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  • 極北のコンビニで夜勤バイト。昼は接客、夜は……怪物?『HELLMART』で7日間のサバイバルが始まる

    極北のコンビニで夜勤バイト。昼は接客、夜は……怪物?『HELLMART』で7日間のサバイバルが始まる

    「ただのコンビニバイトだろ?」……と舐めていたら……

    Steamのストアページで『HELLMART』を初めて見たとき、正直「またスーパーマーケット系シミュレーターか」と思った。ここ数年、レジ打ちや品出しをするだけのゲームが乱立していたからだ。

    しかし、この『HELLMART』は違った。24時間営業のコンビニで働く夜勤バイトという設定、極北の地という舞台、そして何より──「夜になると、奇妙な客が来る」という一文。これは、ただの経営シミュレーションではない。

    開発は、GAZE IN GAMESというスタジオ。創業者のOleg Gazeが率いる新進気鋭のチームで、本作が実質的なデビュー作となる。2026年1月28日に正式リリースされ、Steam評価は767件のレビューで75%が好評という「やや好評」の評価を獲得している。

    ジャンルとしては「ホラーシミュレーション」。昼間は普通のコンビニバイト、夜は超常的な脅威に立ち向かうサバイバルホラーという二面性が特徴だ。価格は1,700円で、デモ版も無料配信されている。

    昼は接客業、夜はサバイバル──二つの顔を持つゲームループ

    『HELLMART』のゲームプレイは、明確に「昼」と「夜」に分かれている。

    昼間のシフト:ひたすら接客とレジ打ち

    昼間の仕事は至ってシンプル。来店する客に商品を販売し、売上目標を達成する。レジ打ち、商品の補充、店内清掃、そして客への丁寧な対応──これらすべてが評価対象となる。

    ここで重要なのが、「客に失礼な態度を取らない」というルール。どんなに忙しくても、どんなに変な客が来ても、昼間は笑顔で接客しなければならない。実はこれ、夜のサバイバルにも直結する重要な要素なのだ。

    売上目標を達成できなければ、店のアップグレードに必要な資金が得られない。逆に、しっかりと売上を立てれば、夜間の防衛に必要な設備を購入できる。この「稼ぎ」と「生存」のバランスが、本作の戦略性を生み出している。

    夜間のシフト:監視カメラと発電機が命綱

    日が沈むと、店の様相は一変する。

    まず、夕方の時間帯に準備作業が必要だ。発電機の燃料チェック、ドアへのバリケード設置、防犯カメラの動作確認、そして防衛用アイテムの購入。これらを怠ると、確実に夜を乗り切れない。

    夜間、最も重要なのは「誰を店内に入れるか」の判断だ。深夜に来店する客の中には、人間に擬態した「何か」が紛れ込んでいる。見た目は普通の客だが、よく観察すると微妙に動きがおかしかったり、不自然な笑顔を浮かべていたりする。

    この判断を誤ると──つまり、怪物を店内に入れてしまうと──命の危険に晒される。逆に、普通の客を締め出してしまうと、その客の運命は……まあ、想像に難くない。

    プレイヤーの選択が客の生死を左右する。このモラル的ジレンマが、『HELLMART』のホラー要素をさらに深めている。

    隠れたシステムが生み出す緊張感──「見えないプレッシャー」の正体

    『HELLMART』の恐怖は、ジャンプスケアだけではない。むしろ、ゲームが明示しない「隠れたシステム」こそが、プレイヤーを真綿で首を絞めるように追い詰めていく。

    コミュニティの検証によれば、本作には少なくとも3つの隠しパラメータが存在する。

    1. 時間プレッシャー
    営業時間を延長すればするほど、異常現象の発生頻度が上がる。売上を伸ばしたい気持ちと、早く店を閉めたい恐怖のせめぎ合いだ。

    2. ノイズレベル
    商品を落としたり、慌てて動き回ったりすると、「何か」を引き寄せてしまう。静かに、慎重に行動することが生存率を上げる。

    3. ストレスメーター
    タスクを放置したり、ミスを重ねたりすると、主人公の反応速度が鈍くなる。画面には表示されないが、確実にプレイヤーを不利にしていく。

    これらのシステムは、ゲーム内で一切説明されない。プレイヤーは試行錯誤を繰り返す中で、「なぜか今日は敵が多い」「なぜか反応が遅れる」と感じ、自然とゲームのルールを学んでいく。

    この「暗黙のルール」こそが、『HELLMART』独特の緊張感を生み出している。

    3つのエンディング──あなたの選択が結末を決める

    『HELLMART』は7日間のキャンペーンモードで構成されており、プレイヤーの行動によって3つ(一部情報では4つ)の異なるエンディングが用意されている。

    • グッドエンディング:客を守り抜き、すべてのルールを遵守した場合
    • バッドエンディング:自己保身に走り、客を見捨てた場合
    • シークレット/トゥルーエンディング:特定の条件を満たした場合(詳細は伏せる)

    重要なのは、「どのエンディングが正解」ということではない。『HELLMART』は、プレイヤーに道徳的な選択を迫る。生き延びるために客を見捨てるのか、それとも人間性を守り抜くのか。

    この選択の重みが、単なるホラーゲームを超えた体験を生み出している。

    賛否両論の評価──「期待と現実のギャップ」が生んだ批判

    Steam評価75%という数字は、決して低くはない。しかし、「圧倒的に好評」とも言い難い微妙なラインだ。

    主な批判点は以下の3つ。

    1. グラフィックのダウングレード
    トレイラーで見せた美しいライティングや商品の質感が、製品版では劣化していると指摘する声が多い。特にロシア語圏のレビューで顕著だ。

    2. 夜間パートが短すぎる
    昼間の単調な作業に対して、夜の恐怖体験が物足りないという声。期待していたホラー要素が薄いと感じるプレイヤーも。

    3. 反復作業の多さ
    7日間同じことを繰り返すだけで、新しい展開が少ない。リプレイ性を謳っているが、実際には変化に乏しいという批判。

    一方で、擁護する声も少なくない。「この価格でこのクオリティなら十分」「雰囲気だけで元が取れる」「続編やアップデートに期待」といった肯定的な意見も目立つ。

    似て非なるゲーム──『僕、アルバイトォォ!!』との比較

    コンビニを舞台にしたゲームとして、『僕、アルバイトォォ!!』との比較は避けられない。

    『僕、アルバイトォォ!!』は、迷惑客をバールで殴り飛ばすコメディアクション。ネットミームを多用し、笑いを重視した作品だ。価格も700円と非常に安い。

    対して『HELLMART』は、真面目にホラー体験を追求している。笑いではなく、恐怖と緊張感。そして、プレイヤーの選択に意味を持たせている。

    どちらが優れているかではなく、どちらを求めているかだ。気軽に笑いたいなら『僕、アルバイトォォ!!』、じっくりと恐怖に浸りたいなら『HELLMART』。同じコンビニでも、まったく異なる体験が待っている。

    Silent Hillとスーパーマーケットシミュレーターの融合

    海外メディアGameSpewは、『HELLMART』を「Silent Hillとスーパーマーケットシミュレーターの融合」と評した。的確な表現だと思う。

    『Silent Hill』シリーズが持つ、日常に潜む狂気。普通の街が、普通のコンビニが、夜になると別の顔を見せる。その恐怖は、派手なモンスターではなく、「いつもと何かが違う」という微細な違和感から生まれる。

    『HELLMART』も同じアプローチを取っている。昼間の平凡な接客業が、夜には生死を賭けたサバイバルに変わる。この落差こそが、本作最大の魅力だ。

    GameSpewのレビュアーは、デモ版をプレイした後、「着替えを持ってくるべきだった」とコメントしている。それほどまでに、本作の恐怖は予想外だったのだろう。

    極北の孤独──ロケーションが生み出す絶望感

    『HELLMART』の舞台は、極北の地にある24時間営業のコンビニ。周囲は雪と森に囲まれ、最も近い街まで何キロも離れている。

    この「孤立」こそが、ゲームの恐怖を増幅させている。助けは来ない。逃げる場所もない。ただひたすら、7日間を生き延びるしかない。

    実際、ゲーム内では「なぜこの仕事を選んだのか」という主人公の動機が語られる。都会の喧騒から逃れたい。人と関わりたくない。簡単に稼げると思った──そんな理由で極北へ来たのだ。

    しかし、現実は甘くなかった。人里離れた場所だからこそ、「人間以外のもの」が跋扈する。皮肉にも、人を避けた結果、もっと恐ろしいものと向き合うことになったのだ。

    デモ版で試せる「最初の3日間」

    製品版の購入を迷っているなら、まずデモ版をプレイすることを強く推奨する。

    デモ版では、最初の3日間(3シフト)を無料で体験できる。昼間の接客業務から、夜間のホラー要素まで、ゲームの核心部分はすべて含まれている。

    デモ版のSteam評価は712件で87%が好評──製品版よりも高い評価だ。これは、デモの範囲内では非常に完成度が高いことを示している。逆に言えば、製品版の低評価は「デモ以降の展開が期待外れ」という声が多いのだろう。

    デモ版をプレイして、この雰囲気が気に入ったなら購入する。それで十分だと思う。

    日本語完全対応──ローカライズの質も高い

    『HELLMART』は、インターフェース、音声、字幕すべてが日本語対応している。しかも、ローカライズの質が非常に高い。

    ホラーゲームにおいて、言語の壁は致命的だ。微妙なニュアンスや、不気味な台詞の意味が理解できなければ、恐怖は半減する。

    その点、『HELLMART』の日本語訳は秀逸だ。客の不自然な会話、主人公の内面描写、ゲーム内の指示──すべてが自然な日本語で表現されている。

    対応言語は全15言語。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語など、主要言語はすべて網羅している。グローバル市場を意識した、本格的なインディータイトルだ。

    アップデートと今後の展開

    GAZE IN GAMESは、発売後も継続的にアップデートを行っている。コミュニティの声に耳を傾け、バランス調整やバグ修正を実施している姿勢は評価できる。

    公式Discordサーバーも活発で、開発者が直接プレイヤーと交流している。これは、インディースタジオならではの強みだ。

    今後のアップデートで期待されるのは、以下の要素だ。

    • 夜間パートのボリューム追加
    • 新しいエンディングルート
    • グラフィックの改善
    • 新しい敵タイプの追加
    • ニューゲームプラス要素

    特に、「ニューゲームプラス」の実装を望む声は多い。7日間クリア後、より高難度でやり込める要素があれば、リプレイ性は格段に向上するだろう。

    結論──「未完成の傑作」か「期待外れの凡作」か

    『HELLMART』は、賛否が真っ二つに分かれるゲームだ。

    雰囲気、設定、コンセプト──これらは間違いなく一級品。極北のコンビニという舞台設定、昼夜で変わるゲーム性、選択による分岐エンディング。すべてが魅力的だ。

    しかし、ボリューム不足、反復作業の多さ、グラフィックの劣化──これらの欠点も無視できない。「もっとコンテンツがあれば」「もっと夜が怖ければ」という声は、正当な批判だと思う。

    筆者の結論は、こうだ。

    「この価格で、このコンセプトを体験できるなら、買って損はない」

    確かに、100時間遊べるゲームではない。しかし、『HELLMART』にしか味わえない体験がある。極北のコンビニで、7日間を生き延びるという緊張感。客を救うか、見捨てるかという選択。そして、夜の静寂に潜む恐怖。

    これらは、他のゲームでは決して味わえない。

    もしあなたが、「雰囲気重視のホラーゲーム」が好きなら、『HELLMART』は試す価値がある。完璧ではないが、唯一無二の体験が待っている。

    まずはデモ版から。そして、極北の夜を生き延びてほしい。


    基本情報

    タイトル: HELLMART
    開発: GAZE IN GAMES
    パブリッシャー: GAZE IN GAMES
    リリース日: 2026年1月28日
    プラットフォーム: PC (Steam)
    価格: 1,700円
    日本語対応: あり(インターフェース/音声/字幕すべて対応)
    プレイ人数: 1人
    ジャンル: ホラー、シミュレーション、アドベンチャー、サバイバルホラー
    Steam評価: やや好評 (75% / 767件のレビュー)
    プレイ時間: 3-5時間(1周)

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  • 処刑ボタンを押したら負け。5日間の選択が良心を試す『イツカノヨル』

    処刑ボタンを押したら負け。5日間の選択が良心を試す『イツカノヨル』

    「押したら負け」──

    目の前には赤い処刑ボタン。そしてわずか5日後に死刑執行が決まった竜族の少女。彼女が何か怪しい動きをしたら、危害を加えてきたら、いつでもこのボタンを押せばいい。即座に処刑が執行される。

    PC(Steam)向けゲーム『イツカノヨル』は、こんな極限の状況から始まるマルチエンド方式のノベルゲームだ。2023年10月にUnityroomで公開され、総プレイ回数30万回以上を記録した話題作が、2026年1月29日、フルボイス化や新エンディング追加などの大幅パワーアップを遂げてSteamに登場した。

    「いつでも押せる」という重圧

    ゲームのルールはシンプルだ。プレイヤーは死刑囚となった竜族の少女・ミラの看守として、5日間を過ごす。村を焼き払ったという罪で捕らえられた彼女は、呪われた存在とされる竜族。安全のため、プレイヤーの目の前には常に「処刑ボタン」が置かれている。

    このボタンは会話の途中だろうと、いつでも、何度でも押すことができる。少女が何か言いかけた瞬間に押してもいいし、最初から押してもいい。選択肢を選ぶ前に押してもいい。完全な自由がある。

    しかし、この「いつでも押せる」という状況こそが、プレイヤーの良心を試してくる。最初は警戒心MAXで臨んだ筆者も、彼女との会話を重ねるうちに徐々に迷いが生じてきた。「本当に彼女は危険なのか?」「村を焼いたというのは本当なのか?」そして何より「この子を殺していいのか?」と。

    1プレイ約5分の濃密な心理戦

    本作の特徴は、1回のプレイ時間が約5分という短さにある。しかしこの5分間が、驚くほど濃密だ。ミラとの会話、選択肢の選択、そして処刑ボタンを「押す/押さない」「いつ押すか」という判断。これらすべてが物語の結末に影響を与える。

    全13種類のエンディングは、プレイヤーの選択、好奇心、そして罪悪感によって分岐していく。例えば、会話の最中にボタンを押せばバッドエンド。しかし押さずに最後まで話を聞けばハッピーエンド……というほど単純ではない。中には「ハッピーエンドの直前」でもボタンを押せてしまうルートがあり、Steam コミュニティでは「これハッピーエンドの直前も死刑ボタン押せるのか…」という悲鳴にも似たコメントが寄せられていた。

    筆者も初回プレイで、良かれと思って選んだ選択肢が予想外の展開を生み、思わず「えっ…?」と声が出た。選択肢には「竜族の象徴である角を折る」という痛ましいものまである。わくわくゲームズの公式Xアカウントでも「処刑ボタンを押したら負けといっても過言ではない」と明言されているが、まさにその通り。プレイヤーの良心が試される5分間なのだ。

    Unityroomから進化したSteam版の魅力

    Steam版は元となったUnityroom版から大幅にパワーアップしている。最も大きな変更点は、ミラ役に菜月なこさんを起用したフルボイス化だ。可愛らしい外見とは裏腹に、時折見せる諦めや悲しみを含んだ声色が、プレイヤーの罪悪感をより一層刺激してくる。

    また、エンディングも追加され、それに伴うBGM、スチル、立ち絵差分が追加。Steam実績に対応し、ギャラリー機能も実装された。さらに英語、中国語(繁体字、簡体字)にも対応し、グローバル展開も視野に入れた完全版となっている。

    操作は基本的にクリックのみ。コントローラー操作にも対応しているため、快適にプレイできる。短時間で周回しやすい設計も相まって、「もう一度別の選択肢を試してみよう」という気持ちにさせられる。気がつけば全エンディング制覇を目指して何度もプレイしていた。

    「イツカノヨル」というタイトルの妙

    本作のタイトル「イツカノヨル」は、カタカナ表記にすることで「5日の夜」と「何時かの夜」をかけた秀逸なネーミングだ。Unityroomのコメント欄でも「タイトルをカタカナで書くことで二重の意味を持たせるの天才すぎる」と絶賛されている。

    英題は「5omeday」。こちらも「Someday(いつか)」と「5 day(5日)」を掛け合わせた遊び心あふれるタイトルになっている。

    Steamレビューは91%の「非常に好評」

    Steam版の評価は174件中91%が好評と、高い支持を得ている。「幸せになって欲しくてボタンをこれ以上押したくなくて7つエンディングで断念!キャラ可愛い」「全てのエンディングを回収するためにボタン押していると心が苦しくなる。でもハッピーエンドを観られてよかった」といったレビューからは、多くのプレイヤーがミラとの関係に感情移入していることが伝わってくる。

    一方で「やばい、バッドエンドおもろすぎる❗️」「俺は6、9、7、8、4、10、1の順でぶち抜いた畜生です」といった、あえてバッドエンドを楽しむプレイヤーも。本作は「処刑ボタンを押すゲーム」ではないが、押した場合のルートも丁寧に作り込まれており、プレイヤーの良心を試しながらも、どんな選択にも物語が用意されている懐の深さがある。

    心理ホラーとしての完成度

    本作はビジュアルノベルでありながら、心理ホラーの要素も色濃い。直接的な暴力描写や出血表現はないものの、プレイヤー自身が「加害者」になりうる立場に置かれることで、独特の緊張感と罪悪感が生まれる。

    「即処刑できるボタン」という設定は一見すると過激だが、実際には人間の道徳心や判断力を問う哲学的なテーマを内包している。「罪を犯した者は罰せられるべきか」「呪われた種族というだけで差別されていいのか」「命を奪う権利は誰にあるのか」──こうした問いに、プレイヤーは5分間で向き合うことになる。

    基本情報

    タイトル: イツカノヨル
    開発元: Indigo Ingots, Starlit Chronicles Studio
    パブリッシャー: Waku Waku Games
    リリース日: 2026年1月28日(Steam)
    プラットフォーム: PC(Steam)、Nintendo Switch(2026年春予定)
    価格: 800円(税込)
    プレイ時間: 1周約5分(全エンディング制覇には数時間)
    対応言語: 日本語、英語、中国語(繁体字)、中国語(簡体字)
    ジャンル: ビジュアルノベル、アドベンチャー、心理ホラー
    Steam評価: 非常に好評(91%)
    エンディング数: 13種類
    声優: 菜月なこ(ミラ役)

    クレジット

    企画・シナリオ・プログラム: Indigo Ingots
    アート: polaritia
    サウンド: かずら’s MUSIC

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    総評

    『イツカノヨル』は、「処刑ボタン」という強烈なギミックを軸に、プレイヤーの良心と判断力を試す異色のビジュアルノベルだ。1プレイ約5分という短さながら、その5分間に詰め込まれた選択の重みと心理的緊張感は、他に類を見ない体験を提供してくれる。

    フルボイス化されたミラの声、美しいゴシック調のビジュアル、そして13種類の多彩なエンディング。すべてが高いクオリティで仕上がっており、800円という価格は非常にリーズナブルだ。短時間で周回しやすい設計も素晴らしく、「次はどんな展開になるんだろう?」という好奇心が止まらない。

    ただし、本作は万人向けではない。テーマが死刑や差別といった重いものであり、プレイヤー自身が加害者になりうる立場に置かれる。心理的な負担を感じる人もいるだろう。しかし、だからこそ本作は「ゲームでしか味わえない体験」を提供できている。

    「処刑ボタンを押したら負け」──この一文の意味を、ぜひあなた自身の手で確かめてほしい。5日間の選択が、あなたの良心を試してくる。

  • 壁を登ること、それだけが目的——本物のクライマーが作った究極のクライミングシム『New Heights: Realistic Climbing and Bouldering』

    壁を登ること、それだけが目的——本物のクライマーが作った究極のクライミングシム『New Heights: Realistic Climbing and Bouldering』

    「ゲームでクライミングができる?どうせ派手なアクションゲームでしょ」

    しかし、オランダのWikkl Worksが手掛ける『New Heights: Realistic Climbing and Bouldering』は、そんな先入観を見事に覆してくれました。本作は実際のクライマーたちが開発した、物理演算に基づく本格的なクライミングシミュレーションゲームです。2023年7月から早期アクセスとして公開されていた本作は、2026年2月26日にいよいよ正式リリースを迎えます。

    「何百時間でも登り続けたくなる」——実在する岩壁をフォトグラメトリーで再現

    本作の最大の特徴は、現実世界に実在するクライミングスポットを忠実に再現している点です。フランスのフォンテーヌブローの有名なボルダー、ベルギーのフレールの30分級の長大ルート、そしてノルウェーのハンシェレーレン洞窟にある伝説のルート「Silence」まで、280以上の実在ルートが収録されています。

    これらは単なる3Dモデルではありません。開発チームはフォトグラメトリー技術とドローンを駆使し、何百枚もの写真から本物の岩肌の質感、凹凸、角度までを正確にデジタル化しているのです。画面越しに見える岩は、クライマーたちが実際に挑んできた、あの岩そのものなのです。

    ゲーム内では城の廃墟や崩れかけた礼拝堂など、現実では登ることが許されない場所も登攀可能。安全なPC環境から、フリーソロクライミングの緊張感を体験できるのも本作ならではの魅力です。

    バランス、グリップ、体の位置——物理演算が生み出す「本物」の感覚

    「左手でこのホールドを掴んで、右足を高く上げて、体重を左に…あ、落ちた」

    本作のクライミングメカニクスは、まさに実際のクライミングそのものです。左右のマウスボタンで両手、Shift+マウスで両足、WASDとQ・Eで体重移動と体の位置をコントロールします。一見複雑に思えるこの操作系は、実際のクライミングで求められる「四肢の独立した制御」と「全身のバランス感覚」を見事に再現しています。

    物理演算エンジンは、ホールドの向き、掴み方、体の角度、重心の位置などを厳密に計算。悪いホールドでも体の位置を工夫すれば良いホールドに変わり、逆に良いホールドでもバランスを崩せば滑り落ちます。

    実際のクライマーからは「足を高く上げる、体を壁に近づける、重心を移動させるといった、現実のクライミングで使うテクニックがそのまま有効」といった評価が寄せられています。

    チュートリアルから難易度V17まで——段階的に深まるクライミング体験

    ゲームは「レイチェルのジム」でのチュートリアルからスタート。初心者向けの課題で基本操作を学び、徐々に足の使い方、コア(体幹)の操作へと進んでいきます。「ボルダリングジムの初日のレッスンそのもの」という声があるように、実際のクライミング体験を忠実になぞったチュートリアル設計です。

    各ルートには3段階の星評価システムがあり、1つ星はルート完登、2つ星は落下なしでの完登、3つ星は5分以内のクリアとなっています。上位難易度のエリアは999個の星を集めなければアンロックされないなど、やり込み要素も充実。

    難易度はジムの初級ルートから、実在する世界最難関ルートまで幅広く用意されており、プレイヤーのスキルに応じて段階的に挑戦できます。Steam Workshopでのコミュニティ制作ルートも利用可能で、近い将来にはスマートフォンアプリと連携して、自分で撮影した岩をゲーム内で登れる機能も予定されています。

    正式リリースで追加される新要素——ロープシステムと協力プレイ

    2026年2月26日の正式リリースでは、ロープとビレイ(確保)システムが完全実装されます。このアップデートにより、ボルダリングだけでなく、本格的なロープクライミング体験が可能に。ハーネス、カラビナ、ビレイデバイスを使った安全確保の技術も再現され、より総合的なクライミングシミュレーターへと進化します。

    また、協力プレイモードも予定されており、フレンドと一緒にルートを攻略したり、互いのタイムを競い合ったりできるようになります。リーダーボードシステムも完備されており、世界中のクライマーと記録を競うことも可能です。

    開発チームは「フィードバックが不可欠」として、Discordサーバーとフォーラムを通じてコミュニティと密接に連携。2年以上の早期アクセス期間を経て、物理エンジンの改善、ダイノー(飛びつき動作)の洗練、新しいコスメティックアイテムの追加など、継続的なアップデートを行ってきました。

    経験者も唸る確かな再現度——「登ることそのもの」を純粋に楽しむ

    クライミング専門メディア「Climbing」は本作を「ロッククライミングの物理を捉えた初めてのビデオゲーム。すべてのクライマーが試すべき」と評価。実際のクライマーたちからは「フォンテーヌブローに何度も行った経験があるが、ゲーム内で同じ場所を登れるのは感動的」「怪我をしていて登れないときでも、この感覚を味わえるのは素晴らしい」といった声が寄せられています。

    一方で、グラフィックは華やかではなく、ストーリー性も最小限。本作には派手なアクション要素も、劇的な物語展開もありません。あるのは「壁を登る」という、ただそれだけの体験です。

    しかし、だからこそ本作は特別なのです。

    Steamレビューでは92%が好評価(210件中)という高い支持を獲得。「QWOP的な悪夢になるかと思ったが、現実味と楽しさの完璧なバランス」「Cairnよりもシミュレーション寄りだが、その分リアルなクライミング感覚を求める人には最高」といった評価が並びます。

    開発者Boogaard氏は「現実のクライミングとボルダリングに可能な限り近い体験を、最適なコントロールで提供したい」と語っています。売上は期待したほどではないものの(約4,500本)、コミュニティによるルート作成機能が実装されれば「ゲームは永遠に生き続けるポテンシャルを持つ」と自信を見せています。

    価格・プラットフォーム情報

    本作は2026年2月26日に正式リリース予定で、価格は2,464円。現在は20%オフのローンチディスカウントが実施されています。日本語を含む10言語に対応し、Steam Deckでの動作も確認済みです。

    クライミング経験者はもちろん、「登る」という行為の奥深さを体験してみたい方、物理シミュレーションゲームが好きな方にもオススメです。ジムに行けない雨の日に、怪我で休んでいるときに、あるいは高所恐怖症を克服する練習として——『New Heights』は、新たな高みへと挑むすべての人を待っています。


    基本情報

    ゲームタイトル: New Heights: Realistic Climbing and Bouldering
    開発: Wikkl Works
    パブリッシャー: Wikkl Works, WhisperGames
    プラットフォーム: PC (Steam), Steam Deck
    早期アクセス開始日: 2023年7月7日
    正式リリース日: 2026年2月26日
    価格: 2,464円※ローンチ時20%オフ
    対応言語: 日本語、英語、オランダ語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、韓国語、ポルトガル語(ブラジル)、中国語(簡体字・繁体字)
    プレイ人数: シングルプレイ(協力プレイは今後実装予定)
    CERO: 未審査(PC)
    ジャンル: シミュレーション、スポーツ

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  • 植物エイリアンが地を這う恐怖! RTSと基地建設の融合『カリクス』が早期アクセス開始。Dune 2とC&Cのファンが待ち望んだ新時代のストラテジー

    植物エイリアンが地を這う恐怖! RTSと基地建設の融合『カリクス』が早期アクセス開始。Dune 2とC&Cのファンが待ち望んだ新時代のストラテジー

    「植物と戦うRTS? なんだそれ……」

    しかし実際にプレイしてみると、これがとんでもなく奥深い。Studio 568が開発する『Calyx』(カリクス)は、2026年1月29日にSteamで早期アクセスを開始したRTS×基地建設ゲームだ。プレイヤーは宇宙採掘基地の管理者となり、凶暴な植物型エイリアン「カリクス」との生存競争に挑む。

    敵は通常のRTSのようにユニットを生産するのではない。植物のように地を這い、刻一刻と領域を拡大し、あなたの電力網を侵食する。放置すれば、数分でマップ全体が緑の悪夢に覆い尽くされる。

    電力管理こそがすべて! ── 一瞬のミスが基地崩壊を招く緊張感

    『カリクス』最大の特徴は、電力ネットワークの構築と維持だ。

    プレイヤーは採掘基地を運営し、鉱石を掘って資金を稼ぎ、防衛施設や軍事ユニットを建造する。ここまでは一般的なRTSと同じだが、本作にはすべての建物に「電力供給」が必要という致命的なルールがある。

    ソーラーパネルで発電し、電力ポールで基地全体にエネルギーを送る。タレットも壁も、電力が途切れれば瞬時に機能停止する。そしてカリクスは、この電力網を優先的に狙ってくる。

    電力ポールが1本破壊されただけで、防衛ラインの半分が沈黙する。そこから雪崩のようにカリクスの根が押し寄せ、気づけば基地が緑の蔓に飲み込まれている──こんな悪夢が日常茶飯事だ。

    筆者も何度、「あと1分あれば勝てたのに!」と悔しい思いをしたかわからない。電力管理という一見地味な要素が、これほど緊張感と戦略性を生み出すとは思わなかった。

    カリクスは「ボス」であり「地形」でもある ── 前例のない敵デザイン

    本作の敵、カリクスは従来のRTSの常識を覆す存在だ。

    通常のRTSでは、敵は拠点から定期的にユニットを生産し、プレイヤーを攻撃してくる。しかしカリクスは違う。マップ上の複数地点に存在する「幹」から根と蔓を伸ばし、まるで生きた地形のように拡散していく。

    放置すればするほど、カリクスは強力になる。レベルアップした根は防御力が上がり、密集した植生は通常兵器では焼き切れない。あるSteamレビューでは「マップ5でカリクスが基本ユニットを一撃で倒すようになった」との報告もあるほどだ。

    つまり、プレイヤーは経済を回しながらも、常にカリクスの拡大を抑制し続けなければならない。のんびり内政に専念している暇はない。タンクと砲兵を編成し、積極的に前線を押し上げ、幹そのものを破壊しなければ勝利はない。

    筆者も最初は防衛重視で戦っていたが、それでは勝てないことに気づいた。カリクスとの戦いは、攻撃こそが最大の防御なのだ。

    テックツリーが戦局を変える ── ゴーリアス戦車と軌道レーザーの破壊力

    本作には充実した研究システムがある。

    データアーカイブを保護してリサーチポイントを獲得し、テックツリーで新技術をアンロックする。特に重要なのが「インフェルノ火炎放射器」と「ゴーリアス戦車」だ。

    インフェルノは植物に特効を持つ兵器で、カリクスの密集地帯を一気に焼き払える。ゴーリアスは複数の砲塔を持つ巨大戦車で、1台で戦況を変えるほどの火力を誇る。さらにホバー技術を研究すれば、その機動力も飛躍的に向上する。

    そして極めつけが「軌道レーザー」だ。宇宙から放たれる光の柱は、カリクスの広範囲を一掃する。初めて使ったときの爽快感は、言葉では表現できない。

    「They Are Billions」や「Creeper World」と比較されることも多い本作だが、カリクスはより攻撃的なプレイを要求してくる。壁に籠もるだけでは勝てない。テクノロジーを駆使し、戦線を押し上げ、敵の幹を一つずつ破壊していく──このダイナミックな攻防が、本作最大の魅力だ。

    早期アクセスでも充実のボリューム ── キャンペーン16マップ+スカーミッシュ&チャレンジ

    『カリクス』の早期アクセス版は、すでに驚くほど充実している。

    キャンペーンモードにはチュートリアルを含む16マップが用意され、Avaris社の採掘船に乗って惑星に降り立った主人公が、謎のAIとともにカリクスと戦う物語が展開される。マップごとに異なるバイオームや戦略が求められ、飽きることがない。

    スカーミッシュモードでは7つのマップで自由に難易度やシード値を設定してプレイできる。フレンドとシード値を共有し、同じ条件でスコアを競うこともできる。

    チャレンジモードにはさらに9つの特殊マップがあり、制限時間内にクリアを目指す高難度ステージが揃っている。

    Steamレビューでは現在「非常に好評」を獲得しており、90%が肯定的な評価だ。「Dune 2とC&Cを足して植物と戦わせた感じ」という評価も多く、クラシックRTSファンから熱烈な支持を受けている。

    3人のベテラン開発者が贈る、英国発の意欲作

    Studio 568は、ロンドンを拠点とする小規模インディースタジオだ。チームはPhil Clandillon氏、John Duffill氏、Mark Sheehan氏の3名で構成されており、彼らは長年『Calyx』の開発に取り組んできた。

    2023年に設立されたStudio 568にとって、本作はデビュー作となる。しかしその完成度は、新規スタジオとは思えないほど高い。彼らは2025年を通じてプレイテストとアンケートを繰り返し、コミュニティの声を積極的に取り入れてきた。

    公式Discordでは開発陣が直接プレイヤーと対話し、バランス調整やバグ修正を迅速に行っている。早期アクセス開始から2週間で、すでに複数のアップデートが配信されている。

    開発チームは「完成版では、さらに多くのユニット、敵のバリエーション、環境バイオームを追加する」と述べており、今後6〜12ヶ月での正式リリースを目指している。

    マイクロマネジメント必須? それとも戦略重視? ── プレイヤーの意見は分かれる

    本作には賛否両論もある。

    一部のプレイヤーは「ユニットのAIが弱く、手動で標的を指定しないと効率が悪い」と指摘する。特に砲兵ユニットは、放置すると苔ばかり撃って肝心の幹を狙わない。そのため、効率的に戦うにはある程度のマイクロマネジメントが必要だ。

    一方で、「基本ユニット4台だけでクリアできた」というプレイヤーもおり、戦略次第では最小限の兵力でも勝利できる設計になっている。防衛施設を適切に配置し、電力網を保護し、カリクスの拡大ポイントを見極めれば、物量作戦に頼らずとも勝てる。

    この「プレイヤーの腕前と戦略次第で難易度が大きく変わる」点こそ、本作の奥深さだと筆者は感じている。初見では圧倒されるが、システムを理解すれば驚くほどスムーズにプレイできるようになる。その学習曲線が、実に心地よい。

    『カリクス』は、古典的RTSの進化系だ

    「植物と戦うRTS」という一見奇抜な設定だが、その実態は正統派のストラテジーゲームだ。

    電力管理、資源採掘、テックツリー、ユニット編成、前線の押し上げ──これらすべてが絶妙にバランスされ、プレイヤーに常に判断を迫る。カリクスという特異な敵デザインが、従来のRTSにはない緊張感と新鮮さをもたらしている。

    Dune 2やCommand & Conquerを愛したプレイヤーなら、間違いなく楽しめる。They Are BillionsやCreeper Worldのファンにも強く推薦したい。そして何より、「最近のRTSは同じようなものばかり」と感じている人にこそ、この緑の悪夢との戦いを体験してほしい。

    カリクスの根は、あなたの基地を今も侵食しようと這いずり回っている。


    基本情報

    • タイトル: Calyx(カリクス)
    • 開発: Studio 568
    • パブリッシャー: Studio 568
    • 配信日: 2026年1月29日(早期アクセス)
    • 価格: 2,800円
    • 対応プラットフォーム: PC(Steam)
    • 言語: 日本語対応
    • 公式サイト: https://studio568.co.uk
    • 公式Discord: https://discord.gg/EdNejFX8kn

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  • 放置ゲームなのに心臓がバクバク!?『Horripilant』で味わう狂気のダンジョン潜行

    放置ゲームなのに心臓がバクバク!?『Horripilant』で味わう狂気のダンジョン潜行

    「放置ゲームって、のんびり遊べるやつでしょ?」

     PC(Steam)向けゲーム『Horripilant』は、確かに放置ゲームだ。クリッカーであり、オートバトラーであり、リソース管理ゲームでもある。しかし、このゲームは「のんびり」とは程遠い。むしろ、プレイ中ずっと胃がキリキリするような、不穏で禍々しい雰囲気に包まれ続けるのだ。

     開発はカナダ・モントリオールのAlexandre Declos氏率いるPas Game Studio、パブリッシングはBlack Lantern Collective。2026年2月20日の配信開始から、Steamでは同時接続プレイヤー数4,219人のピークを記録し、ユーザーレビューは425件中91%が好評という「非常に好評」ステータスを獲得している。

     一体、この不気味な放置ゲームの何がプレイヤーを惹きつけるのか。筆者も実際にプレイして、その魅力と狂気を体験してきた。

    ドット絵が生み出す、名状しがたい恐怖

     ゲームを起動すると、まず目に飛び込んでくるのが独特のビジュアルスタイルだ。『Horripilant』のグラフィックは、ディザリングと呼ばれる手法で描かれた粗いドット絵。これが、レトロなコンピューターを思わせる不気味な雰囲気を醸し出している。

     プレイヤーは記憶を失った老騎士となって、忘れ去られたダンジョンの最深部で目を覚ます。腐敗の臭いが立ち込める暗闇。壁がプレイヤーの名前をささやく。そこにあるのは、一本の奇妙な木の芽だけだ。

     「叩け」と、声が命じる。

     筆者が最も感銘を受けたのは、このゲームの「見せ方」の巧みさだ。静止画のドット絵でありながら、各エリアに登場するクリーチャーたちは異様な存在感を放つ。壁の穴に潜む不気味な笑顔の存在、蠢く触手、歪んだ人型の何か。それぞれが一度見たら忘れられないデザインで、プレイヤーの脳裏に焼き付く。

     サウンドデザインも秀逸だ。ひび割れた合成音声、金属的な音、遠くから聞こえる呻き声。これらが相まって、B級ホラー映画的な、しかし確実に背筋が凍るような体験を生み出している。

    クリックこそがすべて! 資源管理の中毒性

     『Horripilant』のコアループは、極めてシンプルだ。木、石、鉄の3つの資源を集め、それを使って装備を強化し、ダンジョンに潜る。これを繰り返すだけ。

     しかし、この「繰り返すだけ」が、恐ろしいほど中毒性が高い。

     資源収集は最初、手動クリックで行う。木の芽をクリックすれば木材が、岩をクリックすれば石が手に入る。だが、ここで重要なのが「キラキラ」の存在だ。資源ノードに時折現れるキラキラをクリックすると、なんと通常の500倍の資源が手に入る。この瞬間の快感が、筆者の指を止めさせなかった。

     もちろん、ずっとクリックし続けるわけにはいかない。そこで登場するのが「ヘルパー」システムだ。お金を払ってヘルパーを雇えば、自動で資源を生成してくれる。ただし、ここに落とし穴がある。ストレージ容量を上げないと、すぐに資源が上限に達して生成がストップしてしまうのだ。

     筆者も最初のプレイで、この罠にハマった。「オフラインでも進むんでしょ?」と思って一晩放置したら、朝起きたときには数分で上限に達していて、ほとんど進んでいなかった。クリック値、ヘルパー、ストレージ、素材レベル。この4つをバランスよく上げていくことが、効率的な成長の鍵となる。

    オートバトルなのに、目が離せない戦闘システム

     資源を集めて装備を整えたら、いよいよダンジョン探索だ。戦闘はオートバトラー形式で、プレイヤーキャラクターと敵が自動的に攻撃し合う。装備している剣、兜、胸当て、レギンス、ブーツが、ダメージと耐久力を決定する。

     だが、完全放置というわけではない。戦闘中、敵に「ウィークポイント」が出現することがある。これをクリックすると追加攻撃が発動し、大ダメージを与えられる。さらに、敵の体力バーの下にある白いゲージにも注目が必要だ。これが満タンになると敵が攻撃してくるため、タイミングを見計らってウィークポイントを狙う必要がある。

     フロアのボスを倒すと、「ブーン」と呼ばれる一時的なステータスブーストを選択できる。攻撃力アップ、体力増加、クリティカル率上昇など、さまざまなブーンが用意されており、どれを選ぶかで戦略が変わる。ただし、ブーンは現在のランにのみ有効で、リバース(後述)すると消えてしまう点に注意だ。

     また、「ファミリア」と呼ばれる仲間クリーチャーを戦闘に連れて行くこともできる。ファミリアがいると、受けるダメージが自分とファミリアに均等に分散されるため、実質的に耐久力が2倍になる。筆者も、強敵との戦いではファミリアが生命線となった。

    リバースこそが真髄! ヘマライトで永続強化

     『Horripilant』で最も重要なシステムが、「リバース(転生)」だ。

     プレイを進めていくと、必ずどこかで壁にぶつかる。敵が強すぎて、いくら装備を整えても勝てなくなる瞬間が来る。そのとき、リバースの出番だ。

     リバースを実行すると、現在のランの進行状況はリセットされる。装備も、ブーンも、すべて失う。だが、代わりに「ヘマライト」と呼ばれる特殊な通貨を獲得できる。このヘマライトを使って「リバースツリー」のアップグレードを解放することで、次回以降のランが劇的に楽になるのだ。

     ダメージアップ、体力増加、資源生成量アップなど、ヘマライトで得られる永続強化は多岐にわたる。筆者も最初は「せっかく進んだのにリセット?」と躊躇したが、一度リバースを経験すると、その効果に驚愕した。それまで苦戦していた敵が、嘘のようにサクサク倒せるようになったのだ。

     では、いつリバースすべきか。答えは「効率が落ちたとき」だ。1フロアクリアにかかる時間が明らかに長くなり、敵の体力の伸びが自分のダメージ上昇を上回ったと感じたら、それがリバースのタイミング。粘っても得られるヘマライトは増えないため、さっさとリバースして次のランに挑んだほうが効率的なのだ。

    謎解きとストーリー。語られぬ物語の断片

     『Horripilant』には、明確なストーリーラインは存在しない。しかし、ダンジョンの各所に点在する謎めいた存在や、断片的なテキストから、何かしらの物語が見え隠れする。

     壁の穴に潜む不気味な存在に、なぜかカラスの嘴を渡すとリバースができるようになる。モールス信号で書かれたメモを解読すると、ランプの使い道が分かる。天使の像には、特定のアイテムを捧げる必要がある。

     これらの謎解き要素は、ゲーム進行に必須ではないものの、好奇心をくすぐる絶妙な塩梅で配置されている。筆者も、「この紫色の部屋は何だ?」「7つの光を全部点けると何が起こる?」と、次第にゲームの謎に取り憑かれていった。

     Discordコミュニティでは、プレイヤーたちが謎解きのヒントを共有し合っている。開発者のDeclos氏も積極的にコミュニティと交流しており、アップデートで新たな音声効果や調整が加えられている。この「まだ見ぬ何かがある」という感覚が、プレイヤーを飽きさせない要因の一つだろう。

    オートクリッカー禁止令!? 開発者の遊び心

     放置ゲームといえば、オートクリッカーを使いたくなるのが人情だ。しかし、『Horripilant』には面白い仕掛けがある。オートクリッカーを使うと、ジャンプスケアが発動するのだ。

     海外フォーラムで、あるプレイヤーが「デモ版で雰囲気が気に入って、いつものようにオートクリッカーを起動したら、突然のジャンプスケアで心臓が止まりかけた」と報告している。開発者のDeclos氏はこれに対し、にっこりと返信するのみ。

     この遊び心満載の仕掛けも、『Horripilant』の魅力の一つだ。プレイヤーを驚かせ、笑わせ、そして恐怖させる。すべてが計算されたデザインなのだ。

    1000フロア、そしてその先へ

     『Horripilant』のダンジョンは1000フロア以上続く。筆者も現時点で25フロアまで到達したが、まだまだ先は長い。敵の種類は16種類と決して多くないが、フロアが進むにつれて、敵の配色や挙動が変化し、新たな脅威となって立ちはだかる。

     Steam実績は57個用意されており、やり込み要素も充実している。「一度も攻撃を外さずにボスを倒す」「特定のアイテムを集める」など、チャレンジングな実績が多数存在する。

     また、サポーターパック(別売)を購入すると、ディザリングシェーダーをオフにして、本来の高解像度グラフィックを楽しめる機能や、カスタムポートレート機能が解放される。自分だけの騎士で、ダンジョンに挑めるのだ。

    結論:放置ゲームの皮を被った、中毒性MAXのホラー体験

     『Horripilant』は、放置ゲームとしても、クリッカーとしても、ホラーゲームとしても一級品だ。

     シンプルなゲームループながら、資源管理の戦略性、リバースシステムの爽快感、そして何より、この独特の不穏な雰囲気が、プレイヤーを虜にする。筆者も気が付けば5時間以上プレイしており、「もう一回だけリバースしよう」「次のフロアまで進もう」と、辞め時が分からなくなっていた。

     唯一の欠点は、進行速度の遅さだ。特に序盤は1フロアクリアに数分かかることもあり、「もっとサクサク進みたい」と感じる瞬間もあった。また、敵の種類が16種類と少なめで、長時間プレイすると飽きを感じる可能性もある。

     しかし、それを補って余りあるのが、このゲームの独特な魅力だ。ポッドキャストを聞きながら、音楽を流しながら、あるいはSteam Deckで寝転びながら。『Horripilant』は、どんなプレイスタイルにも対応する懐の深さを持っている。

     定価920円(現在10%オフで828円)という価格も魅力的だ。この価格で、何十時間も遊べる中毒性の高いゲーム体験が手に入る。

     「放置ゲームって、のんびり遊べるやつでしょ?」と思っているあなた。『Horripilant』は、その常識を覆すだろう。禍々しいダンジョンで、あなたも狂気の放置体験を味わってみてはいかがだろうか。


    基本情報

    ゲーム名: Horripilant
    開発: Alexandre Declos, Pas Game Studio
    パブリッシャー: Black Lantern Collective
    プラットフォーム: PC (Steam)
    発売日: 2026年2月20日
    価格: 920円(10%オフで828円、3月7日まで)
    日本語対応: あり
    プレイ時間: 10時間以上(1000フロア到達まで)
    難易度: 中程度
    Steam評価: 非常に好評(425件中91%が好評)


    購入リンク

    Steam:
    https://store.steampowered.com/app/3525970/Horripilant/

    サポーターパック(DLC):
    https://store.steampowered.com/app/4326710/Horripilant__Supporter_Pack/


    公式リンク

    公式サイト(itch.io):
    https://pasgame.itch.io/horripilant

    開発者Twitter/X:
    https://x.com/PasGameStudio

  • ダイスを振って目指せ100万点!シンプルだけど中毒性たっぷりデッキ構築ローグライク

    ダイスを振って目指せ100万点!シンプルだけど中毒性たっぷりデッキ構築ローグライク

    Steamで目にする数字パズルやダイスゲーム。正直、その多くは似たようなコンセプトに見えてしまう。ローグライク×デッキ構築という組み合わせはもはや王道すぎて、新鮮味を感じられない……そんな先入観を持ちながら『Dice A Million』のストアページを開いた筆者。

    しかし、いざプレイしてみると、この先入観は見事に覆された。本作は単なる「ダイスを振るだけのゲーム」ではない。シンプルな見た目の裏に潜む、計算されたシナジーシステムと中毒性の高いゲームループ。これこそが『Dice A Million』の真髄だった。

    数字を極めろ!シンプルだけど奥深いダイスメカニクス

    『Dice A Million』の基本ルールは驚くほどシンプル。プレイヤーはダイスを振り、その出目を使ってスコアを稼ぐ。それだけだ。しかし、このシンプルさが逆に深みを生み出している。

    ゲームの核となるのは「リロール(振り直し)」と「アップグレード」のシステム。最初のロールで満足いく出目が出なければ、何度でも振り直せる。ただし、リロールにはコストがかかる。このコストをどう管理し、どのタイミングで振り直すかが、このゲームの戦略性を生み出している。

    さらに注目すべきは「シナジー構築」の要素。ダイスの出目同士を組み合わせることで、予想外の大きなスコアが生まれる。例えば、同じ数字を揃えれば倍率ボーナス。連続する数字を作れば追加ポイント。こうしたコンボを見つけ出し、最大化していく過程が、本作を単なる運任せゲームではなく、戦略的パズルへと昇華させている。

    筆者が特に感心したのは、このシナジーシステムの絶妙なバランス。強力すぎるコンボは序盤では組みにくく、弱いコンボは簡単に組める。プレイヤーのスキルと運のバランスが絶妙で、「もう一回やれば、もっと高得点を出せるはず」という気持ちにさせられる。

    止まらない!中毒性抜群のゲームループ

    『Dice A Million』の最大の魅力は、その中毒性にある。1プレイは数分で終わるため、「あと一回だけ」が止まらない。この手軽さが、いわゆる「放置ゲーム」や「インクリメンタルゲーム」の要素と見事にマッチしている。

    プレイを重ねるごとに、新しいダイスや特殊能力がアンロックされる。これらのアップグレード要素が、プレイヤーに「次はもっと強くなれる」という希望を与え、プレイを続けるモチベーションを維持させる。

    さらに、本作には「プレステージ(威信)」システムも実装されている。一定のスコアに到達すると、すべてをリセットして再スタート。その代わりに、永続的なボーナスを獲得できる。この「一度リセットして、さらに強くなる」という仕組みは、インクリメンタルゲームの醍醐味そのもの。時間を忘れて没頭してしまう危険性があるので、要注意だ。

    ミニマルだけど癒される!シンプルなビジュアルとUI

    本作のビジュアルは、非常にミニマル。派手なエフェクトや複雑な演出はない。しかし、それが逆に心地よい。ダイスが転がるアニメーション、スコアが加算されるときの「カチカチ」という音。これらの小さな演出が、プレイヤーに心地よい達成感を与えてくれる。

    UIもシンプルで直感的。必要な情報が一目でわかり、操作に迷うことがない。ダイスゲームという性質上、複雑な操作は不要。マウスだけで完結する操作性は、カジュアルに楽しみたいプレイヤーにとって嬉しいポイントだ。

    筆者が特に気に入ったのは、数字が増えていくときの「満足感」。大きなコンボが決まり、スコアが一気に跳ね上がる瞬間は、何度味わっても飽きない。これは数字パズルゲームならではの快感と言えるだろう。

    『Dice A Million』はこんな人にオススメ

    本作は以下のようなプレイヤーに特にオススメしたい。

    • 短時間で楽しめるゲームを探している人:1プレイ数分で完結するため、スキマ時間にも最適。
    • 数字パズルが好きな人:シンプルながら奥深い数字のやりくりが楽しめる。
    • インクリメンタルゲームが好きな人:「もっと強くなりたい」という欲求を満たす成長要素が充実。
    • ローグライクデッキ構築ゲームが好きな人:ダイスの組み合わせを考える戦略性が好きな人には刺さるはず。

    逆に、以下のような人には向かないかもしれない。

    • 複雑なストーリーを求める人:本作にストーリー要素はほぼない。
    • 派手な演出やグラフィックを求める人:ミニマルなビジュアルが特徴なので、派手さは期待できない。

    基本情報

    商品名:Dice A Million
    開発:Sleepless Clinic
    販売:Sleepless Clinic
    配信日:2026年2月26日
    定価:1,500円(Steam)
    日本語:対応
    プラットフォーム:PC(Steam)
    プレイ時間:数時間~数十時間(やり込み度による)
    難易度:易しい~普通(運要素が強いため初心者でも楽しめる)

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  • 株式市場でデッキを組む?『Insider Trading』が教えてくれた、欲望と破滅の紙一重

    株式市場でデッキを組む?『Insider Trading』が教えてくれた、欲望と破滅の紙一重

    Steam を漁っていたら、あまり見かけないようなゲームに出くわした。「Insider Trading」――日本語で言えば「インサイダー取引」である。違法行為じゃないか、と思いつつもストアページを覗いてみると、そこには株式市場を舞台にしたローグライクデッキビルダーという、一風変わったコンセプトが待っていた。

    本作が扱うのはモンスターとの戦いでもポーカーの役でもない。株価だ。カードを駆使して株価を操り、利益を確定させる。そのシンプルながら奥深いゲームデザインに、気づけば何時間もプレイしていた。

    株価操作という名のデッキビルダー

    本作の目標は、毎週金曜日までに設定された目標金額を達成すること。プレイヤーは様々な戦略を持つトレーダーの一人となり、市場を動かすカードデッキを駆使して取引に挑む。カードを出すことで株価が上下し、その変動を利用して売買を繰り返していく。

    最初は単純だ。株価を上げるカードを出し、価格が十分に上がったところで「取引」ボタンを押す。すると保有している全ての株が売却され、利益が確定される。だが、ここからがこのゲームの真髄だ。

    ゲームが進むにつれて分かってくるのは、「ひたすら株価を上げればいい」わけではないということ。株価が高騰しすぎると、次に株を買う余裕がなくなり、自分自身が市場から締め出されてしまう。つまり、利益を追求しすぎると自滅する――これこそが本作が描く「欲望と破滅の紙一重」なのだ。

    カードタイプとコンボが生み出す爆発力

    本作には120枚以上のカードが存在し、それらは12の異なるタイプに分類されている。同じタイプのカードを1ターンに複数枚出すと「コンボ効果」が発動し、予想を超える価格変動が起こる。

    例えば、Bull(強気)カードを連続で出せば株価は急騰し、Bear(弱気)カードを重ねれば株価は暴落する。だが重要なのは、この暴落すらも戦略の一部だということだ。株価が低いときに大量に買い込み、その後急騰させて売り抜ける――このサイクルをいかに効率的に回すかが、勝利への鍵となる。

    さらに、50種類以上のパーク(特殊能力)が存在し、その中には強力だが危険なトレードオフを伴う「呪いのパーク」も含まれている。ハイリスク・ハイリターンな選択肢を取るか、安定志向で進むか――プレイヤーの判断が問われる。

    Greed(欲望)システムがすべてを加速させる

    本作で最も特徴的なシステムが「Greed(欲望)」だ。これはロケット燃料のように利益とリスクを加速させる仕組みで、プレイ中の選択次第でどんどん蓄積されていく。

    Greedが高まると、利益の倍率が上がる一方で、株価の変動も激しくなり、思わぬ暴落で全てを失うリスクも高まる。あと一回だけ、もう一回だけ――そんな欲望に駆られて取引を続けた結果、市場が崩壊して破産する。これが本作の醍醐味であり、恐ろしさでもある。

    PC Gamerのレビューでは、「デッキビルダーで初めて、デッキを強くしすぎて失敗した」と評されているほどだ。普通のデッキビルダーでは強いデッキを組むことが目標だが、本作では「強すぎるデッキ」が自滅の原因になる。この逆説的な面白さが、ローグライク好きを唸らせている。

    個性豊かなトレーダーたちとイベントシステム

    各ランでプレイするキャラクターは、それぞれ独自の戦略と初期デッキを持っている。彼らの特殊メカニクスを理解することで、新たな戦略の可能性が開かれる。

    また、ランの途中でランダムに発生するイベントや「Pills(錠剤)」と呼ばれるアイテムは、計画を大きく狂わせることもあれば、起死回生のチャンスをもたらすこともある。予測不能な展開に適応する力が試される。

    難易度設定とやり込み要素

    本作には6段階の難易度が用意されており、初心者から上級者まで幅広く楽しめる設計になっている。最高難度では、わずかなミスが命取りになる緊張感あふれるプレイが味わえる。

    また、本作はGodot Engineで開発されており、Windows、Mac OS、Linuxに対応。Steam Deckでも快適に動作するため、いつでもどこでも市場を操ることができる。

    中毒性の高いサウンドとビジュアル

    レトロなピクセルグラフィックスと、リズムに合わせて鳴る効果音が絶妙にマッチしている。Steam レビューでは「サウンドトラックが中毒性抜群」「UIのフィードバックが心地よい」といった声が多く、視覚と聴覚の両面でプレイヤーを引き込む作りになっている。

    CRTエフェクトやノイズ、ブルーム、スクリーンシェイク、フラッシュエフェクトは個別にオン・オフ可能なので、好みに合わせて調整できるのも嬉しい。

    ソロ開発者が作り上げた傑作

    本作を手がけたのは、ニューヨークと韓国・水原を拠点とするソロ開発者Naiive。Naiive Studioにとって初の商業リリース作品だが、長期間のプレイテストとフィードバックを経て、驚くほど洗練されたゲームに仕上がっている。

    開発者自身がSteamコミュニティで述べているように、「デモ、プレイテスト、そして無数の反復が、今のゲームを形作った」。プレイヤーの声を真摯に受け止め、改良を重ねた結果が、現在の高評価につながっている。

    プレイした感想:計算と直感の狭間で

    実際にプレイしてみて、最も印象的だったのは「考えすぎても、直感に頼りすぎてもダメ」というバランス感覚の重要性だ。

    序盤は計算通りに進められるが、中盤以降はカードドローの運やイベントの影響で、計画通りにいかなくなる。そのときに「ここで欲張るべきか、安全策を取るべきか」という判断が勝敗を分ける。

    特に印象的だったのは、ある週で目標金額の2倍以上の利益を出したとき。「このまま行けば余裕だ」と思った次の週、市場が暴落して全てを失い、ゲームオーバーになった経験だ。この「調子に乗った瞬間の転落」こそが、本作の魅力であり、教訓でもある。

    対応言語と価格

    本作は日本語を含む10言語に対応しており、日本のプレイヤーも安心してプレイできる。対応言語は、英語、簡体字中国語、日本語、韓国語、フランス語、ドイツ語、ポーランド語、ポルトガル語、スペイン語、イタリア語。

    価格は通常1,500円だが、発売記念として期間限定で15%オフの1,275円で販売中(2026年2月時点)。デモ版も用意されているので、まずは試してみるのもいいだろう。

    総評:ローグライクデッキビルダーの新境地

    『Insider Trading』は、株式市場という一見堅苦しいテーマを、中毒性の高いゲームプレイに昇華させた傑作だ。Balatroのようなコンボの爽快感と、Slay the Spireのような戦略性の深さを兼ね備えながら、独自の「欲望管理」という新しい要素を加えている。

    「もう一回だけ」が止まらなくなるゲームデザイン、予測不能な展開、そして自分の欲望と向き合う心理戦――これらすべてが絶妙に組み合わさり、唯一無二の体験を生み出している。

    ローグライクやデッキビルダーが好きなら、絶対にプレイすべき一作だ。ただし、注意してほしい。このゲームは、現実のように、あなたの欲望を試してくる。


    基本情報

    • ゲーム名: Insider Trading
    • 開発者: Naiive Studio(Naiive)
    • パブリッシャー: Naiive Studio
    • リリース日: 2026年2月18日
    • 価格: 1,500円(発売記念セール中:1,275円)
    • プラットフォーム: Steam(Windows / Mac OS / Linux / Steam Deck対応)
    • 対応言語: 日本語、英語、簡体字中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語、ポーランド語、ポルトガル語、スペイン語、イタリア語
    • ジャンル: ローグライク、デッキビルダー、ストラテジー、ターン制
    • プレイ時間: 1ラン30分〜1時間程度
    • 難易度: 6段階(初心者〜エキスパート)
    • Steam評価: 非常に好評(91%ポジティブ、107レビュー)※2026年2月21日時点

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  • 「これ、マジで死ぬやつじゃん…」血を賭けたチンチロで生き延びろ!デッキ構築ローグライト『メンヘラリウム』

    「これ、マジで死ぬやつじゃん…」血を賭けたチンチロで生き延びろ!デッキ構築ローグライト『メンヘラリウム』

    チンチロ?ギャンブル?いやいや、これサバイバルホラーでしょ

    Steam で『メンヘラリウム』を見つけたとき、正直「また変なインディーゲームか」って思った。でも、プレイしてみたら予想の斜め上どころか、完全に別次元だった。

    目が覚めたら地下室。目の前には満面の笑みを浮かべた”メンヘラちゃん”(CV:夏吉ゆうこ)。「死ぬまで一緒に遊ぼうね♡」って、その可愛い声で言われるセリフじゃないでしょ。しかも賭けるのは血液。チンチロで負けたら血を抜かれる。7日間生き延びなきゃいけない。

    最初は「チンチロって何?」状態だったんだけど、これ『カイジ』でお馴染みのサイコロギャンブルなんですよね。3つのサイコロを振って、出目の組み合わせで勝負する。ゾロ目が最強、123が最弱。シンプルなルールなのに、これがまた命がけになると恐ろしい。

    イカサマ上等!サイコロ改造でメンヘラちゃんに挑む

    このゲームの面白いところは、メンヘラちゃんがイカサマを許してくれるところ。いや、許してくれるっていうか「頑張って足掻くあなたを応援してます♡」って。この子、本当に怖い。

    デッキ構築ローグライトの要素がここで輝く。毎日の勝負で稼いだコインで、サイコロの出目を張り替えたり、イカサマアイテムを購入できるんです。全部6の目にしたサイコロとか、出目を強制的に変更できるアイテムとか。

    でもメンヘラちゃんも黙ってない。毎日「ギミック」っていう理不尽なルールを突きつけてくる。「メンヘラちゃんは必ず456を出します」とか「あなたのHPが10倍になります(スコア条件も10倍)」とか。しかも3択から選ばされる。どれも地獄。

    ここでデッキ構築の戦略性が試される。お守り(タリスマン)の選択、サイコロのカスタマイズ、アイテムの使いどころ。すべてが生死を分ける。特にタリスマンは強力で、特定の出目に倍率をかけたり、特殊効果を発動したりする。

    1回のプレイが意外と短い!でもやめられない中毒性

    『Slay the Spire』や『Balatro』をプレイしたことがある人なら、この感覚わかるはず。1周が比較的短いから「もう1回だけ…」が止まらない。7日間を生き延びるのに、慣れれば1時間ほど。

    ただ、海外レビューでも指摘されてたけど、バランスがかなり極端。運次第で無理ゲーになることもあれば、タリスマンとサイコロの組み合わせが決まると無双できることも。特に「パンティ」っていうアイテムを受け取ると…まあ、プレイしてみてください。

    Steam評価は驚異の97%好評(119件のレビュー)。価格は1,200円で、3月4日まで20%オフの960円。体験版も公開されてるから、気になる人はまず試してみるのもアリ。

    製品版では難易度選択が追加されて、「ストーリー」モードと「ローグライト」モードのレベル制が実装された。初心者でもストーリーを楽しめるし、ガチ勢は高難易度に挑める。

    メンヘラちゃんの声がマジで怖可愛い

    夏吉ゆうこさんのボイスが本当に秀逸。「ウマ娘」のシュヴァルグラン役や「超かぐや姫!」のかぐや役で知られる実力派声優さんなんだけど、このメンヘラちゃん役がヤバい。

    甘えた声で「ちゅ〜っと、血を抜いちゃう♡」とか言われると、背筋がゾクッとする。可愛いんだけど怖い。怖いんだけど可愛い。この絶妙なバランスが、ゲーム全体の不穏な雰囲気を作り出してる。

    ビジュアルもアニメ調で可愛らしいんだけど、血を抜かれるシーンはちゃんとダークな演出。設定で血の表現を調整できるから、苦手な人も安心。

    音楽も素晴らしくて、特に3日目と4日目にかかる曲がめちゃくちゃキャッチー。海外レビューでも「このトラックだけのためにまたプレイしたくなる」って書かれてた。

    運と戦略が交差するギャンブルローグライト

    このゲームの本質は、純粋な運ゲーをどこまで戦略で覆せるかっていう挑戦。チンチロはサイコロ運に左右されるけど、デッキ構築要素がそこに深みを与えてる。

    5回のリロールをいつ使うか。どのサイコロを優先的に改造するか。タリスマンをどう組み合わせるか。アイテムをどのタイミングで使うか。考えることは意外と多い。

    ただし、海外レビューが指摘してるように、チンチロそのものに飽きる人はいると思う。基本的にはサイコロを振ってるだけだから。でも逆に言えば、シンプルなルールだからこそ、誰でも入り込みやすい。

    『Balatro』がポーカーをローグライト化して大ヒットしたように、『メンヘラリウム』はチンチロをローグライト化した意欲作。日本の伝統的なギャンブルゲームを、現代的なゲームデザインで蘇らせてる。

    OVERKILLを狙え!スコアを超えればメンヘラちゃんもご満悦

    毎日設定されるスコア目標を達成すれば次の日に進める。でも、目標を大幅に超える「OVERKILL」を達成すると、メンヘラちゃんが大喜び。製品版では、OVERKILL達成時にHPが減少しなくなるアップデートも入った。

    「メンヘラネットワーク」っていう評価画面も面白い。「好感度」「根性」「生命力」の3つの指標でプレイヤーを評価して、それに応じてコインが支給される。このコインで次の日に備えるわけだけど、お金が足りなくて詰むこともある。

    リプレイ性も高くて、複数のエンディングが用意されてる。どうやって生き延びるか、あるいは…まあ、それはプレイしてのお楽しみ。

    開発は日本のインディーチーム「テスカトリポカ」、パブリッシャーは「Phoenixx Inc.」。日本発のユニークなローグライトとして、海外でも注目を集めてる。

    基本情報

    ゲームタイトル: メンヘラリウム(Menherarium)
    ジャンル: デッキ構築ローグライト / ギャンブル / 心理的ホラー
    プラットフォーム: PC(Steam)
    リリース日: 2026年2月18日
    価格: 1,200円(3月5日まで20%オフで960円)
    開発: テスカトリポカ
    パブリッシャー: Phoenixx Inc.
    対応言語: 日本語、英語、中国語(簡体字・繁体字)
    Steam評価: 非常に好評(97%ポジティブ / 119件のレビュー)
    プレイ時間: 1周約1〜2時間
    難易度: 選択可(ストーリーモード / ローグライトモード)
    声優: 夏吉ゆうこ(メンヘラちゃん役)

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  • ダイスとカードで運命を切り拓け!『Dobbel Dungeon』が示す、”運ゲー”と”戦略”の最高のバランス

    ダイスとカードで運命を切り拓け!『Dobbel Dungeon』が示す、”運ゲー”と”戦略”の最高のバランス

    「ダイスゲームって運ゲーでしょ?」

    そう思っていた時期が、筆者にもありました。

    でも、2025年1月31日にSteamで早期アクセスが開始された『Dobbel Dungeon』をプレイして、その考えは完全に覆された。このゲーム、確かにダイスを振るんだけど……めちゃくちゃ戦略的なんですよ!!

    開発は個人開発者のFluxterによるもので、ローグライクダンジョンクローラーとデッキ構築、そしてダイスロールを組み合わせた新感覚のターン制戦略ゲーム。Steam評価は「圧倒的に好評」で、90%以上の高評価を獲得している注目作だ。

    ダイスとカードの融合が生み出す中毒性

    『Dobbel Dungeon』の最大の特徴は、ダイスの目がカードの効果を決定するというシステムにある。

    プレイヤーは毎ターン、複数のダイスを振る。そして、手札にあるカードを使用する際に、そのダイスの目を割り当てることで効果が発動する仕組みだ。

    たとえば、「攻撃カード」に「6」の目を割り当てれば強力な一撃になるし、「3」を割り当てれば控えめなダメージになる。シンプルだけど、この仕組みが驚くほど奥深い。

    最初は「ダイスの目次第じゃん」と思うんですよ。でも違う。プレイしていくうちに気づくんです。

    「このカードには低い目を使って、あのカードには高い目を残しておこう」 「この敵には小さなダメージを複数回与えて、あの敵には一撃必殺を狙おう」

    こういった判断が、めちゃくちゃ楽しい。ダイスという運要素がありながら、プレイヤーの選択次第でいくらでも状況を好転させられる。これこそが『Dobbel Dungeon』の魅力だ。

    デッキ構築で広がる無限の可能性

    本作はローグライクデッキ構築ゲームでもある。

    ダンジョンを進むにつれて新しいカードを獲得し、自分だけのデッキを組み上げていく。カードの種類は攻撃、防御、回復、バフ、デバフと多岐にわたり、それぞれにユニークな効果が設定されている。

    筆者が特に気に入っているのは、「ダイスの目を操作するカード」の存在だ。

    たとえば、「ダイスの目を+1する」「2つのダイスの目を入れ替える」「ダイスを振り直す」といったカードがある。これらを駆使すれば、運要素をコントロールできるようになる。

    運ゲーと思いきや、実は運をコントロールするゲームだったんですよ!

    デッキ構築の自由度も高く、攻撃特化、防御重視、ダイス操作特化など、さまざまなビルドが楽しめる。何度も挑戦して試行錯誤するうちに、「このシナジーが強い!」と発見する瞬間がたまらない。

    ターン制戦略の深み

    本作はターン制バトルを採用しており、敵の行動パターンを読みながら慎重に立ち回る必要がある。

    敵は次のターンで何をしてくるかが表示されるため、それに合わせて防御を固めたり、先手を打ったりする戦略性が求められる。

    さらに、敵にもダイスが存在する。敵のダイスの目によって攻撃力や行動が変わるため、こちらも予測しながら対応しなければならない。

    「あの敵は高い目を出したから、次は強力な攻撃が来る。今のうちにシールドを張っておこう」

    こんな判断が求められるのが、じつに楽しい。

    ボス戦は特に緊張感があり、1ターンのミスが命取りになることも。でも、その分クリアしたときの達成感は最高だ。

    早期アクセスでも充実のコンテンツ

    本作は現在早期アクセス中だが、すでに十分なボリュームがある。

    複数のキャラクター、数百枚のカード、多様な敵とボス、そしてランダム生成されるダンジョン。何度プレイしても新鮮な体験ができる。

    開発者のFluxterは、今後のアップデートで新キャラクター、新カード、新エリア、そして最終ボスを追加予定だと発表している。コミュニティの意見を取り入れながら開発を進めているため、今後の展開にも期待が持てる。

    こんな人にオススメ

    『Dobbel Dungeon』は、以下のような人に特にオススメだ。

    • 『Slay the Spire』や『Monster Train』などのデッキ構築ローグライクが好きな人
    • ダイスゲームに興味があるけど、運だけでは物足りないと感じる人
    • ターン制戦略ゲームで頭を使いたい人
    • リプレイ性の高いゲームを求めている人

    「運ゲー」と「戦略ゲー」の絶妙なバランスを実現した本作は、中毒性が非常に高い。気づけば何時間もプレイしてしまう魅力がある。

    ダイスとカードで運命を切り拓く冒険に、ぜひ挑戦してみてほしい。


    基本情報

    タイトル: Dobbel Dungeon
    開発元: Fluxter
    パブリッシャー: Fluxter
    配信日: 2026年2月17日
    プラットフォーム: PC(Steam)
    価格: 2,300円(Steam)
    対応言語: 英語、日本語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、簡体字中国語、韓国語
    プレイ人数: 1人
    Steam評価: 圧倒的に好評(90%以上の高評価)


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  • 須田剛一が放つ「狂気」こそが最高のエンタメだった――『ROMEO IS A DEAD MAN』は予測不可能なブラッディアクションの傑作

    須田剛一が放つ「狂気」こそが最高のエンタメだった――『ROMEO IS A DEAD MAN』は予測不可能なブラッディアクションの傑作

    最初はワケがわからなかった。でも、それがいい

    正直に告白すると、プレイ開始から30分くらいは「何が起こってるんだ……?」という困惑しかなかった。

    主人公ロミオは恋人ジュリエットとデートの約束をしていたのに、突然「ホワイトデビル」なる謎の生物に襲われ、顔面半分と右腕をもぎ取られる。瀕死の状態から祖父ベンジャミンの手で「デッドギア」というマスクを装着され、生と死の境界に立つサイボーグ「デッドマン」として蘇生。時空そのものが崩壊した世界で、FBI時空警察の捜査官として時空犯罪者を追うことになる――しかもその犯罪者の中に、失踪した恋人ジュリエットの姿があるという。

    「え、ちょっと待って。シェイクスピア? 時空警察? サイボーグ? 全部盛り?」

    そう、『ROMEO IS A DEAD MAN』は須田剛一(SUDA51)率いるグラスホッパー・マニファクチュアが5年ぶりに送り出す完全新作で、彼らの「やりたい放題」が全開の作品なのだ。

    でも不思議なことに、この混沌とした設定が進むにつれて、むしろ「これでいいんだ」と思えてくる。なぜなら、この予測不能さこそが『ROMEO IS A DEAD MAN』最大の魅力だからだ。

    刀と銃を使い分ける「ブラッディアクション」が最高に気持ちいい

    ゲームの基本は、第三人称視点のアクションバトル。ロミオは近接武器4種(刀、大剣、ナックル、スタッフ)と遠距離武器4種(ピストル、ショットガン、マシンガン、ロケットランチャー)を使い分けて、時空に巣食う「ロッター」と呼ばれるゾンビのような敵を倒していく。

    この戦闘システムが、シンプルながら驚くほど爽快なのだ。

    近接攻撃で敵の血を吸収し、それをエネルギーに変換して「ブラッディサマー」という必殺技を放つ。画面全体が血と薔薇の花びらで覆い尽くされ、敵が爆発四散する瞬間の快感は、まさに「ブラッディアクション」の名にふさわしい。

    武器ごとに性能が大きく異なるのも面白い。私は序盤から刀とマシンガンの組み合わせにハマった。刀の素早い連撃で敵の懐に入り込み、距離を取られたらマシンガンで制圧する。この立ち回りを覚えると、どんな敵の群れが来ても冷静に対処できるようになる。

    さらに、戦闘中に植えた「バスタード」という植物型スキルが戦況を大きく変える。敵を凍らせるもの、範囲ダメージを与えるもの、体力を回復するもの――最大4つまで装備できるこのシステムが、戦略の幅を広げてくれる。特にロケットランチャーのような単発高火力武器を使う場合、凍結バスタードで敵を固めてから一網打尽にする戦法が病みつきになった。

    難易度は「チョコレート」で選ぶ。この発想がもう須田ゲー

    難易度選択の方法がまた独特だ。普通のゲームなら「イージー」「ノーマル」「ハード」と表示されるところを、本作では美しいチョコレートボックスから好きなチョコレートを選ぶ。

    最も簡単な難易度は甘いミルクチョコレート、最も難しいのはビターなオレンジチョコレート。見た目の美しさとゲームの難易度をこんな形で表現するセンスに、思わず笑ってしまった。

    そして実際、オレンジチョコレート(最高難易度)は容赦ない。敵の攻撃を2〜4発受けるだけで死ぬ。ボス戦では一撃必殺の攻撃を完璧なタイミングで回避しなければならず、少しでもミスすれば即座にゲームオーバー。だが、この緊張感こそがアクションゲームの醍醐味だと再認識させられた。

    ビジュアルの「無法地帯」ぶりが凄まじい

    『ROMEO IS A DEAD MAN』のビジュアル表現は、もはや「統一感がないことが統一感」と言っていいレベルだ。

    3Dアクションパートは現代的なグラフィックで描かれるが、拠点となる宇宙船「ラストナイト号」は16bitピクセルアートスタイル。カットシーンはモーションコミック、2Dアニメーション、ストップモーション、実写合成など、あらゆる手法が混在する。アイテムショップに入ると『The Silver Case』シリーズのフィルムウィンドウスタイルに切り替わり、セーブ画面はレトロなコンピューターのエラーメッセージ風。

    普通のゲーム開発なら「統一感がない」と却下されそうなこの混沌が、『ROMEO IS A DEAD MAN』では見事に機能している。なぜなら、この作品のテーマそのものが「時空の崩壊」だからだ。壊れた世界を、壊れたビジュアルで表現する。その徹底ぶりに、グラスホッパーの覚悟を感じた。

    タイトル画面で流れる日本語ラップに度肝を抜かれる

    ゲームを起動すると、いきなり日本語ラップが流れ出す。スチャダラパーの楽曲を使用したこのオープニングは、初見では「え、何これ?」と困惑するが、プレイを進めるうちに妙にクセになる。

    BGMも全体的に素晴らしい。バトル中は激しいロックやエレクトロが流れ、拠点では落ち着いたジャズ風の曲が流れる。特に印象的だったのは、精神病院ステージで使われたホラー調の音楽。ゴキブリが這い回る不気味な空間と相まって、ジョン・カーペンターの映画『パラダイム』を思い出させる演出だった。

    サブシステムも「ふざけてる」けど「丁寧」

    本作には戦闘以外にも様々なサブシステムがある。

    母親とカツカレーを作るミニゲーム、看護師とクイズに答えて健康チェック、トレーニングルームでのステータス強化用アーケードゲーム「デッドギアキャノンボール」――どれもが本編とは無関係に見えるが、実はロミオの成長に直結している。

    特に「デッドギアキャノンボール」は中毒性が高い。迷路のようなステージを飛び回りながら、欲しいステータスアップアイテムを集めていくシンプルなゲームだが、ルートを最適化する楽しさがある。しかもいつでもリセットできるので、試行錯誤しながら自分だけのビルドを作り上げる過程が楽しい。

    ストーリーは「分からない」けど「考えたくなる」

    正直に言うと、ストーリーは一度のプレイでは完全には理解できなかった。

    ジュリエットは本当に悪者なのか? 祖父ベンジャミンの真の目的は? 時空崩壊の真相は? エンディングを迎えた後も、多くの謎が残る。

    でもそれでいいのだと思う。須田ゲーはいつもそうだった。すべてを明確に説明せず、プレイヤーに解釈の余地を残す。その曖昧さが、クリア後も頭の中でゲームが回り続ける理由になる。

    実際、私はエンディング後に何度も特定のセリフを思い返している。「すべてのセリフに複数の意味が込められている」と感じるからだ。この「考察したくなる」感覚は、他のゲームではなかなか味わえない。

    賛否両論だからこそ、唯一無二

    Steam評価は90%が好評(Very Positive)で、プレイヤーからは高い支持を受けている。一方で、メディアレビューは賛否が真っ二つに分かれた。10点満点中9点をつけるメディアもあれば、5点満点中2点という厳しい評価もある。

    この極端な評価の割れ方こそが、『ROMEO IS A DEAD MAN』の本質を物語っている。万人受けを狙わず、自分たちの作りたいものを貫く。その姿勢が、一部の人には刺さらないが、ハマる人には深く刺さる。

    公式Xアカウントが高評価レビューだけでなく、低評価レビューまで堂々と紹介したのも象徴的だ。「耳が痛い言葉も受け入れてこそ真の天才。精進あるのみじゃ」というベンジャミンのコメント付きで。この度胸と余裕が、グラスホッパーらしい。

    ゲーム業界の「パンク」を体現する作品

    今のゲーム業界は、確かに厳しい状況にある。スタジオ閉鎖、大量解雇、過度なライブサービス化、ジャンルの平坦化――そして生成AIの台頭による創造性の危機。

    そんな中で、グラスホッパー・マニファクチュアは「パンク」であり続けている。大手スタジオ級の予算で、他の誰にも作れないゲームを作る。それが『ROMEO IS A DEAD MAN』だ。

    本作は完璧ではない。ボス戦の一部は理不尽に感じるし、サブスペースエリアでのパフォーマンス低下も気になる。キャラクターの掘り下げが不足している部分もある。

    でも、それでも私は『ROMEO IS A DEAD MAN』を強く推したい。なぜなら、この「唯一無二」の体験は、他のどこでも得られないからだ。

    プレイ時間は12〜15時間。クリア後のニューゲームプラスも用意されている。須田ゲーが好きな人なら間違いなく楽しめるし、『No More Heroes』や『Killer7』『Lollipop Chainsaw』を知らない人でも、「普通じゃないゲーム」を求めているなら、これは最高の入口になるはずだ。

    血と薔薇と狂気に彩られた、予測不可能な時空旅行へようこそ。


    基本情報

    タイトル: ROMEO IS A DEAD MAN(ロミオ・イズ・ア・デッドマン)
    開発: GRASSHOPPER MANUFACTURE INC.
    パブリッシャー: GRASSHOPPER MANUFACTURE INC.
    リリース日: 2026年2月10日
    プラットフォーム: PC (Steam / Microsoft Store) / PlayStation 5 / Xbox Series X|S
    価格: 通常 5,500円(税込)
    ジャンル: アクション・アドベンチャー
    プレイ人数: 1人
    CEROレーティング: Z(18歳以上のみ対象)
    対応言語: 日本語、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、韓国語、簡体字中国語、繁体字中国語、ポルトガル語、イタリア語

    購入リンク

    公式リンク