カテゴリー: シューティング

  • 「映画の宣伝ゲーム」が本気すぎて笑えない。『Starship Troopers: Ultimate Bug War!』は風刺とB級愛に満ちたレトロFPSだ

    「映画の宣伝ゲーム」が本気すぎて笑えない。『Starship Troopers: Ultimate Bug War!』は風刺とB級愛に満ちたレトロFPSだ

    本作はポール・バーホーベン監督の傑作SF映画『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)の世界観を完璧に再現しつつ、映画の持つ風刺性をゲームという形式で新たな次元へと昇華させた傑作レトロFPSなのだ。

    開発はブーマーシューター(90年代風FPS)『Warhammer 40,000: Boltgun』で高い評価を得たイギリスのAuroch Digital。パブリッシャーはDotemuとGame Source Entertainmentが担当している。

    「連邦公認プロパガンダゲーム」という狂気の設定

    本作の最大の特徴は、ゲーム自体が作品世界内に存在する「連邦政府公認のリクルートツール」として設定されている点だ。オープニングでは、映画でおなじみのジョニー・リコ将軍(俳優キャスパー・ヴァン・ディーンが本人役で出演!)が「このゲームはFedDev(連邦開発局)が制作した訓練シミュレーターだ」と語りかけてくる。

    つまりプレイヤーは「『スターシップ・トゥルーパーズ』の世界で暮らす子供が、軍隊入隊を促すためのゲームをプレイしている」という入れ子構造の中に放り込まれるわけだ。この設定がどれほど皮肉に満ちているか、映画を知る人なら理解できるだろう。

    バーホーベン監督の原作映画は、表面的には「虫を倒す痛快アクション」を装いつつ、その実態はファシズムと軍国主義を徹底的に風刺したブラックコメディだった。本作も同じ構造を持ち、プレイすればするほど「これ、本当に子供に遊ばせていいの?」という不穏な空気が漂ってくる。実に見事だ。

    レトロなのに現代的。絶妙なバランスのゲームデザイン

    ゲームジャンルとしては、90年代後半のFPSを彷彿とさせる「ブーマーシューター」スタイル。ドット絵風の粗いテクスチャ、2Dスプライトで描かれる味方兵士、ヘルスパックでの回復、そしてリロードの概念がない強力な火器の数々。『DOOM』や『QUAKE』の時代を知る人間には懐かしく、若い世代には新鮮に映るだろう。

    ただし本作は単なる懐古主義ではない。マップデザインは現代的なオープンエンド構造で、広大なフィールドに散らばった複数の目標を好きな順番で攻略できる自由度がある。これは『Warhammer 40,000: Boltgun』で培われたノウハウが活きている部分だ。

    戦闘システムも秀逸で、通常の銃撃戦に加えて軌道爆撃や核兵器の要請が可能。画面を埋め尽くすバグの大群に対して、容赦なく大量破壊兵器をぶち込む快感は格別だ。「過剰すぎる武力行使? いいや、これは必要な措置だ!」という連邦のロジックを体現したかのようなゲームプレイである。

    主人公は新キャラクター、しかしストーリーは映画の正統続編

    プレイヤーが操作するのは、機動歩兵のサマンサ・”サミー”・ディーツ少佐(演:シャーロッタ・モーリン)。彼女の戦歴を追体験する形で、全8つのミッションが展開される。

    ストーリーは映画『スターシップ・トゥルーパーズ』の後日談として構成されており、クレンダス星での大敗北から復讐の物語へと続いていく。各ミッション間にはFMV(実写映像)のカットシーンが挿入され、サミーの表情や語り口から血に飢えた新兵が、戦場で心に深い傷を負っていく過程が描かれる。

    このFMVパートの演出が素晴らしい。映画でおなじみのプロパガンダ映像風の演出で、連邦の「輝かしい勝利」を謳い上げるのだが、サミー本人の表情は明らかに疲弊しきっている。「本当はこんなに簡単じゃなかったんだろうな」と観客(プレイヤー)が察してしまう作りになっているのだ。

    「バグになって戦う」モードは賛否両論

    本作にはキャンペーンとは別に、アラクニド(バグ)側を操作して人類を殺戮するモードが存在する。これは『エイリアンVSプレデター』シリーズを思わせる試みだが、正直なところ評価は分かれている。

    海外レビューサイトThe JimQuisitionは「バグ側のゲームプレイが未完成に感じられる」と指摘しており、筆者も同意見だ。本来ならワーカー、ホッパー、タンカーといったおなじみのバグたちを操作したかったのだが、実際に用意されているのは「アサシン・バグ」という映画には登場しない独自種のみ。

    操作感も微妙で、機動歩兵側のプレイに比べると明らかに練り込みが甘い。レビュアーたちが「エビみたいなダンゴムシ」と酷評するのも無理はない。このモードに関しては、今後のアップデートでの改善を期待したいところだ。

    開発スタジオAuroch Digitalの底力

    本作を手掛けたAuroch Digitalは、イギリス・ブリストルに拠点を置く約100名規模の開発スタジオ。2010年設立で、元々はボードゲームのデジタル化や戦略ゲームを得意としていたが、2021年にSumo Groupに買収された後、『Warhammer 40,000: Boltgun』で大きな成功を収めた。

    同スタジオの強みは「レトロスタイルの外見と現代的なゲームデザインの融合」にある。単なる懐古主義ではなく、古き良き時代のゲーム体験を現代の文脈で再構築する手腕は見事だ。

    さらに興味深いのは、Auroch Digitalが「リモートワーク中心のスタジオ」として運営されている点。イギリス全土から才能を集め、多様性を重視した採用方針を掲げている。この柔軟な体制が、短期間で質の高いタイトルを連続リリースする原動力になっているのだろう。

    Steam評価94%「Very Positive」の理由

    2026年3月16日にリリースされた本作は、Steam上で811件のレビュー中94%が好評という驚異的な数字を記録している(記事執筆時点)。Metacriticでも各プラットフォームで70点台後半から80点という高評価だ。

    海外メディアの評価を見ると、以下のような点が絶賛されている:

    CGMagazineは9/10点をつけ、「短いが忘れられない体験。ユーモアがレトロシューターの限界を超えている」と評価。Way Too Many Gamesも9/10点で「長年プレイした中で最も称賛に値するライセンスゲーム」と絶賛している。

    一方で批判的な意見も存在する。The Sixth Axisは「プレゼンテーションは素晴らしいが、バグモードの出来が悪く、『Boltgun』と比べてビジュアルが一段劣る」と指摘。筆者も確かにグラフィック面では前作に及ばないと感じた部分はあるが、それを補って余りあるストーリーテリングと風刺性の高さが本作にはある。

    プレイ時間は短め、だが濃密な体験

    キャンペーンのボリュームは8ミッション、プレイ時間にして6~10時間程度とやや短め。しかし各ミッションには隠し要素や複数のエンディングが用意されており、やり込み要素も存在する。

    「もっと長く遊びたい」という声も理解できるが、逆に言えば余分な水増しが一切ない、研ぎ澄まされた体験とも言える。昨今のオープンワールドゲームに見られるような「やることリストの消化作業」とは対極にある、古き良きゲーム体験だ。

    日本語対応は?

    本作は日本語テキストに対応している。ただし音声は英語のみで、字幕での対応となる。映画『スターシップ・トゥルーパーズ』の日本語吹替版に慣れ親しんだ人には少し残念かもしれないが、原作映画のキャスパー・ヴァン・ディーンが本人役で出演している以上、英語音声で楽しむのが正しい姿だろう。

    テキスト翻訳の質も悪くなく、ストーリーを追うのに支障はない。ただし一部の軍事用語や皮肉めいた表現は、英語で楽しんだ方がニュアンスが伝わるかもしれない。

    『Helldivers 2』との比較は避けられないが…

    本作を語る上で避けて通れないのが、2024年に大ヒットしたCo-opシューター『Helldivers 2』の存在だ。同作も『スターシップ・トゥルーパーズ』から強い影響を受けており、「バグを倒す協力シューター」という点では完全に被っている。

    しかし両者は明確に異なるゲーム体験を提供している。『Helldivers 2』がマルチプレイ前提のライブサービス型ゲームなのに対し、本作はシングルプレイに特化した一本道のストーリー体験だ。どちらが優れているという話ではなく、単純に目指している方向性が違う。

    COGconnected誌が「『Helldivers 2』キラーではないが、十分に差別化されている」と評したのは的を射ている。レトロFPSの枠組みで風刺を描くという試みは、本作独自のものだ。

    欠点もある。でも、それでも遊ぶ価値がある

    正直に言えば、本作には改善の余地がある部分も多い。前述のバグモードの未完成感に加え、マルチプレイが存在しないのも残念だ。『スターシップ・トゥルーパーズ』の世界観なら、分隊制のCo-opモードがあれば完璧だっただろう。

    また、AI味方兵士が驚くほど無能で、プレイヤーの射線に平気で飛び込んでくる。これは意図的な演出(「無能な兵士が大量に死ぬ」という原作再現)の可能性もあるが、フレンドリーファイアでチームキルしまくる状況はやや興ざめだ。

    それでも、である。これほど原作への愛と理解に満ちたライセンスゲームは滅多にない。映画公開から約30年を経て、ようやく「真の『スターシップ・トゥルーパーズ』ゲーム」が登場したと言っても過言ではない。

    90年代FPSの手触り、B級SF映画のチープな魅力、そして現代社会への鋭い風刺。これらすべてが絶妙なバランスで配合された本作は、「ゲームでしか表現できない風刺」の一つの到達点だと筆者は考えている。

    基本情報

    開発: Auroch Digital
    販売: Dotemu / Game Source Entertainment
    リリース日: 2026年3月16日
    価格: 2,800円(Steam)
    プラットフォーム: PC(Steam, GOG.com)
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語テキスト対応(音声は英語のみ)
    ジャンル: アクション, FPS, レトロシューター, ブーマーシューター
    Steam評価: Very Positive(811件中94%が好評) <image>

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/2321780/Starship_Troopers_Ultimate_Bug_War/
    GOG.com: https://www.gog.com/en/game/starship_troopers_ultimate_bug_war

    公式リンク

    公式サイト: https://www.dotemu.com/games/starship-troopers-ultimate-bug-war/
    X (Twitter): https://x.com/UltimateBugWar
    YouTube: https://www.youtube.com/@Dotemuofficial/featured

  • 武器クラフトこそがすべて! ウクライナ発の本格派バレットヘル『Grind Survivors』

    武器クラフトこそがすべて! ウクライナ発の本格派バレットヘル『Grind Survivors』

    2026年3月16日にリリースされたこの作品は、ウクライナのPushka Studiosが開発した、本気の「グラインド」を求めるプレイヤーのためのバレットヘル・ローグライトだ。タイトルに偽りなし。このゲームは文字通り、武器をひたすら「研ぎ澄ます」ことに特化している。

    地獄の鍛冶場「The Forge」が生み出す無限の可能性

    本作の最大の特徴は「The Forge(鍛冶場)」と呼ばれる武器クラフトシステムだ。これが、同ジャンルの他のゲームと一線を画す要素となっている。

    『Vampire Survivors』系のゲームでは、ラン中に拾ったアップグレードでビルドが完成する。しかし『Grind Survivors』では、ランの外で武器そのものを作り込むことができる。リボルバー、ショットガン、デュアルSMG、レールガン、そしてテスラガンなど8種類の武器タイプがあり、それぞれにコモンからレジェンダリーまでの5段階のレアリティが存在する。

    The Forgeでは以下の4つのシステムが使える:

    Infuse(融合): 同じタイプの武器5つを組み合わせて、より高いレアリティの武器を生成。5つの武器すべてのステータスとアフィックス(特殊効果)を引き継ぐため、運と戦略次第でとんでもない性能の武器が生まれる。

    Improve(強化): Ash(灰)を消費して武器のダメージとクリティカルダメージを強化。ただし、強化レベルが上がるごとに失敗率も上昇し、失敗すると今までの強化がすべて水の泡に。このギャンブル要素が、プレイヤーの心臓をバクバクさせる。

    Reforge(再鍛造): 武器のステータスを再ロール。理想のビルドを目指すなら避けては通れない道だが、これもまたギャンブル。何度もリロールしていると、気づけばAshが底をつく。

    Recycle(リサイクル): いらない武器をAshに変換。序盤は全然足りないので、レア度の低い武器はガンガンリサイクルすることになる。

    筆者がプレイして最も興奮したのは、Improveシステムだ。+14まで強化した愛用のリボルバーを+15にしようとボタンに手をかけたとき、失敗率75%の文字が目に入った。「やめておくべきか……?」と一瞬迷ったが、結局ポチッと。

    成功。

    その瞬間の快感は、まさにギャンブルで勝ったときのそれ。このスリルがたまらない。

    コミックブック調のビジュアルと完璧な最適化

    ビジュアル面でも『Grind Survivors』は一級品だ。コミックブック調のアートスタイルは、ゴア表現(血しぶきや悪魔の四肢切断)がありながらもカートゥーンライクで、不快感を与えない絶妙なバランスになっている。

    開発元のPushka Studiosはこれまでポーティング(移植)作業を中心に手掛けてきたスタジオで、『Spider Heck』や『Phantom Abyss』などの移植実績がある。その技術力は本作にも如実に表れており、最適化が驚くほど完璧だ。

    レビューを見ても「フレームドロップがまったくない」「何百体の敵に囲まれてもスムーズ」との声が多数。筆者も実際にプレイして、画面が敵の群れで埋め尽くされる状況でも一度もカクつきを感じなかった。Steam Deckでもプレイ可能だが、高難易度になると負荷が高くなるとの報告もある。

    グラインド、グラインド、そしてグラインド

    しかし、本作は決して万人向けではない。タイトルが『Grind Survivors』である以上、グラインドは避けられない。

    本作には3つのバイオーム(焦土と化した都市、燃える森、腐敗した荒野)があり、それぞれに5段階の難易度が設定されている。つまり、同じマップを何度も何度もプレイして、徐々に難易度を上げていく構造だ。

    「同じマップ? 飽きるでしょ」と思うかもしれない。その通り、実際に飽きる。レビューでも「3つのバイオームは単なる色違い」「敵のバリエーションが少ない」という指摘が多い。

    だが、それでもプレイし続けてしまうのは、The Forgeの魔力だ。「次のランでレジェンダリーが手に入るかもしれない」「この武器を+15まで強化できたら最強になれる」——そんな期待が、プレイヤーを画面に釘付けにする。

    筆者も「あと1ラン」「あと1ラン」と繰り返しているうちに、気づけば5時間が経過していた。これぞまさにハクスラの本質。

    バランス問題と今後のアップデート

    現時点での最大の問題は、武器バランスだ。特にテスラガン(電撃銃)が強すぎて、他の武器の存在意義が問われるレベル。レビューでも「テスラガンがほぼ必須」との声が多数上がっている。

    また、スキルツリーが「地味すぎる」との批判もある。単なる数値上昇がメインで、ゲームプレイを大きく変えるような派手なスキルがない。これは確かに物足りなさを感じる部分だ。

    ただし、開発元のPushka Studiosはコミュニティの声に耳を傾けており、今後のアップデートでバランス調整が期待できる。ウクライナという厳しい環境下で開発を続けているチームだけに、応援したくなるのも事実だ。

    34種類のルーンと4人のキャラクター

    メタプログレッション(永続的な強化要素)も充実している。

    Hell Dust(地獄の塵)を使ってスキルツリーを強化し、Ashで武器をアップグレード。さらに、34種類のルーン(装備可能なパッシブバフ)をアンロックすることで、ビルドの幅が大きく広がる。

    キャラクターは4人いて、それぞれ異なるパッシブとアクティブ能力を持つ:

    • Cascade: リコシェット(跳弾)特化
    • Solara: アビリティクールダウンDPS特化
    • Orfeo: Ash獲得サポート
    • Vex: 冷気による群衆コントロール

    特にOrfeoはAsh稼ぎに最適で、武器クラフトを加速させたい人にオススメだ。

    ウクライナの情熱が生んだインディーゲーム

    Pushka Studiosは、ウクライナのドニプロを拠点とする小規模なスタジオだ。『Grind Survivors』は彼らにとって初のオリジナルタイトルであり、これまでの移植作業で培った技術力をすべて注ぎ込んだ渾身の一作となっている。

    本作には「Ukraine Supporter Pack」というDLCも用意されており、売上の一部がウクライナ支援財団に寄付される仕組みになっている。ゲームを楽しみながら支援もできる——これ以上に素晴らしいことがあるだろうか。

    Steamでの評価はMostly Positive(72%)。675件のレビューのうち、賛否が分かれているのは事実だが、「ハマる人はとことんハマる」タイプのゲームだと言える。実際、筆者もその一人だ。

    基本情報

    開発: Pushka Studios
    販売: Assemble Entertainment
    リリース日: 2026年3月16日
    価格: 1,500円
    プラットフォーム: PC (Steam / GOG / Epic Games Store)、PlayStation 5、Xbox Series X/S
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語対応(12言語対応)
    ジャンル: アクション・ローグライク・バレットヘル・ルータシューター
    Steam評価: Mostly Positive(72% – 675件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3816930/Grind_Survivors/
    GOG: https://www.gog.com/en/game/grind_survivors

    公式リンク

    公式サイト: https://www.grindsurvivors.com/
    X (Twitter): https://x.com/PushkaStudios
    パブリッシャー: https://www.assemble-entertainment.com/

  • ハムスターが大量破壊兵器!? 終末世界でペットを育てるタワーディフェンス『MOCHI-O』が予想外に深い

    ハムスターが大量破壊兵器!? 終末世界でペットを育てるタワーディフェンス『MOCHI-O』が予想外に深い

    「ハムスターで国を守る」って言われて、最初は正直ピンとこなかった。可愛いペット育成ゲームかな?それとも単なるネタゲー? でも実際にプレイしてみると、『MOCHI-O』はそのどちらでもなく、むしろペット育成とタワーディフェンスを見事に融合させた、驚くほど中毒性の高いタイトルだったのだ。

    2026年1月19日にSteamでリリースされた本作は、開発者Zxima氏が手がける「やさしい終末(tender post-apocalypse)」シリーズの最新作。リリース直後からSteamで98%という圧倒的好評を獲得し、海外メディアからも「stupid little hamster(バカみたいに小さいハムスター)を大量破壊兵器として使うゲーム」と愛情を込めて紹介されている。

    MOCHI-Oって、一体何者なのか?

    本作の主人公は、見た目はハムスターそのものだが、実は人類を守るために開発された大量破壊兵器という設定の「MOCHI-O(モチオ)」だ。プレイヤーは新人の「飼育係(keeper)」として配属され、MOCHI-Oを育てながら外敵から祖国を守るという任務を遂行していく。

    ゲームの流れはシンプルで、戦闘パート育成パートを交互に繰り返していく構成。戦闘では画面右側から次々と襲来する敵軍に対し、MOCHI-Oを右手に持って照準を合わせ、攻撃ボタンを連打して迎撃する。倒した敵からは「種(seed)」がドロップし、これを集めることで経験値を獲得。レベルアップ時にはランダムで提示されるスキルから好きなものを選択し、MOCHI-Oを強化していくというローグライト要素も搭載されている。

    このバトルシステムが実に絶妙で、シンプルながら戦略性が高い。発射速度、クリティカル率、攻撃範囲、クールダウン短縮など、どのステータスを優先するかでプレイスタイルが大きく変わるのだ。連射重視で弾幕を張るもよし、一撃必殺の重火力ビルドを組むもよし、範囲攻撃で制圧するもよし。プレイを重ねるほど「次はこのビルドを試してみよう」と考える楽しさが増していく。

    育成要素がバトルに直結する設計の妙

    戦闘の合間には、MOCHI-Oの世話をする育成パートが挟まれる。ここでプレイヤーは、MOCHI-Oを撫でたり、種を与えたり、部屋を飾り付けたりして、彼(彼女?)との信頼関係を深めていく。

    この育成パートが単なる箸休めではないのが本作の秀逸なところ。MOCHI-Oとの信頼度(trust level)が上がると、戦闘能力も向上するという仕組みになっているため、「可愛がりたいから世話をする」だけでなく「強くしたいから世話をする」という動機も生まれる。感情的な愛着とゲームメカニクス上の利益が完全に一致しているのだ。

    筆者も最初は「ペット育成要素なんて飾りでしょ」と思っていたが、気づけば戦闘が終わるたびにMOCHI-Oの部屋に直行し、せっせと種を与えて撫で回している自分がいた。この小さなハムスター型兵器に、いつの間にか本気で愛着が湧いていたのである。

    ソロ開発者が紡ぐ「やさしい終末」の世界

    開発を手がけるZxima氏は、2017年から独立開発者として活動を続けるベテランだ。これまでに『Parasite Days』『Post-apocalypse Bakery』『Catastrophe Restaurant』など10作以上のゲームをリリースしており、そのすべてに共通するのが「tender post-apocalypse(やさしい終末)」というテーマ。

    世界が滅びかけているのに、なぜか温かい。登場人物たちは絶望的な状況下でも前向きで、ユーモアを忘れない。『MOCHI-O』もまさにその系譜で、上司である「Director(所長)」とのやり取りや、MOCHI-Oとのコミュニケーションが妙に心温まるのだ。

    Zxima氏自身も本作について「小さくて可愛くて、めちゃくちゃ強いキャラクターで暴れられたら最高じゃない?」とコメントしており、そのコンセプトが見事に形になっている。ちなみに氏の前作『Catastrophe Restaurant』は、Google Play Indie Games Festival 2022でTop 3賞を受賞した実績もある。

    メタ進行とやり込み要素も充実

    各バトルで獲得したお金は、メタ進行システムに投資できる。新しい武器のアンロック、永続的なステータス強化、MCHI-Oの部屋の装飾品購入など、プレイを重ねるほど有利になる要素が盛りだくさん。

    特に武器の種類が豊富で、通常弾からホーミングミサイル、果ては宇宙からのレーザービームまで用意されている。どの武器を選ぶかで戦闘の感触がガラリと変わるため、飽きが来ない。

    また、敵のバリエーションも多彩だ。素早く飛び回る小型機、耐久力の高いタンク、画面を埋め尽くすように迫るロケット弾など、それぞれに対処法が異なるため、ステージごとに適切なビルドを考える戦略性が求められる。

    さらに、爆弾やビームといった全画面攻撃の必殺技も用意されており、ピンチの時に一気に形勢を逆転させられる爽快感がたまらない。

    完璧ではないが、それでも魅力的

    もちろん本作にも課題はある。海外レビューでは「UIの読みづらさ」や「コントローラーサポートの不完全さ」が指摘されており、特にフルスクリーンモードでフォントが小さく表示される問題は改善の余地がある。また、日本語・英語には対応しているものの、メニュー操作がやや直感的でない部分もある。

    それでも、500円前後という価格を考えれば十分すぎるほどのボリュームと完成度を誇っている。1ランあたりのプレイ時間も短く、「もう1回だけ」とついつい続けてしまう中毒性の高さは本物だ。

    IndieGamesのレビューでは「メカニクスはシンプルだが、それがすぐにマスターできる良さにつながっている。ラウンドが時間制限付きなので、1回のプレイが10分も食われることはない。次のラウンドをもう1回やりたくなる、そんな短時間の楽しさが詰まっている」と評価されている。

    こんな人におすすめ

    『MOCHI-O』は以下のような人に強くおすすめできる:

    • ローグライトやタワーディフェンスが好きな人 — ビルド構築の自由度が高く、毎回違った展開を楽しめる
    • ペット育成ゲームが好きな人 — MOCHI-Oへの愛着が自然と湧く設計が秀逸
    • 短時間でサクッと遊びたい人 — 1ランが短く、スキマ時間にも最適
    • ドット絵やレトロ調のビジュアルが好きな人 — 意図的にローポリに寄せたグラフィックが独特の味わい
    • B級映画的なノリを楽しめる人 — 設定の荒唐無稽さとストーリーの温かさのギャップが最高

    逆に、「最新グラフィックで没入感のあるゲームがしたい」「複雑で歯ごたえのある戦略ゲームが好き」という人には向かないかもしれない。本作の魅力は、あくまでシンプルさと中毒性、そしてちょっとした温かさにあるのだから。

    基本情報

    開発: Zxima
    販売: Kodansha
    リリース日: 2026年1月19日
    価格:580円(通常価格) セール中20%オフ 464円
    プラットフォーム: PC(Steam)/ iOS・Android版は後日配信予定
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語・英語対応
    ジャンル: タワーディフェンス / ペット育成 / ローグライト
    Steam評価: 圧倒的に好評(98% – 184件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3596670/MOCHIO/

  • ゾンビ黙示録で店番とか……マジ?『The Walking Trade』で見つけたサバイバル経営の新境地

    ゾンビ黙示録で店番とか……マジ?『The Walking Trade』で見つけたサバイバル経営の新境地

    このゲーム、ゾンビが跋扈(ばっこ)する世界で店を経営するというぶっ飛んだコンセプトなのだが、実際にプレイしてみるとこれが驚くほど面白い。店舗経営シミュレーションとサバイバルアクションを融合させた本作は、「売上を伸ばすか、生き延びるか」という究極の選択を迫ってくる。そしてその答えは……両方だ。

    昼は接客、夜は防衛——そして朝はバッテリー回収

    本作の舞台は、文明が崩壊した後の世界。人々はまだ生きている。そして驚くべきことに、彼らは依然として買い物をする。缶詰、バッテリー、武器、防具——生き残るために必要なものすべてが、あなたの店で取引される。

    ゲームは非常にシンプルなところから始まる。荒廃した店舗を掃除し、ゴミを片付け、棚を設置する。この作業が意外と満足感がある。何もない廃墟が、少しずつ機能する店へと変わっていく過程は、シミュレーションゲーム好きならたまらないだろう。

    だが、この平穏は長く続かない。

    客が来る。普通の客もいれば、武装した荒くれ者もいる。そして日が暮れると……ゾンビが襲ってくる。ここから本作の本領が発揮される。

    物理演算地獄とクラフト——そしてまた物理演算地獄

    『The Walking Trade』の最大の特徴であり、最大の悩みの種が「物理演算」だ。商品はすべて実体を持っており、棚に丁寧に並べても、客が少し触れただけで崩れ落ちる。10分かけて積み上げた弾薬の箱が、NPCの肩が当たっただけで爆発したように散乱する光景は、もはや日常だ。

    しかし、この物理演算があるからこそ、店作りには独特の達成感がある。商品を投げて陳列することもできるが、きれいに並べたいという欲求が湧いてくる。缶詰を一つひとつ積み上げ、完璧な陳列を作り上げたときの満足感は格別だ——それが客によって破壊されるまでは。

    クラフトシステムも非常に手作業重視。作業台に材料を持っていき、レシピを選び、完成品を取り出す。すべてが手動だ。効率は悪いが、この手間こそが本作の魅力でもある。武器を作り、棚を作り、バリケードを作る。すべてが自分の手で行われる感覚は、他の経営シミュレーションにはない没入感を生み出している。

    従業員マネジメント——彼らは時に役立ち、時に邪魔をする

    一人で店を回すのには限界がある。そこで登場するのが従業員システムだ。生存者を雇い、レジ係、清掃員、警備員などの役割を割り振る。星評価で能力が分かれており、優秀な人材を確保することが重要……なのだが、現実はそう甘くない。

    AIがかなり粗い。清掃員は死体を片付けるべきなのに、なぜか放置する。警備員は時折、味方を攻撃する。レジ係は客が並んでいても動かないことがある。ソロ開発者が懸命にパッチを出してはいるが、まだまだ改善の余地がある。

    それでも、うまく機能したときの達成感はすごい。従業員が整然とレジを回し、清掃員が店内をきれいに保ち、警備員がゾンビを撃退する——このサイクルが回り始めると、店は一気に拡大していく。

    「善良な商人」か「サイコパス略奪者」か——選択はあなた次第

    本作が他のシミュレーションと一線を画すのは、プレイヤーの選択に驚くほどの自由があることだ。

    正攻法で行くなら、適正価格で商品を売り、客を大切にし、評判を築く。評判が上がれば客足も増え、店は繁盛する。

    だが……別の道もある。

    ある客がAK-47を買った。バッテリーの束を支払い、満足そうに店を出ようとする。その背中にバールを振り下ろす。バッテリーを回収し、AK-47を拾い、また棚に戻す。完璧なビジネスモデルだ。

    もちろん、他の客に目撃されれば評判は地に落ちる。客足が途絶え、店は破綻する。しかし、目撃者がいなければ……?

    この倫理観のない自由さが、本作を単なる経営シミュレーションから「何でもありのサバイバルゲーム」へと昇華させている。善人を演じるもよし、サイコパスに徹するもよし。すべてはあなた次第だ。

    ソロ開発者の情熱が詰まった、バグと可能性のカオス

    『The Walking Trade』はMicrowave Gamesによるソロ開発作品だ。彼の前作『Against All Odds』は2Dアクションプラットフォーマーであり、本作とはまったく異なるジャンル。それでもこの挑戦的なプロジェクトに挑んだ彼の情熱は、ゲームのあちこちに感じられる。

    リリースから連日パッチがリリースされており、開発者の熱意は本物だ。Steam コミュニティでのフィードバックにも積極的に対応しており、バグ報告を次々と修正している。現在のバージョンは1.0.5で、安定性は着実に向上している。

    ただし、それでもバグは多い。物理演算の暴走、AIの迷走、予期せぬクラッシュ——こうした問題はまだ残っている。しかし、それを補って余りあるゲーム性がある。コア体験がしっかりしているからこそ、多少のバグは「ご愛嬌」で済ませられるのだ。

    低ポリ美学——廃墟と希望が混在する世界

    グラフィックスタイルは昨今のインディーゲームでよく見られる低ポリゴンスタイル。『SurrounDead』や『Rise of Gun』といった作品と同じ系統だが、本作はシェーディングとディテールでさらに洗練されている。

    キャラクターは継ぎはぎの服、擦り切れた防具、傷跡、タトゥーで個性が表現されており、ポストアポカリプスの世界観がよく伝わってくる。ゾンビのデザインも多彩で、ステージごとに異なる敵が登場する。

    照明効果も秀逸だ。昼間の明るい店内と、夜のフラッシュライトに照らされる闇——このコントラストが、緊張感と安堵感を巧みに演出している。

    Steamレビュー80%——賛否両論だが、確実に刺さる人には刺さる

    Steam評価は「非常に好評」で、456件のレビュー中80%が肯定的だ。多くのプレイヤーが「バグは多いが、コンセプトが素晴らしい」と評価している。

    肯定的なレビューでは、「店舗経営とサバイバルの融合が最高」「物理演算が面白い」「倫理観のない自由さがたまらない」といった声が目立つ。一方、否定的なレビューでは「AIが酷い」「物理演算がストレス」「バグが多すぎる」といった指摘がある。

    つまり、本作は「バグとカオスを楽しめる人向け」のゲームだ。完璧に磨き上げられた体験を求める人には向かないが、荒削りながらも独創的なゲームを求める人には最高の選択肢となる。

    PlayWay S.A.パブリッシング——シミュレーションゲームの名門

    本作のパブリッシャーはPlayWay S.A.。ポーランドを拠点とする同社は、シミュレーションゲームに特化したパブリッシャーとして知られており、数多くの「○○シミュレーター」シリーズを世に送り出してきた。

    PlayWayのゲームは、ニッチなテーマを深掘りし、マニアックなシミュレーション体験を提供することで定評がある。『The Walking Trade』もその系譜に連なる作品であり、「ゾンビ黙示録×店舗経営」という一見無茶なコンセプトを、しっかりとしたゲームに仕上げている。

    基本情報

    開発: Microwave Games
    販売: PlayWay S.A.
    リリース日: 2026年3月5日
    価格: 1,200円(発売記念10%オフで1,080円、3月20日まで)
    プラットフォーム: PC(Windows)
    プレイ人数: 1人
    言語: 日本語対応(インターフェース、字幕)
    ジャンル: 店舗経営シミュレーション、サバイバル、アクション
    Steam評価: 非常に好評 (80% – 456件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3398110/The_Walking_Trade/

  • 手動リロード、手動歩行、手動まばたき。『They Killed Your Cat』が問いかける「FPSの原点」とは何か

    手動リロード、手動歩行、手動まばたき。『They Killed Your Cat』が問いかける「FPSの原点」とは何か

    「猫を殺されたという理由で、無抵抗な敵を撃ち続けるゲーム」——そう聞いて、あなたはどんな印象を持つだろうか。筆者も最初は困惑した。しかし実際にプレイしてみると、本作が単なるバイオレンスシューターではなく、FPS操作の「当たり前」を根底から見つめ直す実験的な作品だと気づかされた。

    2026年2月24日、インディーデベロッパーVekariaによってSteamでリリースされた『They Killed Your Cat』は、短くも容赦ない復讐劇を描くFPSだ。タイトル通り、主人公は愛する猫を殺された男。彼が向かうのは、白く無機質なオフィス空間。そこで待ち受けるのは武器を持たず、手を挙げて投降するような仕草を見せる敵たち——だが、容赦はない。

    すべてを「手動」にしたらFPSはどうなる?

    本作の最大の特徴は、通常のFPSでは自動化されている動作のほぼすべてを「手動操作」に置き換えたことだ。リロードはボタン一つで完結しない。マガジンを抜き、新しいマガジンを挿入し、スライドを引く——それぞれが個別のキー操作として要求される。各武器ごとにリロード手順が異なり、ジャミング(弾詰まり)が発生すれば、それもまた手動で解除しなければならない。

    さらに驚くべきは「歩行」の概念だ。通常のゲームではWASDキーで自由に移動できるが、本作では左足と右足を個別に制御する必要がある。つまり、キーを交互に押しながら前進するのだ。慣れないうちはぎこちなく、まるで赤ん坊が歩行を学ぶような感覚になる。

    極めつけは「まばたき」だ。一定時間まばたきをしないと視界がぼやけ始め、最終的には目を閉じざるを得なくなる。その間は完全に無防備だ。現実世界では誰もが無意識に行っている動作を、ゲーム内で意識的に管理しなければならないというシュールさ——これが、本作独特の緊張感を生み出している。

    設定でこれらの手動操作を無効化することもできるが、あえてすべてを手動にする「マニュアルモード」でクリアすると専用の実績が解除される。筆者も挑戦してみたが、リロード中に敵に囲まれ、歩行がおぼつかなくなり、まばたきのタイミングを見失う——その地獄のような体験こそが、本作の真骨頂だと感じた。

    白い廊下、無抵抗な敵、そしてプレイヤーの違和感

    本作の舞台は、ほぼ全編が白く清潔感のあるオフィスビル風の空間だ。蛍光灯が照らす廊下、並ぶデスク、トイレや給湯室——日常的な空間が、復讐劇の舞台となる。敵となるのは、武装していないスーツ姿の人物たちだ。彼らは手を挙げて降伏の意思を示すこともあるが、近づけば襲いかかってくる。

    この設定は賛否を呼んでおり、Steamのレビューでも「不快」「倫理的に問題がある」といった指摘が見られる。実際、筆者も最初のプレイでは違和感を覚えた。しかし、何度かプレイするうちに、この「不快さ」こそが開発者の意図なのではないかと思うようになった。

    本作は、FPSというジャンルが持つ暴力性を、あえて生々しい形で提示する。武装した兵士やゾンビではなく、オフィスにいる「普通の人々」を撃つという行為は、プレイヤーに「自分は今、何をしているのか」という問いを突きつける。それは不快かもしれないが、だからこそ記憶に残る体験となる。

    開発者Vekariaとシンプルな哲学

    本作を手がけたVekariaは、これまでほとんど実績のない新興デベロッパーだ。公式の情報は限られているが、X(旧Twitter)のアカウント@KilledYourCatでは、開発中のスクリーンショットや動画が公開されていた。

    興味深いのは、Vekariaが本作で「シンプルさ」を追求している点だ。グラフィックはローポリゴンで、UIは最小限。ストーリーも最低限しか語られない。だが、その引き算の美学が、逆に操作の複雑さや緊張感を際立たせている。

    本作は1.61GBという軽量なファイルサイズで、最低要件もIntel Core i5、4GB RAM、NVIDIA 970相当と控えめだ。誰でも気軽にプレイできる一方で、その内容は決して「カジュアル」ではない。この対比もまた、本作の魅力の一つだろう。

    プレイヤーの反応:賛否両論の中で見えるもの

    Steamでの評価は「やや好評」で、355件のレビュー中72%が肯定的だ。肯定的なレビューでは「独特の操作が新鮮」「短いが濃密な体験」「手動操作が思ったより楽しい」といった声が目立つ。

    一方、否定的なレビューでは「内容が薄い」「同じ廊下の繰り返しで飽きる」「倫理的に不快」「これは『Trepang 2』や『I Am Your Beast』の劣化版だ」といった意見が見られる。特に比較されがちなのが、同じく復讐をテーマにしたFPS『Trepang 2』だが、本作はそれとは異なるアプローチを取っている。

    開発者はコミュニティからのフィードバックを積極的に受け入れており、リリース直後から複数回のアップデートを実施している。ハンマーなどの近接武器の追加、新たなギミック、UIの改善など、着実に進化を続けている点は評価したい。

    実績システムとリプレイ性

    本作には15の実績が用意されており、いずれもゲームのメカニクスに関連したものだ。「火災報知器を作動させる」「立ち式デスクを操作する」「トイレを流す」といった環境インタラクションから、「目を閉じたまま敵を倒す」「1000歩を踏む」「完全手動モードでクリアする」といった高難度のものまで幅広い。

    特に「FLUSH MASTER」(すべてのトイレを流す)は、マップ探索を促す実績として機能している。本作は一本道のように見えて、実はいくつかのルートやサイドルームが存在する。これらを見逃すと実績を取り逃がすことになるため、2周目以降のモチベーションにもなっている。

    また、「MANUAL AVENGER」(完全手動モードでクリア)は真のチャレンジだ。筆者も挑戦したが、リロードと歩行を同時に管理しながら敵の波をかわすのは、想像以上に困難だった。だが、達成したときの達成感はひとしおだ。

    短いが密度の濃い体験——プレイ時間と価格のバランス

    本作のプレイ時間は、通常モードで30分から1時間程度。手動モードでも2時間あればクリアできるだろう。これを「短すぎる」と見るか、「密度が濃い」と見るかは、プレイヤー次第だ。

    定価800円で購入できる。この価格帯であれば、実験的な作品としては妥当だと筆者は感じた。2時間のプレイ時間で得られる体験の濃さを考えれば、決して高くはない。

    ただし、長時間遊べるゲームを求めている人には向かない。本作はあくまで「短編映画」のような立ち位置だ。一度のプレイで強烈な印象を残し、プレイヤーの記憶に刻まれる——そういうタイプのゲームである。

    FPSの「当たり前」を疑う勇気

    『They Killed Your Cat』は、決して万人向けのゲームではない。暴力的な設定、不快感を伴うテーマ、実験的な操作——これらはすべて、プレイヤーを選ぶ要素だ。

    だが、だからこそ価値がある。本作は、FPSというジャンルが長年積み重ねてきた「快適さ」や「自動化」を一度解体し、「もし全てが手動だったら?」という問いを投げかける。その答えは不便で、不快で、時に滑稽だが、同時に新鮮で、緊張感があり、記憶に残る。

    Steamのレビューで「これはゲームなのか、それともアートプロジェクトなのか」と問う声があったが、筆者はその両方だと思う。ゲームとしての面白さと、メッセージ性を持つアート作品としての側面——その両立こそが、本作の最大の魅力だ。

    もしあなたが、いつものFPSに飽きているなら、あるいは「ゲームとは何か」を考えるきっかけが欲しいなら、『They Killed Your Cat』は試してみる価値がある。猫を殺された男の復讐劇は、きっとあなたの記憶に刻まれるはずだ。


    基本情報

    開発: Vekaria
    販売: Vekaria
    リリース日: 2026年2月24日
    価格: 800円
    プラットフォーム: Steam
    プレイ人数: 1人(シングルプレイヤー)
    言語: 英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポーランド語、ポルトガル語(ブラジル)、中国語(簡体字・繁体字)、日本語、韓国語、ロシア語
    ジャンル: FPS、アクション、シミュレーション、カジュアル、インディー
    Steam評価: やや好評(72% – 355件のレビュー)

    購入リンク

    Steam: https://store.steampowered.com/app/3489420/They_Killed_Your_Cat/

  • Black Mesa開発チームが贈る本格派Co-opシューター!『Rogue Point』早期アクセス開始。チームワークこそが生存の鍵だ

    Black Mesa開発チームが贈る本格派Co-opシューター!『Rogue Point』早期アクセス開始。チームワークこそが生存の鍵だ

    2026年2月13日、Team17とCrowbar Collectiveは、最大4人協力プレイ対応のタクティカルFPS『Rogue Point』の早期アクセス版をSteamで配信開始した。価格は1,900円で、2月27日まで15%オフの1,615円で購入できる。

    本作は、名作Half-Lifeリメイク『Black Mesa』を手掛けたCrowbar Collectiveの完全新作だ。『Black Mesa』が約11万件のレビューで95%という圧倒的好評を獲得したチームが、今度はオリジナルの世界観でタクティカルシューターに挑戦する。

    企業間戦争に挑む特殊部隊

    世界で最も裕福なCEOが死去した。その遺産を巡り、冷酷な企業グループが熾烈な争奪戦を繰り広げている。彼らは「MERXアプリ」を使って傭兵部隊を注文し、まるでフードデリバリーのように私兵を召喚する。完璧な企業戦争の兵士だ。

    そんな狂気の企業間戦争に立ち向かうのが、独立自警部隊「Rogue Point」。プレイヤーは最大4人でチームを組み、高リスクなミッションに挑む。インテリジェンスを集め、目標を達成し、動的に変化するミッションを戦い抜く。最終目標は5つ星評価を受けた最強の傭兵「ファイブスター・マーク」との対決だ。

    Rainbow Six VegasとPayday 2の融合

    本作の最大の特徴は、徹底したチームプレイの要求だ。Steamレビューでは71%が好評価をつけており、「Tom Clancy’s Rainbow Six Vegas 1&2のテロリストハントモードに似ている」という声が多数上がっている。

    ミッション開始前には詳細な作戦計画フェーズがある。チームメンバー全員が同じマップに書き込みながら、侵入ルートや戦術を練る。インテルポイントを使えば、マップ上の医療ステーションの位置を事前に表示することも可能だ。

    装備購入システムはCounter-Strikeスタイルだ。各ミッション開始時に$1,000の所持金からスタートし、武器や装備を購入する。アサルトライフル、サブマシンガン、ショットガン、拳銃、非致死性武器、グレネード、回復アイテムなど選択肢は豊富だ。

    運試しをしたいなら「Dead Drop」システムもある。所持金を賭けてルーレットを回せば、ランダムな武器が手に入る。拳銃からAK、グレネードランチャーまで何が出るかはわからない。高リスク・ハイリターンの選択だ。

    毎回違う戦場、毎回違う戦略

    ステージは空港、ショッピングモール、オフィス、石油リグの4つのロケーションで展開される。しかし同じ場所でも毎回違う体験が待っている。

    その秘密が「パラメトリック・デザイン・システム」だ。各マップはプレイごとに再構成され、新たな戦略的チャレンジを提供する。このシステムにより、何度プレイしても新鮮な緊張感が保たれる。

    敵となるMERX傭兵は6種類のクラスに分かれており、それぞれ独自のAI戦術を持つ。

    ソルジャー – 環境を利用し、チームで連携してくる基本兵士。決して侮れない。

    バーサーカー – 薬物で強化され、命知らず。マチェーテで接近戦を仕掛けてくる混沌の化身だ。

    スナイパー – 遠距離からチームをピン留めし、重要エリアへの侵入を阻止する。レーザーサイトと爆発する仲間の頭が唯一の手がかりだ。

    ヘビー – 巨大で鈍重だが防御力抜群。全弾叩き込んでも効果がない。逃げるか、唯一の弱点を探すしかない。

    ルックアウト – 警戒担当で、見つかると後退して増援を呼ぶ。

    5スター傭兵 – アプリで最高評価を受けた伝説の傭兵。チームの実力が試される。

    ローグライト要素とカスタマイズ

    ミッション完了ごとにスキルポイントを獲得し、パフォーマンスアップを選択できる。移動速度、回復能力、ヘッドショットダメージなど、選択肢は3つから選ぶ形式だ。10-20%のバフで、重複はない。

    稼いだ資金で武器のアタッチメントや戦術装備をアンロックしていく。20種類以上の武器、40種類以上のアタッチメントと戦術アイテム、60種類以上のカスタマイズアイテムが用意されている。

    スキンやアタッチメント、衣装はすべてゲーム内で獲得可能で、サポーターエディション限定のHECU海兵隊コスチューム以外は課金要素がない。プレイヤーの財布にも優しい設計だ。

    早期アクセスの現状と課題

    Steamの早期アクセスレビューを見ると、本作のポテンシャルと同時に改善点も見えてくる。

    好評な点:

    • グラフィックスとライティングが非常によくできている
    • UIがシンプルでわかりやすい
    • チュートリアルで基本を学べる
    • すべてがゲームプレイで獲得可能(課金なし)
    • 銃撃感が心地よく、武器アニメーションが素晴らしい
    • 容量が8GBと軽量(昨今の50-100GBが当たり前の時代に)
    • P2P接続によりサーバー問題がない
    • 1,900円という良心的な価格

    改善が必要な点:

    • パフォーマンス問題 – 射撃時のフレームドロップ、空港マップで30FPS以下に
    • AI挙動 – エイムボット級の精度と脳死行動の間で揺れる
    • タイマーシステム – すべてにタイマーがあり、ステルスプレイの余地がない
    • 音響設計 – 人質の声がマップ全体に響く、敵の足音が聞こえにくい
    • ビジュアルクラッター – 弾痕のパーティクルが視界を遮り、パフォーマンスを低下させる
    • ローグライト要素の薄さ – バフ選択が単調で、リロールもない
    • マップがない – 迷路のような構造なのに、ミッション中にマップを表示できない

    開発チームは早期アクセス期間中、コミュニティのフィードバックを積極的に取り入れると表明している。実際、リリース直後にホットフィックスを配信し、衝突判定やZ-fighting、敵のパスファインディング問題などを修正した。

    カジュアルにもハードコアにも

    開発者のAdam Engels氏は「友達と遊んでハングアウトできる4人Co-opシューターを作りたかった。カジュアルなハングアウトにもできるし、本気でやり込んでチャレンジすることもできる」と語っている。

    実際、ソロプレイも可能だが、本作は協力プレイで真価を発揮する。一人が死んでもチームが全滅しなければミッションは続行できる。ただし死んだプレイヤーは装備をすべて失い、次のミッションから再スタートとなる。

    キャンペーンは分割して進められるので、時間がないときは1セグメントだけプレイして、次回オンラインになったときに続きから再開できる。社会人フレンドとのプレイにも配慮された設計だ。 <image>

    Rainbow Six Vegasの後継者を求める人へ

    レビューで繰り返し登場するのが「Rainbow Six Vegasのテロリストハントモードの後継」という評価だ。実際、作戦立案フェーズ、ブリーチング、人質救出、爆弾解除といった要素は往年のタクティカルシューターファンの心を掴んでいる。

    PC Gamerの記者は「私のような協力シューターをたくさんプレイする人間でも、チームとして機能するのは難しい。ほとんどの協力シューターは各自が好き勝手できる余地が多すぎる。私には制限が必要で、そこにRogue Pointが登場した」とコメントしている。

    現状は粗削りだが、『Black Mesa』で証明された開発力を持つCrowbar Collectiveなら、早期アクセス期間で大きく改善できるはずだ。

    タクティカルFPSファン、協力プレイが好きな方、『Black Mesa』を楽しんだ方にオススメしたい。『Rogue Point』は現在Steamで早期アクセス中だ。チームを組んで、企業間戦争に飛び込もう。


    基本情報

    タイトル: Rogue Point
    開発: Crowbar Collective
    販売: Team17
    早期アクセス日: 2026年2月13日
    正式リリース予定: 未定
    言語: 日本語対応
    定価: 1,900円(Steam)
    ローンチ割引: 1,615円(15%オフ、2月27日まで)

    プラットフォーム:

    • Steam

    公式リンク:

  • ゾンビの荒野で人類の意地を見せつけろ!『HumanitZ』ついに正式リリース。生存本能を刺激する本格サバイバルの真価とは

    ゾンビの荒野で人類の意地を見せつけろ!『HumanitZ』ついに正式リリース。生存本能を刺激する本格サバイバルの真価とは

    待ちに待った1.0がついに降臨

    2年以上の長いアーリーアクセス期間を経て、ついに『HumanitZ』が正式版1.0として生まれ変わった。開発元のYodubzz Studios(イギリス)とパブリッシャーのindie.ioがタッグを組んだこの作品、実は筆者も早期アクセス時代からちょくちょく触れていたのだが、当時は「まあ、よくあるゾンビゲーかな」程度の印象だった。

    しかし今回の1.0アップデートで様子が一変。コミュニティからのフィードバックを徹底的に反映した結果、まさに「これぞサバイバル」と言わんばかりの作品に仕上がっている。40%オフセール(2月20日まで)も実施中ということで、改めて腰を据えてプレイしてみることにした。

    ゾンビサバイバルだけど、なぜか他とは違う

    『HumanitZ』の第一印象は確かに『Project Zomboid』ライクな見下ろし視点のゾンビサバイバル。でも実際にプレイしてみると、この作品独特の魅力がじわじわと見えてくる。

    まず驚かされるのが、チュートリアルの段階で「誰も信じるな」と釘を刺されること。これ、単なるフレーバーテキストではない。実際にNPCとの取引や交渉で痛い目を見ることが多々ある。信頼関係の構築が生存の鍵を握るという、ありそうでなかった要素だ。

    ゲーム世界では「Zeek」と呼ばれるゾンビたちが闊歩しているが、これがまた多種多様。警官のZeekは高いHPと装甲を持ち、バイオスーツ姿のやつは予想外の攻撃を仕掛けてくる。騒音を立てれば立てるほど群れが寄ってくるという仕組みも、緊張感を煽る良いスパイスになっている。

    拠点作りこそがすべて!でも立地選びが命取り

    サバイバルゲームの醍醐味といえば拠点建設だが、『HumanitZ』では「どこに」建てるかが生死を分ける。都市部に建てれば物資は豊富だが、Zeekの群れに囲まれるリスクも高い。逆に郊外なら安全だが、必要な素材を集めるのに時間がかかる。

    筆者は最初、「安全第一」とばかりに人里離れた森の奥に拠点を構えた。確かに平和だったが、いざという時の物資調達で死にそうになった。結局、適度に文明の利器にアクセスできる郊外に引っ越し、電気フェンスとバリケードで武装した要塞を作り上げることに。

    しかし、この拠点作りが楽しいのなんの。単純に壁を張り巡らせるだけではなく、電気フェンス、コンクリートバリケード、さらには車両の改造まで含めた総合的な防御システムが構築できる。愛車を装甲化して荒野を駆け抜ける時の爽快感は、まさに映画『マッドマックス』の世界そのものだ。

    マルチプレイの絶妙なバランス

    『HumanitZ』の真価は、やはりマルチプレイにある。最大4人での協力プレイはもちろん、PvPとPvEが混在した専用サーバーでの生存競争は格別だ。

    特に印象的だったのが、他のプレイヤーとの微妙な距離感。完全に敵対するわけでもなく、かといって無条件に信頼できるわけでもない。物資の取引、情報の共有、時には裏切りも含めた複雑な人間関係が、ゾンビの脅威以上にスリリングな体験を生み出している。

    最近のアップデートで導入されたリアルタイム感染システムも秀逸。感染したプレイヤーは迅速な判断を迫られ、適切な処置を行わないと恐ろしい怪物に変貌してしまう。この緊張感が、チームワークの重要性を一層際立たせている。

    圧倒的な自由度と個性的な職業システム

    1.0アップデートで大幅に刷新されたスキルツリーと職業システムが、本作の戦略性を大きく押し上げている。無職を選べば25%の経験値ボーナスが得られるし、泥棒なら警報システムを無効化できる。それぞれの職業に明確なメリット・デメリットが設定されており、マルチクラス運用も可能だ。

    パーマデスモードも用意されており、死んだらキャラロストという極限状況でのプレイも楽しめる。筆者は怖くてまだ手を出していないが、この緊張感がたまらないという声も多い。

    唯一の不満点は「慣れ」が必要なこと

    正直に言えば、『HumanitZ』は万人向けではない。特に序盤は操作性に癖があり、インベントリ管理やUI周りで戸惑うことも多い。Steamレビューでも「バグが多い」「操作が不安定」といった指摘があるのも事実だ。

    しかし、これらの粗さを乗り越えた先に待っているのは、他では味わえない濃密なサバイバル体験。開発チームも活発にアップデートを続けており、今後のさらなる改善に期待が持てる。

    結論:代替品なき唯一無二の体験

    『HumanitZ』は完璧な作品ではない。しかし、この手のゾンビサバイバルジャンルで「他に代わりがない」独特の魅力を持った作品であることは間違いない。

    コミュニティ主導で成長してきた2年間の蓄積、プレイヤーの声を真摯に聞き続ける開発姿勢、そして何よりもその先に見える「究極のサバイバル体験」への情熱。これらが組み合わさった時、粗削りながらも唯一無二の魅力を放つ作品が生まれる。

    40%オフの今が絶好の機会。ただし、ソロプレイよりもフレンドと一緒に挑戦することを強くお勧めしたい。人類最後の希望として、終末世界を生き抜いてみてはいかがだろうか。


    基本情報

    ゲームタイトル: HumanitZ
    開発: Yodubzz Studios
    パブリッシャー: indie.io
    プラットフォーム: PC (Steam)
    価格: 2,300円(通常価格)
    セール価格: 1,380円(40%オフ、2月21日まで)
    プレイ人数: 1-4人(シングルプレイ・マルチプレイ対応)
    日本語対応: あり
    発売日: 2026年2月6日(正式リリース)

    購入リンク

    公式リンク

  •  いったい何があった? 薬物に溺れた殺し屋が地獄のラスベガスでマフィアを一掃する『Jackal』がヤバすぎる

     いったい何があった? 薬物に溺れた殺し屋が地獄のラスベガスでマフィアを一掃する『Jackal』がヤバすぎる

     最近、Steamストアを徘徊していて思うことがある。インディーズゲームの世界には、メジャーなタイトルでは絶対に実現しそうもない狂った発想のゲームが次から次へと現れ、我々プレイヤーを混乱と快楽の渦に叩き込んでくれることだ。

     そんな中、2026年2月5日にTranshuman Designから突如として現れた『Jackal』は、まさにそんな「なんでこんなゲーム作ったの?」という疑問を抱かずにはいられない、とんでもないタイトルである。

     薬物に溺れたドラッグキメキメの殺し屋が、1970年代のラスベガスでマフィアを片っ端から血祭りに上げまくるという、まるでタランティーノ映画とジョン・ウィック、そしてHotline Miamiを混ぜてドラッグでキメたような狂気の見下ろし型アクションなのだ。

    何もかもが一撃死の殺戮劇場!

     最初にプレイして驚愕したのは、とにかく全てがワンショットキル仕様だということ。敵も主人公も、基本的に一発食らえば即死という、極限まで緊張感を高めたゲームバランスになっている。

     筆者も最初の数分で何度死んだかわからない。「えっ、もう死ぬの?」「マジで? 今のでアウト?」みたいな感じで、あまりの理不尽さに思わず苦笑いしてしまうほどだ。

     だが、この殺伐としたゲームバランスこそが『Jackal』の魅力である。一瞬の判断ミスが即座に死につながる緊張感は、まさに薬物でハイになった殺し屋の感覚を追体験しているかのようだった。

    エジプト神話のアヌビスが相棒という狂気

     ここで更に頭がおかしいのが、主人公の相棒として登場するアヌビス(エジプトの死神)の存在だ。スーツを着こなした紫色のアヌビスが、なぜか主人公にアドバイスをくれるのである。

     「今は女にうつつを抜かしている場合じゃない、殺しに集中しろ」みたいなことを平然と言ってくるこのキャラクターが、妙にクールで魅力的なのだ。しかも、このアヌビスから魔法の力を借りることができ、時を止めたり、敵を混乱させたりといった超自然的な能力を使えるのも面白い。

     一体どういう経緯でドラッグ中毒の殺し屋とエジプトの死神が組むことになったのか、そのバックストーリーが気になって仕方がない。

    物理演算がもたらす爽快感

     戦闘システムで特に印象的なのは、環境を活用した戦い方だ。テーブルや椅子を蹴り飛ばして敵にぶつけたり、ドアを勢いよく開けて敵をスタンさせたりと、物理演算を活かした多彩なアクションが楽しめる。

     筆者が特に気に入ったのは、敵を蹴り倒して武器を奪い、その武器で他の敵を倒した後、武器を投げつけて最初の敵を仕留めるという一連の流れだ。まるで映画のワンシーンのような華麗な殺戮劇を自分の手で演出できるのは、本当に爽快である。

    プロシージャル生成で無限のリプレイ性

     死んでもモチベーションが下がらない理由の一つが、プロシージャル生成システムだ。各レベルの敵配置や部屋の構造がランダムに変化するため、同じステージでも毎回異なる戦略が求められる。

     「さっきは正面突破で行ったから、今度は迂回ルートを試してみよう」といった具合に、毎回新鮮な気持ちでプレイできるのが素晴らしい。しかも、ゲーム時間自体はそれほど長くないので、「もう一回やってみるか」という気持ちになりやすいのも良い設計だと思う。

    サイケデリックな70年代の雰囲気が最高

     ビジュアル面では、1970年代のラスベガスを舞台にしたサイケデリックな演出が印象的だ。ネオンが煌めくカジノホテルの廊下を血まみれになりながら駆け抜ける様子は、まさに悪夢と快楽が混在したような独特の美学を感じさせる。

     また、ドラッグによる幻覚表現も秀逸で、画面が歪んだり色彩が変化したりする演出が、プレイヤーを主人公と同じ感覚に引きずり込んでくる。

    基本情報

    Steam評価: 非常に好評(90%、201件のレビュー)
    開発・発売: Transhuman Design
    リリース日: 2026年2月5日
    価格: 1,700円
    プラットフォーム: Windows、Mac、Linux
    日本語対応: あり
    ジャンル: 見下ろし型アクション、シューティング
    プレイ時間: 約3-4時間(メインストーリー)
    難易度: 高(一撃死システム)

    購入情報

    Steam

    公式情報

    • 開発者:Michał Marcinkowski(『Soldat』『King Arthur’s Gold』の作者)
    • 対応言語:29言語
    • Steam Deck:検証済み
  • 銛一本で挑む霧の海!Chilla’s Artが送る新境地のサバイバル漁ゲー『UMIGARI』が予想以上にクセになる

    銛一本で挑む霧の海!Chilla’s Artが送る新境地のサバイバル漁ゲー『UMIGARI』が予想以上にクセになる

    正直言って、最初に『UMIGARI』のデモを起動したとき「これ、本当にChilla’s Artのゲームか?」と疑った。日本のホラーゲーム界で独特な地位を築いている同デベロッパーの新作は、なんと銛で魚を狩る一人称視点の漁ゲーム。しかも公式サイトでは「ホラー要素は非常に軽い」と明言されている。

    ところが実際にプレイしてみると、これが想像以上に奥深いサバイバル体験で、気付けば霧の海の向こうに潜む「何か」を求めて夢中で銛を振るっていた。

    最初は普通の漁だった……はずなのに

    ゲームの舞台は、霧に包まれた日本近海。プレイヤーは小さな漁船に乗り込み、銛を使って魚を捕獲していく。基本的な流れは実にシンプル。魚を捕る→港で売る→燃料と装備を補給する→より深い海域へ向かう。この繰り返しだ。

    操作も直感的で、マウスで照準を合わせ、タイミングよく銛を投げるだけ。最初のうちは普通のサバやアジが釣れて「なるほど、リアル志向の漁ゲーかな」と思っていた。

    ところが、燃料をアップグレードして少し沖に出てみると……事態は一変する。見たこともない巨大な魚影が現れたかと思えば、明らかに現実離れした姿の海洋生物が泳いでいる。そして何より、霧の向こうから聞こえてくる不可解な音。

    「あ、やっぱりChilla’s Artだった」

    銛の精度こそがすべて!

    『UMIGARI』の最大の魅力は、銛による狩猟システムの絶妙なゲームバランスにある。単純に見えて実は奥が深い。

    魚には種類ごとに異なる行動パターンがあり、動きを読んで先回りして銛を投げる必要がある。小さな魚は素早く逃げ回り、大型の魚は重厚な動きで威圧してくる。特に深海に生息する異形の生物たちは、時として反撃してくることもあり、船体へのダメージも考慮しなければならない。

    銛自体にも種類があり、射程や威力、リロード時間などが異なる。序盤の短い銛では届かない深度の魚も、アップグレードを重ねることで狙えるようになる。この成長要素が実によく練られており、「もう少し長い銛があれば……」「燃料をもっと積めれば……」と常に次の目標が見えている状態を作り出している。

    霧の向こうに潜む謎だけど怖くはない

    Chilla’s Artファンなら気になるのが、果たしてどの程度ホラー要素があるのかという点だろう。結論から言えば、確かに「非常に軽い」レベルのホラーだった。

    とはいえ、同スタジオらしい不気味な演出は健在。霧に包まれた海域で聞こえてくる謎の音響、時折姿を現す巨大な影、そして魚商人の妙に人懐っこい笑顔……。直接的な恐怖はないものの、「何か変だな」という違和感は常についてまわる。

    特に印象的だったのが、深海探索中に遭遇した巨大なクラーケンのような生物。攻撃してくるわけではないのだが、その存在感だけで背筋がゾクッとした。こういった「説明されない存在」の描写は、さすがChilla’s Artといったところ。

    2~4時間でちょうどいいボリューム感

    プレイ時間は公式発表通り2~4時間程度。この手のサバイバルゲームにしては短めだが、濃密な体験が詰まっており、飽きる前にエンディングを迎えられる絶妙な長さだと感じた。

    むしろ長すぎると、同じことの繰り返し感が出てしまいそうなので、この判断は正解だろう。週末の空いた時間でサクッと完走できるのも嬉しいポイントだ。

    ただし、やりこみ要素として全種類の魚を捕獲するコンプリート要素もあるため、人によってはもっと長時間楽しめるはず。筆者も記事執筆時点でまだ見たことのない魚影をいくつか確認しており、再プレイ欲をそそられている。

    基本情報

    ゲーム名: UMIGARI | ウミガリ
    開発・販売: Chilla’s Art
    配信日: 2026年2月5日
    価格: 1,500円(通常価格)※2026年2月19日まで現在20%オフセールで1,200円
    プラットフォーム: PC(Steam)
    日本語: 完全対応(音声・字幕)
    プレイ時間: 2~4時間
    ジャンル: 一人称視点アクション・サバイバル・探索

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    公式リンク

  • 破壊、収集、強化、繰り返し。『Void Miner』が教えてくれた”数字が増える快感”の本質

    破壊、収集、強化、繰り返し。『Void Miner』が教えてくれた”数字が増える快感”の本質

    クラシックな小惑星シューティングが、まさかここまで中毒的になるとは……

    Steam評価88%という高評価を獲得している『Void Miner – Incremental Asteroids Roguelite』。レトロ風のドット絵と「インクリメンタル×ローグライト」という組み合わせに惹かれてプレイしてみたのだが、気が付けば3時間があっという間に溶けていた。

    正直に言うと、最初は「昔ながらのアステロイドゲームでしょ?」と完全に舐めていた。が、実際にプレイしてみるとその中毒性の高さに驚かされることになる。

    シンプルすぎる操作、奥深すぎる戦略

    ゲームのルールは極めてシンプル。見下ろし視点で宇宙船を操作し、次々と飛来する小惑星を撃ち落とし、落ちてくる資源を回収する。回収した資源で船をアップグレードし、さらに多くの小惑星を破壊できるようになる。これだけだ。

    操作はWASDキーでの移動と、左クリックでの射撃のみ。設定で射撃を自動化することもでき、その場合は移動に集中できる。一見すると単純極まりないゲーム性に思えるが、この「シンプルさ」こそが本作最大の武器だった。

    1回のランは「酸素」という名の時間制限で区切られる。酸素が尽きればラン終了。稼いだ資源を使って永続的なアップグレードを購入し、次のランに挑む。このサイクルが恐ろしいほど気持ちいい。

    最初の壁は「酸素」だった

    プレイ開始直後、筆者は序盤の難しさに面食らった。初期状態の船は弱く、射撃の威力も低い。小惑星を破壊するのに時間がかかるうえ、酸素はあっという間に尽きてしまう。

    「これ、本当にクリアできるの?」と不安になったが、ここで重要なのが「酸素」のアップグレード。レビューでも指摘されている通り、序盤は何よりも酸素を優先的に上げるべきだ。

    酸素が増えれば滞在時間が延び、より多くの資源を稼げる。資源が増えれば火力も上がり、さらに効率よく稼げるようになる。この好循環に乗れた瞬間、ゲームは一気に加速する。

    マザーシップが戦況を変える

    ゲームを進めると、画面中央に「マザーシップ」と呼ばれる自動砲台が出現する。最初は頼りないが、アップグレードを重ねることで頼もしい相棒に成長していく。

    このマザーシップの存在が、本作の戦略性を大きく広げている。自分は敵船を狙いながら、マザーシップには小惑星を任せる。あるいはその逆。状況に応じて役割分担を変えることで、より効率的に敵を殲滅できるようになる。

    後半のウェーブでは画面が小惑星と敵船で埋め尽くされるが、強化したマザーシップがバリバリと敵を撃ち落とす光景は実に爽快だ。

    「数字が増える」快感の本質

    インクリメンタルゲームの魅力は「数字が増えていく快感」にある。本作はそれを完璧に体現している。

    アップグレードの効果は目に見えて分かる。火力が2倍になれば、小惑星を破壊する速度が明らかに速くなる。移動速度が上がれば、敵の攻撃を華麗に回避できるようになる。このフィードバックの明確さが、「もう1回だけ」を誘発する。

    しかも、本作のアップグレードは指数関数的ではなく線形的な成長。つまり、劇的な変化ではなく着実な成長を実感できる設計になっている。これが地味に重要で、「自分が上手くなっている」という感覚と「船が強くなっている」という感覚が見事に融合するのだ。

    3時間で「完走」できるボリューム感

    本作のメインコンテンツは約3時間でクリア可能。一見すると短く感じるかもしれないが、これが絶妙なボリューム感だった。

    「短時間で達成感を得られる」というのは、実は現代のゲーム体験において非常に重要だ。仕事や学業の合間にサクッと遊んで、確実にクリアまで辿り着ける。飽きる前に終わるからこそ、「また遊びたい」という気持ちが湧いてくる。

    クリア後にはエンドレスモードも用意されているが、こちらは敵のHP インフレが激しく、やや粗削りな印象。ただ、メインモードで十分満足できる内容なので、これはおまけ程度に考えればいいだろう。

    一人開発の熱意が詰まった作品

    開発者のRyan Jakob氏は本作をソロで開発している。リリース初日に1000本を売り上げ、Steam New & Trendingにランクインしたという報告を見ると、その努力が報われて本当に良かったと思う。

    コミュニティでの開発者の対応も非常に丁寧で、プレイヤーからのフィードバックに真摯に耳を傾けている。こういった姿勢が、高評価につながっているのだろう。

    価格も700円と非常にリーズナブル。3時間遊べてワンコイン程度というコスパの良さは、インディーゲーム好きならチェックして損はない。

    惜しい点も正直に言おう

    完璧なゲームではない。序盤のペースが遅く、最初の1〜2ランは「本当に面白くなるのか?」と不安になるかもしれない。UI周りも若干分かりにくい部分があり、画面端にアイテムがドロップして見失うこともある。

    エンドレスモードのバランスも改善の余地がある。小惑星のHPだけが上がっていくため、後半は火力不足で詰まりやすい。ここは今後のアップデートに期待したい。

    それでも、これらの欠点を補って余りある中毒性と達成感がある。完璧ではないが、確実に「面白い」ゲームだ。

    「もう1回だけ」が止まらない魔力

    本作を一言で表すなら、「もう1回だけ症候群」を引き起こすゲーム。1ラン数分で終わるテンポの良さ、明確な成長実感、そして適度な難易度。これらが絶妙に噛み合って、気が付けば時間を忘れてプレイしてしまう。

    レトロなドット絵も味があるし、BGMも作業用として聴いていられるチル系。視覚的にも聴覚的にも心地よく、長時間プレイしても疲れにくい。

    クラシックなアステロイドシューティングに、現代的なインクリメンタル要素を融合させた本作。「数字が増える快感」を存分に味わいたい方、短時間でサクッと遊べるローグライトを探している方に、強くおすすめしたい。

    基本情報

    ゲーム名: Void Miner – Incremental Asteroids Roguelite
    開発: Ryan Jakob
    パブリッシャー: Ryan Jakob
    プラットフォーム: Steam
    リリース日: 2025年11月17日
    プレイ時間: 3時間程度(メインコンテンツ)
    難易度: 初心者〜中級者向け
    Steam評価: 非常に好評(88%)
    価格: 700円
    言語: 日本語対応
    ゲームジャンル: アクション

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