』は絶対にプレイすべきリストの上位に来るべきだ」とも語っている。

    筆者も同感だ。このゲームは挑戦的で、時に不公平にすら感じられるかもしれない。だが、その先にある達成感、発見の喜び、そして美しい物語は、努力に見合う価値がある。

    2026年、インディーゲームシーンは幕開けから熱い。そして『MIO: Memories in Orbit』は、間違いなくその筆頭に立つ作品のひとつだ。

    もしあなたが、小さなロボットとともに朽ちゆく宇宙船の謎を解き明かす覚悟があるなら──Vesselは、あなたを待っている。


    基本情報

    開発: Douze Dixièmes
    販売: Focus Entertainment
    リリース日: 2026年1月20日
    価格2,300円(通常価格)※セール時は20%オフで1,840円
    プラットフォーム: PC (Steam)、PlayStation 5、Xbox Series X/S、Nintendo Switch、Nintendo Switch 2
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語、英語、フランス語、その他14言語に対応
    ジャンル: メトロイドヴァニア、アクションアドベンチャー、プラットフォーマー
    Steam評価: 非常に好評(85% – 1,093件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/1672810/MIO_Memories_in_Orbit/

    公式リンク

    公式サイト: https://community.focus-entmt.com/focus-entertainment/mio-memories-in-orbit?utm_source=Steam&utm_medium=StorePage_MIO&utm_campaign=Organic
    X (Twitter): https://x.com/Focus_Entmt
    Discord: https://discord.gg/focusentmt

  • パリングこそが生命線! 手描きの幻想世界で魅せる、緊張と爽快が同居する『ソラテリア』

    パリングこそが生命線! 手描きの幻想世界で魅せる、緊張と爽快が同居する『ソラテリア』

    「パリング特化のメトロイドヴァニアって、正直しんどくない?」 白状すると、遊ぶ前の自分はそう思ってた。『Hollow Knight』のボス戦で指がつるほど死にまくった記憶がフラッシュバックして、「またあのヒリヒリする修行が始まるのか……」と、ちょっと腰が引けた。

    でも、韓国の精鋭スタジオStudio Doodalが放った『ソラテリア』は、僕のそんな偏見を鮮やかに弾き返してくれた。0.15秒の火花に命を懸ける、ひりつくような緊張感と、ため息が出るほど美しい手描きアート。2026年のインディーゲーム界に現れた、最高に尖った新星を語らせてほしい。

    パリングか死か――0.15秒の決断

    本作の戦闘は徹底的にパリングに特化している。敵の攻撃をジャストタイミングで弾き返す瞬間、画面が青く爆発し、スローモーションが発動。その一瞬で繰り出されるカウンター攻撃が、敵のHPを大きく削り取る。この爽快感は、まさに『Sekiro: Shadows Die Twice』の狼が降臨したかのような感覚だ。

    しかし、本作のパリング判定は極めてシビア。約0.12〜0.15秒という瞬き以下の時間枠で成功させなければならない。Steam レビューでも「パリングウィンドウが狭すぎる」という声が散見されるが、これこそが本作の核心だ。敵の攻撃モーションは99%が予備動作で、実際の攻撃は一瞬。つまり、反射神経ではなくパターン記憶が求められる。

    さらに厄介なのが、主人公トットがパリングできるのは一方向のみという制約。多くのボスは体当たりや突進で主人公をすり抜け、背後から攻撃を仕掛けてくる。「今パリングしたのに!」と叫びたくなる瞬間が何度も訪れるが、これも計算されたゲームデザインだ。位置取り、タイミング、敵の行動パターン――すべてを読み切って初めて、真のパリング戦士となれる。

    4段階の難易度設定が救世主

    幸いなことに、本作には4段階の難易度が用意されている。最も簡単な難易度では、通常のガード(パリング失敗)でもある程度のダメージ軽減が可能になり、ストーリーを追いたいプレイヤーにも門戸が開かれている。

    実際、海外レビュアーの中には「通常難易度でボス戦がきつくなり、最終的にはイージーモードに切り替えた」と告白する者もいた。恥じることではない。本作の真髄はストーリーと探索にもあるのだから。

    逆に、難易度最高設定では文字通りの死にゲーと化す。Steam実績統計によれば、本作を100%クリアしたプレイヤーはわずか0.1%。「Five Warriors(五戦士)」ボス戦で難易度を下げざるを得なかったという証言も複数見られる。

    40通りのパーツで紡ぐ、自分だけの戦士

    本作の戦闘カスタマイズは驚くほど奥深い。コアストーンをインフレア(本作のスキルポイント)で強化し、40種類以上のパーツを組み合わせることで、プレイスタイルを自在に変化させられる。

    パーツはHollow Knightの「チャーム」に相当するシステムで、特定の組み合わせで強力なシナジーを生み出す。近接特化、遠距離攻撃重視、回復特化、クリティカルビルドなど、可能性は無限大だ。

    さらに、料理、精製、クラフトといった複数の強化システムも存在。敵が落とすOHN(ゲーム内通貨)は潤沢で、グラインドの必要性はほぼゼロ。セーブポイント(祭壇)でいつでもスキルポイントの再配分が可能なため、ボス戦ごとにビルドを変更する戦略的なプレイも楽しめる。

    手描きの世界が語る、崩壊と希望の物語

    かつて太陽の祝福を受けて繁栄した「ソラテリア」の地。しかし影の疫病が世界を蝕み、守護者である原初の炎(王)さえも姿を消した。記憶を失った小さな炎の戦士・トットとして目覚めたプレイヤーは、消えた王を見つけ、世界を救う旅に出る。

    本作の手描きアートは圧巻だ。Studio Doodalの前作『LAPIN』で93%の高評価を獲得したアートチームが、さらに技術を研ぎ澄ませた。Unity URPとポストプロセッシングを駆使し、各バイオームに独自の質感と雰囲気を与えている。背景の汚れや陰影を個別アセット化し、再構成することで、手描き特有の密度を保ちつつパフォーマンスを最適化したという。

    探索すればするほど、NPCとの会話や記憶の断片から世界の真実が明らかになっていく。サイドクエストをこなすことで、感染したボスたちの悲しい背景や、リットたち(本作の住人種族)の隠された物語に触れられる。儚げで可愛らしいキャラクターデザインと、陰鬱な世界観のコントラストが、プレイヤーの心に深く刻まれる。

    批判も正直に――改善の余地はある

    本作は決して完璧ではない。Steam レビューには以下のような批判も寄せられている:

    • パリング方向が一方向のみで、敵の位置取りによっては理不尽な被弾が発生
    • バリア持ち敵の仕様が未調整で、チャージアタックのメカニクスが破綻している
    • プラットフォーミングの難易度がボス戦より高いという声も
    • ごく稀に、ワールドに落下してリスタートを強いられるバグが報告されている

    しかし、開発チームは非常に誠実だ。Steam コミュニティハブでは、プレイヤーからのフィードバックに丁寧に応答し、パッチv1.0.22では複数のバグ修正と調整が行われた。今後のアップデートで、さらなるブラッシュアップが期待できる。

    Studio Doodalという希望

    開発元のStudio Doodalは、韓国の6人の大学生が2019年に『LAPIN』の開発を目標に集まったことから始まった。2023年に法人化し、前作『LAPIN』でSteam評価94%「非常に好評」、Unity Korea Award グラフィック賞、GIGDC大賞を受賞。わずか数年で、世界に通用するインディースタジオへと成長した。

    共同CEOのMinjeong KimとGyuwon Leeは語る。「大学時代に結成したチームで、『LAPIN』開発中に『自分たちのチームが最も得意とするアート』は何かを考え抜いた。当時、アートチームの独自の手描きイラストスタイルが、自然とゲームの特徴になっていった」

    その美学を『ソラテリア』でさらに進化させ、より美しく多様な世界を描き出した。技術面でも妥協せず、手描きアートの質感とゲームパフォーマンスの両立に成功した彼らの姿勢には、深い敬意を覚える。

    パリングの向こう側へ

    『ソラテリア』は、パリングというたった一つのメカニクスを極限まで突き詰めた作品だ。その選択は賛否を呼ぶだろう。しかし、その先にあるのは、他では味わえない緊張感と達成感、そして美しい手描きの世界に没入する至福の時間だ。

    『Hollow Knight』のファンなら、懐かしさと新鮮さを同時に感じるはず。『Sekiro』でパリングの快楽に目覚めた者なら、新たな挑戦の場がここにある。そして『Nine Sols』や『MIO: Memories In Orbit』で物足りなさを感じたプレイヤーにも、本作は新たな選択肢となるだろう。

    Steam評価73%「やや好評」という数字は、本作の尖った性質を物語っている。万人受けはしないかもしれない。しかし、その尖った部分こそが、『ソラテリア』を唯一無二の体験にしているのだ。

    パリングの瞬間、世界が止まる。青い光が爆ぜる。カウンターが炸裂する。

    その一瞬に、すべてがある。


    基本情報

    開発: Studio Doodal
    販売: SHINSEGAE INFORMATION and COMMUNICATION Inc.
    リリース日: 2026年3月12日
    価格: 2,300円(通常価格)/ 2,070円(10%オフ・期間限定)
    プラットフォーム: PC(Steam)、Nintendo Switch(近日発売予定)
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語、英語、韓国語、中国語(簡体字・繁体字)、ドイツ語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語の9言語対応
    ジャンル: アクション、メトロイドヴァニア、ソウルライク、2Dプラットフォーマー
    Steam評価: やや好評(73% – 114件のレビュー)※2026年3月16日時点

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/2947280/_/

    公式リンク

    X (Twitter): https://x.com/SolateriaGame
    Discord: https://discord.gg/xkWM3mDPdQ
    開発元公式サイト: http://studiodoodal.com/

  • 猿が駆け抜ける痛快ローグライク! 『ダンジャングル』で味わう中毒性抜群のジャングル大冒険

    猿が駆け抜ける痛快ローグライク! 『ダンジャングル』で味わう中毒性抜群のジャングル大冒険

    サルのゲームってこんなにアツかったのか…!

    Steam で初めて『ダンジャングル』のストアページを見たとき、正直そんなに期待していなかった。ドット絵の可愛いサルが主人公の 2D アクション…「まあ、よくあるインディーゲームだろうな」と軽い気持ちでプレイしてみたのだが、これが大誤算。気が付けば早期アクセス時代から正式版まで、合計で 50 時間以上もプレイしてしまった。

    早期アクセスの段階ですでに Steam で「圧倒的に好評」(97%)という驚異的な評価を獲得し、2024 年 12 月に待望の正式版がリリースされた本作。Dead Cells や Spelunky の系譜を受け継ぐ正統派ローグライトアクションでありながら、独自の魅力がぎっしり詰まった傑作に仕上がっている。

    プレイしてすぐに感じたのは、その絶妙な難易度バランスだ。死んでも「もう一回!」と思わせる中毒性と、確実に上達している実感を得られる成長システムが見事に噛み合っている。これぞローグライクの醍醐味というべき、理想的なゲームループが完成している。

    人間の友人を探すサルの冒険が、なぜこんなにドラマチックなのか

    物語は至ってシンプルだ。主人公のサルが、ジャングルの奥深くへ探検に行ったまま帰ってこない人間の友人を探しに行く…それだけ。だが、このシンプルさこそが本作の魅力の一つでもある。複雑な設定に頭を悩ませることなく、純粋にアクションの楽しさに集中できるのだ。

    ジャングルは謎の腐敗した力によって汚染されており、かつて平和だった生物たちが凶暴化している。サルは様々な武器と魔法を駆使して、7 つの異なるバイオームを駆け抜けていく。寺院、地下室、神秘的な洞窟…どのエリアも手作業で作られた部屋の組み合わせで構成されており、自動生成とは思えないほど丁寧な作り込みが光る。

    特に印象的なのが、道中で出会うベビーモンキーたちの存在だ。檻に囚われた彼らを救出すると、以後の冒険で様々な支援をしてくれる。小さな猿たちが主人公の周りをチョロチョロと駆け回る様子は、見ているだけで心が温まる。単なる機能的な要素ではなく、ちゃんと「仲間」として描かれているのが嬉しい。

    武器と魔法の組み合わせが生む、無限の戦略性

    『ダンジャングル』の戦闘システムは一見シンプルだが、その奥深さは計り知れない。メイン武器 1 つとサブ武器 3 つの合計 4 つの装備スロットに、様々な武器や魔法をセットして戦う。剣、斧、弓、投げ槍から、魔法の球体や盾まで、30 種類以上の武器と 40 種類以上のサブ武器が用意されている。

    さらに特筆すべきはエンチャントシステムだ。火、氷、風、雷の 4 つの属性を武器に付与することで、戦闘スタイルが劇的に変化する。火属性なら敵を燃やし続けるダメージ、氷属性なら動きを封じる効果、風属性なら敵を吹き飛ばす効果…これらを上手く組み合わせることで、自分だけの戦術を構築できる。

    個人的に病みつきになったのは、投げ槍+雷属性の組み合わせだ。槍が敵を貫通して複数の敵にダメージを与え、さらに雷属性で感電による追加ダメージが発生する。敵の群れに一本投げ込んだ瞬間、バチバチと電撃が走って敵がバタバタ倒れていく爽快感は格別だった。

    そしてこのゲームの素晴らしいところは、強力な装備を手に入れるたびにプレイスタイルを変えたくなる点だ。「今まで近接武器を使っていたけど、レア度の高い魔法杖を拾ったから魔法使いに転向してみよう」なんて気軽に方針転換できる。この柔軟性が、何度プレイしても新鮮な体験を生み出している。

    15 種類のクラスで楽しむ、多彩なプレイスタイル

    正式版では 15 種類のクラスが実装されており、それぞれが大幅に異なるゲーム体験を提供する。例えばバンパイア猿は、コウモリや狼に変身でき、通常の回復アイテムが使えない代わりに近接攻撃で敵からライフを吸収する。一方火猿は、すべての攻撃に炎属性が付与され、キルストリークを重ねると巨大な炎の蛇を召喚する。

    筆者が最もハマったのは戦士熊だった。体力とメイン武器のダメージが大幅に上がる代わり、魔法や遠距離攻撃が弱くなる脳筋スタイル。「考えるな、感じろ」の精神で敵に突撃していく爽快感は、まさに熊のような豪快さがある。

    これらのクラスは単なる数値の調整ではなく、根本的にゲームプレイが変わる。同じステージでも、使用するクラスによってまったく違うアプローチが必要になる。この多様性こそが『ダンジャングル』の大きな魅力の一つだ。

    死んでも楽しい! 完璧に調整された成長システム

    ローグライクの生命線とも言える死亡時のロスト要素が、本作では絶妙にバランス調整されている。死ぬと確かに装備やレベルは失うが、獲得した経験値とお金の一部は持ち帰れる。そして何より、解放した武器や魔法、救出したキャラクターは永続的に残る。

    ハブエリアでは、持ち帰った資源を使って基礎ステータスの強化や新しい装備のアンロック、さらには新しいクラスの解放ができる。つまり死ぬたびに確実に強くなっていくのだ。この「死んでも前進している」感覚が、何度でもチャレンジしたくなる原動力になっている。

    特に素晴らしいのは、アップグレードの選択肢が豊富な点だ。攻撃力を上げるか、体力を増やすか、それとも新しい装備を解放するか…限られた資源をどう使うかで、次のランの戦略が大きく変わる。この戦略的な要素が、単純な作業ゲーにならない工夫として機能している。

    Dead Cells を超えた? 2D ローグライクの新たな到達点

    『ダンジャングル』をプレイしていて真っ先に思い浮かんだのは、名作『Dead Cells』との比較だった。確かに基本的なゲームループや操作感は似ているが、本作にはそれを上回る独自の魅力がある。

    最も大きな違いはカジュアルさだ。『Dead Cells』の骨太な難易度に対し、『ダンジャングル』はより多くのプレイヤーが楽しめるよう調整されている。それでいて上級者向けの高難度要素も用意されており、プレイヤーのスキルに合わせて楽しめる幅広さがある。

    また、キャラクターの魅力も本作の大きな強みだ。主人公のサルをはじめ、登場するキャラクターたちは皆個性豊かで愛嬌がある。特にコメディ要素が随所に散りばめられており、プレイ中に思わずクスッと笑ってしまうシーンが多い。この親しみやすさが、ハードコアなローグライクとは一線を画している。

    Steam Deck でも快適! どこでも楽しめるジャングル大冒険

    本作は Steam Deck との相性も抜群だ。操作はシンプルで、携帯機器でも十分に快適にプレイできる。ちょっとした空き時間に「1 ラン だけ」と思って始めたら、気が付けば 2 時間経っていた…なんてことが何度もあった。

    グラフィックも美しく、Switch や PlayStation でも同様の体験が楽しめる。特に Nintendo Switch 版では無料体験版も配信中なので、興味を持った方はまずそちらを試してみることをお勧めする。

    まとめ:2024 年最高のローグライクアクションの一つ

    『ダンジャングル』は、ローグライクアクションというジャンルの魅力を余すところなく詰め込んだ傑作だ。シンプルながら奥深い戦闘システム、豊富なビルド要素、完璧に調整された難易度バランス、そして何よりもプレイしていて純粋に楽しい

    97% の高評価は伊達ではない。Dead Cells や Hades といった名作に並ぶ、新たなローグライクの傑作が誕生したと言っても過言ではないだろう。

    ジャングルの奥で待つ人間の友人を探しに、一緒に冒険に出かけてみないか? きっとあなたも、このサルの虜になるはずだ。

    基本情報

    • ゲーム名: ダンジャングル(Dunjungle)
    • 開発: Patapez Interactive
    • 販売: Astrolabe Games
    • 対応プラットフォーム: PC(Steam)、PlayStation 5、PlayStation 4、Nintendo Switch、Xbox Series X|S
    • 価格: 1,200円(Steam)、1,980円(PlayStation/Switch)
    • リリース日: 2025年12月11日(正式版)
    • 日本語対応: あり
    • プレイ時間: 1ランあたり30分〜1時間、全コンテンツ制覇には50時間以上

    購入リンク

    公式情報

  • 悪名高きコンビが作った血みどろホテル『HOTEL BARCELONA』。SUDA51×SWERYの夢の共演は、期待通りジャンクでカオスだった

    悪名高きコンビが作った血みどろホテル『HOTEL BARCELONA』。SUDA51×SWERYの夢の共演は、期待通りジャンクでカオスだった

    まさかこの2人がタッグを組むとは……!

    Steamのストアページで初めて見たときは、その開発者の名前に驚いた。SUDA51とSWERY──この2つの名前が並んでいるのを見た瞬間、筆者の頭には「面白そう!」よりも「大丈夫なの?」という不安の方が強かった。

    カルトクラシック『デッドリープレモニション』で知られるSWERYと、『ノーモア★ヒーローズ』シリーズで一世を風靡したSUDA51。どちらも独特すぎるセンスで熱狂的なファンを持つ一方、「完成度よりもアイデアと勢いで押し切る」タイプの開発者として知られている。そんな2人がコラボして作ったローグライク・アクション『HOTEL BARCELONA』は、果たしてどんな仕上がりなのか……?

    そんな疑問と期待を胸に、筆者は呪われたホテルの扉を叩くことにした。

    設定だけで既にヤバい匂いが……

    『HOTEL BARCELONA』の舞台は、ペンシルベニア州とウェストバージニア州の州境にある謎のホテル。プレイヤーは連邦保安官のジャスティン・ベルンシュタインとなって、このホテルに巣食う連続殺人犯たちを殲滅する……のだが、話はそう単純ではない。

    ジャスティンの心の中には、もう1人の人格「Dr.カーニバル」という狂気の殺人鬼が宿っているのだ。復讐に燃える正義の保安官と、血に飢えた狂人──相反する2つの人格が1つの身体を共有しながら戦うという、まさにSUDA51とSWERY的な設定である。

    しかも舞台となるホテルは、『シャイニング』のオーバールックホテルを思わせる不気味な雰囲気。バーテンダーはもはやロイド・ザ・バーテンダーの親戚としか思えない見た目で、館内の各エリアは80年代ホラー映画の様々なサブジャンルをオマージュしている。「お前ら絶対ホラー映画好きだろ」と言わんばかりの露骨な映画愛が炸裂しまくっている。

    2.5Dアクションは想像以上にジャンク

    いざプレイしてみると、ゲーム性は2.5D見下ろし型のローグライクアクション。各ステージは複数の部屋で構成されており、扉を選んで進みながら最終的にボスを倒すというシンプルな構成だ。

    が、操作してみて即座に感じたのは、「あ、これは例のアレだ」という既視感。SUDA51とSWERYのゲームではおなじみの、「アイデアは最高だけど操作感がちょっと……」というアレである。

    ジャスティンの動きは全体的にもっさりしており、攻撃のタイミングも独特。コンボの入力受付がやけにシビアで、ちょっとでもタイミングがずれると入力を食われてしまう。「ローグライクは軽快さが命」という常識を真正面から無視したかのような重厚感(?)に、最初は戸惑いを隠せなかった。

    しかし、これはバグではない。仕様である。

    実際、筆者も最初の数時間は「なんだこの操作性……」とイライラしていたのだが、不思議なことに慣れてくると妙にクセになってくる。スキルツリーで移動速度やコンボ性能を上げていけば、徐々に快適になっていくのだ。

    特に面白いのが「スラッシャー・ファントム」システム。死ぬたびに過去の自分の「幻影」が生まれ、次の周回では最大4体まで一緒に戦ってくれるのだ。この幻影は前回の動きを完全にトレースするため、戦略的に動けばボス戦で強力な支援になる。逆に適当に動いていると、幻影も適当に動いて全然役に立たない。

    血みどろゲージが戦況を左右

    もう1つユニークなのが「血飛沫ゲージ」システム。敵を倒すたびにジャスティンの身体に血が付着し、ゲージが溜まっていく。満タンになると「カーニバル・アウェイクニング」という必殺技が発動できるようになり、画面内の敵を一掃できる。

    この必殺技発動時の演出が、またいかにもSUDA51らしい派手でバイオレンスなものになっている。ジャスティンの中に眠るDr.カーニバルが覚醒し、一時的に制御不能の殺戮マシーンと化すのだ。演出も相まって、プレイしていて「うわ、やべぇモノが目覚めた……」という背徳感を味わえる。

    ただし、このシステムにも癖がある。血飛沫ゲージは死んでもリセットされないのだが、次の周回で同じ必殺技を使うタイミングがなかなか合わないのだ。「前回この場所で使ったから、今回も……」と思っても、敵の配置が微妙に変わっているため、結局温存したまま死んでしまうことがしばしば。

    協力プレイで狂気は倍増する

    『HOTEL BARCELONA』には最大3人までの協力プレイモードも用意されている。友達と一緒にホテルの悪夢を体験できるのは良いのだが……正直、ソロでも十分カオスなこのゲームを複数人でプレイすると、もはや何が起こっているのかわからなくなる。

    画面内にスラッシャー・ファントムが大量発生し、血飛沫が飛び交い、プレイヤー同士で連携しようにも操作性の問題で思うように動けない。結果として生まれるのは、「計画された混沌」ではなく「偶然の混沌」である。でも、それがまた妙に楽しい。

    PvPモードでは他のプレイヤーのゲームに「侵入」して邪魔することもできる。侵入者を倒せば「ブラッディ・マーシャル・バッジ」という称号がもらえるのだが、そもそも通常プレイでも死にまくるゲームなのに、人間のプレイヤーに襲われたらもう手がつけられない。

    ストーリーは薄味だが、キャラは濃い

    正直に言うと、ストーリー面では物足りなさを感じる。SWERYの代名詞とも言える濃密なキャラクター描写や、SUDA51お得意の映画的な演出は、本作では控えめだ。

    カットシーンも必要最小限で、ジャスティンとDr.カーニバルの内なる対話も思っていたより少ない。ローグライクという性質上、繰り返しプレイが前提なので、毎回長いストーリーシーンがあると邪魔になるからだろうが、この2人の才能をもう少し活かしてほしかったというのが本音だ。

    ただし、ホテルの住人たちは相変わらず個性的。クローゼットに住む怪物のティムや、耳をコレクションしているバーテンダーなど、短い登場シーンながらも印象に残るキャラクターが多い。特にティムとの会話は、SWERYらしいシュールなユーモアが炸裂していて思わずニヤリとしてしまう。

    それでも、これは「らしい」作品だ

    『HOTEL BARCELONA』は決して完璧なゲームではない。操作性は癖が強く、フレームレートの問題もある。ストーリーは期待していたほど深くなく、全体的にB級感が漂っている。

    しかし、だからこそ「SUDA51とSWERYらしい」作品になっているとも言える。完成度よりもアイデアと勢いで突っ走る姿勢、ジャンルの境界線を平気で踏み越える大胆さ、そして何より「他では絶対に体験できない」独特の世界観──これらはまさに2人の真骨頂だ。

    プレイしていて「なんじゃこりゃ」と思う場面が山ほどあるが、同時に「こんなゲーム他にないよな……」とも思う。良くも悪くも、唯一無二の体験を提供してくれる作品だ。

    6-7時間で完走できるが、繰り返しが前提

    本作は普通にプレイすれば6-7時間程度でクリアできる。ローグライクとしてはボリューム不足に感じるかもしれないが、スラッシャー・ファントムシステムを活用した戦略的なプレイや、様々なビルド構成の実験など、繰り返しプレイすることで真価を発揮するデザインになっている。

    価格も約4,000円と手頃で、現在Steamでは20%オフのセールも実施中だ。SUDA51やSWERYの過去作が好きな人、B級ホラーやカルト映画が好きな人、そして何より「変なゲーム」を求めている人には、ぜひ一度体験してほしい。

    完璧を求める人には勧められないが、「ジャンクでカオスで、それでいて愛らしい」ゲームを求めているなら、このホテルの扉を叩いてみる価値は十分にある。

    チェックアウトはいつでもできるが、きっとまた戻ってきたくなるはずだ。

    基本情報

    タイトル: HOTEL BARCELONA
    開発: White Owls Inc.
    パブリッシャー: Cult Games
    プラットフォーム: Steam (PC), PlayStation 5, Xbox Series X/S
    リリース日: 2025年9月26日
    プレイ人数: 1-3人 (協力プレイ), 1-4人 (PvP)
    プレイ時間: 6-7時間 (メインストーリー)
    難易度: 初心者~上級者 (難易度設定あり)
    Steam評価: やや好評 (83%)
    価格: 3,990円 (Steam) ※セール時20%オフ
    日本語: 対応 (字幕・UI)

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