カテゴリー: サバイバルホラー

  • 極北のコンビニで夜勤バイト。昼は接客、夜は……怪物?『HELLMART』で7日間のサバイバルが始まる

    極北のコンビニで夜勤バイト。昼は接客、夜は……怪物?『HELLMART』で7日間のサバイバルが始まる

    「ただのコンビニバイトだろ?」……と舐めていたら……

    Steamのストアページで『HELLMART』を初めて見たとき、正直「またスーパーマーケット系シミュレーターか」と思った。ここ数年、レジ打ちや品出しをするだけのゲームが乱立していたからだ。

    しかし、この『HELLMART』は違った。24時間営業のコンビニで働く夜勤バイトという設定、極北の地という舞台、そして何より──「夜になると、奇妙な客が来る」という一文。これは、ただの経営シミュレーションではない。

    開発は、GAZE IN GAMESというスタジオ。創業者のOleg Gazeが率いる新進気鋭のチームで、本作が実質的なデビュー作となる。2026年1月28日に正式リリースされ、Steam評価は767件のレビューで75%が好評という「やや好評」の評価を獲得している。

    ジャンルとしては「ホラーシミュレーション」。昼間は普通のコンビニバイト、夜は超常的な脅威に立ち向かうサバイバルホラーという二面性が特徴だ。価格は1,700円で、デモ版も無料配信されている。

    昼は接客業、夜はサバイバル──二つの顔を持つゲームループ

    『HELLMART』のゲームプレイは、明確に「昼」と「夜」に分かれている。

    昼間のシフト:ひたすら接客とレジ打ち

    昼間の仕事は至ってシンプル。来店する客に商品を販売し、売上目標を達成する。レジ打ち、商品の補充、店内清掃、そして客への丁寧な対応──これらすべてが評価対象となる。

    ここで重要なのが、「客に失礼な態度を取らない」というルール。どんなに忙しくても、どんなに変な客が来ても、昼間は笑顔で接客しなければならない。実はこれ、夜のサバイバルにも直結する重要な要素なのだ。

    売上目標を達成できなければ、店のアップグレードに必要な資金が得られない。逆に、しっかりと売上を立てれば、夜間の防衛に必要な設備を購入できる。この「稼ぎ」と「生存」のバランスが、本作の戦略性を生み出している。

    夜間のシフト:監視カメラと発電機が命綱

    日が沈むと、店の様相は一変する。

    まず、夕方の時間帯に準備作業が必要だ。発電機の燃料チェック、ドアへのバリケード設置、防犯カメラの動作確認、そして防衛用アイテムの購入。これらを怠ると、確実に夜を乗り切れない。

    夜間、最も重要なのは「誰を店内に入れるか」の判断だ。深夜に来店する客の中には、人間に擬態した「何か」が紛れ込んでいる。見た目は普通の客だが、よく観察すると微妙に動きがおかしかったり、不自然な笑顔を浮かべていたりする。

    この判断を誤ると──つまり、怪物を店内に入れてしまうと──命の危険に晒される。逆に、普通の客を締め出してしまうと、その客の運命は……まあ、想像に難くない。

    プレイヤーの選択が客の生死を左右する。このモラル的ジレンマが、『HELLMART』のホラー要素をさらに深めている。

    隠れたシステムが生み出す緊張感──「見えないプレッシャー」の正体

    『HELLMART』の恐怖は、ジャンプスケアだけではない。むしろ、ゲームが明示しない「隠れたシステム」こそが、プレイヤーを真綿で首を絞めるように追い詰めていく。

    コミュニティの検証によれば、本作には少なくとも3つの隠しパラメータが存在する。

    1. 時間プレッシャー
    営業時間を延長すればするほど、異常現象の発生頻度が上がる。売上を伸ばしたい気持ちと、早く店を閉めたい恐怖のせめぎ合いだ。

    2. ノイズレベル
    商品を落としたり、慌てて動き回ったりすると、「何か」を引き寄せてしまう。静かに、慎重に行動することが生存率を上げる。

    3. ストレスメーター
    タスクを放置したり、ミスを重ねたりすると、主人公の反応速度が鈍くなる。画面には表示されないが、確実にプレイヤーを不利にしていく。

    これらのシステムは、ゲーム内で一切説明されない。プレイヤーは試行錯誤を繰り返す中で、「なぜか今日は敵が多い」「なぜか反応が遅れる」と感じ、自然とゲームのルールを学んでいく。

    この「暗黙のルール」こそが、『HELLMART』独特の緊張感を生み出している。

    3つのエンディング──あなたの選択が結末を決める

    『HELLMART』は7日間のキャンペーンモードで構成されており、プレイヤーの行動によって3つ(一部情報では4つ)の異なるエンディングが用意されている。

    • グッドエンディング:客を守り抜き、すべてのルールを遵守した場合
    • バッドエンディング:自己保身に走り、客を見捨てた場合
    • シークレット/トゥルーエンディング:特定の条件を満たした場合(詳細は伏せる)

    重要なのは、「どのエンディングが正解」ということではない。『HELLMART』は、プレイヤーに道徳的な選択を迫る。生き延びるために客を見捨てるのか、それとも人間性を守り抜くのか。

    この選択の重みが、単なるホラーゲームを超えた体験を生み出している。

    賛否両論の評価──「期待と現実のギャップ」が生んだ批判

    Steam評価75%という数字は、決して低くはない。しかし、「圧倒的に好評」とも言い難い微妙なラインだ。

    主な批判点は以下の3つ。

    1. グラフィックのダウングレード
    トレイラーで見せた美しいライティングや商品の質感が、製品版では劣化していると指摘する声が多い。特にロシア語圏のレビューで顕著だ。

    2. 夜間パートが短すぎる
    昼間の単調な作業に対して、夜の恐怖体験が物足りないという声。期待していたホラー要素が薄いと感じるプレイヤーも。

    3. 反復作業の多さ
    7日間同じことを繰り返すだけで、新しい展開が少ない。リプレイ性を謳っているが、実際には変化に乏しいという批判。

    一方で、擁護する声も少なくない。「この価格でこのクオリティなら十分」「雰囲気だけで元が取れる」「続編やアップデートに期待」といった肯定的な意見も目立つ。

    似て非なるゲーム──『僕、アルバイトォォ!!』との比較

    コンビニを舞台にしたゲームとして、『僕、アルバイトォォ!!』との比較は避けられない。

    『僕、アルバイトォォ!!』は、迷惑客をバールで殴り飛ばすコメディアクション。ネットミームを多用し、笑いを重視した作品だ。価格も700円と非常に安い。

    対して『HELLMART』は、真面目にホラー体験を追求している。笑いではなく、恐怖と緊張感。そして、プレイヤーの選択に意味を持たせている。

    どちらが優れているかではなく、どちらを求めているかだ。気軽に笑いたいなら『僕、アルバイトォォ!!』、じっくりと恐怖に浸りたいなら『HELLMART』。同じコンビニでも、まったく異なる体験が待っている。

    Silent Hillとスーパーマーケットシミュレーターの融合

    海外メディアGameSpewは、『HELLMART』を「Silent Hillとスーパーマーケットシミュレーターの融合」と評した。的確な表現だと思う。

    『Silent Hill』シリーズが持つ、日常に潜む狂気。普通の街が、普通のコンビニが、夜になると別の顔を見せる。その恐怖は、派手なモンスターではなく、「いつもと何かが違う」という微細な違和感から生まれる。

    『HELLMART』も同じアプローチを取っている。昼間の平凡な接客業が、夜には生死を賭けたサバイバルに変わる。この落差こそが、本作最大の魅力だ。

    GameSpewのレビュアーは、デモ版をプレイした後、「着替えを持ってくるべきだった」とコメントしている。それほどまでに、本作の恐怖は予想外だったのだろう。

    極北の孤独──ロケーションが生み出す絶望感

    『HELLMART』の舞台は、極北の地にある24時間営業のコンビニ。周囲は雪と森に囲まれ、最も近い街まで何キロも離れている。

    この「孤立」こそが、ゲームの恐怖を増幅させている。助けは来ない。逃げる場所もない。ただひたすら、7日間を生き延びるしかない。

    実際、ゲーム内では「なぜこの仕事を選んだのか」という主人公の動機が語られる。都会の喧騒から逃れたい。人と関わりたくない。簡単に稼げると思った──そんな理由で極北へ来たのだ。

    しかし、現実は甘くなかった。人里離れた場所だからこそ、「人間以外のもの」が跋扈する。皮肉にも、人を避けた結果、もっと恐ろしいものと向き合うことになったのだ。

    デモ版で試せる「最初の3日間」

    製品版の購入を迷っているなら、まずデモ版をプレイすることを強く推奨する。

    デモ版では、最初の3日間(3シフト)を無料で体験できる。昼間の接客業務から、夜間のホラー要素まで、ゲームの核心部分はすべて含まれている。

    デモ版のSteam評価は712件で87%が好評──製品版よりも高い評価だ。これは、デモの範囲内では非常に完成度が高いことを示している。逆に言えば、製品版の低評価は「デモ以降の展開が期待外れ」という声が多いのだろう。

    デモ版をプレイして、この雰囲気が気に入ったなら購入する。それで十分だと思う。

    日本語完全対応──ローカライズの質も高い

    『HELLMART』は、インターフェース、音声、字幕すべてが日本語対応している。しかも、ローカライズの質が非常に高い。

    ホラーゲームにおいて、言語の壁は致命的だ。微妙なニュアンスや、不気味な台詞の意味が理解できなければ、恐怖は半減する。

    その点、『HELLMART』の日本語訳は秀逸だ。客の不自然な会話、主人公の内面描写、ゲーム内の指示──すべてが自然な日本語で表現されている。

    対応言語は全15言語。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語など、主要言語はすべて網羅している。グローバル市場を意識した、本格的なインディータイトルだ。

    アップデートと今後の展開

    GAZE IN GAMESは、発売後も継続的にアップデートを行っている。コミュニティの声に耳を傾け、バランス調整やバグ修正を実施している姿勢は評価できる。

    公式Discordサーバーも活発で、開発者が直接プレイヤーと交流している。これは、インディースタジオならではの強みだ。

    今後のアップデートで期待されるのは、以下の要素だ。

    • 夜間パートのボリューム追加
    • 新しいエンディングルート
    • グラフィックの改善
    • 新しい敵タイプの追加
    • ニューゲームプラス要素

    特に、「ニューゲームプラス」の実装を望む声は多い。7日間クリア後、より高難度でやり込める要素があれば、リプレイ性は格段に向上するだろう。

    結論──「未完成の傑作」か「期待外れの凡作」か

    『HELLMART』は、賛否が真っ二つに分かれるゲームだ。

    雰囲気、設定、コンセプト──これらは間違いなく一級品。極北のコンビニという舞台設定、昼夜で変わるゲーム性、選択による分岐エンディング。すべてが魅力的だ。

    しかし、ボリューム不足、反復作業の多さ、グラフィックの劣化──これらの欠点も無視できない。「もっとコンテンツがあれば」「もっと夜が怖ければ」という声は、正当な批判だと思う。

    筆者の結論は、こうだ。

    「この価格で、このコンセプトを体験できるなら、買って損はない」

    確かに、100時間遊べるゲームではない。しかし、『HELLMART』にしか味わえない体験がある。極北のコンビニで、7日間を生き延びるという緊張感。客を救うか、見捨てるかという選択。そして、夜の静寂に潜む恐怖。

    これらは、他のゲームでは決して味わえない。

    もしあなたが、「雰囲気重視のホラーゲーム」が好きなら、『HELLMART』は試す価値がある。完璧ではないが、唯一無二の体験が待っている。

    まずはデモ版から。そして、極北の夜を生き延びてほしい。


    基本情報

    タイトル: HELLMART
    開発: GAZE IN GAMES
    パブリッシャー: GAZE IN GAMES
    リリース日: 2026年1月28日
    プラットフォーム: PC (Steam)
    価格: 1,700円
    日本語対応: あり(インターフェース/音声/字幕すべて対応)
    プレイ人数: 1人
    ジャンル: ホラー、シミュレーション、アドベンチャー、サバイバルホラー
    Steam評価: やや好評 (75% / 767件のレビュー)
    プレイ時間: 3-5時間(1周)

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  • 地獄の鬼ごっこで最後の一人を目指せ!『Who’s Next?』で繰り広げられる閻魔大王主催のバトルロイヤル

    地獄の鬼ごっこで最後の一人を目指せ!『Who’s Next?』で繰り広げられる閻魔大王主催のバトルロイヤル

    地獄でも過疎化問題?閻魔大王の苦肉の策

    Steam を漁っていたら、なんとも不思議なゲームに出会った。『Who’s Next?』——直訳すれば「次は誰だ?」だが、これがとんでもない設定のパーティーゲームだったのだ。

    舞台は伝統的な韓国の地獄。どうやら地獄も少子高齢化の波に押され、人口が増えすぎて困っているらしい。そこで閻魔大王(キング・ヨムラ)が考えた解決策が、なんとバトルロイヤル形式の「転生権争奪戦」。最後まで生き残った者だけが現世への転生を許されるという、まさに地獄版『Hunger Games』である。

    これぞ究極の鬼ごっこ!全員が狩る者であり獲物である

    ゲーム開始時、プレイヤーは4~10人で円を描くように一列に並ぶ。そして重要なのがここからだ。各プレイヤーには「魂の役割」が割り当てられ、自分が誰を消去すべきかが指定される。ただし、誰が自分のターゲットなのかは最初はわからない。

    つまり、全員が「ハンター」であり「プレイ」でもある状況だ。自分の前にいる人物を見つけ出し、正しく排除しなければならない。しかし間違った相手を攻撃してしまうと、その攻撃は自分に跳ね返ってくる。この絶妙な推理要素とスリルが、単なる鬼ごっこを戦略的な心理戦に昇華させている。

    情報収集が生命線!タスクと会話で真実を見極めろ

    ゲーム中にはさまざまなタスクが用意されており、これをクリアすることで重要な手がかりを入手できる。「誰が誰を狙っているのか」「自分のターゲットは誰なのか」——こうした情報を断片的に集めながら、全体像を組み立てていく作業は、まさに推理ゲームの醍醐味だ。

    さらに重要なのが、他プレイヤーとのコミュニケーション。リアルタイム音声チャット機能により、疑心暗鬼の中での交渉や情報交換が可能になっている。「私はあなたのターゲットではない」「一緒にあの人を調べよう」——こうした駆け引きの中で、同盟が結ばれ、裏切りが生まれる。

    カスタマイズ可能なルールで無限の楽しさ

    本作の魅力は、その圧倒的なカスタマイゼーション性にもある。20以上のゲームオプションが用意されており、プレイヤーの好みに合わせて細かくルール調整が可能だ。ゲーム時間の長さ、特殊能力の有無、情報開示レベルなど、組み合わせ次第で全く違ったゲーム体験を作り出せる。

    韓国風のカートゥーンスタイルのアートデザインも秀逸で、地獄という恐ろしい設定にもかかわらず、どこか愛らしいキャラクターたちが登場する。10種類のユニークなキャラクター、アニメーション付きの豊富なスキン、そして2つのゲームモードと背景が用意されており、視覚的にも飽きることがない。

    Early Accessでも完成度の高さに驚き

    現在 Early Access として展開中の本作だが、すでに Steam で「非常に好評」の評価を獲得している。105件中86%が肯定的なレビューという数字は、Early Access タイトルとしては上々の結果だ。

    開発者の HellAssociation は、プレイヤーからのフィードバックを積極的に開発に反映していく姿勢を見せており、正式版に向けて更なるソウル(魂の役割)、モード、背景の追加を予定している。また、2025年第2四半期には Mac、iOS、Android 版もリリース予定で、真のクロスプラットフォーム体験が実現される見込みだ。

    基本情報

    タイトル: Who’s Next?

    開発・パブリッシャー: HellAssociation
    プラットフォーム: PC (Steam), Mac/iOS/Android (2025年Q2予定)

    価格: 580円(20%オフ、2月21日まで)

    プレイ人数: 4-10人

    対応言語: 日本語対応

    ジャンル: カジュアル、マルチプレイヤー、戦略、ソーシャル推理

    リリース日: 2026年2月6日(Early Access: 2025年2月27日)

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  • ゾンビの荒野で人類の意地を見せつけろ!『HumanitZ』ついに正式リリース。生存本能を刺激する本格サバイバルの真価とは

    ゾンビの荒野で人類の意地を見せつけろ!『HumanitZ』ついに正式リリース。生存本能を刺激する本格サバイバルの真価とは

    待ちに待った1.0がついに降臨

    2年以上の長いアーリーアクセス期間を経て、ついに『HumanitZ』が正式版1.0として生まれ変わった。開発元のYodubzz Studios(イギリス)とパブリッシャーのindie.ioがタッグを組んだこの作品、実は筆者も早期アクセス時代からちょくちょく触れていたのだが、当時は「まあ、よくあるゾンビゲーかな」程度の印象だった。

    しかし今回の1.0アップデートで様子が一変。コミュニティからのフィードバックを徹底的に反映した結果、まさに「これぞサバイバル」と言わんばかりの作品に仕上がっている。40%オフセール(2月20日まで)も実施中ということで、改めて腰を据えてプレイしてみることにした。

    ゾンビサバイバルだけど、なぜか他とは違う

    『HumanitZ』の第一印象は確かに『Project Zomboid』ライクな見下ろし視点のゾンビサバイバル。でも実際にプレイしてみると、この作品独特の魅力がじわじわと見えてくる。

    まず驚かされるのが、チュートリアルの段階で「誰も信じるな」と釘を刺されること。これ、単なるフレーバーテキストではない。実際にNPCとの取引や交渉で痛い目を見ることが多々ある。信頼関係の構築が生存の鍵を握るという、ありそうでなかった要素だ。

    ゲーム世界では「Zeek」と呼ばれるゾンビたちが闊歩しているが、これがまた多種多様。警官のZeekは高いHPと装甲を持ち、バイオスーツ姿のやつは予想外の攻撃を仕掛けてくる。騒音を立てれば立てるほど群れが寄ってくるという仕組みも、緊張感を煽る良いスパイスになっている。

    拠点作りこそがすべて!でも立地選びが命取り

    サバイバルゲームの醍醐味といえば拠点建設だが、『HumanitZ』では「どこに」建てるかが生死を分ける。都市部に建てれば物資は豊富だが、Zeekの群れに囲まれるリスクも高い。逆に郊外なら安全だが、必要な素材を集めるのに時間がかかる。

    筆者は最初、「安全第一」とばかりに人里離れた森の奥に拠点を構えた。確かに平和だったが、いざという時の物資調達で死にそうになった。結局、適度に文明の利器にアクセスできる郊外に引っ越し、電気フェンスとバリケードで武装した要塞を作り上げることに。

    しかし、この拠点作りが楽しいのなんの。単純に壁を張り巡らせるだけではなく、電気フェンス、コンクリートバリケード、さらには車両の改造まで含めた総合的な防御システムが構築できる。愛車を装甲化して荒野を駆け抜ける時の爽快感は、まさに映画『マッドマックス』の世界そのものだ。

    マルチプレイの絶妙なバランス

    『HumanitZ』の真価は、やはりマルチプレイにある。最大4人での協力プレイはもちろん、PvPとPvEが混在した専用サーバーでの生存競争は格別だ。

    特に印象的だったのが、他のプレイヤーとの微妙な距離感。完全に敵対するわけでもなく、かといって無条件に信頼できるわけでもない。物資の取引、情報の共有、時には裏切りも含めた複雑な人間関係が、ゾンビの脅威以上にスリリングな体験を生み出している。

    最近のアップデートで導入されたリアルタイム感染システムも秀逸。感染したプレイヤーは迅速な判断を迫られ、適切な処置を行わないと恐ろしい怪物に変貌してしまう。この緊張感が、チームワークの重要性を一層際立たせている。

    圧倒的な自由度と個性的な職業システム

    1.0アップデートで大幅に刷新されたスキルツリーと職業システムが、本作の戦略性を大きく押し上げている。無職を選べば25%の経験値ボーナスが得られるし、泥棒なら警報システムを無効化できる。それぞれの職業に明確なメリット・デメリットが設定されており、マルチクラス運用も可能だ。

    パーマデスモードも用意されており、死んだらキャラロストという極限状況でのプレイも楽しめる。筆者は怖くてまだ手を出していないが、この緊張感がたまらないという声も多い。

    唯一の不満点は「慣れ」が必要なこと

    正直に言えば、『HumanitZ』は万人向けではない。特に序盤は操作性に癖があり、インベントリ管理やUI周りで戸惑うことも多い。Steamレビューでも「バグが多い」「操作が不安定」といった指摘があるのも事実だ。

    しかし、これらの粗さを乗り越えた先に待っているのは、他では味わえない濃密なサバイバル体験。開発チームも活発にアップデートを続けており、今後のさらなる改善に期待が持てる。

    結論:代替品なき唯一無二の体験

    『HumanitZ』は完璧な作品ではない。しかし、この手のゾンビサバイバルジャンルで「他に代わりがない」独特の魅力を持った作品であることは間違いない。

    コミュニティ主導で成長してきた2年間の蓄積、プレイヤーの声を真摯に聞き続ける開発姿勢、そして何よりもその先に見える「究極のサバイバル体験」への情熱。これらが組み合わさった時、粗削りながらも唯一無二の魅力を放つ作品が生まれる。

    40%オフの今が絶好の機会。ただし、ソロプレイよりもフレンドと一緒に挑戦することを強くお勧めしたい。人類最後の希望として、終末世界を生き抜いてみてはいかがだろうか。


    基本情報

    ゲームタイトル: HumanitZ
    開発: Yodubzz Studios
    パブリッシャー: indie.io
    プラットフォーム: PC (Steam)
    価格: 2,300円(通常価格)
    セール価格: 1,380円(40%オフ、2月21日まで)
    プレイ人数: 1-4人(シングルプレイ・マルチプレイ対応)
    日本語対応: あり
    発売日: 2026年2月6日(正式リリース)

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  • 銛一本で挑む霧の海!Chilla’s Artが送る新境地のサバイバル漁ゲー『UMIGARI』が予想以上にクセになる

    銛一本で挑む霧の海!Chilla’s Artが送る新境地のサバイバル漁ゲー『UMIGARI』が予想以上にクセになる

    正直言って、最初に『UMIGARI』のデモを起動したとき「これ、本当にChilla’s Artのゲームか?」と疑った。日本のホラーゲーム界で独特な地位を築いている同デベロッパーの新作は、なんと銛で魚を狩る一人称視点の漁ゲーム。しかも公式サイトでは「ホラー要素は非常に軽い」と明言されている。

    ところが実際にプレイしてみると、これが想像以上に奥深いサバイバル体験で、気付けば霧の海の向こうに潜む「何か」を求めて夢中で銛を振るっていた。

    最初は普通の漁だった……はずなのに

    ゲームの舞台は、霧に包まれた日本近海。プレイヤーは小さな漁船に乗り込み、銛を使って魚を捕獲していく。基本的な流れは実にシンプル。魚を捕る→港で売る→燃料と装備を補給する→より深い海域へ向かう。この繰り返しだ。

    操作も直感的で、マウスで照準を合わせ、タイミングよく銛を投げるだけ。最初のうちは普通のサバやアジが釣れて「なるほど、リアル志向の漁ゲーかな」と思っていた。

    ところが、燃料をアップグレードして少し沖に出てみると……事態は一変する。見たこともない巨大な魚影が現れたかと思えば、明らかに現実離れした姿の海洋生物が泳いでいる。そして何より、霧の向こうから聞こえてくる不可解な音。

    「あ、やっぱりChilla’s Artだった」

    銛の精度こそがすべて!

    『UMIGARI』の最大の魅力は、銛による狩猟システムの絶妙なゲームバランスにある。単純に見えて実は奥が深い。

    魚には種類ごとに異なる行動パターンがあり、動きを読んで先回りして銛を投げる必要がある。小さな魚は素早く逃げ回り、大型の魚は重厚な動きで威圧してくる。特に深海に生息する異形の生物たちは、時として反撃してくることもあり、船体へのダメージも考慮しなければならない。

    銛自体にも種類があり、射程や威力、リロード時間などが異なる。序盤の短い銛では届かない深度の魚も、アップグレードを重ねることで狙えるようになる。この成長要素が実によく練られており、「もう少し長い銛があれば……」「燃料をもっと積めれば……」と常に次の目標が見えている状態を作り出している。

    霧の向こうに潜む謎だけど怖くはない

    Chilla’s Artファンなら気になるのが、果たしてどの程度ホラー要素があるのかという点だろう。結論から言えば、確かに「非常に軽い」レベルのホラーだった。

    とはいえ、同スタジオらしい不気味な演出は健在。霧に包まれた海域で聞こえてくる謎の音響、時折姿を現す巨大な影、そして魚商人の妙に人懐っこい笑顔……。直接的な恐怖はないものの、「何か変だな」という違和感は常についてまわる。

    特に印象的だったのが、深海探索中に遭遇した巨大なクラーケンのような生物。攻撃してくるわけではないのだが、その存在感だけで背筋がゾクッとした。こういった「説明されない存在」の描写は、さすがChilla’s Artといったところ。

    2~4時間でちょうどいいボリューム感

    プレイ時間は公式発表通り2~4時間程度。この手のサバイバルゲームにしては短めだが、濃密な体験が詰まっており、飽きる前にエンディングを迎えられる絶妙な長さだと感じた。

    むしろ長すぎると、同じことの繰り返し感が出てしまいそうなので、この判断は正解だろう。週末の空いた時間でサクッと完走できるのも嬉しいポイントだ。

    ただし、やりこみ要素として全種類の魚を捕獲するコンプリート要素もあるため、人によってはもっと長時間楽しめるはず。筆者も記事執筆時点でまだ見たことのない魚影をいくつか確認しており、再プレイ欲をそそられている。

    基本情報

    ゲーム名: UMIGARI | ウミガリ
    開発・販売: Chilla’s Art
    配信日: 2026年2月5日
    価格: 1,500円(通常価格)※2026年2月19日まで現在20%オフセールで1,200円
    プラットフォーム: PC(Steam)
    日本語: 完全対応(音声・字幕)
    プレイ時間: 2~4時間
    ジャンル: 一人称視点アクション・サバイバル・探索

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  • 声で魔法を唱える?『YAPYAP』が協力型ホラーに革命を起こした理由

    声で魔法を唱える?『YAPYAP』が協力型ホラーに革命を起こした理由

    「ブリンク!ブリンク!ブリンク!」叫び続けた夜

    最初に『YAPYAP』をプレイした夜、私は友人たちと一緒にモニターの前で絶叫していた。「ブリンク!ブリンク!ブリンク!」と必死に叫びながら、巨大な椅子のモンスターから逃げ回っていた。声がかすれるほど叫んだ。隣の部屋から「うるさい」と怒られた。でも、それでも叫び続けた。なぜなら、このゲームでは声が武器だからだ。

    Steam上で「非常に好評」を獲得し、リリース後わずか数時間で約10,000人の同時接続を記録した『YAPYAP』。Lethal Companyの系譜を継ぐ「フレンドスロップ」ホラーの新星として注目を集めているこのゲームは、従来の協力型ホラーとは一線を画す革新的なシステムを持っている。それが「音声認識による呪文詠唱」だ。

    ボタンを押すのではなく、実際に声を出して魔法を発動する。この一点だけで、『YAPYAP』は他のどんな協力型ホラーゲームとも違う体験を提供してくれる。

    魔導師の手下になって、ライバルの塔を荒らしまくれ!

    『YAPYAP』のコンセプトはシンプルかつ痛快だ。プレイヤーは月のような顔をした大魔導師に召喚された手下となり、最大5人の仲間とともにライバル魔導師の塔に侵入する。目的はただ一つ──徹底的に破壊工作を行うこと。

    ピアノを壊せ。トイレを詰まらせろ。カーペットを汚せ。相手の魔導師の一日を台無しにするため、あらゆる迷惑行為を行ってポイントを稼ぐ。これが「破壊目標(Vandalism Target)」と呼ばれる本作の核心的なゲームプレイだ。

    通常の協力型ホラーゲームでは、プレイヤーは怯えながらアイテムを集め、モンスターから逃げ回る被害者の立場だ。しかし『YAPYAP』では、あなた自身が問題を起こす側になる。この視点の転換が、ゲームに独特の爽快感と混沌をもたらしている。

    塔の中には高価な家具、美しい調度品、手入れされた植物などが配置されており、それらを魔法で破壊することでポイントを獲得できる。制限時間内に目標ポイントに到達すれば、その日のノルマ(Quota)達成となる。達成すればゴールドを獲得し、次のクオータに進むことができる。失敗すれば……まあ、魔導師に怒られるだけだ。また挑戦すればいい。

    「ブリンク」「プッシュ」「フィッシファイ」──声で唱える多彩な魔法

    本作最大の特徴が、音声認識による呪文詠唱システムだ。マイクに向かって呪文を唱えることで、実際に魔法が発動する。しかも発音が重要なため、どんなに緊迫した状況でも正確に発音しなければならない。

    最初に手に入るのは「Wind Wand(風の杖)」。これは基本的な攻撃魔法で、「Push(プッシュ)」と唱えれば風で物を押し、「Pull(プル)」と唱えれば引き寄せることができる。シンプルだが、物を壊すには十分な威力を持っている。

    しかし、本作の真価はショップで購入できる上位の杖にある。

    Fire Wand(炎の杖):「Fire(ファイア)」と唱えると火球を発射し、高いダメージを与える。DPS特化型の攻撃魔法で、モンスター相手にも有効だ。

    Grotesque Wand(グロテスクな杖):最もユニークな杖の一つ。「Sneeze(スニーズ)」と唱えるとくしゃみ攻撃を繰り出し、「Fishify(フィッシファイ)」と唱えると敵を魚に変えることができる。そう、魚だ。巨大なモンスターがピチピチと跳ねる魚になる光景は、一度見たら忘れられない。

    Teleportation & Movement Spells:「Blink(ブリンク)」でテレポート、「Float(フロート)」で浮遊、「Levitate(レビテート)」で物体を浮かせることができる。これらの移動魔法は、塔の複雑な構造を攻略する上で必須となる。

    Utility Spells:「Clone(クローン)」で分身を作り、「Disguise(ディスガイズ)」で変装し、「Confuse(コンフューズ)」で敵を混乱させる。戦略的に使えば、モンスターを欺いて安全に破壊工作を進められる。

    音声認識の精度は驚くほど高い。英語だけでなく、日本語を含む多言語に対応しており、中国語(北京語)にも対応している。ただし、発音が曖昧だったり、周囲の雑音が多いと誤認識される場合がある。実際、カジュアルな会話中に偶然「ブリンク」に似た言葉を発してしまい、友人を崖から突き落としてしまったこともあった。

    また、パズル要素にも音声認識が組み込まれている。ある部屋では、巨大な円盤状のパズルがあり、ボールを中心に導く必要がある。このパズルは「OOOOOO」と高い声を出せば左に回転し、「EEEEEE」と低い声を出せば右に回転する。チーム全員で叫びながらパズルを解く体験は、笑いと緊張が入り混じった奇妙な楽しさがある。

    ジェスターとアーマーチェア──塔を守る恐怖のモンスターたち

    破壊工作を邪魔するのが、塔に配置された魔法生物とモンスターたちだ。彼らはプレイヤーを発見すると追跡し、捕まれば即死またはノックダウンされる。

    Jester(ジェスター):最も恐れられているモンスターの一つ。ピエロのような姿をしており、プレイヤーを発見すると猛烈な速度で追いかけてくる。一度ロックオンされると逃げるのは極めて困難で、壁を貫通して攻撃してくることもある。杖のクールダウン中に遭遇すると、ほぼ確実に死が待っている。

    Armchair(アーマーチェア):歩く椅子のモンスター。見た目はコミカルだが、攻撃力は馬鹿にできない。近づいてきたら即座に「ブリンク」でテレポートするか、「プッシュ」で押し返すのが定石だ。

    その他の魔法生物:塔には他にも様々な魔法生物が徘徊している。それぞれが異なる行動パターンを持ち、対処法を学ぶ必要がある。

    AIの挙動は一貫性がなく、時には「脳死状態」のように動かず、時には「特殊部隊並み」の精度でプレイヤーを追跡する。この不安定さが、本作のホラー要素をさらに増幅させている。予測不可能な敵は、予測可能な敵よりも遥かに恐ろしい。

    ソロプレイは地獄、マルチプレイは天国

    『YAPYAP』を語る上で避けて通れないのが、マルチプレイの重要性だ。はっきり言おう──このゲームをソロでプレイするのは地獄だ。

    経済バランスはチームプレイを前提に設計されており、ソロでは稼げるゴールドが少なく、強力な杖を購入するまでに膨大な時間がかかる。モンスターも複数人で注意を分散させることを前提にデザインされており、一人では対処しきれない。そして何より、ソロプレイでは本作最大の魅力である「混沌とした楽しさ」が失われてしまう。

    一方、3〜6人でプレイすると、『YAPYAP』は本領を発揮する。チームメイトが「ブリンク!ブリンク!」と叫びながらジェスターから逃げ回る姿を見たり、誰かが「フィッシファイ」でモンスターを魚に変えて全員が爆笑したり、パズルを解くために全員で奇声を上げたり──これらの体験は、マルチプレイでしか味わえない。

    ただし、リリース時点ではパブリックマッチメイキングが実装されていない。つまり、ランダムプレイヤーとのマッチングはできず、基本的にフレンドとプレイする必要がある。開発チームはフレンドリスト機能やプライベート/パブリック/フレンドオンリーのロビー設定を追加したと発表しているが、完全なパブリックマッチメイキングはまだ実装されていない。

    友人がいない場合は、Discordコミュニティに参加してプレイヤーを探すのが最善の選択肢だ。

    PS1風グラフィックと技術的な課題

    ビジュアル面では、『YAPYAP』は「呪われたPS1」美学を採用している。重いピクセルフィルター、低ポリゴンモデル、粗いテクスチャが組み合わさり、独特の不気味な雰囲気を醸し出している。このレトロなグラフィックスタイルは、現代のホラーゲームにはない独特の恐怖感を生み出している。

    しかし、技術的な面では課題も多い。

    バグの多さ:床をすり抜けて落下する、杖が虚空に消える、クラッシュでセーブデータが消えるなど、数多くのバグが報告されている。私自身、良い進行状況を記録していたセッション中にクラッシュし、すべてを失った経験が3回ある。

    パフォーマンス問題:低スペックPCでの最適化が不十分で、フレームレートが10〜15fpsまで低下することがある。グラフィック設定のオプションが限られており、特に解像度設定がパフォーマンスに大きく影響するにも関わらず、調整の幅が狭い。

    ネットワークの不安定さ:協力プレイ中に、一部のプレイヤーが他のプレイヤーの画面では浮遊して動かないように見えるデシンク問題が発生する。再接続で解決できる場合もあるが、頻繁に発生するため煩わしい。

    音声認識の誤動作:バックグラウンドノイズや訛りがある場合、音声認識の精度が低下する。また、偶発的な友好的火力(味方への誤射)も頻発する。

    開発チームはアクティブにパッチをリリースしており、コミュニティのフィードバックに積極的に対応している。リリース後数日で複数のパッチがリリースされ、マップからプレイヤーがスタックした際にテレポートできる機能や、中国語音声認識の改善などが実装された。

    経済バランスと「金持ちはより金持ちに」問題

    『YAPYAP』の経済システムには、重大な欠陥がある。それが「富の格差」問題だ。

    ゴールドは共有制だが、稼ぎにくい。3回のランを重ねてようやくFire Wandを購入できる程度のゴールドが貯まるが、バグやワンショットメカニックで死亡すると装備をすべて失う。そして、それを取り戻すためにまた1時間かかる。

    Wind Wand(基本装備)はQuota 2以降ではほぼ無力になるが、他の杖を購入する余裕がない。これにより「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏に」というループが発生する。一度悪いランが続くと、夜全体が台無しになる。

    この経済バランスは、ゲームの最大の欠点の一つだ。装備を失うこと自体はジャンルの定石だが、その喪失が「プレイヤーの時間を尊重していない」と感じられる点が問題だ。

    それでも『YAPYAP』は特別だ

    技術的な問題、経済バランスの不備、ソロプレイの厳しさ──これらすべての欠点を認めた上で、それでも『YAPYAP』は特別なゲームだ。

    このゲームが生み出す「自然発生的なコメディ」は、AAA級のスタジオが何億円かけても再現できない。友人が「ブリンク!」と叫びながらモンスターから逃げ回る姿、誰かが偶然にも味方を魚に変えてしまった瞬間の爆笑、パズルを解くために全員で奇声を上げる光景──これらは台本では書けない、プレイヤー同士の相互作用から生まれる純粋な楽しさだ。

    サンドイッチ一個分の価格(通常1,200円、セール中960円)で、友人たちと何時間も笑い転げる体験を提供してくれる。それだけで十分な価値がある。

    多くの低評価レビューが「アップデートがあれば評価を変えたい」と締めくくっているのは、このゲームの潜在能力を誰もが信じているからだ。開発チームのMaison Bapは、前作『BAPBAP』でも同様に82%の好評価を獲得しており、コミュニティへの対応力には定評がある。

    欠陥だらけの杖であっても、放たれる閃光は本物の魔法だった。

    基本情報

    ゲーム名:YAPYAP
    開発元:Maison Bap
    パブリッシャー:Maison Bap
    対応プラットフォーム:PC(Steam)
    リリース日:2026年2月3日
    価格:¥1,200(リリース記念セール:¥960 / 2月18日まで)
    プレイ人数:1〜6人(協力プレイ)
    対応言語:日本語、英語、中国語(簡体字・繁体字)、フランス語、スペイン語ほか
    Steam評価:非常に好評(82% / 1,020件以上のレビュー)

    システム要件

    • 最低:Core i5 6600、GeForce GTX 970相当以上
    • 推奨:より高性能なCPU/GPU(最適化が不十分なため)

    ジャンル:協力型ホラー、マルチプレイヤー、音声認識アクション、ダンジョンクローラー
    プレイ時間:1セッション30分〜1時間程度
    難易度:中〜高(チームプレイ前提、AIの不安定さ)

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  • 森の声が聞こえたら、もう助からない。『Tiny Bunny』が描く白黒の恐怖に慄然

    森の声が聞こえたら、もう助からない。『Tiny Bunny』が描く白黒の恐怖に慄然

    まさかここまで背筋が凍るとは……

    Steamでお気に入りのホラーゲームを漁っていた時、一枚の白黒のスクリーンショットが目に飛び込んできた。『Tiny Bunny』——可愛らしい名前とは裏腹に、そのビジュアルからは得も言われぬ不気味さが滲み出ている。96%という圧倒的な高評価に釣られてプレイしてみたところ、これが想像を遥かに超える恐怖体験だった。

    シベリアの雪深い村を舞台にしたこのホラービジュアルノベルは、子供の失踪事件と森に潜む謎の存在を描いた作品。Dmitry Mordas氏の原作小説をベースにSaikono氏が手がけた本作は、ただのホラーゲームではない。これは90年代ロシアの田舎町で起こる、現実と悪夢の境界が曖昧になっていく物語なのだ。

    1998年の雪景色が呼び覚ます童心の恐怖

    物語の舞台は1998年の冬、シベリアの森に囲まれた名もない村。6年生のアントン・ペトロフが家族と共に都市部から引っ越してきたことから悲劇が始まる。転校初日から彼を待ち受けていたのは、陰湿ないじめと不可解な村の慣習、そして何より——夜な夜な森から響いてくる「声」の存在だった。

    このゲームの白黒のグラフィックが実に秀逸だ。モノクロームの世界は、まるで古い写真や映画フィルムを見ているような感覚を与える。雪に覆われた村の風景、薄暗い校舎の廊下、そして不気味に枝を伸ばす森の木々——全てが絶妙なタッチで描かれ、プレイヤーを1990年代の東欧の片田舎へと引き込んでいく。

    特に印象的なのは、キャラクターの表情描写だ。アントンをいじめるクラスメイトたちの歪んだ顔、謎めいた微笑みを浮かべる大人たち、そして動物の仮面を被った謎の存在——これらが白黒の世界で織りなす恐怖は、カラーでは表現できない独特の不気味さを醸し出している。

    選択が分岐する5つのエピソードの恐怖

    『Tiny Bunny』は全5エピソードで構成され、プレイヤーの選択によって物語が大きく分岐していく。2025年12月5日に最終エピソードが配信完了し、ついに物語の全貌が明らかになった。総プレイ時間は約10時間だが、その密度の濃さは他の追随を許さない。

    各エピソードでプレイヤーは様々な選択を迫られる。クラスメイトとの関わり方、大人への対応、そして最も重要な——森からの誘いにどう応えるか。これらの選択は単なる分岐点ではなく、アントンの精神状態や周囲の人間関係を大きく左右し、最終的に20種類以上のエンディングへと導かれる。

    興味深いのは、どの選択が「正解」なのかが最後まで分からないことだ。一見すると良い選択に思えることが、後々悲劇を招くこともある。逆に、道徳的に問題があるような選択が、意外な救済をもたらすこともある。この曖昧さこそが、現実世界の複雑さを反映している。

    90年代ノスタルジアと現代に通じる普遍的恐怖

    このゲームが特筆すべきは、90年代ロシアの生活様式を丁寧に描写している点だ。カセットテープ、たまごっち、UAZ(ロシア製の車)など、当時を知る人なら思わず懐かしさを感じる小道具が随所に登場する。これらの描写は単なる時代考証ではなく、プレイヤーを物語の世界に没入させる重要な装置として機能している。

    しかし本作の恐怖は決してノスタルジアに依存したものではない。学校でのいじめ、家庭内の不和、大人たちの無理解——これらは時代や場所を問わず、多くの子供が直面する普遍的な問題だ。アントンが感じる孤独感や疎外感は、現代の読者にも深く響くものがある。

    森に潜む謎の存在「動物たち」も、単なる超常現象として描かれるのではなく、子供時代の恐怖や不安の象徴として機能している。彼らが提供する「永遠の子供時代」という誘惑は、現実逃避への欲求を表現しているのかもしれない。

    音響設計が織りなす恐怖の演出

    『Tiny Bunny』の音響設計は、視覚的な恐怖と同じかそれ以上に重要な役割を果たしている。Vladimir Bulaev氏を筆頭とする作曲陣が手がけたサウンドトラックは、不協和音と美しいメロディーを巧みに織り交ぜ、プレイヤーの心理状態を巧妙に操る。

    特に印象的なのは、森のシーンで使われる環境音だ。風の音、雪の降る音、そして時折聞こえる正体不明の声——これらが組み合わさることで、画面の向こうから本当に何かが現れそうな錯覚を覚える。ヘッドフォンでプレイすることを強く推奨したい。

    また、キャラクターのセリフには部分的に音声が付けられており、これが文字だけでは表現できない感情の機微を伝えている。特に恐怖や錯乱を表現するシーンでの音声演出は圧巻だ。

    賛否を呼んだ最終エピソード

    2025年12月に配信された最終第5エピソードは、ファンの間で大きな議論を呼んでいる。20種類以上のエンディングが用意されているものの、その中には「全ては夢だった」というオーソドックスなものから、主人公が動物に変身するというぶっ飛んだものまで様々だ。

    Steam レビューでは「最初の4エピソードは完璧だったのに、最後で台無しになった」という辛辣な意見も見受けられる一方で、「複数のエンディングがあることで、プレイヤー各自が自分なりの解釈を見つけられる」という好意的な評価もある。

    個人的には、この多様なエンディングは作品のテーマである「曖昧さ」を体現したものだと思う。現実において、全ての謎が明快に解決されることは稀だ。むしろ、複数の解釈が並存することこそが、この作品の持つリアリティなのではないだろうか。

    基本情報

    Tiny Bunny

    開発者: Saikono
    パブリッシャー: Serenity Forge
    プラットフォーム: Steam, macOS
    プレイ時間: 約10時間
    難易度: 中級者向け
    Steam評価: 圧倒的に好評 (96%)
    リリース日: 2025年12月5日
    カテゴリ: レビュー
    ゲームジャンル: ホラービジュアルノベル
    価格: 1,300円(Steam)(1月6日まで25%オフ)

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  • 13年の歳月を経て遂にお出まし!月面基地の悪夢を描く『ROUTINE』。レトロ未来の恐怖が蘇る

    13年の歳月を経て遂にお出まし!月面基地の悪夢を描く『ROUTINE』。レトロ未来の恐怖が蘇る

    2012年に初めて発表されてから実に13年。その間に何度も開発が中断・再開を繰り返し、いつしか「幻のゲーム」として語られるようになった『ROUTINE』が、ついに2025年12月4日にリリースされた。Steamでの評価は「圧倒的に好評」(93%)と高く、まさに待ちに待った宇宙ホラーの傑作だ。

    月面基地という舞台設定を聞いた時は正直「またいつものエイリアン系ホラーでしょ?」と思っていた。しかし実際にプレイしてみると、そんな軽い気持ちは開始10分で木端微塵に吹き飛ばされた。これは単なるホラーゲームではない。1980年代のレトロフューチャリズムが創り出す、唯一無二の恐怖体験だった。

    なんだこのCATツールは!操作するたびに没入感が高まる

    本作最大の特徴は、主人公が持つ「C.A.T.(Cosmonaut Assistance Tool)」という万能ツールだ。一見するとバーコードスキャナーのような見た目だが、このツールこそが本作の没入感を決定づける要素になっている。

    従来のホラーゲームなら「Eキーで開ける」で済むドアも、本作では実際にC.A.T.のボタンを押し、モジュールを差し込み、手動でスキャンする必要がある。最初は「なんて面倒な」と思ったが、この一手間が恐怖を倍増させるのだ。

    敵に追われている最中に、震える手でC.A.T.の小さなボタンを正確にクリックしなければならない緊張感。バッテリー残量を気にしながらセキュリティシステムにアクセスする焦燥感。この触覚的なゲームプレイが、プレイヤーを確実に月面基地の住人にしていく。

    80年代の月面基地がこんなに恐ろしいなんて

    舞台となる月面基地「ユニオン・プラザ」は、1980年代に描かれた未来そのものだ。CRTモニターが並ぶ制御室、アナログメーターが並ぶ機械室、木製のテーブルが置かれた居住区域。このレトロフューチャー感が、なんとも言えない不安感を醸し出している。

    特に印象的なのは音響設計だ。古いダイヤルアップモデムを思わせる電子音、蛍光灯のハム音、そしてパトロール中の敵ロボットが発する機械的な駆動音。これらの音が重なり合い、まるで1970年代のSF映画の中にいるような錯覚を覚える。開発初期にMick Gordonが関わっていたというのも納得の、完璧なサウンドスケープだ。

    敵ロボットとの鬼ごっこが異常に怖い

    本作の敵は主に暴走した警備ロボットだが、これらとの遭遇が異様に恐ろしい。なぜなら、基本的に「逃げる」ことしかできないからだ。C.A.T.ツールで一時的にショートさせることは可能だが、根本的な解決にはならない。

    プレイ中、通路の奥から聞こえてくる金属的な足音に何度心臓が止まりそうになったことか。ロボットのサーチライトが壁に映る影を見ただけで、条件反射的に最寄りの物陰に隠れてしまう。これが約7時間続くのだから、精神的な疲労は相当なものだ。

    しかし、この恐怖の中にも絶妙なバランス感覚がある。常に追われ続けるわけではなく、謎解きやストーリー理解のための「息継ぎ時間」が適度に用意されている。この緩急のつけ方が、プレイヤーを最後まで飽きさせない秘訣だろう。

    謎解きの質の高さに感動

    本作の謎解きは、よくあるゲーム的な論理ではなく、実際にその場にいたらどうするかという「常識」に基づいている。例えば、自分のIDバッジを探すクエストでは、実際に自分の胸元を見下ろせば済む。コンピューターが故障していれば、一度電源を切って入れ直せば直る。

    この現実的なアプローチが、ゲーム世界への没入感を大きく高めている。複雑すぎる謎解きでプレイの流れが止まることもなく、かといって単純すぎて退屈することもない。絶妙なバランスだ。

    Steam Deckでの宇宙恐怖体験

    本作はSteam Deck検証済みで、ハンドヘルドでの恐怖体験も格別だ。小さな画面に集中することで、より一層の没入感を得られる。深夜に布団の中でプレイすれば、まさに宇宙の孤独感を体験できるだろう。

    ただし、音響設計が重要な本作では、可能な限り良いヘッドフォンの使用を推奨したい。敵の接近を知らせる微細な音の変化や、機械の異音など、細かな音の情報がゲームプレイの鍵となるからだ。

    物語の後半に待つ衝撃

    詳細はネタバレになるため控えるが、物語の後半では予想外の展開が待っている。単純な企業陰謀論から、より根源的で哲学的なテーマへとシフトしていく構成は、好みが分かれるところかもしれない。

    ただし、この唐突な変化も含めて『ROUTINE』という作品なのだろう。13年という長い開発期間で培われた独特の世界観が、最後まで一貫して表現されている。

    基本情報

    タイトル: ROUTINE
    開発: Lunar Software
    販売: Raw Fury
    配信日: 2025年12月4日
    プラットフォーム: Steam、Xbox Series X/S、Xbox One、Xbox Game Pass
    価格: 2,800円(Steam セール中10%オフ2,520円)
    プレイ時間: 7-10時間
    日本語対応: あり(字幕・インターフェース)
    Steam評価: 圧倒的に好評(93%)

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  • ハリウッドの闇に踏み込む衝撃のサイコホラー『Dead Take』。豪華俳優陣が魅せる、映画業界の裏側を暴く恐怖体験

    ハリウッドの闇に踏み込む衝撃のサイコホラー『Dead Take』。豪華俳優陣が魅せる、映画業界の裏側を暴く恐怖体験

    これは単なるホラーゲームじゃない……

    Steam で 88% という高評価を誇る『Dead Take』。最初は「また実写を使ったホラーゲームか」程度の認識だったが、プレイしてみると……これはとんでもない作品だった。

    Surgent Studios が手がけるこの一人称視点サイコホラーは、『バルダーズ・ゲート3』のアスタリオン役で知られるニール・ニューボンと『FF16』のクライヴ役のベン・スターを主演に迎え、ハリウッドの腐敗した権力構造をえぐり出す。

    消えた友人を探して……始まる悪夢

    物語は俳優のチェイス(ニール・ニューボン)が、連絡の取れなくなった友人で同じく俳優のヴィニー(ベン・スター)を探すため、有名プロデューサー、デューク・ケインの豪邸を訪れるところから始まる。

    前夜まで華やかなパーティーが開かれていたはずの邸宅は、今や不気味な静寂に包まれている。紙吹雪が散らばった床、消えた明かり、そして……どこからともなく響く不穏な音。

    「なんでこんなところに来てしまったんだ……」と思いながらも、友人を探すために邸宅の奥へと進んでいく。これが悪夢の始まりだとも知らずに。

    実写×3D の新感覚ホラー体験

    本作最大の特徴は、実写映像と Unreal Engine 5 による 3D グラフィックが絶妙に融合した演出だ。邸宅内の探索は一人称視点で行うが、重要な場面では実写の映像が挿入される。

    特に印象的なのが USB ドライブに保存された映像の数々。オーディション映像、インタビュー、そして……あまりに生々しい告白の映像まで。これらの映像は単なるカットシーンではなく、謎解きの重要な要素として機能する。

    破損した映像ファイルを専用のソフト「SPLAICE」で編集・復元することで新たな手がかりを得られるのだが、この映像編集システムがまた秀逸。まるで本当に映画の編集をしているような臨場感がある。

    エスケープルームを逆転させた発想

    通常のエスケープルームゲームは「脱出」が目的だが、『Dead Take』は正反対。プレイヤーはより深く、邸宅の奥へと踏み込んでいかなければならない。

    パズルの難易度は絶妙に調整されており、「これは解けない……」と思った瞬間に、ふと答えが浮かぶような絶妙なバランス。例えば、ピアノの鍵盤に描かれた謎の記号を頼りに正しい順序で鍵盤を押すパズルや、絵画の制作年月日から金庫の暗証番号を推測する仕掛けなど、どれも論理的でありながら直感的に解ける。

    ただし、いくつかのパズルは少々理不尽で、筆者も一つのパズルに 30分以上悩まされた。これは好みが分かれるところだろう。

    俳優陣の圧倒的な演技力

    何といっても本作の真骨頂は俳優陣の演技だ。ニール・ニューボン演じるチェイスの心の動揺、ベン・スター演じるヴィニーの複雑な感情、そして画面には登場しないものの、その存在感で恐怖を煽るデューク・ケイン。

    特に印象的だったのは、物語後半に登場する女優ジェーン・ペリーの映像。彼女が語る業界の闇は、あまりにもリアルで胸が締め付けられる。制作陣が「実体験に基づいている」と語るだけあって、そのリアリティは他の追随を許さない。

    これらの実写映像があることで、単なるホラーゲームを超えた「体験」として昇華されている。

    短いが濃密な 4時間の恐怖

    プレイ時間は約 4時間と短めだが、その分濃密な体験が詰まっている。無駄な部分を一切削ぎ落とし、恐怖と謎解きに特化した構成は見事としか言いようがない。

    価格も 1,700円と手頃で、「映画を 1本観る感覚で」楽しめる。実際、本作は映画とゲームの境界を曖昧にする新しい体験を提示している。

    Steam Deck でも快適にプレイできるが、一部のシーンで若干重くなることがある。それでも Verified 対応なので、携帯機での恐怖体験を求める人にもオススメだ。

    業界の闇を暴く勇気ある作品

    『Dead Take』が他のホラーゲームと決定的に違うのは、その社会的メッセージ性だ。ハーヴェイ・ワインスタイン事件を彷彿とさせる権力の濫用、性的暴行、精神的な支配……。エンターテインメント業界の暗部を真正面から描いている。

    これは単なる「怖がらせ」ではない。私たちが普段目にする華やかな映画やゲームの裏側に潜む、生々しい現実への告発なのだ。

    制作者のアブバカル・サリム氏自身が俳優であり、この業界で実際に体験したことが作品に反映されているのは間違いない。だからこそ、この作品には他では得られない「真実味」がある。

    まとめ:新時代のホラー体験

    『Dead Take』は間違いなく、2025年最高のホラーゲームの一つだ。実写と 3D の融合、圧倒的な演技力、そして社会派としてのメッセージ性。すべてが高次元でまとまっている。

    ジャンプスケアに頼った安易な恐怖ではなく、人間の心の奥底に潜む闇を描き出す心理的恐怖。これこそが真のホラーではないだろうか。

    ホラーゲーム好きはもちろん、映画好き、そして社会問題に関心がある人にもぜひプレイしてもらいたい作品だ。ただし、扱っているテーマが重いので、心の準備をしてからプレイすることをお勧めする。

    この業界の闇を知った時、あなたは映画を同じ目で見ることができるだろうか?


    基本情報

    ゲームタイトル: Dead Take / デッドテイク
    開発: Surgent Studios
    販売: Pocketpair Publishing
    プレイ人数: 1人
    対応機種: PC (Steam)
    価格: 1,700円
    日本語: 対応
    Steam評価: 非常に好評 (88%)
    プレイ時間: 約4-5時間
    リリース日: 2025年7月31日

    購入はこちら: Steam ストアページ

  • 90年代ホラーの記憶を呼び覚ます『Heartworm』。カメラで戦う孤独な女性が織りなす、心の深層への悲痛な旅路

    90年代ホラーの記憶を呼び覚ます『Heartworm』。カメラで戦う孤独な女性が織りなす、心の深層への悲痛な旅路

    悲嘆という名の寄生虫に侵された心の物語。

    Steam で驚異的な89%という高評価を誇る『Heartworm』。一見すると、90年代のサイレントヒルやバイオハザードを思わせるレトロなホラーゲームに見えるが、プレイしてみるとそこには単なるノスタルジー以上の深い感情が込められていることに気づく。

    本作の主人公サムは、愛する祖父を亡くした悲しみから立ち直れずにいる女性だ。彼女がたどり着いたのは、インターネットの暗い片隅で囁かれる都市伝説——山奥にある廃屋には死者と繋がる部屋があるという噂だった。

    カメラが武器という独創的なコンセプト

    『Heartworm』最大の特徴は、武器がカメラだということだ。これは『零』シリーズからのインスピレーションが明らかだが、本作ではより心理的な意味合いが強い。

    主人公のサムは写真家でもあり、カメラは彼女にとって現実を捉える道具であると同時に、超自然的な存在から身を守る手段でもある。敵に向かってシャッターを切ると、まばゆい光で相手を撃退できるのだが、この行為そのものが「記憶を焼き付ける」という行為の象徴的な表現になっている。

    戦闘は決して複雑ではない。カメラを構えてタイミング良くシャッターを切るだけだ。しかし、限られた「フィルム」という制約があることで、むやみに戦闘することはできない。これが探索重視のゲームデザインを支えている。

    記憶の迷路を彷徨う心理的探索

    本作の舞台となる「アーカイブ」は、サムの記憶や心象風景が具現化した異世界だ。廃校、病院、住宅街、そして不気味な生垣の迷路など、どこか見覚えのある場所が歪んだ形で現れる。

    これらの場所を探索していると、サムの過去や心の傷が少しずつ明らかになっていく。祖父との思い出、家族への想い、そして死への強迫観念。環境そのものがストーリーテリングの一部となっており、プレイヤーは推理小説のように断片的な情報を繋げながら真実に近づいていく。

    固定カメラによる演出も秀逸だ。画面が切り替わった瞬間に隠されていた恐怖が姿を現したり、逆に美しい景色が広がったりする。この緩急のつけ方は『サイレントヒル』を彷彿とさせる。

    パズルが紡ぐ、記憶の断片

    探索の合間に現れるパズルも本作の魅力の一つだ。単純な鍵探しから、暗号解読、そして仕掛けの多いパズルボックスまで、バリエーション豊かな謎解きが用意されている。

    特に印象的なのは、サムの記憶に関連したパズルだ。写真の並べ替えや、思い出の品を正しい場所に配置するといった謎解きは、単なるゲーム的な仕掛けを超えて、彼女の心の整理という意味合いを持っている。

    一部のパズルは解法が分かりにくく、古き良きホラーゲームらしい理不尽さもある。しかし、解けた時の達成感は格別で、「この世代のホラーゲームはこうでなくちゃ」と思わせてくれる。

    美しくも悲しいレトログラフィック

    グラフィックは意図的にPS1時代の粗いポリゴンを再現している。しかし、これは単なるノスタルジーの演出ではなく、記憶の曖昧さや不完全さを表現する手法として機能している。

    レトロフィルターをONにすることで、より当時らしいザラついた映像になるが、筆者的にはこちらの方が雰囲気に合っていると感じた。記憶というものの不鮮明さ、時間の経過による劣化を視覚的に表現している。

    色彩は全体的に抑えめで、灰色や茶色が基調となっている。しかし、要所要所で鮮やかな色が効果的に使われており、それが記憶の中で特に印象深い出来事を表しているように感じられる。

    心に響く、憂鬱なサウンドトラック

    音楽は本作の情緒的な核心を担っている。静寂と不安を演出する環境音から、サムの内面を表現するメランコリックなメロディまで、どれも完璧に計算されている。

    特に印象的なのは、物悲しいピアノの旋律だ。サムが祖父の死と向き合う場面や、過去の幸せな記憶を振り返る場面で流れる音楽は、プレイヤーの感情に直接訴えかけてくる。

    また、敵が現れる時の不協和音や、パズルを解いた時の安堵感を表現する音響効果も見事だ。ホラーゲームでありながら、音楽が恐怖よりも悲しみや郷愁を呼び起こすのが本作の特徴と言える。

    孤独な魂の物語として

    『Heartworm』は確かに90年代ホラーゲームへのオマージュとして作られている。固定カメラ、タンクコントロール、暗号的なパズル、限られたセーブポイントなど、当時の仕様を忠実に再現している。

    しかし、本作の真の価値は懐古趣味を超えたところにある。これは悲嘆という感情の寄生虫(Heartworm)に心を蝕まれた女性の物語なのだ。愛する人を失った悲しみが、いかにして人の心に寄生し、現実認識を歪めていくのか。その心理的なプロセスが、ホラーゲームというフォーマットを通じて巧みに描かれている。

    プレイ時間は4〜6時間程度と短めだが、その分密度が高く、最後まで緊張感を保ったまま物語を進められる。複数のエンディングも用意されており、サムがどのような結末を迎えるかはプレイヤーの行動次第だ。

    すべての記憶と向き合うために

    Vincent Adinolfiが一人で開発したこの作品は、間違いなく2025年のインディーホラーゲームの傑作の一つと言える。レトロなビジュアルに騙されてはいけない。これは現代的なテーマを扱った、極めて今日的な作品なのだ。

    サイレントヒルや零といった名作ホラーゲームが好きな人はもちろん、心理的なドラマや芸術的な表現に興味がある人にも強く推奨したい。ただし、うつ病や喪失感といった重いテーマを扱っているため、精神的に辛い時期にある人は注意が必要だ。

    記憶という名の迷路で迷子になったサムと一緒に、心の深層を旅してみてはいかがだろうか。きっとそこには、忘れてしまいたい記憶と同じくらい大切な何かが見つかるはずだ。

    基本情報

    • タイトル: Heartworm
    • 開発: Vincent Adinolfi
    • 販売: DreadXP
    • 配信日: 2025年7月31日
    • プラットフォーム: PC(Steam)
    • 価格: 1,700円
    • 日本語: 音声以外対応
    • プレイ時間: 4〜6時間
    • Steam評価: 非常に好評(89%)
  • 友達と一緒に幽霊を「捕獲」せよ!協力型ホラー『Ghost Watchers』で楽しむゴーストハンティング体験

    友達と一緒に幽霊を「捕獲」せよ!協力型ホラー『Ghost Watchers』で楽しむゴーストハンティング体験

    「また死んだ……」

    『Phasmophobia』のような協力型ホラーゲームを求めていた筆者が、Steam で「非常に好評」を獲得している『Ghost Watchers』に手を出してみた。最初は「また同じような幽霊調査ゲームか」と思っていたのだが、プレイしてみるとこれが予想以上に面白い。なによりも、幽霊を「調査」するだけでなく「捕獲」できるのが新鮮だった。

    Phasmophobia とは一味違う、幽霊「捕獲」体験

    『Ghost Watchers』は、最大4人で協力して廃墟に出没する幽霊を調査・捕獲するオンライン協力型ホラーゲームだ。開発は Renderise で、2022年7月に早期アクセス版がリリースされ、2025年7月に正式版となった。

    本作最大の特徴は、幽霊の正体を特定した後に「弱体化」させて「捕獲」できること。『Phasmophobia』のような類似ゲームでは調査が終われば任務完了だが、『Ghost Watchers』では調査はあくまで前段階。幽霊の種類、年齢、気分を特定してから、その幽霊専用の弱体化手順を実行し、最終的に「ゴーストキャッチャー」で捕まえるのが目標となる。

    この捕獲システムにより、単なる調査ゲームから一歩進んだ「ポケモンのような収集要素」が生まれている。捕獲した幽霊はベース内に展示され、コレクション要素としても楽しめるのだ。

    20種類の幽霊と60種類以上の調査機材

    本作には現時点で20種類の幽霊が登場する。定番の「ポルターガイスト」や「悪魔」から、「キョンシー」「溺れた女」「ハングマン」まで、バラエティに富んだラインナップだ。それぞれが固有の特徴と弱点を持っており、対処法も異なる。

    調査に使用できる機材は60種類以上。EMF検出器や温度計といった定番の機材に加え、ウィジャボード、ヴードゥー人形、ラジオなど多種多様なツールが用意されている。これらを駆使して幽霊の「種類」「年齢」「気分」の3つを特定するのが最初の目標だ。

    特に面白いのが「気分」の概念。同じ幽霊でも「冷静」「怒り」「悲しみ」など異なる感情状態を持っており、これによって行動パターンや弱体化手順が変わる。幽霊にも感情があるという設定が、単なる調査ゲームに深みを与えている。

    カジュアルでも奥深い、初心者に優しいホラー体験

    プレイしてみて感じたのは、『Phasmophobia』よりもカジュアルで取っつきやすいということ。『Phasmophobia』では幽霊に見つかったら基本的に逃げるしかないが、『Ghost Watchers』では塩を投げつけたり、十字架を掲げたりして幽霊を撃退できる。

    これにより「即死ゲー」感が大幅に軽減され、ホラーゲーム初心者でも楽しめるバランスになっている。筆者も最初のうちは何度も死んでしまったが、防御手段があることで徐々にコツを掴んでいけた。

    ただし、油断は禁物。幽霊によってはプレイヤーを別の部屋に「ドラッグ」して連れ去ったり、全てのアイテムを初期地点に落とさせたりする厄介な攻撃を仕掛けてくる。特に高難易度では玄関ドアがロックされて逃げられなくなるなど、緊張感もしっかり味わえる。

    協力プレイでこそ光る楽しさ

    本作の真価は協力プレイにある。一人では持ちきれない調査機材を仲間と分担し、それぞれが異なる証拠を探して情報を共有する過程が非常に楽しい。

    「温度が下がった!」「EMFが反応してる!」「ラジオに声が!」といった具合に、リアルタイムで情報を交換しながら幽霊の正体に迫っていく瞬間は、まさに本格的なゴーストハンティング体験だ。

    弱体化フェーズでは更に協力が重要になる。「全てのドアを開けろ」「3本のロウソクを灯せ」「特定の部屋で儀式を行え」など、複数人で手分けして作業する必要がある場合が多い。一人が幽霊の注意を引いている間に、他のメンバーが準備を進めるといった連携プレイが求められる。

    7つのマップで繰り広げられる恐怖

    現在のところ、病院、学校、農場、精神病院、刑務所、住宅、地下鉄駅の7つのマップが用意されている。どのマップも薄暗く不気味な雰囲気に満ちており、ホラーゲームらしい恐怖感をしっかりと演出している。

    各マップには隠されたイースターエッグも存在し、探索の楽しみも用意されている。同じマップでも幽霊の種類や出現場所が変わるため、何度プレイしても新鮮な体験ができるのも魅力だ。

    現在の課題と今後の期待

    正式版になったとはいえ、まだ完璧とは言えない部分もある。特に2025年の大型アップデート後、一部のツールが正常に動作しないバグや、幽霊が正常に出現しない問題が報告されている。開発チームは積極的に修正に取り組んでいるようだが、購入前にSteamの最新レビューをチェックすることをおすすめする。

    また、一部のプレイヤーからは「効率プレイが単調になる」「やり込み要素が『Phasmophobia』より薄い」といった指摘もある。確かに慣れてくると作業的になりがちな部分があり、長期間のプレイには向かない可能性がある。

    しかし、幽霊調査ゲームが初めての人や、『Phasmophobia』の難易度に挫折した人にとっては、むしろこのカジュアルさが魅力となるだろう。

    総評:友達と楽しむ週末ホラー

    『Ghost Watchers』は、『Phasmophobia』ほどの完成度や奥深さはないものの、独自の「捕獲」システムと親しみやすいバランスで差別化を図った良作だ。特に協力ホラーゲーム初心者にとっては、このジャンルの入門作として最適な選択肢と言える。

    友達と一緒にワイワイ騒ぎながら幽霊退治を楽しみたい人、『Phasmophobia』は難しすぎると感じた人、収集要素のあるホラーゲームを求めている人におすすめしたい。

    ただし、本格的な恐怖体験や高難易度のチャレンジを求めている人には、やや物足りなく感じるかもしれない。あくまで「カジュアルに楽しむホラーゲーム」として割り切って楽しむのが良いだろう。

    値段も手頃で、Steam では頻繁にセールも行われている。友達と一緒に新しいホラー体験を求めているなら、一度試してみる価値は十分にある。

    基本情報

    タイトル: Ghost Watchers
    開発: Renderise
    販売: Renderise
    配信日: 2025年7月24日(正式版)
    早期アクセス開始: 2022年7月28日
    価格:1,520円( Steam)
    言語: 日本語対応(21言語対応)
    プラットフォーム: PC(Steam)
    プレイ人数: 1-4人(オンライン協力プレイ)

    Steam購入リンクはこちら: https://store.steampowered.com/app/1850740/Ghost_Watchers/